新人神喰いさんが適合試験失敗で逆にアラガミに食べられたお話。   作:白兎-臨音

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隊長と二人で実地訓練をしていた所、唐突に乱入してきた新種の大型アラガミ。
圧倒的な数の暴力を前にした、ジュリウスの選択とは。
そして、覚醒するテルの力とは____

ってな設定でやってます。
因みにテル君は赤目黒髪の右腕アラガミ化少年です。



第4話、アクシデント、或いは覚醒の兆し

 目の前には3体の大型アラガミ。

 背後にも数体存在するのだが、まだ距離がある。それ以前に、全てを対処しようなど不可能だ。俺は、俺に出来ることを、一つ一つ片付ける。

 そう脳内で処理した俺は、真正面の1体へと肉薄する。

 凶々しい色の硬質的な表皮に覆われた前傾姿勢の人型アラガミは、俺の接近に対して一歩引くように飛び退り、その前脚を地に付け、四脚となる。

 ____サルか?

 俺はかつて絶滅した人型の動物の名前を思い浮かべながら、そのアラガミの行動に心中で首を傾げる。

 何故、四脚に?

 そんな疑問と同時に嫌な予感を覚えた俺は、直感的に真横へと飛ぶ。

 刹那、俺がいた筈の場所が突進してきた4足歩行のアラガミの爪による攻撃に曝されていた。

 ____恐らく、奴が4足の形態を取るのは攻撃への溜め。

 ____それさえなんとかすれば、倒せるか。

 希望の光が見えたという錯覚と共に、俺は突進し突き抜けていった4足へと振り返りざまに攻撃を叩き込む。

「____クソッ」

 硬い。見てみれば、その4足歩行の怪物は驚異的な挙動で腕を振り、硬化した右腕で俺の斬撃を受け止めていた。

 次の瞬間、俺へと豪速で放たれた怪物の拳。咄嗟に盾を広げるが、攻撃が重過ぎて背後へと吹き飛ばされる。

 飛ばされた俺に、背後で待機していたとしか思えない2体が両側から拳を放ってくる。

 ____間に合わない……ッ!!

 片側を防御した瞬間、もう片側にミンチにされる。俺は本能でそう感じ取った。

 隊長は二桁以上の化け物を相手に耐えているというのに、俺はたかが3体に殺されるのか? 初めての実地訓練で、今、ここで?

 ____嫌だ。死にたくない。

 心の底から本能が叫ぶ。

 ____死にたくない? そうじゃないだろう。

 それとは全く違う質の、俺の中に巣食う何かが本能を叫ぶ。

 ____喰ラエ、骨ノ髄マデ。喰ライ尽クセ。

 俺のアラガミ化した右手が、本来腕輪のあるべき部位が、ガントレット越しにでさえ紫に輝いているのが本能的に理解できた。

 それと同時に、脳内へと駆け巡る高揚感。喰らうという本能、衝動。俺は生きる為に、その衝動に身を任せた。

 左右から迫り来る2本の腕。俺は背後へと飛ぶ。そして、迫り来る腕の片方を、神機を使い叩き上げた。

 刹那に交差する2本の腕は、彼の動きによりお互いを貫いた。

 彼は笑う。嗤う。その瞳を真紅に輝かせて、この状況で尚、楽し気に嗤う。

 そして彼は流れるような動作で神機を左手に持ち替え、その身を駆け巡る本能と衝動に任せて捕食形態の黒い顎門を開き、お互いを貫き合う大型アラガミ2体纏めて嚙み砕く。何度も、何度も噛み、そして咀嚼し、砕いていく。

「不味い肉だな……」

 そんな台詞を吐き捨てると同時、彼は振り返る。背後に迫っていたのは噛み砕かれた2体と同型の大型アラガミ。彼は退屈そうに、神機を振るう。無論、噛み付かれている2体のアラガミはそのままに。

 迫っていた1体に同型の2体が触れた瞬間に、彼は、或いは彼の神機は口を離す。

 そのまま3体は縺れ合いながら飛んで行き、壁に当たり、沈黙する。

 残るのは数十体。

 なぜだろう、隊長は数を相手にするのが慣れているかのような手付きで、新種のアラガミをどんどん処理している。3体にこれほど時間を掛けた自分とは大違いだ。

 彼は知らない。ジュリウスと言う名の人間が、長い間螺旋の木の内部で終末捕食を食い止める為に、眠る暇もなく戦い続けてきた事を。そしてその圧倒的な経験は、他の追随を許さないレベルでジュリウスを強者たらしめるという事を。

 彼は知らない。ジュリウスと言う名の人間が、大切な人達を、仲間を守るという強い意志を糧に戦っているという事を。そしてその「仲間」には、自分も既に含まれているのだという事を。

