つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

100 / 100
お久しぶりです!ティアです!

と言っても、数日前に1話だけ投稿はしてたんですが……間を空けずに投稿ですよ。

実はこの小説も今回で100話を迎えまして。その100話は、初めて小説を投稿した6月30日の15時30分にしようと決めてたんですよね。

まぁさっさと進めろって話ではあるんですが、今出ているヴァンガードのSwitchのゲーム、ディアデイズ2で昔のカード使うのが楽しくて楽しくて……だからまた筆を取ってるのもあるんですが。

ってわけで、長くなりましたがどうぞ!今回は10000字近くなっておりますので、最後までお楽しみに!!


ride100 希望のプレゼント

「お待たせいたしました!ただいまより、クリスマスカップ決勝トーナメントを開催いたします!!」

 

10分後、私はMFSの前にいた。デッキを準備し、これから始まるファイトに備える。

 

その相手は、立花さん。そしてまたの名を、過去の追憶ヴェルレーデ。最上君と同等、いやそれ以上の強敵かもしれない。

 

だとしても勝つ。ここで負けるわけにはいかない。

 

……でも、今の私には。

 

「……立花さん」

 

さっき、あの2人から聞いた話が、頭の中に残り続けていた。

 

「今日は借り物デッキでもないですし、アクセルリンクも惜しみなく使います。前と同じだと思ったら、大間違いですよ」

 

「それでも……ここで負けるわけにはいかない。絶対に勝つ!」

 

でも、その話をするのはもう少し後だ。今はこれから始まるファイトに集中する。

 

「向こうも準備できたようだな」

 

「そうみたいだ。……互いに全力で、覚悟のあるファイトを」

 

「覚悟か……なら示してみろ。余さず受け止めてやる」

 

最上君とシュンキ君も、別のMFSを起動してファイトを始めようとしている。戦いの幕は、もう間もなく上がる。

 

みんな、見てて。勝って、全国に行くよ……!

 

「それでは、始めてください!」

 

「「「「スタンドアップ!「「「ザ!」」」ヴァンガード!!」」」」

 

4人のファーストヴァンガードが表返り、MFSも起動する。向こうは神殿、こっちは訓練場か。

 

「禁書の魔女 シナモン!(5000)」

 

「魁の撃退者 クローダス!(5000)」

 

だが、辺り一帯は暗い。夜だった。その空を蒼く照らすのは……満月だ。

 

まさに聖夜……ってことか。この夜空の元で、私たちの戦いは繰り広げられる。

 

「春風のメッセンジャー!(5000)」

 

「神鷹 一拍子!(5000)」

 

「私のターンから、行くよ!ドロー、五月雨の解放者 ブルーノ(7000)にライド!メッセンジャーは左後ろへ。ターンエンド!」

 

「私のターン、ドロー。神鷹 一拍子のスキル。デッキの上から5枚の中の、三日月の女神 ツクヨミにライドできる」

 

が、立花さんは上から4枚目のカードだけを手に取る。そして……。

 

「これくらいなら朝飯前ですよ。三日月の女神 ツクヨミ(7000)にスペリオルライド!残りのカードは好きな順番でデッキ下へ」

 

やはり何も見ずに処理を終える。ツクヨミデッキ、そして立花さんがアクセルリンクを使うファイトをする以上、戻したカードは……。

 

「……これで未来は決まりました。後はその時を待つ。私が勝利する時を」

 

「やっぱりトリガーを……」

 

しかもそこにガード制限のトムを組み合わせてくるのは、佐原君からの情報で把握済み。今回も間違いなくその戦法で来るだろう。

 

「いくら星野さんでも、この未来は変えられませんよ。大人しく、未来を受け入れてください」

 

「そう言うわけにはいかない。その未来、変えてみせる……!」

 

「……星野さんもですか。ハッキリ言って無駄ですよ。変えられないもの、絶対は存在します。ただ強者の作る結果だけが、全てを決める」

 

そこまで言い切ってみせるなんて。確かにアクセルリンクの力は強大で、ファイトの根幹を大きくねじ曲げる圧倒的な力だ。そう思うのも分かる。

 

それだけの自信が、立花さんにはある。いや、きっと他にも。

 

あの2人の話の中に、その答えは見つけている。

 

「気持ちは分かりますよ。でも、何かを変えることができる人なんていない。力ある者の定めた事だけが、世の中を動かす」

 

「……でも、私だって負けられない理由はある。だから勝つ!」

 

