梅雨。それは人々が降り続ける雨と戦う時期でもある。ジメジメしてうっとうしい……梅雨なんて来なければいい!と思う人もいるだろう。というか、梅雨が好きな人なんているのかな?
私たちは今、雨にも負けず風にも負けず、サンシャインにて秋予選に向けた特訓を行っていた。
「行くよ……!仲間の力を幾度となく束ね、孤高の頂へ……何度でも!アゲイン・オブ・ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!!孤高の解放者ガンスロッド!!」
「……長いわよ」
「……そう思ってはいるんだけどね。えっと、ブレイクライドスキルで、ガンスロッドにパワープラス10000!3体のリアガードにパワープラス5000!ガンスロッドでアタック!」
「この手札じゃ……ノーガードね」
***
「はぁ〜ぁ……。何かこう……やる気でないな……」
「この天気だから無理ないっスけど……全国行くんだから、こんなんじゃダメっスよ?」
「う……そうだな」
相変わらず、今日の天気は雨だ。昨日も雨、今日も雨で、どうせ明日も雨だろう。……嫌になる。
毎日こんなんじゃやる気が失せるのも無理はない。今は6月半ば、まだまだ梅雨の時期は終わりそうにない。
「それに私も、テツジさんと改めて約束してきた。私たちで全国を目指すって。応援してくれるって、言ってくれたわ……」
そっか……。じゃあ、私も頑張らないとね。
「あ、後……ありがとうシオリさん。あの一言がなかったら私は……」
「ううん。会わずじまいにならなくてよかったよ」
私の一言で変わってくれたのなら、それは嬉しい。その証拠に、あれ以来よく横山さんの所に行っているみたいだ。
……まぁ、この雨ではさすがに行く気が無くなるのだろうけど。
「それにしても、早く梅雨終わってくれないっスかね〜?7月初めに新しいブースターが出るんスよ〜」
ヴァンガードはさておき、私も梅雨は終わって欲しい。
「そう言えば、1週間ほど前に新しいトライアルデッキが発売したよな。かげろうじゃなかったから関係ないけど」
私にも関係なかったな……。確かシャドウパラディンの新名称……撃退者と、もう1つ……何のクランだっけ?
「さて、じっとしてても始まらない!ワタル君!ファイトするっスよ!」
「おう!……で、今日は何のクランだ?昨日は確か、ネオネクタール、ジェネシス、バミューダ△、でロイヤルパラディンだったけど」
「いや……今日からは1つのクランにしぼって使うっス。俺が求めていたクランを見つけることができたっスから」
佐原君のクラン……一体何だろう?これまでにも色んなクランを使っていたけど……。
「そうか……じゃあやるか!」
***
2人はファイト前の準備を済ませ、ファーストヴァンガードに手を伸ばす。
佐原君の選んだクラン……楽しみだ。
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
小沢君は変わらず、レッドパルス・ドラゴキッド(4000)
一方、佐原君はと言うと……そこにあったのは
「……新星の星輝兵 アクチニウム(6000)っス」
リンクジョーカー。見るからに悪者って感じのクランだけど……
「それ……撃退者のデッキと一緒に出た……!」
そうだ!小沢君の一言で思い出した。星輝兵の名称を持つ、新たなクランだ。
「これが、俺の選んだクラン……リンクジョーカーっスよ」
「リンクジョーカー……。じゃあ、俺から。ドロー、ドラゴンモンク ゴジョー(7000)にライド!レッドパルスはそのまま後ろへ」
小沢君は、ゴジョーのスキルでカードチェンジしてターンを終えた。
「俺のターンっスね……。ドローして、虚ろな双刃 バイナリスター(8000)にライドっス!」
さて……リンクジョーカー。戦い方とか特徴とか全く知らない……。ここでちゃんと見ておこう。
「リアガードに、魔弾の星輝兵 ネオン(7000)をコール!そのままゴジョーにアタックっスよ!(7000)」
