つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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ride25 故郷

思いがけない話だった。今から向かおうとしているショップが、アテナだったなんて。

 

あの場所には、私の中学時代の全てがある。楽しかった思い出も、辛かった思い出も、みんな。

まだ思い出すのが苦痛なほど、負の面が色濃く刻まれた場所。そこに今から、行こうとしているのか。

 

今、私たちは電車に乗って、アテナの最寄り駅に向かっているところだ。窓の外の景色を見ながら、私はそんなことばかり考えていた。

 

「さっきからどうしたんスか?景色ばっかり見てるじゃないっスか」

 

「いや……何でもないよ」

 

「そうっスか?そう言う時って何かありそうな気がするんスけど?」

 

「……何もないよ」

 

思わず素っ気ない返事になってしまう。向こうは心配してくれてるのに……気をつけないとな。

 

「ならいいっスけど……もう少しで駅に到着するっスよ」

 

「……うん、わかった」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

佐原君の言った通り、すぐに駅に着いた。30分もかからなかっただろう。

 

「よし、着いたっス」

 

「……まだ駅から降りただけだろうが」

 

小沢君の言うとおり、駅から降りただけだ。けど……懐かしい。

戻ってきたって感じがする。景色や雰囲気、全てが記憶を呼び起こす。……いい意味でも、悪い意味でも。

 

「で、トウジ。今度は大丈夫なんでしょうね?」

 

「だっ、大丈夫っスよ」

 

森宮さんが恐ろしい形相で詰め寄るものだから、佐原君も言葉を詰まらせる。本当に大丈夫かどうかは別として。

 

「こっちのショップは場所をメモしておいたっスから」

 

「……じゃあ何で、さっきのショップの場所はメモしなかったのよ」

 

まぁ、それなら大丈夫なんだろう。私的には、それじゃあ嫌なんだけど……。

 

「えーっと、確かここに……メモが……」

 

「早くしなさい。いつまでも立ち止まっているのはごめんよ」

 

「ちょ……待つっス。ここに入れ……あれ?」

 

カバンを漁る佐原君は、明らかに焦っていた。これはつまり……雲行きが怪しいよ?

 

「……本当に悪いっス。メモ忘れてきたみた━━」

 

「「またこのパターンか!?」」

 

……全くもって同感だ。結局、さっきと同じ迷子状態じゃないか……。

 

「ちょっと……どうするのよ?私はそのアテナってショップは知らないわよ?」

 

「俺もだぞ。一応、今調べているけどな……」

 

「……マジですまないっス。シオリさんは知らないっスか?」

 

「えっ!?あ、えーっと……私は……」

 

……流れで来たか。まぁ、そうだよね。みんな知らないなら、私に聞いてくるのも無理ないか。

 

「……知ってるよ、私」

 

「えっ、本当っスか!?どこにあるんスか?」

 

「……口で言ってもわかりにくいから、ついてきて。私が案内するから」

 

どうせ調べたら場所はわかる。さっきのように人に聞きながらでもたどり着けるだろうし。

それなら、不本意だけど、私が案内した方がいい。

 

「シオリさん、この辺りのこと知ってるの?」

 

「……私が中学の時にいた町だよ。今の場所には、引っ越してきたから」

 

あまり深くは語らずに、簡潔に話す。というよりは、話したくないからね。

 

けど……久しぶりだ。この町は何にも変わってない。昔はあった店がなくなっていたり、逆に新しい店ができていたり……。

そういう変化はあるけど、この町の雰囲気は……変わらない。

 

だからかな?何というか……落ち着かせてくれる。この町は故郷だから。そんなこの町が、私は好きだった。ずっといられるなら、居たかった……けどね。

 

「……ここだよ」

 

いつの間にか、アテナの前にたどり着いていた。2年ぶりだというのに、迷わず来られたな。それほど、私がこのショップに思い入れがあるんだよな……。

 

大通りに接し、建物も大きい。近くには学校や商業施設もあり、その学校に私は通っていた。

学校帰りに寄って、そこでヴァンガードして……懐かしい。

 

「じゃ、早速入ろーっス!」

 

「……うん」

 

アテナの出入口は自動ドアなので、前に立てば自然と中に迎え入れてくれる。けどな……

 

「……星野、本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫。……大丈夫」

 

踏ん切りがつかない。既にアテナの外観を見ただけでも、少し胸が締め付けられるようなのに……

 

「じゃあ俺が一番っス!」

 

「……小学生ね、本当」

 

「逆にすごいけどな。人目を気にせず、あんな大声出せるのは」

 

私が1人でグダグダしているうちに、3人は中に入っていった。……もうこうなったら入るしかない。1人で待っているのも何か嫌だし。

意を決して、私は自動ドアの前に立つ。ドアが開き、中に入る。

 

内装は何も変わってない。奥にファイトスペースがあり、手前にシングルカードやブースターが売られている。みんなはファイトスペースの方にいた。

何も変わらない、あの頃のままだった。変わってしまったのは……

 

「……私たちだよね」

 

ダメだ。また辛い記憶が心を抉る……。入ったの間違いだったかな……?