「なら、今デッキの下に戻したカードは?私の決めた、いつか引かれるそのカードを……星野さんに変えることはできますか?」

 

確かにそうだ。時が経てば、やがてその未来は否応なくやってくる。

 

「それでどうにかできるなら、惜しみなくそうしますよ。でも、弱い人にはそれができない。だから諦めるしかない。……そうするしかできなかったから」

 

「えっ……?」

 

「……ダークキャット(7000)をコール。スキルで、全てのファイターは1ドローできる」

 

「……引くよ」

 

1枚カードを引き、さっきの言葉を頭の中で繰り返す。そうするしかなかった、と。

 

未来は誰にも変えられない、抗えない。立花さんの中にある何かが、その可能性を蝕んでいる。

 

希望は潰え、力に酔う……あの発言の裏にあるものを、確かめないといけない。

 

それが、ミノリさんたちとの……約束だから。

 

「ダークキャットのブースト、ツクヨミでアタック(14000)」

 

「ノーガード」

 

「ドライブチェック、半月の女神 ツクヨミ」

 

ブルーノが矢を放ち、ツクヨミを牽制する。が、ダークキャットが矢を叩き落とし、その間にツクヨミが体当たりする。

 

「ダメージチェック、光輪の解放者 マルク」

 

「ターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ1 フユカ:ダメージ0

 

 

「私のターン、ドロー」

 

まだファイトは始まったばかり。こんなところで勝敗を決められるつもりはない。

 

「行くよ、ライド!横笛の解放者 エスクラド!(9000)」

 

ブルーノがエスクラドへ。ツクヨミと対峙し、その背後ではメッセンジャーとダークキャットが睨みあっている。

 

「数ターン後、私が2枚のトリガーを引く。そして勝つ。それが絶対です。何を言おうと、それは変わらない」

 

「なら、その前に勝負を決めに行くだけだよ!メッセンジャーの前に王道の解放者 ファロン(9000) エスクラドの後ろに未来の解放者 リュー(6000)をコール!」

 

タイミングが分かった上で行動できるから、まず確実に立花さんの戦法は決まる。そうなれば、立花さんの言う通り私の負けはほぼ確実。

 

でも、完全に負けが決まるわけじゃない。その未来が来る前に決着をつけたらいい。

 

あるいは……その未来の結末を変えてみせるか。

 

「リューのブースト、エスクラドでアタック!(15000)」

 

「ニケでガード」

 

トリガー1枚で突破……ってことは。

 

「ドライブチェック、小さな解放者 マロン」

 

トリガーは出ない。分かってはいたけど、デッキを把握されている。本当に厄介だね……。

 

「メッセンジャーのブースト、ファロンでアタック!ファロンのスキルで、解放者のヴァンガードがいるからパワープラス3000!(17000)」

 

「ノーガード。ダメージチェック、バトルシスター しょこら」

 

「ブーストしたアタックがヴァンガードにヒット!メッセンジャーのスキルで、CB1と自身をソウルに入れて、デッキの上3枚の中から……絆の解放者 ガンスロッド・ゼニス(11000)をレストでスペリオルコール!」

 

本来なら、エスクラドのスキルでコールできていた。そうすれば、レストでのコールじゃないからもう一度アタックできたのに……。

 

「やっぱり手強い……ターンエンド!」

 

 

シオリ:ダメージ1(裏1) フユカ:ダメージ1

 

 

「スタンドアンドドロー。抗うならそれでもいいです。でも……それが無駄だと、私が証明します。ツクヨミのスキル」

 

さっきの一拍子と同じ。でも今度は、デッキの上5枚の中の半月の女神 ツクヨミにライドできる。

 

けど半月の女神は、さっきのドライブチェックで手札に加わっていた。成功しても失敗しても、確実に半月の女神にはライドできる。

 

でも立花さんが手にしているのは……デッキの上から、2番目のカード。

 

「スペリオルライド、半月の女神 ツクヨミ(9000) 残り4枚はデッキの下へ」

 

夜の訓練場に、一拍子に乗ったツクヨミが現れる。スペリオルライドには成功されてしまった。

 

「半月のツクヨミのスキル。ライドした時、三日月の女神と神鷹 一拍子がソウルにあればSC2。さらに半月の女神 ツクヨミ(9000)と戦巫女 タギツヒメ(9000)をコール」

 

連携ライドで手札を使っていない分、他のことに手札を回せる。安定した動きだ。

 

