凡人の異世界転送録〜神様に嵌められ異世界入り〜 作:夜明けの月
後悔してないです。では、本編をどうぞ〜。
※おそらく亀更新になります。ご了承を。
目の前に広がる中世ヨーロッパ風の風景。行き交う獣耳やら尖った耳やらの異種族達。
それを、俺はその光景に目を疑う。
疲れでとうとう頭がイカれたのか?それとも過労からくる幻覚か?いや、それにしてもーーー
「どういうことじゃこりゃぁぁぁあああああ!!?」
そう、叫び声を上げずにはいられなかった。
♤
俺こと
「ふわぁ〜ぁ。ったく、演劇の練習だからって普通木刀で素振りやらすかっての。おかげで肩が痛いじゃねぇか」
左手でおにぎりを持ち、食べながら空いた右腕を回す。
俺は演劇部なるものに所属しており、なんとも過酷な練習の日々を送っているのだ。興味本位で入ってみたのはいいけど、舞台に出ることなく裏方ばっかやってるけど。
そういう俺は現在高校二年だ。花の高校生ということはあるだろう。人生の中の学園生活で一番花があるとも言える。だが、それになった結果はーーー
「なんか、つまんねぇ………」
そう零すのも無理はない。なんの変哲もない、全くもって平凡な生活なのだから。
なんの刺激もない、新しく楽しいと思えることすら、もうほとんどない。
俺は溜息を吐き、自然と止まっていた足を動かせて家へと向かう。見慣れた景色、夕暮れのオレンジ色に染まる建物、それら全てが何故か色褪せて見えてしまう。見慣れたからか?と疑問に思うが、まぁそこまで問題はないので気にしないことにする。
だがーーーーー
「…………なんかおかしくね?」
周囲の色褪せ方がおかしかった。まるで色を失っていくかのように色褪せていき、最後には黒と白とのコントラスト、昔風に言うと白黒写真みたいな景色が広がっていた。
そこまでは良かった。最悪、とうとう俺の目が悲鳴を上げて病気にでもかかったのか、と自己完結して『周囲が色を失う』という事態から目を背けられた。だが、そうではなかった。
確実に、かつ見逃せない点が一つあったのだ。
それはーーーー
「全て……止まってやがるだと……」
空を飛ぶ鳥も、街を行き交う人々も、正しく時を刻むはずの時計やら電子掲示板やらもことごとくが止まっていた。
なのに動ける俺。なんだなんだなんですかぁ?俺が突然厨二病チックな能力でも覚醒したんですかぁ?
…………ある訳ねぇか。
「そりゃそうだよ。君はただの人間だからねぇ〜」
灰色と化した世界で、俺の前に一人の白の袖なしワンピースを着たロリっ子が現れる。
見知らぬ奴に言われたかねぇが、まあただの人間ってところは合ってるし。
「そりゃそうだよなぁ。俺ただの人間だし。てか将来社畜になることを約束されてるド平民だし」
「将来社畜って……夢ないなぁ。勇者になりたい!とかないの?」
「いやいや、こんな歳にもなったら夢なんて見ませんって。夢見てる方がおかしいーーーーってテメェは誰だよ!」
しれって会話してたけど、こいつ誰だ!?てか周囲止まってんのにどうしてこいつ動けてやがる!?というより最初に『見知らぬ奴に言われたかねぇが』って思ってんじゃんバカか俺は!
「自分で会話に乗っといていきなり切るのは感心しないなぁ〜」
「テメェが乗せてきたんだろうが!てか誰だよ
嘘です。完全に俺が乗りました。見知らぬ人って一度思ってながら会話しました。
と、心の中で暴露?しつつ、ロリっ子の返答を待ってみる。
ロリっ子は何故か不機嫌そうな目で俺を睨んでいるようにも見えるが、ここはあえて見ているというふうに捉えておこう。ロリに睨まれるとか、新たな性癖が………いや何でもありません忘れてください。
「何か不名誉なことを言われたんだけど、まあ気にしないことにするよ。僕は心が大きいからね」
「体諸々小さいのに?」
「殴るよ?主に金属バットで」
おっと、どうやら小さいことは地雷だったようです奥さんめっさ怒ってます。地味に現実的な殺人に使われやすい道具出してくるあたりがもう激おこ感を出している。
「全く、崇高なるこの僕に何てこと言うのさ」
「ロリっ子。あと追加してイタい子というのも付け足そうか?」
「それ付け足したら金属じゃなくて釘打ちつけた木のバットで殴るからね」
それ木製のバットではなくて釘バットというのでは?と思ったが、口にすると釘バットが何に昇格するか怖かったので思いとどまる。
「話が逸れたじゃないか」
「俺、悪くない」
「君が主に悪いと思うんだけど……、まあいいや。それじゃあ自己紹介。僕はフレイヤって言いうんだ」
……フレイヤとは、あのフレイヤだろうか?
後世にも名を残す神々のうちの一柱で、あの愛の神とも謳われているあのフレイヤだろうか。ゲームなんかでもよく出て、スタイルのいい妹的な感じの絵柄になっているあの?