「ノーガードだ。ダメージは封竜カルゼ」
「続けて、バイナリスターでアタックっス!(8000)」
「槍の化身 ターでガード!」
ドライブチェックではグレード3……インフィニットゼロ・ドラゴンと言う竜が出てきた。
確かトライアルデッキの看板ユニットだったはず……。ゴールドパラディンじゃないから、全然調べてなかったな……。効果がわからない。
「ターンエンドっス」
トウジ:ダメージ0 ワタル:ダメージ1
「じゃあ俺のターンだな……スタンドアンドドロー、ドラゴンナイト ネハーレン(10000)にライド!」
まだ、リンクジョーカーの特徴は掴めない。まぁ、グレード1だしね……まだ。
「バーニングホーン・ドラゴン(9000)をコールし、レッドパルスのスキル!CB1、ソウルインで山札5枚の中からグレード3を……ない」
まぁ百発百中じゃないから仕方ないのだろうけど、もし今の状況でグレード3がないなら……。
「くそっ……希望の火 エルモ(6000)をコール!バーニングホーンでアタック!(9000)」
「受けるっスよ。ダメージは……飛将の星輝兵 クリプトン」
「なら……エルモのブーストしたネハーレン!(16000)」
「これも受けるっス」
ドライブチェックでグレード3は引けず、エルモのカードチェンジでもどうだったかは……わからない。けど、表情はよくない。
ちなみに、佐原君のダメージには追撃の星輝兵 フェルミウムが落ちた。
「ターンエンドだ……」
トウジ:ダメージ2 ワタル:ダメージ1(裏1)
「さて……俺のターンっスね。スタンドアンドドロー!星輝兵メビウスブレス・ドラゴン(9000)にライド!」
佐原君のライドしたメビウスブレス・ドラゴン……。能力は……ヴァンガード時にしか発揮しない!?
それにも驚いたけど、私はその能力の中に見慣れない言葉があることに気づいた。
「……呪縛?」
「あぁ、これっスか。まぁこれは……知らないなら、後でのお楽しみってことで。じゃ、無双の星輝兵 ラドン(9000) 星輝兵オーロライーグル(6000)をコールっス」
お楽しみか……。どんな能力なんだろう?呪縛って。
「ネオンでネハーレンをアタック!スキルで、ヴァンガードが星輝兵ならパワープラス3000っス!(10000)」
「……っ!封竜アートピケでガード!」
「じゃ、ラドンでヴァンガードを。ネオンと同じくパワープラス3000!(12000)」
「ここは……ダメージチェ…しまった!ドーントレスドライブ・ドラゴンだ!」
この感じからして、手札には確実にグレード3はない。これはかなりピンチな状況だ。
「最後に、オーロライーグルのブースト、メビウスブレスでアタック!イーグルのスキルで、相手よりリアガードが多い時にヴァンガードをブーストした時、パワープラス4000!(19000)」
「ノーガードだ……」
「ドライブチェック……バイナリスターっス」
「ダメージは……ワイバーンガード バリィだ」
「アタックヒット!お待ちかねのスキル発動っス!」
わざわざ引っ張っただけのことがあるスキルなのだろうか?注目しながら見る。
「メビウスブレスのスキルで、相手のリアガード、バーニングホーンを……ロック」
「……ロック?」
「さっき言ってた呪縛のことっスよ。さ、ワタル君。バーニングホーンを裏向きにするっス」
言われるままに、小沢君はバーニングホーンを裏向きにする。これは……?
「ヴァンガードの新たな力……ロック。リアガードを完全に無力化する力っス。ロックされたリアガードはアタックも能力も使えないし、上書きコールもできない。ただ、そこにいるだけ……」
「じゃあ、前後での入れ替えは?」
「それすらもできないっス。まぁ1ターンは耐えることっスね。ワタル君のターン終了時にロックは解けるんで」
これが……ロック。かげろうなどの退却や、メガコロニーのスタンド封じとは全然違う……!
