The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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捏造妄想フルスロットル。
分かり辛かったら申し訳ない。


32,ぷにっと萌えの○○講座-序章-

「いったい全体、これは何事なんですかねぇ?」

 

目の前の惨状を見る限り、そう言わざるを得ないぷにっと萌えはやっぱりそう言ってしまった。何で守護者はついてきてくれないんだ、そんな思いも多々ある。あ、いや、しかし、アルベドの目が怖かったからやっぱり着いてきてくれなくても良かったかも、とも思っているが。

 

 さて、声をかけて一番最初に機敏にも反応したのは、以外にもリュウマであった。空に向けていた顔を音が出る勢いで下ろし、目を見開き目を見開く。もう一度高速で天を見上げ、隣に立つペロロンチーノの肩をバンバンと叩いて見せる。

 

「ペロ、俺は衝撃のあまり幻覚を見ているらしい……」

「それは末期だな……吸血鬼の花嫁を貸そう」

「それならペストーニャに頼むよ、俺は」

「男の触手プレイとか、誰が喜ぶんですかねぇ?」

「あんちゃんとか?」

「……有り得る」

「君たち、現実逃避をするんじゃないよ」

 

 目の前で昔のように下らない話をしつつある二人にそんな突っ込みを入れつつ、ぷにっと萌えはゆっくりと全員を見回す。座り込んでいたやまいこ、それにもたれ掛かっていたぶくぶく茶釜がこちらを見ていた。仰向けに倒れていたモモンガが口を開けてこちらを見ているし、頭を抱えていたたっち·みーもこちらを見ている。しかしながら、

 

(やっぱ、表情が分からない面子ばっかりだねぇ。ペロ君とリュウマ君がどれだけ分かりやすいか……まぁ何となく雰囲気で察することができるけども)

 

 全員が驚愕しているのが見てとれた。あ、もとい一人を除いてだが。

 リュウマに促されて顔を下ろしたペロロンチーノが、体をビクッと震わせ、次の瞬間には両腕を広げてこっちに歩み寄ってきた。

 

「うっわぁ……ぷにさんじゃん!いつこっちに来てたの?あ、今ね、たっちさんをあっちへ送り返そうとして失敗したところ。何で失敗したのか分からないんだけどさぁ、ぷにさん、何時ものようにその無敵の頭脳でずばっと解決しちゃってよ」

 

 スゴい鳥顔でも分かるほどの笑顔でサムズアップ。

 

「あぁ、うん。まぁ、色々聞いてからね?」

「頼むよぷにさん。あ!姉ちゃん、ぷにさんだよ戻ってきてるぜ!ほらほら、モモンガさんも!やまいこさん、どったん?俺の顔になんかついてる?」

「愚弟……今回ばかりは誉めてつかわす。だからちょっと黙れ」

「イエス、イエスマムイエス!」

 

 ペロロンチーノの狙ったんだか狙ってないんだか分からないファインプレーのお陰で、どこか如何ともしがたい空気は雲散霧消。ついでに再会の感動的な空気とかも雲散霧消したは、比率的には前者の方が重かったから問題はないだろう。

 モモンガは体についた草いきれ等を払い除けつつ立ち上がり、近くまで歩み寄ってきていたぷにっと萌えに右手を差し出した。

 

「お帰りなさい、ぷにっと萌えさん。待ってましたよ」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「……つまるところ、失敗したと言うわけですか?」

 

 草原の真ん中、白いテーブルを囲むギルメン一同。それぞれの背後に守護者達がつき、今回の作戦に付き従ったプレアデスがその脇につくと言う形で深夜のお茶会と言う雰囲気で話は進んでいた。

 あの後、すぐさま守護者一同が駆けつけ、あれよあれよと言う間にテーブルセッティングが終了、パンドラズ·アクターの茶器セットが持ち込まれ今現在の状況である。テーブルセッティングが行われている間に大体の事情の説明は終わっており、席につくなりぷにっと萌えが発した言葉がそれであった。

 

