つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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少し間が空いてしまいました……。けど、今回はいつもより長めになってます。特に内容が重要だとか、ファイトが長いとかでもないんですが……。


ride24 天使舞う時

7月です。そして今日は土曜日。私たちは佐原君の提案によって、他のショップに行くことになった。

 

サンシャインの前で待ち合わせということになり、いざ来てみたものの……

 

「……で、発案者はどこ行ったんだよ」

 

「まだ来てないみたいだね……」

 

肝心の佐原君はまだいない。何してるんだろ……。

 

「携帯にも電話したんだけど……出ないわ」

 

「えぇ……どうするの?」

 

「……待つしかないわね。トウジの家に行くのがベストなんだろうけど、私トウジの家知らないのよね……」

 

そう言えば、みんなの家って私知らないな……。基本サンシャインだし、誰かの家に集まることってないからね……。

 

「……とりあえず、中に入らないか?外で待つのもあれだし」

 

「そうだね……そうしようか」

 

と、中に入ろうとした時だ。向こうから私たちを呼ぶ声が聞こえる。それは……

 

「「「……………」」」

 

「お……遅れたっス!目覚ましが止まってて……」

 

紛れもなく佐原君だった。走って来たのか、息が切れて汗もかいている。

 

「ちょっとトウジ、携帯に電話したのに何で出ないのよ?さっきからかなりかけてるけど」

 

「えっ……?あ!本当だ!バイブになってたから気づかなかったっス!」

 

……もう呆れるしかない。まぁ、来たから問題ないけどね。

 

「……それはそれだ。で、今日はどこに行くんだ?」

 

「そうっスね、早速本題に。今日行くショップなんスけど……」

 

すると、佐原君は1枚の写真を見せてきた。と言っても、携帯に保存されている写真だ。

 

「ここに行くっス。名前は『コスモス』!そこそこ人気のあるショップみたいっスよ」

 

外観も綺麗で、まだ出来たばかりなのかもしれない。中がどうなってるのかはわからないけど、外観から考えて、それなりに広さはあると思う。

 

「いいわね。じゃあ、早速行きましょう」

 

「OKっス!じゃあ、そのついでに『黒輪縛鎖』を買うことにするっスか」

 

「そうだった。今日が発売日だったな」

 

リンクジョーカーが本格的に参戦するブースター、黒輪縛鎖。佐原君にとっては待ち望んだ強化だけど……私にとっても、このブースターは嬉しいものだった。

 

現状、解放者のカードは数があまり多くない。デッキを組むとしても、決まりきった型になってしまう。

自分のデッキを改良できるとなると、それは嬉しくなるものだ。

 

「じゃあ改めて……コスモスに行くっスよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

コスモスまでは、電車で2駅の距離だった。そのため、思ったよりもすぐに電車旅は終わった。

 

……が、問題はここからだった。駅から降りたのはいいものの、そこからショップまでの道のりがわからない。調べてはいるが、ここで時間を食ってしまった。

 

「えっと……駅がここっスよね?それで、まずは……」

 

「あぁもう!トウジ!ちょっとその地図見せなさい!」

 

「……俺たち、たどり着けるのか?」

 

……と、さっきからこんな感じ。しかも、やみくもに行動していた結果、駅からかなり離れてしまったらしく、戻ろうにも戻れない状態で━━

 

「……考えていても仕方ないわ。近くにいる人に道を聞いた方が早いわね」

 

とは言っても、まわりに都合よく人はいなかった。ますます困り果ててしまう。そうやって困り果てていた時だった。

 

「あそこにいる人……ちょうど私たちと同じくらいの歳の人じゃない?」

 

私の視線の先、自販機の前に1人の少女がいた。背は低く、長めの髪を後ろでまとめている。見たところ、私たちと同じ高校生だろう。

 

「みたいだな」

 

「ショップの場所を知ってるといいんスけどね……」

 

ネガティブな発言が聞こえた気がしたけど、気にせずスルー。今は……

 

「あの……ちょっといいかな?」

 

「えっ、はい?私ですか?」

 

いや、あなた以外に誰がいるのさ。

 

「あ……実は、この近くにコスモスって言うカードショップがあるみたいなんスよ。俺たち、そこに行きたいんスけど……」

 

「そうなんですか。なら、ちょうどいいです。私も今から行こうとしてたので、一緒に行きましょう」

 

これは助かった。何とかたどり着くことができそうだ。多分、あのままだったら、もっと時間がかかっただろうしね……。

 

「よかった……九死に一生って感じっスよ。本当、感謝してるっス」

 

「私たちも、本当に助かったわ。早速なんだけど、ここから近いの?」

 

「はい。この道をもう少し進んだら着きますよ。では、行きましょうか」

 

と、少女は私たちを先導するように歩き始める。迷いがなく、場所をわかっているみたいだ。これなら、安心できる……って、ちょっと待って?