「じゃ、俺はこれでターンエンドっス」
トウジ:ダメージ2 ワタル:ダメージ3(裏1)
「俺のターン!スタンドアンドドロー!ライドは……なしだ!そしてそのまま、エルモのブーストでネハーレン!メビウスブレスにアタックだ!(16000)」
「ここは……通すっス」
「ドライブチェック……ブルーレイ・ドラゴキッド、クリティカル!効果は全てネハーレンへ!(21000 ☆2)」
佐原君のダメージには、星輝兵ステラガレージ……ヒールトリガーだけど回復できず、もう1枚トワイライトバロンの2枚が落ち、ダメージは4枚となった。
「エルモのスキルでカードチェンジ……これでターンエンド」
ロックすることで、相手のアタック回数を減らすことにもなるのか。つまり、守りの面でも活きてくる。
もしロックがなかったら、さっきのトリガーのパワーをバーニングホーンに与えることができたし、さらにアタックもできたはずだったんだ。
「このタイミングで、ロックは解除されるっスよ」
「そうなのか。じゃあ、バーニングホーンを表にして……改めてターンエンド」
トウジ:ダメージ4 ワタル:ダメージ3(裏1)
「じゃ、俺のターン行くっスよ!スタンドアンドドロー!誘え!滅び渦巻く世界へ!星輝兵インフィニットゼロ・ドラゴン(11000)にライド!!」
ライド事故を起こした小沢君より先に、佐原君はグレード3にライドする。
「ネオンを後ろに下げて、飛将の星輝兵 クリプトン(10000)をコール!そしてラドンでネハーレンにアタック!さっきのターンと同じくパワープラス3000!(12000)」
「……ゴジョーでガード!」
「次!オーロライーグルのブーストでインフィニットゼロのアタック!イーグルはスキルで10000ブースト、インフィニットゼロはアタックした時、パワープラス2000っス!(23000)」
「……ノーガードだ」
ドライブチェックでは、メビウスブレスとラドンが手札に加わり、ダメージにはドーントレスドライブ・ドラゴンが入った。
「じゃ、ネオンのブースト……クリプトンでネハーレンに!(17000)」
「ブルーレイ・ドラゴキッドでガードだ!」
「ターンエンドっスよ」
トウジ:ダメージ4 ワタル:ダメージ4(裏1)
これでダメージは4対4。けど、グレード3にライドできていない分、小沢君の不利は間違いない。
「俺のターン……!スタンドアンドドロー!」
ネハーレンはパワーが10000であるため、防御力は高い方だ。けど、このあたりでグレード3にライドしておかないと負けが見えてくる。
「……さっきのターンのエルモのスキルで、こいつを引けた!行くぞ!終焉を告げる灼熱の龍!秘めたる闘志を解き放て!ライド!ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド!!(11000)」
何とかグレード3にはライドできたようだ。ここから巻き返していけるかどうか……。
「バーサークドラゴン(9000)をコール!スキルでCB2を使い、ラドンを退却!バーニングホーンでヴァンガードにアタックだ!スキルでヴァンガードがオーバーロードだからパワープラス3000!(12000)」
佐原君はこれをノーガードするが、ダメージチェックで星輝兵ネビュラキャプターが出て、ドロートリガーが発動してしまう。
「1枚ドローして……パワーはインフィニットゼロへ与えるっス!(16000)」
「ち……!エルモのブースト、ジ・エンドで……ここはクリプトンにアタック!(17000)」
「クリプトンっスか……」
クリプトンを狙うとなると、アタックをヒットさせてペルソナブラストを使おうとしているのか。
でも、エルモの引き直しで手札に来て、そこからもう1枚ジ・エンドが手札に来たというのは……考えにくい。
そうなると、ドライブチェックでジ・エンドを引いて、ペルソナブラストにつなげようとしているのか。何だかんだ言ってるが、早い話懸けだ。
「……どっちにしてもガードっス!星輝兵メテオライガー、鍵盤の星輝兵ビスマス!」
これでは、トリガー2枚でも突破できない。ペルソナブラストは打てなくなる。けど、
「まだドライブチェックが残ってる!ツインドライブ、1枚目、バーニングホーン・ドラゴン。2枚目、槍の化身ター。よし!クリティカルトリガー!!効果は全てバーサークへ!(14000 ☆2)」
ジ・エンドはドライブチェックで手に入らなかったが、トリガーは引くことができた。
「バーサークで、クリプトンにアタック!(14000 ☆2)」
「ノーガードっスね。クリプトンは退却」
「よし、ターンエンドだ」
トウジ:ダメージ5 ワタル:ダメージ4(裏3)
「俺のターン……スタンドアンドドロー!悪いけど、ここで決めさせてもらうっスよ!」