「ええまぁ、そう言うわけですね……」

「ついでに言うなら原因は不明、と言ったところだね」

 

 モモンガの言葉をついでやまいこがそう言うと、申し訳なさそうにたっち·みーが項垂れる。何かを吟味するようにぷにっと萌えが首を捻るなか、デミウルゴスが意見を具申する。

 

「モモンガ様、差し出がましいようですが、たっち·みー様の刑の執行は如何なさいますか?」

「う、うむぅ……」

 

 追放処分にするなんて言わなければよかった、等と心の中で愚痴っては見たものの、あの時は色々とあれがベターな選択だったんだよなぁ、と思わなくもない。だがしかし、デミウルゴスの言いたいことも分からないでもない。だからお願いだからセバス、デミウルゴスを睨まないで。ついでにデミウルゴスも挑発するように笑わないでくれない?胃に穴が空きそうだよ。今は特に人間体だし。

 そんな今にも胃に穴が開きそうな支配者さまの前で、ぷにっと萌えが片手をあげデミウルゴスの方に目を向ける。

 

「まぁまぁ、ちょっといいかなデミウルゴス君」

「ぷにっと萌え様?如何なさいました?」

「たっち·みー君の刑についてだが、一旦保留と言う形にしようと思うんだけど……デミウルゴス君、それにアルベド君、それからモモンガ君、どう思うね?」

 

 話を振られ、顔を見合わせるアルベドとモモンガ。そんな中、デミウルゴスは眼鏡を光らせぷにっと萌えに詰めよって行く。

 

「何故、保留しようと言う考えに至ったのかお聞きしても?罪には罰、手柄には褒美、信賞必罰は世の常では?」

「あぁ、そうだとも、そうだともデミウルゴス君。故に僕はあえて保留にしよう、そう言っているのだけど?」

「分かりかねます。今回の罪に対しての罰は追放なのではないですか?それを遅らせようとはどういう意味で?」

「おやおや、デミウルゴス君はまさかそれが罰だと思っているのかな?僕の事を試すのはよそうよ。君だって分かってるのだろう?結局追放なんてのは方便で、それは罰にすらなっていない、と」

「ええ、まさにそれです。少なくともそれは罰ではありません。それはたっち·みー様に対する褒美以外の何物でもない」

「そうそう。まさにその通りだね。故に、保留とする。保留期間中は常通りに振る舞ってもらいいざ追放の算段がついた時点で追放、と。まぁ、そんな感じでどうかな?」

「……なんか、俺がディスられてるような気分なんですけど……」

「「いやいや、そんなまさか」」

 

 なぜ出会ったばかりでそんなに意気投合してるのか……ぷにっとさんとウルベルトさん、そこまで仲がいい印象ないんだけど。とは言え、モモンガは考える。つまるところ、保留期間を刑にしようと言う逆転の発想だ。刑そのものが罰にならずに褒美になるのならばそれをお預けし続けることでそれを刑にしようと、ぷにっと萌え、そしてデミウルゴスは言ってくれているのだろう。

 不安を感じ、モモンガは側に控えているアルベドの顔を見た。アルベドは、承知しているとでも言うように、笑顔で肯定してくれた。その場にいる全ての者を見回せば、全員揃って力強い頷き。最後に、たっち·みーもまた、深く頷いてくれた。

 

「では、ぷにっと萌え、そしてデミウルゴスの意見を取り入れ、たっち·みーは追放の方法が確定するまでの間、これまで通り、至高の42人として活動を……」

「あ、モモンガさん、それなんですけど」

 

 モモンガの言葉を遮ったのは、たっち·みーだった。どうぞと先を促すと、一つ咳払いして続ける。

 

「私は、皆が許してくれたとは言え罪を犯しました。その様な者が至高等と崇められるのは如何でしょうか?そこで、私の立ち位置を一段、もしくは二段ほど下げては如何でしょう?」

「てぇことは、あれか?守護者各位と同じとして扱えってことか?」

 

