俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、動かす

 

 世界を回すには、完全な物質を作らないようにすることが重要だ。なんらかの形で全ては変質、あるいは弱点となるものを作らなければ遥かに面倒なことになるのは、これまで何度も作っては壊しを繰り返した事から得た経験則だが、完全物質を作ってしまうと最終的に全てが完全物質に収束してしまう。世界に完全物質が存在しなければそうはならないんだが、ほんの僅かにでも存在しているとなぜかそっちに寄っていってしまう。

 完全物質。何をもって完全とするかによって色々と種類があるが、まあここでは『あらゆる状況において変質しない物』を指すことにしよう。すると、残念なことに魔法の混じらない純粋科学では作れないものになってしまう。なにしろ魔力を大量に叩き込めばおよそあらゆる物が変化してしまうからだ。まあ、視点が足りないから変化したことにすら気づかない場合が多いんだがな。

 そして、そんな完全物質は何らかの形で作られてしまうとそれそのものを触媒として増えていってしまうことが多い。全く存在しなければ確率的には億どころか兆年単位で存在し続けてもできることはまず無いと言っていい。自分で作った世界の時間の流れを加速させるくらいなら割と簡単にできるからそれで確認した。まず間違いない。

 と言うか、世界を作るというのは権能を作るというのとそう変わらないことだというのを知った。それが権能と一緒に子供とか自分以外の神格まで作っていれば作られた権能は割り振られていくようなんだが、俺には子供もいなければ神格も自分で成り上がったやつ以外はいないから全部俺のものになってるんだよな。困ったもんだ。

 それに、完璧なんてのはつまらないものだ。どんなものであっても、完璧でないからこそ面白い。完璧ということは、逆に言えば全ての行動が完璧以外ではなくなるということだ。それは先読みがしやすくなるし、見ていて楽しいとは思えない。暇潰しのための世界がそんなつまらないもので侵されるのは俺としては喜ばしいことではない。

 

 そういうわけで、俺の作った世界には完全な存在というのは存在しない。異様に硬いものであったり、異常に硬くできる物はあったとしても、絶対に壊れないわけではないし永遠に変化しないものでもない。例えば、概念的に折れない武器を作ることはまあ可能ではあるだろうが、いくら折れなくとも切れ味は下がっていく。形が変化していないにもかかわらず切れ味が落ちていくのだ。物理的な現象ではありえないことだが、概念的な付加術を扱える者であればそれなりにできる者もいる方法だ。できるように作ったのだから当然だが。

 まあともかく、そういった把握しきるのも面倒なことが多いこの世界。人間のスペックでその全てを知ることなど基本的に不可能ともいえる圧倒的な情報量。そういったものから自身が必要としているものを的確に抜き出し、運用できる奴らを育てているわけだが……もしかしたら少々やりすぎたかもしれない。

 ……生きているし、問題ないな。うむ。

 


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