「リアガードのツクヨミで、ファロンにアタック(9000)」

 

「リューでガード!」

 

「ダークキャットのブースト、ツクヨミでアタック(16000) ドライブチェック、サイキック・バード。ゲット、クリティカルトリガー。クリティカルはヴァンガードへ(16000 ☆2) パワーはタギツヒメへ(14000)」

 

十字に剣を振るい、エスクラドに傷を負わせる。表情は余裕そうだが、エスクラドは左手で攻撃を受けた箇所を押さえている。

 

「ダメージチェック、1枚目、王道の解放者 ファロン。2枚目、武装の解放者 グイディオン。ゲット!ドロートリガー!!1枚ドローし、パワーはエスクラドへ!(14000)」

 

「なら、タギツヒメでファロンにアタック(14000)」

 

「く……霊薬の解放者でガード!」

 

「ターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ3(裏1) フユカ:ダメージ1

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。……立花さん」

 

「何ですか?」

 

「佐原君から聞いたよ。ビリー・ブレイカーだって。いじめを止めようとしてるんだよね?」

 

「……えぇ、そうですよ。あんな愚鈍な行為、蔓延らせておくわけにはいきませんから」

 

言葉遣いも全然違う。普段の天然さはどこに行ったのか。別人のように冷めた返答に、私は確信した。

 

「すごいね、立派だよ。行動に移して、実績も出してる。当たり前のようにできることじゃない」

 

「……褒められるためにしてるわけじゃないですよ。そんな行為で優位に立ち、強者と浮かれ笑う愚か者に教えてあげたいだけです」

 

「……何を?」

 

「現実ですよ。腐り果てた力で酔いしれ、夢を見てるだけ。そんな力ごときでは何も変わらない、現実を突きつけてやるんです」

 

「……そっか」

 

確固たる意思を持ち、無慈悲なまでに冷酷に吐き捨てる。込めた感情の重さは、その言葉から伝わってくる。

 

だからこそ、言わないといけない。

 

「……だとしたらそれは、間違ってるよ」

 

「え……!?」

 

その揺るがぬ決意を、誤った方向へと向けていることを。

 

「私が間違ってる……!?そんなことない!だとしたら何が--」

 

「なら何で立花さんは苦しそうなの?」

 

そんな難しい言葉で、自分を着飾って。こんなの、私の知ってる立花さんじゃない。

 

天然で、どこかずれてて。抜けてることもあるけど、でも一緒にいると楽しくて。

 

そんなあなたが振りかざすような信念でも何でもない。無理に正当化しているだけだ。

 

「少し話したんだ。このファイトの前に、ミノリさんたちと」

 

「……あの2人と?」

 

「うん。助けてほしいって」

 

 

 

 

「助けるって……立花さんに、何かあったの……?」

 

「……だよな、悪い。順を追って説明するよ」

 

話はファイト前に遡る。

 

立花さんを助けてほしい。ミノリさんたちからの頼みに、私は言葉を失っていた。

 

状況が分からない。助けて?何かあったのか。でもそれなら、私に頼むのも変だ。運営スタッフに声をかけたらいいはず。

 

私じゃないといけない理由がある。でも、一体何?全然思い当たる理由がない……。

 

「フユカとは、高校からの付き合いなんだ。と言っても、最初は相手にもしてもらえなくてさ。来るものみんな、拒んでるみたいだった」

 

「え……!?」

 

「今のあいつを知ってるから、想像つかないだろ?けど、話しかけても返事はない。まさに一匹狼ってやつだ」

 

イメージと全然違う。他人を避け、1人を好むような性格とはとても思えない。

 

それが、本当の立花さん……?

 

「その時点でちょっと気にはなってたんだけどな。そんな時、あいつがビリー・ブレイカーとして活動してるところを目撃したんだ」

 

「たまたま路地裏の方に、フユカちゃんが男の人と入ってくるのを見かけてね~。ミノリちゃんも一緒だったし、何かある前に動こうって~」

 

確かにそれだけ見たら危ない場面だね……。

 

「そしたら、ヴァンガードってのでその男をぶっ倒してるじゃん。すげぇと思ったよ」

 

「それで私たちも、一緒に手伝いたいって思ったんだよね~」

 

「あぁ。最初は相手にされなかったけど、何度か話してるうちに、フユカが折れてくれてな。そこからの付き合いさ」

 

そんな馴れ初めだったんだ。口では簡単に言うけど、根負けさせるほど立花さんを諦めなかったこの2人もすごい。

 