 リュウマの言葉に頷き一つで答え、たっち·みーはモモンガを見る。見られたモモンガは困ったようにぷにっと萌えを見る。見られたぷにっと萌えは、困ったように頬を掻き、一言。

 

「ギルドマスターのお好きに」

 

 思わず苦鳴が漏れたモモンガに対し、ぷにっと萌えはさらに言葉を続けた。

 

「モモンガさん、先程から僕は色々と口出ししたり偉そうにしているけどね?一回はここから離れた奴だよ?あくまで知恵を貸し力を貸し後押しはするけれど、最後はギルドマスターが決めてもらわなくちゃ困るよ」

 

 ぷにっと萌えにそう言われ、眉をひそめつつ、モモンガはギルメン、そして守護者たちをグルッと見回した。それぞれ思うところはあるだろうが、皆、モモンガの言葉を待っているように見えた。が、どうしてもそればかりは首を縦に振ることが躊躇われるように思える。これは恐らくたっち·みーを心底尊敬し敬愛しているからだと自らの冷静な部分が分析しているが、恐らくトップに立つのであればこの様な決断をし続けねばならなくなるのだろう。それも分かっている。だが、どうしようもないのだ。

 すっかり考え込み言葉をつまらせてしまったモモンガ。その彼に救いの手を差し伸べたのは、横に控えるアルベドだった。

 アルベドは、モモンガの肩に手を置き微笑む。見上げるモモンガを安心させるように。そうしておいて、その場にいる全員の顔を見回すと、その艶やかな唇から言葉を発した。

 

「守護者統括の身でこの様な提言をすることを、まずお許し願いまして……たっち·みー様のご意見、それとモモンガ様の苦悩を鑑みるに置きまして、代替案としまして、たっち·みー様をモモンガ様付近衛兵とするのは如何でしょうか?」

「……近衛兵ですか?」

 

 デミウルゴスの疑問の声に、アルベドは軽く頷き言葉を続ける。

 

「近衛とは、その身、その命を懸けて主を守護する者。つまり、モモンガ様よりも下の地位にいるもの、そして我々守護者に極めて近しい地位となるわよね?これならばモモンガ様の悩みもたっち·みー様の提言も同時にクリアーできるものだと思うのだけれど……」

「モモンガ様の身を守るのならば君がいるではないか、アルベド」

「そりゃぁ、私がいる間はいらないわよね。けど、モモンガ様が以前計画されておられた、冒険者となって各地の視察を行うと言う計画に、守護者統括である私が出向く訳にはいかないでしょう?実力、能力的にたっち·みー様が近衛として着いていかれれば何も問題はなくなるわ」

 

 なるほど、とデミウルゴスは頷いた。概ね全方位に渡って隙の無い話だとも思う。モモンガを命がけで守らせる事で罰にもなるいい案だと思えた。あえて反対する理由も無いと思いぷにっと萌えに目線を走らせると、そちらも満足げに頷いている。

 デミウルゴスは肩を竦め、それを了承の印とし、アルベドも艶やかに微笑んでモモンガに頷いてみた。それにあわせてモモンガも頷き返し、一同を見回すと、それぞれがそれぞれ、深い浅いの差はあれど頷き返してくれた。

 

「では、アルベドの案を採用しようと思う。いいですね、たっちさん」

「文句のつけようもないです。慎んでお受けします。アルベドもありがとう」

 

 礼の言葉にアルベドは軽い会釈で答え、一応の決着がついたところで、ぷにっと萌えが片手をあげつつ次の話へと話を進め始めた。

 

「さて、少し話は前後して申し訳ないけど、ワールドアイテムによる帰還の失敗の話ですが……一つ推論がありまして、そちらの話をしたいと思いますが、モモンガさん、大丈夫です?」

「あ、はい。お願いしますぷにっとさん」

「ええ、では……とりあえず守護者面々がどれだけワールドアイテムの事を知っているか分からないので少しだけ説明しようか」

 