 彼はその真相を知らないが故に、その姿をただ眺めることしかできなかった。

「隊長〜、テルく〜ん、助けに来たよ〜」

 隊長の華麗としか言いようのない戦闘を眺めていた俺の耳に、唐突にその言葉が響く。ヘリコプターのプロペラが空気を切り裂く音と共に、だ。

 そのヘリが俺の上空で停止し、一人の人を投げ落とす。黒地の刃にオレンジのアクセントが特徴的な神機を背負った人影は、俺の横に見事に着地して言う。

「よっ、テル。無茶するなよ……って、言っても無駄か。まぁ、無事で良かったよ」

 戦域だというのに俺の肩をバンバンと叩きながら言ってくるのは、紛れもなくロミオ先輩だった。

「じゃあ、仕方ないからやろうかな。ジュリウスー、いくぜ?」

「ああ、頼む」

 短く言葉を交わす二人。

 刹那、ロミオ先輩から赤い波動が放出される。

 身体から、そして神機、右腕から、力が抜けていくような感覚と共に、その波動は駆け巡る。

「血の力っていう、言ってみれば必殺技みたいなモンだよ」

 ロミオ先輩が俺を見て得意気に言ってくる。

 確かに、これは必殺技かもしれない。その波動に触れたアラガミ達は、瞬く間にその場から離れ、あるいは倒れ、朽ち果てていく。

 自分の腕も静かになった事を考えると、アンチアラガミ細胞的な何かなのだろうか。

 近からず遠からずな憶測を脳裏に巡らせつつ、わざわざ自分達の為に駆け付けてくれた仲間達を見る。そして彼はロミオに、ブラッドの仲間達に頭を下げて、言う。

「迷惑掛けて、心配させて、すいませんでした」

 ロミオだけではなく、その場に来てくれたブラッドの仲間達。或いは、支部に残ってこちらの生還を祈り待っているヒバリさんや、フランさんに向けて。

「俺がまだ未熟なせいで、こんな事になっちゃって……ほんと、すいません」

 そう続ける俺に、ロミオ先輩が優しく言う。

「いやいや、これはアクシデントなんだから、さ? そんなに落ち込むなって。それに俺遠くから見てたけど、入隊したばっかであのデカイのを3体同時に相手取るのは十分凄かったと思うぜ?」

「ああ、そうだな。認めたくはないが、今回ばかりはロミオの言う通りだ」

「なんだよっ、今回ばかりとか。俺はいつも正しいってのー! 毎回認めろよー!」

 続けて言ったギルさんの言葉から、二人はまたじゃれ合うように叫び合う。

 ____本当に、あの二人は仲が良いんだなあ。

 そう思っていた俺に、例のスク水さん……じゃなくてリヴィさんが話し掛けてくる。

「心配、した……今度からは、君の任務には私が付いていくことにする」

「え、あ……あぁ、じゃあ、お願いします」

 唐突にそう言われ、俺は少し考えてから、脳裏に過ぎった師匠の「太腿は、良いよな」という言葉によってお願いする事にした。否、してしまったという方が正しかった。

 ____ラブコメなら、ここから色々なイベントを経てゴールイン、か。

 などと考えていた俺に、ギルさんとの口喧嘩を終えたのかロミオ先輩が言ってくる。

 

「じゃ、帰るか。アナグラに」




※リヴィさんは恋愛的な感情ではなく心配性で世話焼きなお姉さん故の純粋な心配や諸々で言っています、イベントはもっと好感度が上がってからです。

ということで、第4話です。
今回出てきた新型アラガミなのですが、個人的な設定としては以下の通りです。
面倒な方は読み飛ばしてくれて構いません。

「バアル」
極東で発見された新種のアラガミ。
前傾姿勢の人型という事でコンゴウと混同されがちだが、コンゴウの2倍ほどの巨軀と細い肢体が特徴的。細長い手足と同じく胴体、また背中には大きな突起が存在している。
その軽さ故に圧倒的に速く、また任意で硬化する腕部の表皮、背部の部位破壊により開くという特殊な方式を取っているけどコンゴウ系統ではお馴染みの砲塔など、単体でさえその討伐は難しい。
また派生元とされているコンゴウに似て群れを作る習性があり、表向きにはアラガミに知性はないとされているが実際に相対した神機使い達が揃って「奴らは考えて動いている」と答える程に戦略的な戦闘を行うとされる。
またそうした特性故に単体で見掛けられる事はまず無く、群れで動く際のバアルは非常に強力な為、複数体で存在する場合のバアルのみ一般の神機使いは交戦を禁止される、変則的な接触禁忌種扱いを受けている。
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