けど、本当に想像できない。あの立花さんに、そこまで冷たい時期があったなんて。

 

「それから一緒にいることが増えたけど……フユカちゃん、周りから言われてるような一匹狼なんかじゃなかったんだな~って」

 

「あぁ。大人しくて、面白い奴なんだ。年相応の女の子って感じでさ。たまに変なこと言うけど、そこも含めて一緒にいて楽しいよ」

 

驚かされることはあるけど、不快感はない。個性があって、私も立花さんは面白い人だと思う。

 

「……けど、それでもあいつの中には、人を寄せ付けない冷酷さが残ってる。ビリー・ブレーカーとして活動している時や、涼野マサミと出会った時とか」

 

「涼野マサミって……立花さんも縁があったんスか!?羨まし……」

 

「黙りなさい、トウジ」

 

そうか、立花さんも涼野さんとは面識があるんだ。なら、あの計画のことも。

 

「後は、サクヤって名前に過敏に反応してた。気が動転しそうになるくらいにな」

 

「さっき、その人と会って……フユカちゃん、私たちが止めなかったら殴りかかってた……」

 

「え……!?」

 

ステージの上で最上君から少し話は聞いたけど、そこまで感情的になる相手なのか。

 

サンクチュアリガード使いの女の子……記憶の中にある姿だと、何も恨みを買うとは思えない。むしろ好印象すら感じるのに。

 

でも、見かけにはよらないってことかもしれない。立花さんだって、冷たい部分を隠していたんだから。

 

「私たち、フユカの過去についてはあんまし知らなくてさ。ヴェルレーデって呼ばれてるってくらいしか……」

 

「フユカちゃんも話そうとしないから。力になりたいのに……」

 

友達として、ビリー・ブレイカーとして。隣にいる時間が長いからこそ、立花さんを想う気持ちは強い。けど、その気持ちが双方向からつながるとは限らない。

 

すれ違えば、ずっと寄り添えない。縋る手もなく、平行線のまま。

 

「あいつは、『過去』を特別視してる。それだけ大きな存在ってか、何かがあったんだと思う」

 

それなら私もわかる。私にも、なかったことにはできない過去があるから。

 

「それに『何も変えられない』って。何をやっても無駄だって、魔法のように唱えている」

 

「……何も」

 

「だからかな……。フユカは、いつも苦しそうなんだよ。何か、必死になってるんだ」

 

冷たさの裏側にある苦しさ。立花さんなりの、無自覚なSOSなのかもしれない。

 

「私たちがどうにかしたい気持ちはある。けど、今あいつと同じ場所に立てるのは……あんただ、星野さん」

 

「だから私に話を……」

 

「情けないとは思う。けど、頼む。次の準決勝、あいつと話してくれないか?」

 

「私からもお願いします。フユカちゃんのこと……」

 

頭を下げる2人。試合前に、それも友達のファイト相手に無理を言っているのは重々承知しているはずだ。

 

その覚悟は本物で。それに私も、さっきの話を聞いて話したくなったから。

 

立花さんの抱えてるもの、過去と向き合いきれない辛さを知る私だからこそ……知りたくなった。力になりたかった。

 

「……うん、わかった。私に、何ができるのかはわからないけど……」

 

「いや、私たちはいつも一緒にいながら、あいつと同じ土俵には立てないしな。護身術を教えたのは私だけど、ヴァンガードはからっきしダメでさ」

 

それでも、友達を想う気持ちは本物で。だからこそ、決勝前のわずかな時間を使ってでも私のところに来たんだ。

 

友達の側で、ファイト前に鼓舞することだってできた。その選択が最善ではないと思ったから、2人はここにいる。

 

なら、私はその期待に少しでも応えないといけない。

 

「だから……頼む。私の友達を、助けてやってくれ」

 

「……わかった」

 

 

 

 

 

「……助けてなんて、優しくしてるつもりなんですか」

 

「友達のミノリさんたちから見ても、そう思うほどだったんだよ。そんな苦しそうにしながら掲げる信念って、本当に正しいの?」

 

そして場面は今に戻る。ミノリさんたちの話を聞き、私もまた彼女のために言葉を探す。

 

立花さんが過去に囚われ、苦しめられているとしたら……それは永遠に自分を縛る鎖となる。私がそうだったように。

 

まだ完全に振りほどけてはいないけど。でも立花さんは、振りほどく以前の話。

 