 そんなことを言いつつ、ぷにっと萌えは懐から大きめの羊皮紙を取り出し、机の上に広げた。とは言え、その羊皮紙には特に何も書き込まれてはいないようだ。魔法による鑑定でも、それはただの羊皮紙と出ているため、どうやら本当になんの変哲もない物のようだ。

 困惑する一同を尻目に、いくつかのペンやインクを取り出し何らかの準備を終えたぷにっと萌えは、両手を打ち合わせて全員の視線がこちらに向くのを確認すると、ゆっくりと頷き話を始める。

 

「ワールドアイテムとは、我々が最初にいたユグドラシル、そこにあった世界樹-世界の基となる樹の、世界になるはずだった葉が姿を変えたもの、すなわち世界そのものを内包した超弩級のアイテムだ。概ね出来ないことなど何もないと言えるほど万能な代物-まぁ個体差はあるけどね?」

 

 そこで一区切りし、ぷにっと萌えは守護者に視線を向けると、それぞれがそれぞれ、しかしどこか納得がいったような表情をしているのを見てとって、満足したように頷きながら話を続け始める。

 

「さて、そんなワールドアイテムだが、実のところその権能が及ばない先がある。それは、同じワールドアイテムだ。例えばここに相手に特殊な状態異常を問答無用、あらゆる守りを貫通して及ぼす、などと言うワールドアイテムがあるとする。これを使われた場合誰であってもその状態異常から逃れることは出来ない。しかし、ワールドアイテムを所持している者はこの効果を打ち消すことが出来る」

「それは、ワールドアイテムを所持していれば状態異常になりんせんと言う事でありんしょうか?」

「いやいや。しかし、あらゆる状態異常を無効化するワールドアイテムと言うのはあるかもしれないけどね。しかし、ここで説明している事を要約すると『ワールドアイテムの効果はワールドアイテムを所持している者に効果を及ぼさない』だね」

「ああ、なるほど」

 

 そこまで静かに説明を聞いていたデミウルゴスが、何か得心がいったかのように両手を打ち合わせ深く頷いた。

 

「何カ分カッタノカ、デミウルゴス」

「ええ、コキュートス。恐らくぷにっと萌え様は、聖杯の効果が何らかのワールドアイテムによって阻まれた、そう言いたいのではないでしょうか?違いますか?ぷにっと萌え様」

 

 自信を持って放たれた言葉だったが、しかしぷにっと萌えは肯定も否定もせず軽く笑って済ませた。訝しげにデミウルゴスが視線を送るなか、ぷにっと萌えは片手を振ってもう一回笑って返す。

 

「いやいや、デミウルゴス君、あながち間違いじゃないからどう言ったものかなと思って笑っただけだよ。そんなに睨まないでくれないか」

「これは失礼を」

「いやいや……あー、とにかく、先程デミウルゴス君が言った事は、僕も考えたんだが……アルベド君、ここはナザリックからどれだけ離れているのかな?」

「?おおよそ一キロほどだと……アウラ、そうよね?」

「正確には一キロと四百メートルだけど、そうだよ」

「と、まぁ、それだけ離れていると、ナザリックに置かれているワールドアイテムが干渉するとは考えにくい。と、言うのも、あくまでワールドアイテム同士が干渉するのはワールドアイテムかワールドアイテムの所持者にその力が及ぶ場合だと推測出来るからだ。そして、ええと、少し絵を描こうか」

 

 そう言いつつぷにっと萌えは机に広げた羊皮紙に何やら人形を書き込んでいく。やたら上手い。アニメ的ではないがデッサン的な上手さで書き込まれた人間の後は簡単な建物の絵を描き始めた。どっかで見たことあるなー思ってみてたら日曜の夕方にやってるあのアニメのエンディングの家だと、ぶくぶく茶釜は気がついたがあえて口にはしなかった。

 その後、書いた二つの絵の回りに何がクニャッとした線をグルッと囲むように書き込み、ぷにっと萌えは満足げに頷いたのだった。

 