「ということは……」
「誘え!滅び渦巻く世界へ!ブレイクライド!星輝兵インフィニットゼロ・ドラゴン!!(11000)」
ここでブレイクライドするのか……。
「さて……ブレイクライドスキルで、インフィニットゼロにパワープラス10000。(21000) そして、前列と後列のリアガードを1枚ずつ選んで……ロック」
ここで選ばれたのは、バーニングホーンとエルモ。これで小沢君のリアガードは、バーサークドラゴンだけだ。
「一気に2体もロックするなんて……」
「さぁ、行くっスよ!ネオンの前にメビウスブレス!(9000) 残りのリアガードサークルに、ラドン(9000)とバイナリスター(8000)をコール!」
ここぞとばかりにリアガードを展開してきた。本当にこのターンで決めにいくつもりだ。
「バイナリスターのブースト、ラドンでジ・エンドにアタック!スキルでヴァンガードは星輝兵のままっスから、パワープラス3000!(20000)」
「ターでガード!」
「オーロライーグルのブースト、インフィニットゼロでアタック!インフィニットゼロのスキルでパワープラス2000。さらにイーグルのスキルで、こっちの方が余裕でリアガードが多いから、パワープラス4000!(33000)」
「さ、33000!?……ノーガード!」
もしここでクリティカルが出たら……終わりだ。
「ツインドライブ!1枚目、追撃の星輝兵フェルミウム……2枚目、鍵盤の星輝兵ビスマス。スタンドトリガーっス!効果は全てラドンへ!(14000)」
「何っ!?」
クリティカルが出ていなかっただけでもよかったと思いたい……けど、残り2回のアタックを防ぎきれるのかな?
「ダメージは……バリィだ」
「なら、ラドンでアタック!スキルを再び発動し、パワープラス3000!(17000)」
「……バーニングホーンと、カルゼでガード!」
「これで勝負あったっスね!ネオンのブーストしたメビウスブレスで、ジ・エンドにアタック!!(17000)」
「バーサークでインターセプト!バーニングホーンもインターセプトする!!」
おっ、守りきった!これで小沢君にまたターンがまわる……!
「あー……バーサークはいいっスけど、バーニングホーンはできないっスよ」
「え……!?」
できない……!?バーニングホーンは今ロックされていて……まさか、ロックすることでインターセプトも……!?
「言ったはずっスよ?ロックされたリアガードは完全に無力化され、アタックも……『能力』も使うことができない。つまり、固有『能力』であるインターセプトも意味を成さない!!」
そうか……!つまりブーストも使えなくなることになる。ロックか……見た目以上に恐ろしいスキルだ。
「……でもトウジ、店の中でそんなデカイ声出さないで。迷惑がられているから」
「……え?」
まわりを見ると、こちらを見ている他のお客さんが、大勢……とまではいかないけどいる……。
「「「……………」」」
「……あ、え〜と、その……すいませんしたっス!!」
何か、私たちの方が恥ずかしいよ……。
***
で、ファイトの方はダメージトリガーも出ずに終わりましたとさ。
「いや〜やっぱテンション上がると声を出したくなるんスよ〜」
「それでも限度があるでしょ!?」
……で、佐原君は森宮さんに怒られていますとさ。
「最後のアタックをインターセプトできてたらな……。ロック、恐るべしだな」
味方として見ている分には確かに強い。けど、これを敵として見ると……ぞっとする。
「大丈夫かな……。私、このままで」
「大丈夫だろ?前のイベントも、いい勝率だったんだろ?」
「それは……そうなんだけどね」
けど、不安は消えない。テスト前にどれだけ時間をかけて勉強しても、不安になるのと同じようなものだ。
ちょっと例えが悪いかもしれないけど。
「まぁ、いつも同じ相手とばかりやるって言うのも、いい練習とは言えないっスからね」
「けど、色んな相手とのファイトをイメージするのに、佐原に色んなクランを使ってもらってファイトしてたんじゃないか?」
「ファイターが違えば戦いかたも違うっスよ。……と言うか、さっきの言い方だと、これからも俺は色んなクラン使った便利屋みたいな扱いになるんスか!?」
いや、そこまで言ってることはないと思うけど……まぁ、たまには他の奴らとファイトしたいとは思うかな。
「……でも、トウジの言うことも一理あるわね。サンシャインもいいけど、たまには違うショップに行って、経験を積むのも悪くないわね」
「よし!そうと決まれば、たまにはどこかのショップに行って見るっスか!!」
「おっ、いいな!」
「うん。私も賛成」
そんなわけで、私たちは経験を積むために、他のショップに足を運ぶことになる……。