「苦しそう?どこがですか?それに、私が間違ってる?いじめなんて行う性根の腐った愚かな人たちを裁くことが?」

 

「言葉は乱暴だけど、そこは正しいよ。さっきも言ったけど、行動に移して結果も出してる。臆すこともない……それは本当にすごい」

 

「なら、何が違うんですか。身勝手にのさばらせておけばいいと、そう言ってるんですか……?」

 

MFSを叩きつけ、静かに怒りを見せる。たったこれだけのことでも、立花さんからは想像もできない振る舞いだ。

 

でも、向き合わないと。縛られたままで動けずに……いや、動かずにいる彼女のために。

 

「さっき、言ってたよね。人は何も変わらない、変えられないって」

 

「……それがどうしたんですか」

 

「立花さん、諦めてるんだよ。どんなに頑張っても、意味なんてない。無駄だって」

 

前に進む勇気も、努力も、立花さんにはない。それが先天的なものなのか、後天的なものなのかは、まだハッキリとは分からない。

 

「でもそうじゃない。変えたいと願えば、変えられるよ。どんな方向にだって、人は進める」

 

「……適当なことを。そんなわけない。それで何か変わるなら、誰も苦労なんてしない」

 

「けど分かってるはずだよ。立花さんだって、心の中では……何か変えたいって思ってるはずなんだ」

 

「そんなこと……!」

 

「なら、ビリー・ブレイカーの活動は?いじめを止めるために、変えようと願う気持ちがそうさせるんでしょ?だから……」

 

「違う!!」

 

初めて聞く立花さんの怒号に、私は言葉を失うしかなかった。

 

肩を震わせ、手札のカードが少ししなる。感情を露にした立花さんが、私に敵意のある目を向ける。

 

「違う……違う違う!気持ちだけじゃ、何も変えられない!自分を変えようとすることに、何の意味もない!!」

 

訓練場を乾いた風が吹く。もちろん映像で、実際に風が吹いたわけじゃないけど……対峙するユニットたちは、それでも何も言わずに見守るだけ。

 

私たちの話も関係ない。ただの映像だ。今は私のターンだから、新たなユニットにライドするのを待つだけ。

 

なのに、思いを振り絞って必死に吠える立花さんを見下ろすツクヨミだけは……何故か、悲しげな表情を浮かべているようだった。

 

「どんなに変わろうとしても、人は何も得られない。希望はすぐに砕けていく。一時の祝福だけで、それは力あるものによって塵のように消し飛ばされる。それを、私は証明する」

 

「……証明?」

 

「弱者が強者に抗えないのなら、私が強者になる。力を正しく使える者が、それを行使すればいい。だから、私はビリー・ブレイカーの活動をしているんだ」

 

それが根源だったんだ。いじめを止めるために、悪を裁く。私にはそう見えていたのに、実際には違った。

 

それも目的ではあるとは思う。けど、私には……。

 

「それって、おかしくない?」

 

「……何?」

 

「だって、立花さんのやろうとしていることは、確かに響きはいいかもしれない。けど、それは力による支配だよ?自分の意見を押し通して、強引に従わせて、言いなりにさせるってことだよね?」

 

力で支配し、主導権を握る。きっといじめって、そんな構図が成り立つことで生まれてしまう。横並びの人がいても、上から従える相手がいてもいけない。

 

自分を優位立たせると錯覚する場所が、虐げる心を生む。常に上でないといけない。

 

でも立花さんは、その上下関係を上塗りするだけ。より上位の存在が現れたら、屈するしか道はない。その結果として、いじめがなくなるだけ。

 

「だったら、いじめをなくすことが悪いことだと……そう言いたいんですか?」

 

「そうじゃない。私はただ、心構えの問題を言っているんだ。立花さんは、いじめをなくすことを中心に考えているんじゃないでしょ?」

 

「……それは」

 

「ただ、力で相手を屈服させるだけ。変わる必要はないと、諦観することを布教しているだけなんだよ」

 

結果だけ見れば、それは正義だ。でも、過程は?それは正義と呼べるのか。

 

「それってさ……立花さんも、やっていることは何も変わらないんだよ?体裁を装っていても、いじめてる人たちのしていることと……何も」

 

「私が、あんな人たちと、一緒……!?」

 

言い方は悪いと思う。けど、同じなんだ。力で押さえつけているだけなんだから。

 

だから間違ってる。このまま進めば、立花さん自身がそちら側に立ってしまう。

 

