俺は竈の女神様   作:真暇 日間

86 / 330
竈の巫女、繁盛する

 

 新装開店、ヘスティアカレー。場所はウルクのとある場所。ちょいと銀を作って家を建ててもらった後、そこでカレーを売り始める。

 材料はへす印の大釜からいくらでも湧いてくる。カレーを沸かせることもできるが、それでは暇潰しにならない。できるだけ自分の手で作ってこそいい暇潰しになる。

 

 まあもちろん、今のように阿保みたいに大入りで手が空かない時は例外だがな。

 

 始めたばかりの時は大した人数は入ってこなかった。一度入ってきた者も、カレーの色や見た目から敬遠していったが、とある一人が一口食べてからは凄まじい勢いで売れ始めた。

 ちなみにその一人、正確には一人ではなく一柱。その正体は、ウルクの守護神であるイナンナであった。

 

 今日もイナンナ、つまりイシュタルは朝一番に俺の店に並び、列を作る。最近は人間以外の神の客が増え、イシュタルだけではなく水神エアや都市神マルドゥク、天神アン、地神キ、数々の神が俺のカレーを求めて店に並ぶ。

 その神の威光に人間達は恐れを抱き、中々店に入ろうとしなかったものだが……神のために店を増築し、二階に神々のための席を作り、一階を人間達の席としてやることで神の客も人間の客も普通に俺の店でカレーを楽しむことができるようになっていた。

 まあ、恐らく最もカレーを楽しんでいるのはイシュタルだろう。イシュタルは自身の感情を隠そうともせず、はくはくとカレーを頬張っては幸せそうにその目を細める。まるで年頃の娘のようだ。これで食べている物がカレーではなくパフェなどの甘味であったら、間違いなく甘い物好きの女子大生にしか見えなかったことだろう。中々面白いことになっている。

 

 残念な事と言えば、メソポタミアの料理だ。まず、塩が不味い。岩塩があればそっちを使った方が良い。しかし、メソポタミアには海に面した場所がある。海から塩を取り、そしてそれはかなり安く売られている。塩に砂が混じった、はっきり言って使い物にならない塩だ。よくこんなもので料理をしようと思える。俺は無理。

 ちなみに、日本の塩と違ってにがりが取れていないため非常にえぐい。そして砂が混じり、はっきり言おう。不味いとかそう言うレベルの話ではない。論外だ。

 野菜については割といいものがそろっている。品種改良はされていないためまあ使いにくいとこともあるが、それでも十分食えるし扱える。中々だ。

 ギリシャよりも南にあるし、海に面しているから季節によっては十分な雨も降る。某円卓の騎士を率いる騎士王からすれば、何が何でも欲しい土地に見えるかもしれんな。

 そして肉。香辛料の使い方が荒く、保存食として見るならともかく普段使いにするには少しあれだと言う品質の物が多い。塩は岩塩か、前述したあれ。岩塩で作られたものは値段が高く、海水塩の物は食えたものじゃない。やはり、食事に関しての努力が足りないと言わざるを得ない。日本人としては発狂しそうな気分だ。

 

 と、言うことで多分それなり以上に儲かるだろうと思って始めてみたのが、俺の店であるヘスティアカレーウルク店。結果は上々。今では基礎のカレーだけではなく、三倍辛いカレーや五倍辛いカレー、辛さ控えめのミルクカレーなどなど、様々なカレーを取り扱っている。ほぼ毎日全てのカレーが売り切れ、毎日材料から作ることになっているので、まあ、思った以上の人気が出てしまった。

 今ではこのウルクで過ごす者達の中でカレーを食べたことが無いのはこの国の王であるルガルバンダくらいだろう。

 ルガルバンダと言えば、ギルガメシュの先代の王であると言われている。ギルガメシュ自身はニンリルとリルの息子であり、ルガルバンダの息子ではないとされている文献もあるそうだが……詳しくは知らん。神がいるのだからニンリルが母親である可能性は十分あるが、風魔リルが父親なのか、それともルガルバンダが父親なのか……大穴でニンリルは力を貸しただけでリルとルガルバンダが神として子供を作ったと言う可能性もある。無いと思うが、可能性としては皆無ではない。

 どうなっているのか、楽しみであり恐ろしくもある。未来の事だし、実際に見てみるとしようか。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。