俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、運営する

 

 権能の欠片と残留思念から式神を作って、作った式神をその神格が元居た神話領域に返して今までやっていたのと変わりないように世界の運営をさせる。それを一体どれだけの数やってきただろうか。世界のことを考えると暴走させたり失敗することは許されるものではない。だからこそ暴走しそうになった時のために安全装置は必ずつけておいたし、元となった神格が求めればすぐに記憶と経験を含めて同化するように仕立てあげたんだが、かなりきつい。何がきついって本来やらなくてもいいことを口に出すだけで使命と取られてしまったり、そもそも本職じゃないのを使えるもので無理矢理ごまかして来た結果が今のこれだ。

 力はより強い力によって捻じ曲げられる。法則にも強弱があり、その全ては計算によって導き出すことができる。これは当然のことだし、そのことを利用して今現在の全てを理解することができれば何らかの形で未来の予測ができるのと同じこと。神の視点と思考があれば、その程度は実は容易い。それはかつてギンヌンガの淵より一滴の混沌が溢れ、混沌から大地と天空が別れるより以前から決まっていることだ。

 と言っても、流石に神同士でその思考を読むことはできないのでそのあたりから徐々にずれて行ったりはするんだが、それでも人間相手に限ればかなりの精度を誇るのが神としての在り方の一つだったりする。

 

 ……そして、式神と言っても欠片ほどではあるが権能を持っている以上は神格として扱われる。欠片ほどであるために大本の権能を持っている神が戻ってきたら吸収されてしまうんだが、吸収させない方法もなくはない。そして、仕事を代行させることができるその式神をおとなしく吸収するかと言われれば大概の神格は仕事なんぞやりたくないからできる限り押し付けようとすることは間違いない。

 だが、この式神は決して独立させてはいけないものだ。独立させてしまえば本体との繋がりから権能を吸い出して自在に振るうようになるだろうし、出力も地図の上から消し去るくらいの力は出せるようになっているのではっきり言って人界がやばい。そのくらいの出力が出せないと地上の管理やら調整やらに影響が出るから仕方ないんだが、それを説明してもやろうとする奴が多くて非常に困っている。今のように。

 というか、なんでこいつらは自分の権能が一部とはいえ他の奴に握られている状態でのんびりできるのかがよくわからん。あくまでも自身の権能のかけらから作られた分体だと思っているのかもしれないが、あまり長いこと使い続けていると意志を持ってしまう。そうなれば新しい神格のできあがりだ。そうなったら本当にどうするつもりなんだか。

 日本の神格だったらまだ救いようがある。なにしろ日本の神格と言えば『元々海の神だったけど山の神と統合されて海と山の神になったあと権能が分割されて元とは別の海の神と山の神が生まれ直してそこから海の神が潮風の神と水の神に、山の神が山間を流れる川の神と岩の神と谷の神と山彦に別れた後谷の神が谷風の神として山彦と合流し、潮風の神と合わさって風の神に、川の神と水の神が合わさって川の神になる』なんてことが当たり前のように罷り通る神話だからな。今更神格の百や二百増えたところで大した問題ではない。

 だが、そんなことが早々起こらないような神話ではどうなるか。ギリシャ神話だったらまあ問題は少ない。神と神の間に子が産まれて増えていくし、大概の神話ではそうなる。

 しかし、まずいのは一神教の神格や多神教の中でも眷属の多くない神だ。一神教で神が増えるのは言わずもがなまずいし、眷属の多くない神と言うのは眷属自体がそれなりに大きな役割を持っているものだ。それが本体のいない間に合流してしまえば、それはもはや別の神。吸収するのは難しくなってしまう。

 ……その場合は恐らくその眷属との間に作った子供と言う扱いになるんだろうが、そうなると信仰の合流やら分散やらが面倒臭すぎる。

 

 まあ、それでも俺はこの行動をやめはしないんだけどな。世界の運営ってのは、これがまたなかなか面白い。

 

 ああ、困ったもんだ。

 


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