比企谷八幡のボーダー活動   作:アラベスク

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八幡、ボーダーへ①

大規模侵攻から数週間、漸く三門市に平穏が訪れ復旧が急ピッチで行われていた。それと同時に大規模侵攻で姿を公にさらした界境防衛機関、通称ボーダーが本格的な活動を始めだす。メディアを通し、一連で起きた事件の真相を露にしたボーダーは三門市に本部を立ち上げることにし、ここを最終防衛地点と定め、三門市の治安、近界からの侵略者達から危険から守ると約束した。

 

 

そうした中、傷を癒した八幡は今日退院を迎える。

 

「もう大丈夫なのね」

 

「ずっと寝ていたから体が鈍ってしかたないけど、そうも言ってられないからな」

 

「本当になるのね?」

 

「あぁ、小町のためだ。けっ決して親父のタメじゃないんだからね」

 

「はいはい捻デレ乙」

 

茶化されて赤くなる八幡を母は久しぶりに笑ったように思えた。

 

 

大規模侵攻で人生が変わった。あの日、八幡に降りかかった恐怖により八幡の目に光が消えた。元々目付きが鋭かったが、まだ無垢だった八幡の目は酷く濁ってしまった。

 

それから八幡が目覚めて知った事実だが、まず母親から八幡に内緒にしていたことを明かされた。

 

 

 

父と母があの大規模侵攻からの侵略者を撃退した組織の一員であることだ。普段から家を空けがちで両親が何の職についているか知らず、妹の小町を一人面倒を見てきた八幡にとってそれは衝撃的だった。

 

それと同時に心に怒りと悲しみが沸き上がった。怒りは子供蔑ろにされていたと思っていたことと、あの日父にトリオン兵から自らを身代わりにし、身を呈して守られた事に本当は家族のことを心から心配していたことを知り、今まで燻っていた怒りは何だったのだろうと言うものだった。母は誰よりも家族を愛している、父もそうだよと言われ嬉しさと寂しさから八幡は大いに泣いた。泣いて泣いて、泣きつかれてからふと八幡は気づく。

 

 

病室には母の他に忍田と迅も居たことを。

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁあ!?」モギャー

 

八幡はあまりの恥ずかしさにベッドに顔を埋めて足をじたばたさせる。悶える八幡を見て笑う母と、何と声をかけるか悩む二人。

 

「あぁ、あれだ少年。ドンマイ?」

 

迅のフォローは何のフォローにもならなかった。もういっそ殺してほしいくらい、悶え苦しんだ。

 

 

「何気にすることはない。聞けばまだ小学生だと言うじゃないか。親に甘えたい年頃なんだろう」

 

更に忍田の追い討ちが八幡に襲いかかり、止めを刺された八幡はピクリとも動かなくなった。

 

「普段は大人びた子ですけどまだまだ尻の青い坊主ですよ。まぁ母さん達が全然かまってあげられなかったからその反動でしょう」

 

 

 

こうして、八幡の黒歴史に新たな1ページが刻まれる。後にこの事は八幡のイジリネタにされ八幡は迅に頭が上がらない事となった。

 

 

 

-閑話休題-

 

 

 

さて、話を戻す。

 

 

 

大規模侵攻で比企谷家に降りかかった不幸はまだあった。父親である七曜(シチヨウ)の右腕切断による身体の欠損によりボーダー隊員の生命を断たれたこと、さらに八幡の妹の小町は今だ目を覚まさないままだった。

 

 

「そうか、もう戦えないのか」

 

利き腕を失ったが、瀕死の重症からの生還に七曜は安堵したとともに右腕の無い喪失感に心が沈んでいた。

 

「命あっての物種って言えば聞こえはいいがな。まぁ家族を守れたなら本望だよ。だが、まだ諦めた訳じゃねぇ」

 

しかし、直ぐ様心を切り替え今後ボーダーが組織として大きくなるのを見据え、戦闘員教官として後進の育成に従事していく決意を固めた。

 

「八幡、お前ボーダーに入る気あるか?」

 

病室に訪れ無事を知らせての第一声がそれだった。

 

「何言ってんだ親父?腕無くなって乱心しやがったか?」

 

「阿呆真面目な話だ。お前あの時とっさに俺のトリガー起動してトリオン兵を倒したそうじゃないか」

 

「あれは、なんつーかアレがアレでアレだったんだよ」

 

八幡の言葉は支離滅裂だったが、七曜には何が言いたかったかわかった。あの時はもう無我夢中で何をしたのかもわからなかったのだろうと。だが、あの時トリガーを起動できたと言うことは八幡のトリオン能力はボーダーとして相応しいものなのだろう。ましてや、七曜専用にカスタマイズしたトリガーをだ。臨時接続にはリスクが伴うし、適合するかは運だった。

 

「まぁお前がどうするかはお前が決めることだから強制はしない。ただ、俺はこんなんになっちまって戦えなくなった。母さんもボーダー隊員だが戦闘員ではない。ましてや小町が今だ目を覚まさないしな。誰かが家族を守らなきゃならねぇ。今後また奴等が攻めてこないとも限らない」

 

そう、大規模侵攻後もゲートが開き近界民の侵攻は顕著であるが、それでも無くなったわけではなかった。

 

「親父は、俺に期待してるのか?」

 

「客観的にはな。主観としては息子を戦場に送り出したくない思いもある」

 

「矛盾してるじゃねーか」

 

「悩んだけど、お前ならやってくれると思って打診した」

 

「わかったよ」

 

「本当か?」

 

「言っておくが親父にお願いされたからじゃねーからな!小町の為に、あいつを守るためだからな!!」

 

「ふっ素直じゃないな」

 

「うっせぇ」

 

 

 

素直じゃないのはお互い様だろ?

 

 

 

 




こうして、八幡はボーダーへ入ることを決意。

あといつまでも呼称が父、母ではと思い名前をつけることにしました。

父→比企谷七曜(ヒキガヤシチヨウ)

母→比企谷元町(ヒキガヤモトマチ)

次はいよいよ八幡ボーダー入隊します。

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