俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、撃ち落とす

 

 全身甲冑の騎士に大殺界を集中させる。根本的には威圧と変わらないこれに多少動きは鈍るが、しかしそれでも騎士は動きを止めない。中々に良い騎士なんだろうが、動きから見て戦場で鍛えた邪道剣術。正統派の騎士からは受けが悪いだろうな。

 だが、実のところ神格に正統剣術使いってのは殆どいなかったりする。基本的に騎士と言うのは王を守るためにどっしりと構えて先に進ませないようにするもの。王が使う剣術は、自分を守る騎士が来るまでの時間を稼ぐための守備に向いたもの。武神だとか戦神だとか言われる奴は基本的に多数に切り込んでいく方だ。王宮の防御型の剣術は、使えないことはないだろうが性に合わないと言う奴が多いんじゃなかろうか。

 

 そんな邪道剣術騎士は、俺のようなか弱い少女(見た目)に自分の剣が受け止められたことが信じられないのか、もう一度切りかかろうと剣を振り上げるべく力を込める。だが俺も放す気はないし、食事の邪魔をされるのも良くない。そう言うわけで邪道騎士を水平線近くまでぶん投げる。

 ……つもりだったんだが、投げている途中で剣から手を放して魔力放出で戻ってこようとしたので、海岸線から200m辺りで掌圧叩き込んで落としておいた。鎧を脱げば戻ってこられるだろうが、着てたら沈むんじゃないかね、あれ。

 まあ沈んだら沈んだで俺は構わないがな。直接的に剣振ったのはあっちが先だし、その原因になっただろう大殺界の使用についても理由は恐らく食料を奪うため、要するに強盗を相手にした反撃であり、この時代ならば間違いなく合法だ。

 つまり、俺は悪くねぇ。悪いのは俺を後ろから殴りかかろうとしたやつであり、斬りかかってきた騎士。俺ではない。しかも俺は手を出してないしな。俺が悪くないことは明らかだ。

 まったく、こんなか弱い少女に対していきなり殴りかかってきたり斬りかかってきたり、どれだけ世紀末なんだこの国は。モヒカン共を率いて征服してやろうか?

 ……やっぱいらね。征服して赤字が増える国とか超いらない。あと食事ではなく餌を食って何の感慨も持たないような奴等の巣窟はちょっとどころでなく嫌かな。嫌だな。同族かと思われるのも本当に勘弁。ないわー。

 

 だが、食料が足りていないと言うのならば俺が用意してやれば信仰を得ることもできそうな気がする。この領域はケルト神話圏だが、土地が本土から離れているためか神への信仰と言うのが盛んではない。なにしろ余裕がないようだからな。神に捧げるよりも自分が食わなければ死ぬような土地柄、宗教は神と言う自身には見えないものよりも自身にも見ることができるものへと向かいやすい。それが『物』なのかあるいは『者』なのかはその時次第だろうが。

 そんな中で俺がこのカレーを使って飢えた奴等を釣ってやれば、しっかりと信仰を向けてくれるだろう。無限に食料の出る大釜など、この時代のこの場所に住む者からすれば喉から手が出るほど……立場や本人の性格によっては物理的に喉から手を出してでも欲しがるものだろう。どうやって物理的に喉から手を出すかはわからないが、恐らく首を半分斬って食道あるいは気道の断面に手を突っ込み、喉やら顎やらの骨を砕いてでも出すんじゃないかと思われる。

 ……流石にそこまでやられたら試練的にくれてやってもいいとは思う。俺は試練をやりとげた存在に対しては基本的に寛容だぞ? 基本的にはな。

 だからまあ、とりあえず飯を終わらせたらちょっと散歩にでも行ってみるとするか。

 目指すは王城。正確な場所はわからないが、それもまた旅の醍醐味のようなものだろう。自力で調べて探し当てるとするさ。

 

「ぶぇは!ゲホッ!ゲホッ!」

 

 ……なんか海から上がってきたが、あれ中身女か。思いっきり喧嘩剣術と言うか力自慢の傭兵の戦い方だったんだが、マジか。

 確かに力だけならかなり強い女もいなくはないからな。あれは魔力放出で筋力にブーストかけてるようだが、あれ燃費悪いんだよな。放出じゃなくて滞留にすれば鎧にもなり筋力も上がり一石二鳥だと思うんだが、やる奴少ないんだよな。不思議だ。

 




 少し前に『やべえ洩矢神の逸話見てえ』みたいな感じの感想をいただき、『全盛期のイチロー伝説みたいになりますがいいですか』と問い返したら快諾されたのを思い出したので作ってみた。





全盛期の洩矢神神話

 一戦して15勝は当たり前。一戦40勝も。
 宣戦布告したと思ったら宣戦布告の使者が直後に降伏する事態が頻発。
 洩矢神にとっての戦争は裁判のやりそこない。
 宣戦布告した瞬間負けていたことも日常茶飯事。
 大和の神々に本拠地目前まで攻め込まれ、仲間もいない状態から一人で天照の首をへし折りにいって成功させる。逆の手には月詠が。
 内乱を起こさせるためにスパイを送ったら情報抜かれて兵士になってた。
 猫だましで相手の目を破裂させるのが特技。
 戦場に来ただけで敵軍の大将が泣いて謝った。心臓発作を起こす兵士も。
 敵軍を殲滅(10割)しても納得がいかなければ全員蘇生してまた殲滅してた。
 あまりに勝つので武器を持ってくると卑怯者扱い。
 武器持ってなくても勝つ。
 敵軍の大将を一睨みしただけで月詠が天照に向かって飛んでいく。
 戦争の無い書類仕事でも天照の胃が痛む。
 自分の代行で奥さん出したことも。なお勝つ。
 自分の撃った弾幕を全て鉄の輪で打ち返してさらに打ち返す。
 奥さんとの夜の戦争のついでに一つ戦争を終わらせることもザラ。二つ終わらせることも。
 風祝と世間話していたら見知らぬ神が降伏してきた。
 鉄の輪を受け止めようとした天照と、それを受け止めようとした月詠、須佐之男、手力男もろとも天岩戸に叩き込んだ。
 見ていたアイヌの神のヤジに流暢なアイヌ語で反論しながらカウンターを決める。
 キッと睨んだだけで敵が20くらい内側から弾け飛んだ。
 弾幕で湖ができたことは有名。
 元寇が終わった原因は洩矢神のくしゃみによる台風。
 第二次世界大戦時、赤城に落ちようとしていた爆弾を処理してアイオワの主砲の砲身に放り込んだ。
 鉄の輪の代わりに土星の輪を投げつけてきたことがある。
 いつも自分を見つめてきていた風祝にカレーを奢ってあげたことがある。
 世界大戦時にホワイトハウスで大統領を絞め落とした。
 昨日馬鹿にしたら背後に現れてレバーブローしてきた。
 あなたの後ろに洩矢神。


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