俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、祭り奉る

 

 年に一度の収穫祭。ちょうどいいところにケルト出身のドルイドが居るからそっちの方から引っ張ってきてみたんだが、中々に好評だと言えるだろう。

 ハロウィーンと呼ばれる収穫祭だが、収穫以外にも安産や一家の健康などを祝い、祈る場でもある。俺は家庭の守護神だからな。それに死のうちの病死も司っている。家庭を守るにはこれだけあれば十分なはずだ。

 だが、十分と完璧はまた違うもの。そして俺は基本的に十分なものは作ることはあるが完璧なものは作ったことがない。作ろうとも思わない。作りたいとも思わない。そう言うのは結局幻想であった方がいいものだ。

 完璧を求めすぎると人間味を失うし、人間味を失った人間の集団が向かう先は例外なく衰退だ。人間が滅ぶのならば衰退ではなく絶滅であるべきで、そこには必ず何らかのストーリーがあってしかるべき。どれだけつまらないものであっても、どれだけ短いものでも、必ずあるものだ。

 だからこそ俺は完璧に守ることはしない。完璧に守ってしまっては、人間らしさというものが薄れてしまう。強欲でありながら謙虚で、愚かであると同時に賢しく、自身を騙し続けながらも自身に正直な、そんな人間模様というのが俺は好きだ。その辺りは邪神でもない限りはどの神も同じなんじゃないかね?

 

 祭りでは、数々の精霊と俺に対して捧げ物がされる。農業によって作られた作物や、狩りによって得られた水牛や魚。そういった食物を中心として、動物の骨を削って作り上げた装飾品や美しい石を研いで穴を開け、紐で繋いだ首飾り。そういったものがところ狭しと並んでいる。

 大人も子供も笑いながら収穫物を食し、様々な形で調理を施された料理に舌鼓を打つ。

 

「うまっ。最初の頃のあれとは比べ物にならねえな」

「最初は余裕がなかったからな。食わなければ生きてはいけないが、美味いものを食わなくても生きてはいける。余裕がない奴等が一番に削るのが食事だ」

「分かりやすいこった。ところでよ」

「殺すぞ」

「毎年の事だが駄目か」

「毎年の通り駄目だ。そもそもお前選り取り見取りだろうがそっちで我慢しとけや」

「いい女がいれば口説くだろ?」

「ケルトめ」

「ケルトを問題児と同じような意味で使うのはやめてもらえませんかね?」

「割とあってると思うがね」

 

 ギリシャが言える立場かどうかはまた怪しいが、俺はできる限り矯正はしたから言える立場だと思いたい。と言うか例えギリシャ全体から言うことができなかったとしても俺は言うことができるはずだ。ヘスティアと言えばギリシャ神話界の良心と言われることもあったそうだからな。

 俺が良心かはまた置いておくとして、少なくとも俺は性に奔放ではない。その事に限れば間違いなくケルトにケルトめとかケルトだし仕方ないとか言えるはずだ。

 ただ、俺は他人の性事情にまで関わろうとは思わない。向こうから『助けてあの馬鹿浮気してるの』とか言われれば、まあ近しい間柄だったら関わりにいくかもしれないが。

 

 あ、ただ、基本的に性的な接触は却下な。

 


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