俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の女神、見つかる

 

 ちょっと人には見せられない顔をしていたロキを叩き起こして飯を食わせていると、ふとロキが何かを思い出したように話しかけてきた。

 

「なーなーおチビ。なんかおもろいことやっとるらしいな?」

「俺としては面白いだろうとは思うが、誰もが面白いと思うかは話が別だぞ?」

「もー!とぼけとるん? なんやおもろそうなことやっとるて聞いたで?」

「その内容が『力を封じた状態で人界に降りて英雄を作ったりしながら人間のように暮らしていくゲーム』ってんならやってるがね。楽しいかどうかはそれぞれの感覚次第だからわからんぞ」

「ちなみにおチビは楽しんどる?」

「かなり苦労はしているが楽しんではいるぞ」

 

 神格の仕事を代行できる式を作るのはかなり面倒臭いからな。苦労はしているぞ。

 それにベルを使ってではあるが人間の中で過ごすことは割としてきたし、中々楽しめるだろうとも思っている。当然ながら神の身でありながら人間と同じところまで堕ちるのは嫌だとか言う奴もいるが、嫌なら参加しなければいいだけの話。参加しないなら俺には関係のないことだからな。

 楽しんでいる奴もいるし、一度作ってしまった世界でもあるし、まあ自動的に消滅するまでは面倒を見てやるつもりではある。本来作った方は、その世界生まれの神格に世話を任せているから俺が手を出すようなことはまずないだろうがな。

 

「それで、そう言いだしたってことはお前も参加したいってことでいいのか?」

「せや!そんな面白そうなこと見逃せんやろ?」

「それで苦労するのは俺なんだがな……まあ、かまわん。ただ、こっちでの仕事に使う権能の欠片は置いて行け。置いていかなかった場合、神話に席がなくなって忘れ去られて消滅しても責任はとらん」

「え、マジで?」

「流石に相当しっかり語られている存在なら早々忘れられるようなことは無いと思うが、祈りに対して何らかの形で応えなければ別の神格にとってかわられる可能性だってある。特に可能性が高いのは聖四字の奴だな。なんでもできるからどんな存在にでも成り代われるから隙を見つけられないように気をつけな」

「……それ、他の奴には?」

「言ってない」

「……マジで?」

「聞かれなかったからな。お前はそれなりに良い付き合いをしていると思っているからちょっとしたサービスだ。あっちの世界には俺の意識が乗り移った神造人間が店をやっているから、まあ贔屓してくれ」

 

 さて、これからロキの式神を作らにゃならんのか。ロキ……と言うか北欧神話系の神格にはこれと言った象徴がないから式神の核として置いていかせる権能やら増幅率やらに困るんだよな。ギリシャ神話系なら雷霆の神やら雲の神やら大地の神やら豊穣の神やらといった特定の権能があるが、北欧神話だと大体の神が大体同じ事ができるから困る。なにしろ大概の場合で出る差異が武器によるものだからな。トールはミョルニルがなければ雷を使えないらしいし、スルトもレーヴァティンがなければ世界を焼き払えない。権能を武器という形に収めているのかも知れないが、それだと武器を奪われたら権能が移動してしまうと思うんだが、そのあたりのことはどう考えているんだろうな?

 ……考えていなかったりするのか? まさかな。

 

「ところでおチビ。あっちでも豊胸マッサージとかはできるか?」

「人間相手なら簡単に。神格相手だと少々難しい。あっちの世界は残念なことに神の力があまりないからな。大本が俺という竈の神一柱だ。大したことはできんと思え」

「太陽神で暗黒神で氷河の神で星を幾つか司り実存と非実存の境界を踏み越えるギリシャ神話の裏番が言っても説得力がないで? 聞いたで? セファール相手に真正面からやりおうたんやろ?」

 

 俺がそんなことするわけがないだろう。ちょっと時間を圧縮して星が聖剣を作るまでの時間を作ってぶっ放させただけだ。星を一つの世界として、セファールが他の星から来た存在であることから世界の外と認識し、その状態で世界の時を数劫倍ほどに加速させる方法でな。

 ……星の寿命が若干削れたが、セファールは除けられたんだからまあよかっただろう。多分な。

 


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