 

「あの……あなたは自販機の前で何をしてたの?」

 

「?喉が乾いたから飲み物を……」

 

うん、それはわかってる。自販機の前にいる理由なんて他に考えられないし。問題は……

 

「……あなたのどこにも、飲み物らしい物が見当たらないけど」

 

カバンのような物も持っていないし、かと言って両手にもない。

 

「……あっ」

 

と、短く驚くと、来た道を引き返して自販機の前に戻る。そして、取り出し口に手を入れると……

 

「あはは……飲み物買ったのに、取り出すの忘れるなんて……」

 

「「「「…………」」」」

 

恐らく、きっと私たちは今同じことを思っただろう。この人は……どこか抜けているのだと。天然と言えば聞こえはいいけど。

 

「……じゃあ、気を取り直して、案内頼むっス」

 

「はい。……そう言えば、どこに行くんでしたっけ?」

 

……確信づけるように追い討ちをかけなくてもいいよ。本当。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

親切な少女が教えてくれたように、少し歩いた所にコスモスはあった。

ただ、かなり遠回りはしていたみたいで……

 

「まぁ、着いたからよしとしましょうよ」

 

最もなことを言われたので、これ以上は深く考えないようにしよう。今はまず、ショップの中に入る。

 

外観もそうだったが、中も綺麗だった。サンシャインも負けてはないけど、こっちの方が綺麗かもしれない。

 

ファイトスペースもまずまずで、人気があるのも納得が行く。その証拠に、何人もファイトしている様子が見られる。

 

「という訳で、ここに来た目的を忘れちゃいけないっス。普段とは違った経験を積んで、自分の力にするっスよ!」

 

そう言うと、佐原君はすぐさまファイトスペースへと向かう。何と言うか、積極的だな……。私にはないものだな。

 

「じゃあ、俺たちも行くか」

 

「えぇ」

 

2人もファイトスペースへと足を進める。私は、さっきの少女と2人になってしまった。……そうだ。

 

「ねぇ、よかったら私とファイトしない?ショップに行くつもりだったってことは、デッキも持ってるよね?」

 

「私とですか?いいですよ。デッキも持ってきているから……」

 

このファイトが、いい経験になるだろうか。そうなってくれるといいとは思っているけど。

 

「……あれ?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あーーーっ!ない!デッキ家に忘れてきた!!」

 

「え…えぇ!?」

 

いきなり大声を出したことに驚いたけど、それ以上にデッキを忘れてきたことに驚いてしまった。

一体、彼女はこのショップに何をしにきたんだろうと思うほどに。

 

「ど…どうしよう。家まで取りに帰るのも時間かかるし……」

 

「そうか……。デッキがないんじゃ……」

 

いや、ちょっと待て。もしかしたらどうにかできるかもしれない。

 

「ねぇ、あなたって何のクラン使ってるの?」

 

「えっ?」

 

「私と一緒にいた男の子……佐原君なら、色んなクランのデッキ持ってるから、貸してくれるのなら、それを使ってファイトしようよ」

 

「え……いいんですか!?」

 

「ま…まぁ、佐原君に聞いてみないとハッキリしないけど……」

 

まさかデッキを忘れたなんて思ってないけど、佐原君なら貸してくれるだろう。

 

「じゃあ、一緒に佐原君のところへ行こう。えっと……」

 

「あっ、名前ですか?私の名前は、立花フユカです」

 

「私は星野シオリ。じゃあ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……シオリさんのデッキがない!?」

 

「いや、私じゃなくてこっちの……」

 

という訳で、佐原君に助けを求めることにした。ファイトの途中だったけど、相手に断りをいれて、少し待ってもらうことにした。

 

