俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、写し取る

 

 世界の細かな調整を任せ、ついでに極一部の権能の欠片を渡しておいたところ、その力を使って反抗しようとする者や他の神格を殺害して権能を奪おうとするものが増えた。実際にはそんなことをしようとすると勝手に身体が動かなくなったり恩恵が消えたりするから殺し合いにはなかなか発展しないんだが、それでも厄介なものがある。

 だがまあ、それもまた人間だ。元人間の神ならばよくある話のひとつでしかない。なにしろ俺自身も他の神から権能を奪ったりしたしな。具体的に言うとアポロンとか、まだ存在していなかったと言うかいまだにいないがデュオニソスからな。

 ちなみにデュオニソスがいないのは俺が酒の系統の権能を持ってったせいで権能がないからだ。すまんな。アポロンからは音楽も太陽も病気も持っていった。すまんな。ヘファイストスには持ってた鍛冶の権能を渡したし、これに関しては謝る気はないし必要ないと思っている。

 

 まあそれはともかくとして、そんなやつらに世界の運営を細かいところとはいえ任せるのは若干不安になったのでバックアップを取ることにした。

 世界の現状をそのまま写しとり、複製し、動かさないまま凍結保存する。水の権能は無いのに凍結の権能はあるってのもおかしな話だが、できるものはできるんだから仕方がない。

 ……あ、ちなみに権能を反転して使うってのを繰り返していたら、ついに反転の権能なんてものを手に入れた。権能そのものが概念的な物ではあるが、その中でも特に概念的なものを手に入れてしまった。

 ……この権能を使うと男を女にしたり女を男にしたり、相反する権能を矛盾なく保有することができるようになったりする。便利なもんだ。

 ちなみに魔術でやる性転換とは違って永続的なものだから勝手に戻ったりはしない。今度ゼウス辺りにやる予定。最近は浮気性も鳴りを潜めて来たと思いたかったが隠すのが上手くなっただけと言う悲しい状態だからな。もういっそ女にしてやれば浮気もなくなるだろう。と言うかなくなってくれないと困る。女になっても女相手にするのか男を相手にするのか、あるいは両方か……とりあえずヘファイストスに手を出そうとしたら殺す。

 

 世界のバックアップを取った後は、まあそれまでと変わらないように管理を続ける。バックアップの方には手をつけないようにしつつ、世界を眺めるだけの作業だ。

 ……基本的にはどいつもこいつも自分の産まれた種族を贔屓したがるようだが、その辺りは自由だ。贔屓するにも力が必要だ。あまりやり過ぎれば自身が磨耗しきって消えるのみ。そうなったら消えた神に対して向けられた信仰は俺に来るし、渡しておいた権能も戻ってくる。しかも権能そのものがちゃんと使われて周知されることでよりしっかりと使えるようになったものが、だ。帰ってきても来なくても得があるように作るのが一番のやり方だと思う。

 その上で、相手にも自分にも十分な利益を得られるようにしておけば、早々関係が切れることはない。突然に反抗されることはあっても、突然に関係が完全に切られるようなことはないのだ。

 日本神話を経験していると余計にそう思う。関係にも存在にも正と負の二面があり、そのバランスやギャップによって色々と変わってくるものだ。良いも悪いも関わりなくな。

 

 あと、どうもこの世界にはあまり学者として名を馳せた存在は多くないらしい。学者としての知識だけで崇拝されるようなことは早々無く、そういった知識を現実に持ってくるための実力が必須となるようだ。

 地球で言えばアリストテレスあたりはほぼ学者としてのみ有名だが、それも教会によってその説が正しいとされてきたためだ。つまり、アリストテレス本人はともかく、アリストテレスの後ろに巨大な力があったからこそ広く名を残すことになったと言うことだ。

 ……頭のいい脳筋はいるんだが、頭が良くても脳筋は脳筋だからな。最終的に力任せと言う結論に達する事が多すぎる。そしてそれでなんとかなってしまうことの多い我が世界よ……。

 これはあれだな。『是非もないよネ!』とでも言っておけばいいところか。

 


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