 

「……シオリ!?」

 

そんなことを考えている時だった。私の耳に、聞きなれた声が届く。ファイトスペースの傍ら、呆然と立っている1人の少女のものだ。

 

「久しぶりだね……ヒナ」

 

「やっぱり……!会いたかったよ、シオリ!」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

思わぬ再会で、私も驚いた。見たところ、他にはいないみたいだけど……。

同じように、小沢君たちも不思議そうにしていた。関係というか、全くわからないだろうしね。

 

そんなわけで、みんな私のところに来て、5人でファイトテーブルに座っている。

 

「……で、シオリさん。この人は?」

 

「あぁ、えっと……」

 

「桃山ヒナ。シオリとは、中学の時からの友達です」

 

「へぇ〜。俺は佐原トウジっス。シオリさんとはチーム組んでんスよ」

 

「私は森宮リサ。同じく、チームメイトよ」

 

「知ってるよ。シュンキ君から聞いてるから、あなたたちのこと」

 

話したのか……。別に知られたくないことはないんだけどさ。

 

「結構強いみたいだし……。せっかくだから誰かとファイトしてみたいな」

 

おっと、唐突にファイトを……。私がヴァンガードを再開したのも、シュンキ君から聞いてることだろうし、私もファイトの相手に入ってるよね……?

 

「よし、じゃあ俺がファイトを━━」

 

「待ってくれ、佐原」

 

やる気マンマンで佐原君がデッキを取りだそうとすると、それを遮るように小沢君がヒナの前に立つ。

 

「ここは……俺にファイトさせてくれないか?」

 

「ん、珍しくやる気っスね」

 

「珍しくは余計だ。……少し戦ってみたい」

 

確かに、小沢君が自分からファイトを申し出たことってなかったはず。何か理由があるのだろうか。

 

「いいよ、じゃああなたとファイトしようか」

 

「……あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

俺がファイトしたい理由は至って単純だ。奴は照山の知り合い。つまり、奴と同格のファイターだ。

 

あの時の俺は、覚悟もなくファイトして負けた。そして知ったのだ……覚悟の魅せる強さを。

 

「ところで、あなたの名前は?」

 

「……小沢ワタルだ」

 

奴もグランドマスターカップには参加すると言っていた。なら、照山と同レベルのファイターと戦うことは、いい経験として活きてくる。

 

再びまみえた時、あの時になかった覚悟をみせるために……。

 

「ワタル君か。じゃあ、始めようか」

 

「……あぁ」

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」

 

「レッドパルス・ドラゴキッド!(4000)」

 

「銀の茨のお手伝い イオネラ!(5000)」

 

ペイルムーン……銀の茨?まさかこいつは……。

 

「な…黒輪縛鎖のカードじゃないっスか!?しかも、このカードを単品でデッキに入れることはしないはず……。ということは、もう名称デッキを!?」

 

「大正解。組んだばかりだから、色々試してみたいと思ってね」

 

今日発売されたばかりだぞ。もうデッキを組んでいるとは……行動が早い。

 

「じゃあ私から行くね。ドロー、銀の茨の獣使い アナ(7000)にライド!イオネラは先駆で後ろへ。ターンエンド!」

 

「俺のターン。ドロー、ドラゴンモンク ゴジョー(7000)にライド!レッドパルスは先駆で後ろ。2体でアタック!(11000)」

 

「おっと、ダイナマイト・ジャグラーでガード!」

 

「ガードか。ドライブチェック、槍の化身 ター。……クリティカルトリガー」

 

ガードされているから、せっかくのトリガーが無駄になった。本来は2ダメージ与えられたはずなのにな……。

 

「ターンエンドだ」

 

 

ワタル:ダメージ0 ヒナ:ダメージ0

 

 

「私のターン、ドロー。銀の茨の操り人形 りりあん(10000)にライド!」

 

パワー10000か……。攻めにくいな。

 