「そういうことなら、別にOKっス。……と言いたいんスけど」

 

「けど?」

 

「実は、今日はあんまりデッキを持ってきていないんスよね……。一応、あるにはあるんスけど……」

 

そう言って、佐原君は手持ちのデッキを見せる。リンクジョーカーを除くと、その数は4個だ。

 

「この中からってことになるっスけど……いいっスか?」

 

「立花さん、それでいいかな?」

 

「はい。……なら、これで」

 

そう言って選んだのは、エンジェルフェザー。ダメージゾーンを駆使した、トリッキーなクランだ。

 

「じゃあ、ファイトが終わったら返してほしいっス。俺はファイトに戻るんで、この辺で」

 

デッキを渡した佐原君は、すぐさまファイトを再開していた。

 

「……なら、私たちもファイトしようか」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

互いにファイトの準備を済ませていく。けど、立花さんはデッキの確認のために、一通り目を通してから準備した。

 

「よし……じゃあ、行くよ!」

 

「はい!」

 

「「スタンドアップ!ザ・ヴァンガード!!」」

 

あれ?立花さんもザをつけるんだ。それはともかく……

 

「小さな拳士 クロン!(4000)」

 

「手当の守護天使 ペヌエル!(5000)」

 

なるほど、守護天使か。動き次第ではかなり強いはず。警戒はした方がよさそうだ。

 

「では、私のターンから。ドロー。刻印の守護天使 アラバキ(7000)にライド!ペヌエルは左後ろへ。ターンエンドです」

 

「私のターン、ドロー。疾駆の解放者 ヨセフス(7000)にライド!クロンは右後ろへ移動するよ!」

 

さて……エンジェルフェザーか。あまり戦ったことはないからな……。

 

「解放者 フレアメイン・スタリオン(6000)をコール。ブーストして、ヨセフスのアタック!(13000)」

 

「ノーガードだね」

 

「ドライブチェック、未来の解放者 リュー」

 

「ダメージチェック、団結の守護天使 ザラキエル」

 

そのカードは……ハッキリ言ってダメージゾーンに落ちてほしくはなかった。その理由は、後々わかるはずだ。

 

「ターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ0 フユカ:ダメージ1

 

 

「私のターン、ドロー。要の守護天使 ベカ(10000)にライド!続けて、秩序の守護天使 イェクン(7000)をコール!この時、イェクンのスキル発動!」

 

このイェクンのスキルは、ある条件が整わないと発動できない。そしてその条件というのが……

 

「ダメージゾーンに表のザラキエルがあるなら、手札1枚を捨てて1ドロー!」

 

ランディング・ペガサスが捨てられ、立花さんは1枚ドローする。表のザラキエルがダメージゾーンにあることで発動できるスキルは少なからずあるから、嫌だと思ったんだ。

 

「天罰の守護天使 ラグエル(9000)をコールして、イェクンでアタック!(7000)」

 

「ノーガード。ダメージチェック、孤高の解放者 ガンスロッド」

 

「次はベカ!(10000)」

 

「防ぐよ、猛撃の解放者でガード!」

 

「じゃあ、ドライブチェック……治癒の守護天使 ラムエル。ゲット、ヒールトリガー!ダメージを1枚回復して、パワーはラグエルへ!(14000)」

 

ダメージが回復したけど、これでダメージゾーンに表のザラキエルがいなくなった。そう考えると、このトリガーはありがたい。

 

「ペヌエルのブースト、ラグエルでアタック!ヴァンガードが守護天使なので、ラグエルのスキル発動!パワープラス3000!(22000)」

 

「ノーガード。ダメージチェック、武装の解放者 グイディオン。ゲット!ドロートリガー!!」

 

このターンで使った手札が差し引きゼロになる。手札が多いに越したことはない。

 

「ターンエンドです」

 

 

シオリ:ダメージ2 フユカ:ダメージ0

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!ブラスター・ブレード・解放者(9000)にライド!スキルでCB2、ラグエルを退却!」

 

戦力を削り、攻撃の手を緩めさせる。それが1体でも大きいものだ。

 

「王道の解放者 ファロン(9000)をコールし、フレアメインのブーストで、ブラスター・ブレードのアタック!(15000)」

 

「ノーガードします」

 

ドライブチェックではエスクラドが手札に入る。ダメージには、サリエルが入った。

 