「こちらの人間の絵が、ワールドアイテムを現在進行形で持っている奴とする。これに向かって何らかの効果を発揮するワールドアイテムを使用する」

 

 そう言いつつ線を真っ直ぐ人間の絵に向かって引いて行き、人間の回りにあるクニャッとした線に引いてきた線を接触させたところで線を引くのをやめる。

 

「しかし、そのワールドアイテムの効果は、このクニャッと曲げた線、確認は出来ていないがワールドアイテムの防御範囲のようなものだと思ってもらえればいい-これに接触することによって相殺される。そして拠点に関しても同じ」

 

 今度は家の絵に向かって線を引き、その周囲のグニャグニャ-ワールドアイテムの防御範囲に接触させて止める。

 

「つまりワールドアイテムは、自らに向かってこない何らかのワールドアイテムによる要因は無効化しないと言うことになると思われる」

「……つまり、今回の場合、拠点にも、ましてやどこかにいるかもしれないワールドアイテム持ちに向かって力を使ったわけではないから無効化範囲に引っ掛かったとは考えづらい、そう言うことだねぷにっとさん」

 

 やまいこの言葉に指を鳴らすぷにっと萌え。その前でぶくぶく茶釜(人間形態)が顎に人指し指を当てながら新たな疑問を口にする。

 

「ん~、だったら、何で聖杯はその効力を発揮しなかったんだろ?」

「うん、いい質問だ。それが今回の問題の肝……この世界に位階魔法をもたらしたのは八欲王だと言われているし、古い文献を調べると概ねその辺りから急速に広まっているのが見てとれる。教授がいればもっと詳しく分かるんだろうけどなぁ」

「……ぷにっとさん、気になったんだが、いつ古い文献とか調べたんだ?」

 

 リュウマの質問に、しかしぷにっと萌えは指を左右に振って答えない。

 

「まぁ、それは後程……さて、この位階魔法、彼らはどうやって広めたのか、と言うところだ。魔法原理を教えた?いやいや、我々はユグドラシルの“システム”に縛られている。料理スキルがなければ料理が出来ない、採掘スキルがなければ採掘できないエトセトラエトセトラ。ゲーム内でスキルがなければ出来ないことは、この世界でもスキルが無い限り行えない。思うにね、彼らは位階魔法をこの世界に持ち込んだんじゃないんだ。彼ら八欲王がこの世界にもたらしたものはね、ユグドラシルのシステムそのものだ」

「……なるほど、読めてきました……つまり、八欲王がもたらしたユグドラシルのシステム、それを導入するために使用されたのが、ワールドアイテムだと」

「恐らく、と言う注釈がつくけどねデミウルゴス君。そしてここからが本題。恐らくユグドラシルのシステムはこの世界そのものに使われた公算が高い」

 

 そう言いつつぷにっと萌えの手は羊皮紙の上を走る。走った手は大きく丸を描き、その中央に『世界』と書き込む。その周囲に相変わらずのグニャッとした線を書き込む。

 

「世界がワールドアイテムの影響化にあるのであれば、予想ではこの様に、世界の外側に壁のように無効化するかしないか判断領域があると、僕は推測した」

「んー?けどさぁぷにさん、それなら内側で使用されるワールドアイテムは全て使用不能になるんじゃない?」

「茶釜君いい質問だ……しかし、もしそうであるなら、ナザリックがこの世界に現れた瞬間、ナザリックのワールドアイテムとシステム中枢になっているはずのワールドアイテムが干渉しあい、我々は肉体能力以外の全ての能力を失っているはずなのに、ナザリック出現以降もその傾向はない。恐らくばかりついて申し訳ないが、山河社稷図内部でも、問題なくワールドアイテムが使用できるはずだ。……かつてモモンガ君がRTAを行ったとき解除されなかったからね?恐らく、そういう別空間を作り出す系の物は、その空間をどうにかしようとしない限り無効化されないんだろう」

 