「…………フッ」
「今君鼻で笑った?」
「いや別に。ただ、ちょっとイメージと違いすぎるほどに幼すぎだろと思っただけですよ?いやマジで」
なんかこう……一瞬二次元の方がいいんじゃと思いかけたが何とか思いとどまり目の前の現実を直視する。
そう、残念ボディのロリキャラ、自称フレイヤに。
「話進まないからとりあえず黙ってくれないかな。てか、そろそろ僕も堪忍袋の尾がプッチンしちゃうよ?」
おおっと、なかなか使わない言葉聞きましたがプッチンされたら俺多分スクラップもとい挽肉にされそうだからそろそろ黙ることにしよう。
「はぁ……やっと話が進められるよ。ゴホン、では僕の自己紹介は終わってるし、どうしてここにいるのかは絶対に気になるよね」
何か自慢げな顔で説明始めたが、何故そんな普通の質問してくるのかと思ったがツッコミはしないでおこう。でも、確かに気になるところはある。どうして俺なんかの前に現れたのか。目的は何かとか。
「あ、ちなみに僕神様だから君の考えてることだだ漏れだからね?」
…………マジっすか。
「うんうんマジマジ。さてと、話戻すよ」
さらっとスルーされたが、これはお咎めなしということだろうか。もしそれならば結構ありがたいと
「そんなわけないじゃん。あとで何かしらしてもらうよ」
デスヨネー。
「僕は君にある選択をさせるためにここに来たんだ」
「選択?何の?」
「簡単なことさ。
「……どういうことだ?」
「言ったまんまだよ。さて、どうする?」
いや、どうするって言われても……。そもそも変化って何だよ。説明不足すぎるにも程があんだろ。
目の前のフレイヤを睨むが、笑顔でこっちを見ているだけ。思ってることわかってるくせにそういう行動とるってことは、これ以上は言う気はないってことか?
……仕方ねぇ、目の前のロリは放っておいて考えることにしよう。
目の前の
つまりはこういうことだろう。現状の生活に満足していない俺に見かねて、偉い神様が何とかしてやろうというそんなご意向を…………な訳ねぇか。そんな優遇をしてくれるわけがない。するならもっと早くに来てるはずだ。
だが、現在の普通の生活を変えてくれるっていうのは間違ってはないだろう。願ってもみないことだが、嬉しいことだ。
だが、簡単に今を捨てていいのだろうか?
今を捨てれば簡単にはいや、二度と今の生活は戻ってこないだろう。この平凡でつまらない生活が。
そうとまで思っていると不思議と今の生活に愛着が湧いてくる。あれだ、何となく長く使い続けていると愛着が湧くっていう感覚と同じだ。
それに、変に変化を求めれば面倒なことになりかねん。新たな生活ボッチでスタート!とか。絶対嫌だなそれ。
ということで答えは出た。
「このままでいい」
俺がそういうとロリはくすくすと楽しそうに笑う。笑う姿が可愛いが、こいつ中身は数百歳とかだろう。さすがに俺はそんな奴に頬赤らめたりするロリコンではない。
「頭の中の声だだ漏れって言ったはずなのに懲りないねぇ君は。でもさ、ホントにいいの?
「ああ。構わねぇよ」
「ふふっ、あとで後悔しても知らないよ?」
そう言って笑いながらフレイヤは俺に背を向け歩き出す。それはもう心底楽しそうに。
「それじゃあ君に最後に言っておこう。これは祈りの言葉なんだけどね。………"貴方に神のご加護がありますように"。じゃ、頑張ってね〜」
手をひらひらと振ってフレイヤは遠ざかっていく。そして、一度瞬きした瞬間に消え去った。
何が起きたかわからなかったが、まあ気にすることもないだろう。これでこんな奇怪なことともおさらばできるのだから。
ーーーと、そう思っている時期が俺にもありました。
「あ………?」
フレイヤが消えたのを確認した次の瞬間、周囲が灰色というより黒色になり始めた。ドス黒い真っ黒に。
それは周囲を包みこみ、そして俺以外何も無くなった。
と思った矢先、目の前に小さな光が現れる。何となく手を伸ばして触れると、その光は瞬く間に視界を潰すほどに強くなる。思わず目を瞑り、光から目をそらす。
そして、目を開けるとそこはーーー、
「………は?」
そこには、学校で習った中世ヨーロッパ風の街並み。そして行き交う獣耳を頭上に生やしたり、長い尖った耳をした異種族と思われる人達。
………え、どゆこと?
頭の中が真っ白になり、パニックに陥る。何が起きている、どういうことだと様々な疑問が瞬時に浮かび上がる。
だが、俺はこんな状況でも一言だけ口にできた。
「どういうことじゃこりゃぁぁぁああああ!!?」
その叫びだけだった。
こうして俺は、ありきたりな"普通な生活"を送るのではなく、突然"異世界"へと転移されるという何ともラノベチックなことを体験するのであった。