俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、囁祈唱念

 

 クー・フーリンが麻婆の食べ過ぎで死んだ。途中から食べ過ぎで死ぬんじゃないかとは思っていたんだが、クー・フーリンは自分の体温で巨大な風呂桶いっぱいに張られた水を全部蒸発させた挙句に追加で水をかけてそれも蒸発させたって逸話の持ち主だから新陳代謝もかなり良いんだろうと思って気にしないで食わせ続けたんだが、それでもどうやら限界があったようだ。愚かなことだ。ここまで愚かなことはポセイドンでもやらなかったぞ。

 麻婆を食べ過ぎて限界が来ても食べ続けて体に入りきらなくなって内圧で弾け飛ぶとか、馬鹿だとかそんな言葉で済ませることができないレベルで馬鹿すぎる。こういう死に方はいったい何死とすればいいんだ? 弾け飛んでいるから爆死か? それとも使った物から考えて麻婆死? 原因は食べすぎだから(ショック)死というのもありかもしれん。

 

 ……カレーで殺したことは俺の知る限り一度もないが、麻婆で人は殺せるのか……確かにかなり辛めではあるが、ごく普通の麻婆なんだがな。なんでこうなった。

 いや、それはいい。あまり良くはないんだが、いい。とりあえずこいつの上半身と下半身、そして麻婆にまみれた腸を並べて、陣に置く。

 

「……なに、してんだ……?」

「お前身体が上下で真っ二つになってるんだから死んどけよなんで生きてんだお前」

「あんしん、しろ。すぐ死ぬ……」

「いや、死ぬな。死んでなければそっちのほうが楽だ」

 

 ささやき、いのり、えいしょう、ねんじれば死んだ人間でもある程度の確率で復活できるんだ。死んでないやつが相手ならささやき、いのり、えいしょう、ねんじればまず間違いなく復活することだろう。

 失敗したら? 灰になる。そして人理からも焼却される。まあ死んでいなければおそらく問題ないだろう。ちゃんとやれば成功率も上がるし。

 

「えーと詠唱文は何だったかな、あー、まあ、適当でいいか。カレー、マーボー、シチュー、ストロガノフ~」

「雑だなオイ!?」

「あまり叫ぶな、せっかく集めた腸が飛ぶだろう」

 

 せっかく治り始めているんだから、おとなしくしておけっての。

 ただ、これどうも完全に治りきるかどうか怪しいところだ。はっきり言うと完治は無理じゃないかとも思う。まともな人間だったら―――訂正しよう。きっと治るなこいつなら。あんまりにも阿呆すぎる死に方したから忘れていた。こいつまったくもってまともじゃなかった。なにしろこいつ、投薬とか一切なしでただ本気で切れただけで瞳が重瞳になる上に光彩ではなく瞳の色が変わるとかいう頭おかしい奴だし、しかも切れた後しっかり暴れまわってすっきりすると瞳の色も重瞳も元通りになるとかいう世界の様々な法則その他に喧嘩売っているとしか思えない体質だし。

 まあ、身体の吹き飛んだ部分と血がかなり足りていないから若干麻婆が混じるが、別にいいよなそのくらい。

 


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