「ファロンもアタック!クロンのブースト!ファロンはスキルで、解放者のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(16000)」

 

「これもノーガード。ダメージチェック、礎の守護天使ハスデヤです」

 

「じゃあ、これでターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ2(裏2) フユカ:ダメージ2

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!神託の守護天使 レミエル(11000)にライド!」

 

ここまでは互角のファイトだ。つまり、ここからが勝負の流れを大きく動かすことになる。

 

「イェクンの前に、要の守護天使 ベカ(10000)をコール!レミエルでアタック、スキルでパワープラス2000!(13000)」

 

ダメージを考えても、まだガードは必要ないかな。だったら……

 

「ノーガード!」

 

「ツインドライブ、1枚目……聖火の守護天使 サリエル。2枚目……よし、懲罰の守護天使 シェミハザ。クリティカルトリガー!」

 

クリティカルトリガーを引かれてしまったか……。けど、これで私のダメージは4になる。

 

「ダメージチェック、1枚目、小さな解放者 マロン。2枚目、霊薬の解放者。……ゲット、ヒールトリガー」

 

……はずだったのに。都合よくリミットブレイクと言うわけにはいかなかったか。これでは、ダメージは3。リミットブレイクは使えない。けど、それならそれで割りきって……

 

「ダメージを1枚回復、パワーはブラスター・ブレードへ(14000)」

 

「イェクンのブースト、ベカでファロンにアタック!(22000)」

 

「ノーガード」

 

悪くない選択だ。リミットブレイクを使わせないために、リアガードを狙うことで、ダメージを与えないようにするか。

 

「ターンエンドです」

 

 

シオリ:ダメージ3(裏1) フユカ:ダメージ2

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!よし、世界の平和を願いし王よ!未来を導く光となれ!!ライド・ザ・ヴァンガード!!円卓の解放者 アルフレッド!!(11000)」

 

今日もよろしく、アルフレッド。さて……

 

「アルフレッドのスキル!CB2で、デッキトップのカードをコール!光輪の解放者 マルク!(6000)」

 

完全ガードか……。できれば、手札にあった方がよかったんだけどな。

 

「マルクの前に、小さな解放者 マロン(7000)。クロンの前に、横笛の解放者 エスクラド(9000)をコール!クロンのブースト、エスクラドでアタック!(13000)」

 

「イェクンでガード!」

 

「フレアメインのブースト、アルフレッドでアタック!(17000)ツインドライブ、1枚目……希望の解放者 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!!」

 

こちらもクリティカルトリガーを引き返す。これで私も2ダメージを与えられる。

 

「パワーはマロン(12000)へ、クリティカルはアルフレッドへ!(17000 ☆2)」

 

「う……ダメージチェック、天罰の守護天使ラグエル と、神託の守護天使 レミエル」

 

「マルクのブースト、マロンでアタック!解放者のヴァンガードがいるから、ファロンと同じくパワープラス3000!(21000)」

 

「これも……ノーガード!」

 

ハスデヤがダメージに入り、これで5ダメージ。私が立花さんを追いつめた形になった。

 

「ターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ3(裏3) フユカ:ダメージ5

 

 

「もうダメージ5か……。私のターン、スタンドアンドドロー」

 

今のところは、私がリードを保っている。けど、それがいつ崩れるかわからない。なぜなら……

 

「……来た!ブレイクライド!団結の守護天使 ザラキエル!!(11000)」

 

やはり、ブレイクライドか。しかもザラキエルとなると……このターンでの敗北もあり得るかもしれない。

 

「ブレイクライドスキル、ザラキエルにパワープラス10000!(21000) さらにダメージゾーンのハスデヤを手札に加えて、デッキの一番上のカードをダメージゾーンへ!」

 

ハスデヤが手札に加わった代わりに、アニエルがダメージゾーンに置かれた。

ハスデヤを加えたと言うことは……間違いなく立花さんは、あるスキルの発動を狙っている。

 

「ハスデヤ(6000)をコール。続けて、ペヌエルのスキル!自身をソウルに入れて、ダメージゾーンのサリエル(8000)をコール!その後、デッキの一番上のカードを裏でダメージに置きます」

 

「……サリエル。と言うことは……」

 