「そんなの違う!私は、あんな人たちのようになりたいんじゃない!私のしていることは、人を傷つけるような事とは違う!!」

 

「……なら、立花さんはどうなの?」

 

「えっ……?」

 

「立花さんは、変わりたい?今の自分が、本当に正しいんだって思ってる?」

 

「当たり前ですよ!抗いたくても変えられない現実があるから……ならせめて、その現実をあるべき形に塗り替える!それこそが……!」

 

「自分の価値観を押し付けて、他人だけじゃなくて、自分まで歪めて。決まっているから。結果を知っているから。そうやって、このままずっと後ろだけを見ているつもり?」

 

「……っ!?」

 

それじゃいけない。諦めて、変わることを放棄して、それが絶対だと信じて。

 

向くべき方はそっちじゃない。今、私の問いに心揺れたのなら……もう答えは出ているはずだ。

 

「そんな事、簡単に言いますね……!私の苦しみが、他人に理解してもらえるはずがない!友達ぶってるあの子たちも、何も分かってない……星野さんも!!」

 

「そうだよ、立花さんの辛さは分からない。けど……まだ立花さんは、過去に囚われている。それだけは分かる」

 

「私が、過去に……?」

 

「抗うだけ無駄だって、そう言って諦めて、前に進めなくて……立花さんの時間は、止まったままなんだよ……」

 

私だって、止まったままだった。あの時間の中にいる間は、別にそれでいいと思ってた。

 

外に出ても、何かあるわけじゃない。現実と、過去の辛い側面を見るしかない。そこに苦しさしかないんだって。

 

「何も分からないのに、何を分かったようなことを……!別にそれでいい!あの過去が私を引き留めてるのなら、それもそれでいい!」

 

「立花さん……!」

 

「だって、何も変わらないから……変われないから!手を伸ばして掴めるものも、触れる温もりも、みんなまやかしだった!何も……何も変わらな……」

 

「変わる!」

 

でもそうじゃない。違うんだ。一歩踏み出せば、世界が変わる。

 

変わらなくてもいいなんて、そんなことない。変われるはずがないなんて、そんなこともない。

 

「変わる……変えられる!私だってそうだったから!過去に苦しんで、ヴァンガードもできなくて、1人ぼっちで……」

 

「星野さんが……」

 

「けど、その苦しみに向き合って、前を向いた!まだ全てを受け入れられたわけじゃないけど……そうして前を向けたから、私は変われた!!」

 

だから私はまた、ヴァンガードをしている。触れることも嫌だったデッキを、今手にしている。

 

「そんなの、綺麗事です。前なんて向いても……」

 

「そんなことない。前を向いたら、たくさんの人がいてくれた。少しの勇気で、希望は無数に掴めるんだ。だから……立花さんだって、前を向ける」

 

「……そんなに上手くいくはずがない。なら私だって、今でも掴めてるものがあったのに」

 

「だったら立花さんだって、最初から希望がなかったわけじゃないんだよ。今掴もうと手を伸ばせば、きっと掴める。変えられる」

 

今はこぼれ落ちたかもしれない。それが今すぐには取り戻せないものかもしれない。

 

でも、そこで立ち止まってたら、永遠に手に入らない。前を向いて歩けば、いつかまた届くかもしれない。

 

それでも届かないものもあるけれど……希望は、必ず。

 

「誰だって、希望は掴める。あの時出した、ちょっとした勇気で私は変われた。その希望を今、立花さんに見せる!」

 

1人だった高校生活。中学の時の苦しみをまだ引きずる中で、ある男の子に誘われたカードゲーム。

 

断ることだってできた。彼の熱意を棒に振らせるなんて、そんな押し付けた理由で付き合っただけ。

 

……でも、実際は違ったんだと思う。勇気を出して、何かきっかけを作りたかった。変えたかった。そう思う気持ちは確かにあったから。

 

その想いに応えてくれたんだろう。昔と同じように、私の全てを変えるために。

 

だから、あの時の出会いはきっと、あなたからのプレゼント。勇気を出して前に進めたことに対する……希望のプレゼント。

 

「世界の平和を願いし王よ!未来を導く……光となれ!!ライド・ザ・ヴァンガード!!」

 

エスクラドの姿が光に包まれて変化する。白くなびくマント、振り払う剣が夜空を切り裂く。

 

これが……私のつながり。

 

「円卓の解放者 アルフレッド!!(11000)」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。