「銀の茨 ライジング・ドラゴン(9000)をコール!イオネラのブースト、りりあんでアタック!(15000)」

 

あいつみたいにガードする必要はないな。むしろ、俺はブレイクライドを使うデッキだから、ダメージは受けた方がいいだろう。

 

「ノーガード」

 

「ドライブチェック!パープル・トラピージスト」

 

「ダメージチェック、希望の火 エルモだ」

 

「ここでイオネラのスキル!銀の茨のヴァンガードをブーストしたアタックがヴァンガードにヒットしたことで、山札の上から2枚を見て、1枚をソウルへ!」

 

銀の茨の獣使い マリチカがソウルに入る。ペイルムーンはソウルのカードを駆使するクランだから、それの下準備をしているのだろう。

 

「ライジングでアタック!スキルで銀の茨のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(12000)」

 

「ここもノーガード」

 

ダメージは、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド。トリガーではない。

 

「よし、ターンエンド!」

 

 

ワタル:ダメージ2 ヒナ:ダメージ0

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー。バーニングホーン・ドラゴン(9000)にライド!そのままアタック!(13000)」

 

「銀の茨のお手玉師 ナディアでガード!」

 

ここも防ぐか。リアガードも展開できなかったし、アタックは通しておきたかったが……

 

「ドライブチェック、バーサークドラゴン。これでターンエンドだ」

 

 

ワタル:ダメージ2 ヒナ:ダメージ0

 

 

「今のところ、アタックが全然通っていないわね……」

 

「手札に恵まれていないんスかね?リアガードを展開しないのは……」

 

「けど、これからだよ。状況次第でどうなるかはわからないし」

 

その通りだ。ダメージを受けていないということは、リミットブレイクは使えない。一気に勝負をつけられることはまずないだろう。

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!弾ける奇跡!溢れる魅力!ショーの開幕を今告げよう!!ライド、ミラクルポップ エヴァ!!(11000)」

 

とはいえ、ブレイクライドのユニットにライドか。こちらの行動次第で、ブレイクライドされるかが決まってくる。

 

「銀の茨のお手伝い イリナ(7000)をコール!スキルで、山札の上から2枚見て、イリナをソウルへ。残りはデッキの下へ」

 

「ソウルを貯めてきたか……」

 

「それだけじゃないよ?パープル・トラピージスト(6000)をコール!スキルでイリナをソウルに入れて、ソウルからマリチカ(9000)をスペリオルコール!」

 

質のいいリアガードに変えてきた……。さっきのイオネラのスキルでソウルに入ったマリチカが、ここで出てくるとは……。

 

「ライジング・ドラゴンでアタック!(9000)」

 

エヴァは銀の茨を含むカードじゃない。パワー上昇はないが……

 

「ガトリングクロー・ドラゴンでガード!」

 

あってもなくても、ガードに必要なシールドは変わらない……。

 

「イオネラのブースト、エヴァでアタック!エヴァのスキルでSC1し、パワープラス1000!(17000)」

 

「ここはノーガード!」

 

「じゃあツインドライブ!1枚目、銀の茨 ブリージング・ドラゴン。2枚目、銀の茨 ブリージング・ドラゴン。……って、え!?」

 

トリガーなしなのは助かったが、同名カードを引くとは……。ある意味運がいい。

 

「ダメージチェック、封竜カルゼだ」

 

トリガーは引けず、イオネラのスキルでソウルのカードがまた増える。

 

「うう……トラピージストのブースト、マリチカでアタック!(15000)」

 

「ターでガード!」

 

「何でドライブチェックであんな……ターンエンド」

 

 

ワタル:ダメージ3 ヒナ:ダメージ0

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!」

 

そろそろ攻めていきたい。アタックは通らないし、やられてばかりだし……。

 

こんなものじゃないからな……。俺の覚悟は!

 

「進撃せよ!大地を揺るがす炎の王者!!ドーントレスドライブ・ドラゴン(11000)にライド!」

 

「そっちもブレイクライド狙いか……」

 

「バーサーク・ドラゴン(9000)をコール!スキルでCB2、ライジング・ドラゴンを退却!さらに封竜 カルゼ(7000)をコールし、スキルでカードチェンジ!」

 

リアガードは整った。さぁ、行くぞ!

