俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、置き去る

 

 鏡の中の分霊だが、実のところ分霊と本体とは何も変わらない。変わるとしたら最大出力程度だろう。分霊とは基本そういうものだ。

 俺の出力は元々そう大きい方ではない。権能や技術を使って増幅することに長けている自覚はあるが、それでも神の中ではかなり小さい方だ。

 流石に小神やら従属神、八百万の神の中でも小さい方の奴等と比べれば強い自信はあるが、他の神話の有名どころと比べればかなり弱いはずだ。なにしろ元々竈の火の神だしな。今でこそ太陽だとか星の運行の一部だとかを司っていたりもするが、どれも本領ではない。慣れと技術でそれなりには出来るようになっているが、専門でやっている本職には届くかどうか。

 

 そう言う事で、分霊だけに任せて去るのもあれだと思ったからドルイド状態のクーフーリンも置いて行くことにした。かつてメディアにやったように、英霊記録に記録されたクーフーリンの影のようなものをあの形にしてからだ。槍と剣を主に使う戦車乗りで、投擲用の城を持っているとかもう意味が分からん。城は投げる物ではないはずなんだが、あいつ『知ったことか』と投げてきやがる。頭おかしいんじゃないか?

 あ、ケルトで頭おかしくない奴は居ないか。そうだな、すまんすまん。

 

「だから何であんたはケルトにそこまで辛辣なんですかねぇ」

「うるせぇ犬肉ぶつけんぞ」

「おいやめろ」

 

 だってケルトだから仕方がない。この身体を初めてぶっ壊す原因になったのがケルト出身だからな。仕方ないな。とりあえずケルトは逝っていい。

 まったくこれだからケルトは。

 

「風評被害が凄いんですけど!?」

「突然現れて『抱かせてくれ』って言ってくる奴と、それを見て『俺も混ぜて』って言葉が初めに出てくる奴らの集まりだろ? 言われても仕方ないと思うぞ?」

「畜生何も反論できねぇ」

「反論してもいいぞ。暴論でも肉体言語でもいい。やったら殺すが」

「できねぇじゃん!」

 

 死を覚悟すればできるぞ。可能か不可能かでもできないことは無い。ただし、実行に移すことができたとしてもそれを俺が素直に受け入れることはまず無いが。

 ちなみに、死を覚悟すればできる事ってのはただの人間でも相当ある。『パンはパンでも食べられないパンってなんだ?』と言うなぞなぞがあるが、色々と答えがある。フライパンだの腐ったパンだのパンダだのパンツだのと、それこそただのパンでなければ無数にだ。

 だが、実際の所フライパンはそれを構成する鉄分子がほんの僅かずつ炒め物などによって混じるし、腹を壊したるする覚悟があれば腐ってようがカビが生えていようが食べることはできる。パンツはあれ、ただの繊維だ。胃酸で解けるし食えないことは無い。俺は嫌だが。パンダだって、中国やら国際条約やらで守られていると言っても殺してその場で喰らいつけば食べることはできる。バレたら死ぬが。鉛弾によって自分の体重が三倍とか五倍とかになって死ぬが。

 ……いや、今なら行けるか。自然保護とか全くないし。

 

「……麻婆食いたくなった」

「はぁ? まー、なんだって?」

「麻婆」

「なんだそりゃ。食い物か?」

「美味いぞ。作り手の腕にもよるし、人の好みにもよるが」

 

 せっかくだし、作るか。うん。

 

 


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