 そうぷにっと萌えが言って話を一旦区切ると、モモンガの左隣に立っていたパンドラズ·アクターが天に向かって両手を掲げその場でくるくると回り始めた。何事かと全員の視線が集まるなか、パンドラズ·アクターはピタッと回転を止め右手で左半面を隠し左手を腰の後ろへ、両足を交差させると言う奇っ怪なポーズ取って叫ぶ。

 

「んな~~るほど!つまり、“りある”への扉を開くために迸ったワールドアイテムのパゥワーが、空間そのものを形成するワールドアイテムの力場へと接触、無効化された、と言うわけですねぇ~!」

「お、おう……う、うむ、そう言うことだね。ただ、この説を正しいとするならお互いの力が拮抗、対消滅していてもおかしくはないと思うんだが……消失したのは聖杯だけ、なんだよねぇ」

 

 不思議そうに首をかしげるぷにっと萌えに、モモンガが朗らかに言う。

 

「たぶん、システムを導入するために使われたのが20の内の一つだったんじゃないんですか?聖杯は、確か20の内の一つじゃないはずですし」

「なるほど、その可能性もありますねぇ……さて」

 

 ふと、ぷにっと萌えが空を見上げる。空は徐々に青みが射し始めている。夜明けが近いのだ。

 

「ふむ、ずいぶん喋りましたねぇ。まぁ、色々話したいこともありますけど、一旦ナザリックへ戻りましょうか、ギルドマスター」

「そうですねぷにっとさん。では、アルベド、撤収準備を始めてくれ」

 

 短い返答と共に、アルベドたちが行動を開始する。

 それを見ていたぷにっと萌えの背中を誰かが叩いた。結構な衝撃にたたらを踏みつつ振り替えると、ペロロンチーノとリュウマが笑顔で立っていた。

 

「お帰り、ナザリックの軍師。これからよろしくな」

「そーそー、忙しくなるなぁ、これから。何はともあれ、お帰りー。ほいじゃ、また後で」

 

 軽くそう言いつつ、二人はシャルティアの開けた転移門へと入っていった。それを見ていたぷにっと萌えの背中をまたしても誰かが叩く。振り返れば、やまいことメイドのユリ·アルファが立っていた。

 

「お帰り、ぷにっとさん。んじゃ、そう言うことで」

 

 どこか眠そうにしながら転移門を潜るやまいこ。その後ろに付き従うユリは一度振り向くと丁寧に頭を下げて転移門を潜る。

 

「いやはや……お帰りと言う言葉がこれほど嬉しいとは」

「そう言うもんじゃないのぉ?あ、ごめんごめん、私は言ってなかった」

 

 思った以上に近くで聞こえる声に振り替えると、そこにはピンクの肉棒、ぶくぶく茶釜がいた。

 

「お帰りぃぷにっとお兄ちゃん」

「その姿じゃなければなぁ」

「んだとぉ!?」

「まぁまぁ、お二人とも、落ち着いて」

 

 触手で締め上げようとするぶくぶく茶釜を抑えたのはたっち·みー。かつてのように純白の鎧姿でそこに立ち、どこか憑き物が落ちたような雰囲気である。

 

「ぷにっと萌えさん、お帰りなさい。それから、色々ありがとうございます」

「なんのなんの……これから色々やるのにたっちさんの力は必要ですしね……」

「ええ、頑張らせていただきますよ……!」

 

 ふと、ぷにっと萌えは思った。なるほど、本当に戻ってきたんだと。そして思う、ここが自分にとってどれだけ大事だったかを。そして、思い出す、一番大事な事を。

 

「あ~~、しまった、忘れてた!」

「どうしたんです、ぷにっとさん?」

 

 いきなり大声をあげたぷにっと萌えに、モモンガは不思議そうに聞く。すると、どこかばつの悪そうな顔でぷにっと萌えは言うのだった。

 

「いい忘れてましたけど、ヘロヘロさんいますよ」

 

 

 

 

 

 

 





色々妄想するのは楽しいんですけどねぇ、文章にするのは非常に難しい。

ではまた次回です。

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