 

「レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(15000)ツインドライブ、1枚目、ドーントレスドライブ・ドラゴン。2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド」

 

タイミングよくトリガーが来てくれたか。これも覚悟が応えてくれたのだろうか。

 

「ブルーレイはクリティカルトリガー。よって、パワーをバーサークへ(14000) クリティカルをドーントレスへ!(15000 ☆2)」

 

「くっ、ダメージチェック。銀の茨の竜使い ルキエと、銀の茨 バーキング・ドラゴン。クリティカルトリガー!効果はエヴァへ!(16000 ☆2)」

 

「まだだ、カルゼのブースト……バーサークでエヴァにアタック!(21000 ☆2)」

 

「通さないよ?ポイゾン・ジャグラーでガード!」

 

「ちっ、ターンエンド!」

 

 

ワタル:ダメージ3(裏2) ヒナ:ダメージ2

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。ライドもコールもしないで、アタックに行くよ!」

 

ライドはともかくコールもしないのか?向こうの手札は2枚。余裕もないのかもしれない。

 

「イオネラのブースト、エヴァでアタック!スキルでSC1、パワープラス1000!(17000)」

 

「ノーガード!」

 

「さっきみたいにならないように……ツインドライブ!1枚目、銀の茨の催眠術師 リディア。2枚目、銀の茨 バーキング・ドラゴン。よし、今度はトリガーだね!」

 

まずいな……。ここでトリガー、しかもクリティカルトリガーとなると、俺のダメージは5だ。

 

「パワーはマリチカ(14000) クリティカルはエヴァへ!(17000 ☆2)」

 

「……ダメージチェック!1枚目、ドラゴンモンク ゲンジョウ。よし!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復し、パワーはドーントレスへ!(16000)」

 

ヒールトリガーに救われたな……。ダメージ5だと、ブレイクライドされたときに辛くなる。

2枚目のダメージは、ベリコウスティドラゴンだった。

 

「トラピージストのブースト、マリチカでバーサーク・ドラゴンにアタック!(20000)」

 

いい判断だな……。無理に攻めるくらいなら、リアガードを潰すか。

 

「……ノーガード」

 

貴重なリアガードだったが、ここでガードしては後に響く。割りきる他になかった。

 

「このターンはまずまずかな?ターンエンド!」

 

 

ワタル:ダメージ4(裏1) ヒナ:ダメージ2

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!」

 

ヒールトリガーで回復したとはいえ、今のダメージは4。なら、

 

「進撃せよ!大地を揺るがす炎の王者!!ブレイクライド!ドーントレスドライブ・ドラゴン!!(11000)」

 

ブレイクライドが使える。これで一気に、ダメージを与えていきたい。

 

「ブレイクライドスキル!ドーントレスにパワープラス10000!(21000)さらにスキルを与える!」

 

「おっ、いい感じになってきたんじゃないっスか?」

 

「そうね。このブレイクライドスキルなら……」

 

「バーニングホーン・ドラゴン(9000)をコールし、ドーントレス単体でアタック!(21000)」

 

レッドパルスのブーストをつけないのは、もちろん考えあってのことだ。さて、このアタックを受けるかどうかだが……

 

「ノーガードするよ!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ベリコウスティドラゴン。2枚目、希望の火 エルモ」

 

「ダメージチェック、銀の茨のお手玉師 ナディア。うっ、ヒールトリガーか……。回復はできないけど、パワーはエヴァへ!(16000)」

 

トリガーは来ないし、逆に向こうにトリガーを引かれる有り様だ。だが、俺にはまだチャンスがある。

 

「ここでブレイクライドスキル!手札3枚を捨てることで、ドーントレスをスタンドさせる!」

 

ドライブチェックで得た2枚と、ガトリングクローを捨てる。これでもう一度アタックし、ドライブチェックを行える。

 

「レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(25000)ツインドライブ、1枚目、ワイバーンガード バリィ。2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド。ゲット!クリティカルトリガー!」

 

よし、これはありがたい。完全ガードまで来たなら、申し分ない。

 

「パワーはバーニングホーンへ(14000) クリティカルはドーントレスへ!(25000 ☆2)」

 

エヴァとアナがダメージに入る。トリガーはない。これなら行けるか?

 

「カルゼのブースト、バーニングホーンでアタック!(21000)」

 

「バーキング・ドラゴンでガード!」

 

「っ、ターンエンドだ」

 

 

ワタル:ダメージ4(裏1) ヒナ:ダメージ5

 

 

「ふ〜危ない危ない……。さ、私のターン!スタンドアンドドロー!」

 

まず確実にブレイクライドは使ってくるだろう。問題はそのライド先なんだが……

 

「全てがひれ伏す鞭の音色に、従わぬ者に痛みあれ!ブレイクライド!銀の茨の竜女帝 ルキエ“Я”!!(11000)」

 

ルキエ……しかも“Я”の方か……!