「そのつもりです。サリエルのスキル!CB1、デッキから……団結の守護天使 ザラキエルをダメージゾーンへ。ダメージゾーンのラグエルをドロップします」

 

さっき、イェクンのスキルを発動するためにザラキエルが必要だったことを覚えているだろうか。

ザラキエルにも、自身がダメージゾーンにあることで発動できるスキルがある。それが……

 

「アラバキ(7000)をサリエルの後ろにコールして……ザラキエルのリミットブレイク!ダメージゾーンに表のザラキエルがあるなら、全ての守護天使にパワープラス3000!」

 

全ての守護天使なので、ザラキエル自身もパワーは上がる。実質、1列のパワーが6000プラスされたと考えたら、脅威的なスキルだ。

 

「アラバキのブースト、サリエルでアタック!(21000)」

 

「エポナとリューでガード!」

 

「なら、ハスデヤのブースト、ザラキエルでアタック!」

 

ハスデヤは、ザラキエルのリミットブレイクとは別に、表のザラキエルがダメージゾーンにあれば、パワープラス3000される。

よって、ハスデヤだけでパワー12000。ザラキエルはブレイクライドで21000になっているから……33000。

 

「……ノーガード!」

 

まぁ、どっちにしてもノーガードするつもりだったけどね……。

 

「ツインドライブ、1枚目、神託の守護天使 レミエル。2枚目、懲罰の守護天使 シェミハザ。よし、クリティカルトリガー!」

 

「く……!」

 

「パワーはベカへ(18000) クリティカルはザラキエルへ!(33000 ☆2)」

 

「……ダメージチェック、1枚目はアルフレッド。2枚目はファロン」

 

トリガーはない。しかも、ダメージは5。今度はこちらが追い詰められた。その上、まだアタックが残っている……。

 

「イェクンのブースト……ベカでアタック!(28000)」

 

「……フレアメイン・スタリオン!霊薬の解放者でガード!さらに、エスクラドで……インターセプト!」

 

「防いできた……。なら、これでターンエンドです」

 

 

シオリ:ダメージ5(裏3) フユカ:ダメージ5(裏2)

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー」

 

何とか耐えた。けど、かなり危なかったのは確かだ。もう手札は2枚しかない。

 

「ライドなし。続けて、孤高の解放者 ガンスロッド(11000)と、武装の解放者 グイディオン(5000)をコール!」

 

グイディオンはクロンに上書きコールし、クロンは退却する。

 

「これで解放者のリアガードは5体……。アルフレッドのリミットブレイク!フルパワー!パワープラス10000!(21000)」

 

解放者のリアガード1体につき、パワープラス2000するリミットブレイク。これにより、ブレイクライドと同等のパワーを得た。

 

「グイディオンのブースト、ガンスロッドでアタック!(16000)」

 

「治癒の守護天使 ラムエルでガード!」

 

「フレアメインのブースト、アルフレッドでアタック!フレアメインのスキル、アルフレッドをブーストした時、SB1でパワープラス5000!(32000)」

 

特定のユニットにしか使えないスキルだけど、その分強力なブーストができるようになる。

立花さんの手札は後4枚。少しでもパワーを上げて、手札を削っておきたい。

 

「だったら……シェミハザ2体、サリエルでガード!トリガーは1枚で突破です!」

 

1枚だけなら……引けるか?

 

「ツインドライブ!1枚目、ブラスター・ブレード・解放者……」

 

トリガーじゃない。次でトリガーを引かないと……

 

「2枚目……!」

 

まだ表のザラキエルはダメージゾーンにある。ここでトリガーをひいて勝負を決めないと、次のターンもザラキエルがリミットブレイクを発動してしまう。

そうなると、守りきることはできない。まず確実に私が負ける。

 

(何でもいい……!クリティカルでも、ドローでも、ヒールでもいい。トリガーさえ出てくれたら……!)

 

と、その時だった。波紋が広がるような、あの感覚を感じたのは。

 

(……これって)

 

佐原君とのファイト。そして、ミズキとのファイト。2人のファイトで感じた、あの不思議な感覚。

 

『勝利を願うその想いの強さ……。我らも、それに応えよう……』

 

同時に聞こえた、あの時と同じ声。誰のものかも、はっきりとわかる。

 

アルフレッド……こうして聞こえるあなたの声は、一体何を意味しているの?

