俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、広める

 

 俺たちがこの世界に来て、様々な物が形を持った。町ができ、ウラノスによってギルドが出来上がり、ヘラとゼウスによってファミリアが作られ、洩矢神によってモンスターの生成と転生が上手くいっている。

 最低限の形を手にしたところで、俺は第二陣の募集を始めることにした。

 

 この時代、暇を持て余している神格はどこにでもいる。かつては神が行っていた裁判も基本的には人間によって執り行われるようになったし、今最も忙しい神格は恐らく農耕神と狩猟神くらいだろうな。太陽や月などを司る神格は基本的に存在しているだけでその仕事ができてしまうし、その他の星を司る神格も同じくだ。

 そんな訳で忙しくなくなってきた神格を中心に声をかけていくわけだが、基本的には俺、つまりヘスティアに近しい神話の神格から話をしていく。ギリシャ神話ではそれなりに有名だと胸を張って言える俺だが、世界中の神話に存在を知られていると言うほど有名ではないからな。

 まずはギリシャ神話の神格から声をかける。雨の神格、北風や西風の神格、山の神格、川の神格、海の神格、植物の神格……有名所から無名な奴までかなりの数に声をかけた。

 そして、ひたすら続く日常に飽き飽きしていた神格達は、俺の言葉にホイホイと乗ってくる奴ばかり。何しろ厳格公正で知られる正義の女神たるアストレアすらも割と乗り気になるくらいだからな。やはり不老不死の存在にとっての天敵とは退屈と倦怠なんだとよくわかる。

 

 だが、俺はそこにさらに爆弾なりなんなりを放り込むつもりでいる。具体的に言えば、悪性の神格を放り込むことで混沌を作り出そうと言う話だ。

 今はまだこの世界は黎明期。神と言う存在がもう少し世界に馴染むまでは神と言う存在を否定されては困る。絶対的な正義ではないにしろ、人間のように善性の神格と悪性の神格が存在すると言う事実は知らしめておかないとな。

 そうしなければこの世界に降りてきて基本的には何の力もない人間と同じような状態になった神が、多くの人間の手によって殺害されてしまう可能性もある。それに神と言うのは基本的にどいつもこいつも美しい。エルフが捕らえられて性奴隷とされるように、神すら捕らえられる可能性がある。

 ……まあその辺りは既に考えてあるのでそう問題は出ないだろう。神の力の大半を封じてあると言っても、ちょいと漏らすくらいなら大した罰がある訳では無い。特に自分の身を守るためとなれば、ほぼ全く無いと言ってもいい。そもそもこの世界は数多の神格が存在していることを前提として作り上げられた世界だ。実際は思いっきりぶっぱされても早々壊れないようにしたつもりではあるが……これから先にインドやシュメールが混じってくる可能性があるからな。流石にあのあたりのキチガイじみた神格に全力で暴れられたら世界を持たせる自信がない。ついでに俺が切れない自信もない。ガルーダ手懐けてぶち殺しに行かせてやろうと思う。

 と言っても、本当に世界がぶち壊されるようなことになったらの話だがな。流石に無いと思う……と言うより、あってもらっちゃ困る。この世界を作るのにどれだけ苦労したことやら……。

 


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