 

「ブレイクライドスキル!ルキエ“Я”にパワープラス10000!(21000)さらにスキルを与える!」

 

「……ちっ!」

 

「さて……どうなるっスかね?」

 

「小沢君……」

 

まずいな……どうやって防いでいくか、そのことを考えていかないと……

 

「銀の茨 ブリージング・ドラゴン(7000)をコール!そして、ルキエ“Я”のリミットブレイク!CB1、ブリージングをロックして、ソウルからエヴァ(11000)をスペリオルコール!」

 

しかもリアガードも増やしてきた……。ロックしたブリージングの前にコールされているから、ブーストは使えないが……単体でもドーントレスを狙える。

 

「この効果でコールされたエヴァにパワープラス5000!(16000)トラピージストのブースト、マリチカでバーニングホーンにアタック!(15000)」

 

「……ノーガード」

 

「エヴァでヴァンガードにアタック!(16000)」

 

「これもノーガードだ!」

 

ここでダメージトリガーを引けば、次のアタックに対してもガードしやすくなる。だからあえて、ノーガードを選んだ。

 

「ダメージチェック、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド」

 

……まぁ、思い通りにいかないこともあるが。

 

「イオネラのブースト、ルキエ“Я”でアタック!この時、ブレイクライドスキル発動!リアガード2体をソウルに入れ、ソウルから2体をスペリオルコールする!」

 

これがあるから、ダメージトリガーを引きたかったのだが……!

 

「マリチカとトラピージストをソウルへ!ソウルから、銀の茨の操り人形 りりあん(10000)と、パープル・トラピージスト(6000)をコール!」

 

これで後もう一回アタックができるわけだが……コールしたのがトラピージストということは……

 

「トラピージストのスキル!エヴァをソウルに入れて、ソウルから再びエヴァ(11000)をスペリオルコール!」

 

アタックを終えたリアガードを、ソウルを経由して擬似的にスタンドする……。こういったプレイングができるのも、ペイルムーンならではだ。

 

「続けてメインのアタック!このアタックはどう受けるかな!?(26000)」

 

「……当然防ぐ!ワイバーンガード バリィで完全ガード!コストはゴジョーだ!!」

 

「なら、ツインドライブ!1枚目、銀の茨 ライジング・ドラゴン。2枚目、ダイナマイト・ジャグラー。クリティカルトリガー!効果は全てエヴァへ!(16000 ☆2)」

 

残り2回のアタック……どちらもシールドは10000必要。おまけに片方はクリティカルが上がっている。

 

「トラピージストのブースト、りりあんでアタック!(16000)」

 

「ブルーレイ・ドラゴキッドでガード!」

 

「だったらこれで!エヴァでアタック!(16000 ☆2)」

 

「こっちもブルーレイでガードだ!!」

 

「く……防がれたか。ターンエンド!」

 

 

ワタル:ダメージ5(裏1) ヒナ:ダメージ5(裏1)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー」

 

強いな……。ブレイクライドスキルとトラピージストのスキルを合わせて、5回のアタックをしてくるとは。

 

だが、俺もやられてばかりはいられない。このターンで……決める!

 

「何度でも進撃せよ!大地を揺るがし、不屈の魂を宿す炎の王者!!ブレイクライドアゲイン!ドーントレスドライブ・ドラゴン!!(11000)」

 

「……っ!ここでまた!?」

 

「ブレイクライドスキル!ドーントレスにパワープラス10000!(21000)さらにスキルを得る!」

 

これで2回アタックができるようになる。だが、それだけでは終わらない!

 

「バーサーク・ドラゴン(9000)をコール!スキルでCB2、ライジング・ドラゴンを退却!」

 

インターセプトを潰した……これなら行けるか?

 

「ドーントレスでアタック!(21000)」

 

「まだ終わらせないよ!銀の茨の催眠術師 リディアで完全ガード!コストはブリージング・ドラゴン!」

 

「く……まだだ!ツインドライブ、1枚目……封竜 カルゼ。2枚目……槍の化身 ター。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てドーントレスへ!(26000 ☆2)」

 

「えっ!?ここでトリガーを!?」

 

重要な局面では来てくれるんだな。本当助かる……!これなら!!