 

その問いに対する返事はなく、やがて波紋は消えていく。その間、シオリの瞳が、青い光を灯していたことに気づくことはなく。

 

(……さて)

 

過去2回の経験からすると、この感覚になったときは、必ず欲しいカードが手札に来る。

佐原君の時は、次のターンまで耐えきるためのヒールトリガーが。ミズキの時はブレイクライドを使うためのライド先のユニットが。なら、今回は……

 

「……チェック」

 

「…………」

 

「……希望の解放者 エポナ。ゲット、クリティカルトリガー……」

 

ガードを突破するためのトリガーが、望んだ形で私の手元に来た……。

 

「効果は全てアルフレッドへ(37000 ☆2)。これで、このアタックは通る……」

 

「……っ!だ、ダメージチェック、守護天使 ランディング・ペガサス。トリガーはトリガーでも、ドロートリガーですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!このデッキ、使いやすかったです。負けましたけど……」

 

「負けたのは仕方ないっスよ。トリガー1枚の差だったそうじゃないっスか」

 

ファイトを終えた立花さんは、佐原君にデッキを返しに行った。佐原君の方も、ちょうどファイトが終わったところで、タイミングもよかった。もちろん、佐原君は勝ったみたい。

 

「でも、決める時は決めるんスね。シオリさんは結構勝負強いみたいっス」

 

「いや……私もあそこでトリガーを引けるとは思ってなかったから……。まぁ、引けなかったら負けてたんだけどさ」

 

「私も、トリガーが出るなんて考えてもいなかったですよ。……本当に」

 

そのトリガーを現実の物にした、あの感覚……一体何だと言うのだろう?

 

「本当に、デッキありがとうございました。えっと……佐原さんでしたよね?」

 

「そうっスよ。でもデッキを忘れるなんて……次からは気をつけるんスよ?」

 

「はい。今日は無理ですけど……またファイトできるなら、次は自分のデッキを使ってファイトしたいです」

 

そう言えば、立花さんのクランが何なのか聞いてなかったな。そう言う意味でも、次にファイトできる時が楽しみだ。

 

「じゃあ、私はもう行きます。デッキもないのに、ここにいる用もないので。また会える時を楽しみにしてますよ」

 

立花さんは軽く頭を下げると、店から姿を消した。言ってくれたら、私もデッキ貸したのにな……。

 

「……あいつ、帰ったのか?」

 

「そうみたいっス。2人とも、一区切りついたっスか?」

 

見ると、小沢君と森宮さんがこちらに来ていた。どうやら、ファイトを終えたみたいだ。

 

「いい経験になるのは確かね。同じクランでも、人によって戦い方が違って面白かったわ」

 

「そうっスよね?そんな発見があるから、たまに他のショップに行くのはいいんスよ」

 

確かに、立花さんとのファイトはいい経験になったとは私も思っている。

 

「という訳で、今からもう1軒だけ他のショップに行こうと思ってるっス」

 

「ここはもういいのか?」

 

「できるだけ色んな所に行くのがいいんスよ」

 

言われてみたらそうかもしれない。1ヵ所に留まっているようでは、いつもサンシャインにいるのと変わりないだろう。

 

「でも、黒輪縛鎖は?ここでは買わないの?」

 

「次のショップで買うつもりっス。それなりに大きなショップらしいっスから」

 

「……で?次はどこのショップに行くのよ?」

 

「ちょっと待って欲しいっス。次のショップなんスけど……」

 

佐原君は携帯を取りだし、そこに保存されている1枚の写真を見せる。今朝と同じく、ショップの外観を写した写真だったが……

 

「ここっス。カードショップ『アテナ』。ここからなら、そう遠くはないっス」

 

「……っ!」

 

アテナ……。まさか……!?

 

「よさそうだな。なら、今からそこに行くってことでいいんだよな?」

 

「そのつもりっス」

 

「とか言って、また道に迷うのだけは止めてよね!?」

 

「わっ、わかってるっスよ……」

 

写真で見たあの外観……そして、ショップの名前……。まさかとは思う。けど、やっぱり間違いない。

 

アテナ。そこは、私が中学時代に仲間たちと過ごした思い出のあるショップであり……同時に絶望へと足を踏み入れたショップでもある……。

 


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