人間の身体とは脆い物だ。一般的にだが、人間の身体の最も硬い物は歯であり、次点が骨だと言われる。
しかし、その最も硬いはずの歯ですらこの自然の中においては容易に折れるようなものでしかなく、また人の作る武器の中で歯を折ったり割ったりすることのできない物ははっきり言って非常に少ないと言わざるを得ない。
そんな中で、人間が自身の身体より硬い物を自身の身体のみで壊す技術が存在する。それこそが格闘技であり、技術である。
例えば、一人きりで美味い飯を楽しむことに定評のある男のアームロック。あれは人体の関節を痛めつける技であり、上手くやれば骨折、脱臼、捻挫などの損傷を与えることができる。人型相手ならば基本的に関節技は効果があるし、まともな人の形をしている相手ならばそう簡単に一度極まった関節技を外すことはできない。外れるときは極めた側が技を外すか極められた側が強引な力技で外すか、極まった関節が外れるかのどれかである。
ちなみに、有名なコブラツイストと言う技があるが、あれは外そうとすれば結構簡単に外せたりする。脚のフックを外してから腰投げと言うのが一般的な方法だが、プロレスならともかく普通の戦闘なら反則など無いのだから片手に持った武器を使って相手の肋骨と肋骨の隙間に刃を差し込んでやればいい。色々な意味ですぐ終わる。
まあ、そう言ったことができないような固め方として卍固めってのもあるんだが、その辺りはもう適当でいい適当で。面倒だし。
まあ何が言いたいのかと言えば、人間の身で神に対して痛みを与えようとするならば、その神格に匹敵するだけの神性あるいは霊格の保持、神格に通用するだけの武器、神格であろうがなんであろうが関係なく通用する技術のどれかを持っていなければならないと言う事であり、そのどれも俺は一応持っていると言う事だ。
……まあ、一応霊格についても人間でありながら神の一面も持っていると言う事で無いことは無い。純粋な神に比べれば低い物だし、と言うかそもそも霊格は低くなるようにわざと作ったのだから当然の話なんだがな。
「でもだからって一応中に神格が入っているのを理解した上で献上品を求めるってのはどうかと思うんだが?」
「がぁぁぁぁぁ!?」
「ん? なんとか言ってみたらどうなんだ?」
「な……なんとかぁぁぁ!」
違う、そうじゃない。なんで俺がツッコミに回らなくちゃいけないんだ。
まあ、なんとか言われたわけだし技を変えよう。アームロックから腕を持ち替え、パロスペシャルに移行する。同じ固め技だと結構簡単に外されてしまうことが多いからな。一番多いのは変えなくてもいいところで変えようとして外されることだが。
そしてパロスペシャルから腕を絡め、チキンウイングアームロックに。あまりパワーが無いからこういった関節技しかできないんだが、そこそこ効いているようで何よりだ。この身体は人間の物だからな。大事に使わないとすぐに駄目になる。再生機能は取り付けておいたが、それでも大切に使うべきだろう。
「このままお前の身体の筋と言う筋を伸ばしてどんなきつい体勢でも取れるような柔らかい関節と筋肉を作ってやる!」
「うわぁぁぁぁぁ!身体の筋がのびるぅぅぅぅ!痛いけどちょっと気持ちぃぃぃぃぃ!」
「あ、痛い? 加減しようか?」
「あ、いい感じに伸びてて痛気持ちい感じだからこれ以上伸ばそうとしないでくれれば」
「わかった。……ほぉ~らどんどん体の筋が伸びていくぞ!どんな気持ちだ!言ってみろ!」
「ひぎぃぃぃぃ!きもちいれしゅぅぅぅぅ!」
なんか色々やっていたら結構あれな感じに落ち着いた。ノリがいい神もいたもんだ。ポセイドンもこんな感じだが、まさか女神にこういう性格の奴がいたとはな。ヘファイストスやアフロディテはここまでノリ良くないし、結構楽しいかもしれん。
……男子高校生のノリだな。マジで。