 

「ブレイクライドスキル!手札3枚を捨てて、ドーントレスをスタンドさせる!」

 

俺の手札はちょうど3枚。それを捨てるということは、守りも捨てることになる。だが……

 

「……ここが攻め時なら、やるしかない!レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(30000 ☆2)」

 

俺の覚悟……あの時にはなかった、俺の覚悟で!このアタックを通してやる!!覚悟がくれる強さで……必ず!!

 

「……ノーガードだね」

 

俺の想いに応えるように……6枚目のダメージが、今目の前で置かれた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜彼って強いね!私も結構強い方なんだけどな〜……」

 

そういうの自分で言うものじゃないよ、ヒナ。

 

「まぁ、小沢君は強いからね」

 

今はファイトが終わり、私はヒナと一緒にいた。ちなみに小沢君たちはというと、

 

「よっしゃ〜!!ネビュラロード・ドラゴンっスよ!!」

 

「声がうるさいわよ……。ん、ボーイングセイバー・ドラゴン“Я”ね」

 

「俺は……と、狼牙の解放者 ガルモールか」

 

このショップで購入した、黒輪縛鎖の開封作業にあたっている。私も一緒にするつもりだったけど、気をつかってくれたのか、ヒナと2人にしてくれた。

 

「……どう?久しぶりにこのショップに来て」

 

「うん……。正直思い返したりしてちょっと辛い……。でも」

 

絶望を与えられた、悲しき思い出の地。忘れたくても忘れられない。全て夢なら、どれほどよかったのだろう?

 

でも、全てが絶望だったわけじゃない。希望だって、ここで手にいれた。この場所での思い出が、私に希望を与えてくれた。

 

希望と絶望、反する2つの記憶が残る場所。それがこのアテナであって……この町という故郷なんだ。

 

「あれ?星野さんじゃない?」

 

声のしたほうを見ると、そこにはこのショップの店長がいた。黒ぶちの眼鏡をかけた男性で、中学の時にはお世話になった。

 

「久しぶりです、店長」

 

「本当、久しぶりだね。1年ぶりくらいかな?」

 

「もう少し間空いてると思います……。今日は、グランドマスターカップに向けた特訓で、たまたま……」

 

「あっ、そうだったんだ。あの3人と?」

 

「そうだよ」

 

この店長も変わってないな……。最後に見たのいつだったかな?

 

「今日はよくこのショップに来てくれたね。星野さんにとっては、辛い場所かもしれないのに……」

 

「たまたまですよ。チームメイトが本当に偶然……」

 

「だとしても、ここに来たことは大きな成長。少しずつ、前に歩き始めた証拠です」

 

前に……か。私は少しずつ、少しずつだけど……前に進んでいる。けど、それは1人じゃ無理だったはずだ。

3人とのつながりが、私を変えたんだと思う。そしてこれからも、小沢君と…森宮さんと…佐原君と…つながることで変わっていける。

 

「シオリさ〜ん!もう時間も遅いし、駅に戻るっスよ!」

 

「わかった!今行くよ!」

 

確かに、時刻は5時を回っていた。いい時間といっていい。

 

「じゃあ店長、ヒナ。もう行くよ。みんなを待たせるわけにはいかないから」

 

「うん。行っておいで。今の仲間たちのところに」

 

「店長……」

 

「けど、シオリにとってここは思い出の場所だから、もし辛くなったら戻ってきていいからね。私もいるし、たまにみんなも顔出すから。私だって、シオリの仲間だから」

 

「ヒナ……」

 

散々行くことをためらってはいたけど、これはこれでよかったのかもしれない。前に進めたから。本の少しだけど、変われていたから。

 

いつの日か、完全に変われるその時は……来る。私はそう信じてる。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

その帰り道のこと。3人と別れたリサは、自分の家に戻っている最中だった。

 

「シオリさんの中学時代の友達ね……。仲もよさそうだったけど、それにしては何か抵抗があったような……」

 

電車の中での沈んだ雰囲気、アテナに着いた時も、入るのをためらっていたようだった。

 

「何かあるのかしら……少し心配だわ。ん?」

 

そう考えているうちに家に着き、ポストを開けると、そこには白い封筒が。

 

「……まさか」

 

リサは急いで家に入り、自分の部屋に向かう。そして、丁寧に封筒を破り中を見た。

その中身を見て、リサは驚き、そして喜びの表情を浮かべる。

 

「……案外、私って運がいいのね……!これはすぐみんなに知らせないと……!」

 

そして次の日、リサによって知らされた話に、シオリたちは驚きを隠せないこととなる……。

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