思いがけない話だった。今から向かおうとしているショップが、アテナだったなんて。
あの場所には、私の中学時代の全てがある。楽しかった思い出も、辛かった思い出も、みんな。
まだ思い出すのが苦痛なほど、負の面が色濃く刻まれた場所。そこに今から、行こうとしているのか。
今、私たちは電車に乗って、アテナの最寄り駅に向かっているところだ。窓の外の景色を見ながら、私はそんなことばかり考えていた。
「さっきからどうしたんスか?景色ばっかり見てるじゃないっスか」
「いや……何でもないよ」
「そうっスか?そう言う時って何かありそうな気がするんスけど?」
「……何もないよ」
思わず素っ気ない返事になってしまう。向こうは心配してくれてるのに……気をつけないとな。
「ならいいっスけど……もう少しで駅に到着するっスよ」
「……うん、わかった」
***
佐原君の言った通り、すぐに駅に着いた。30分もかからなかっただろう。
「よし、着いたっス」
「……まだ駅から降りただけだろうが」
小沢君の言うとおり、駅から降りただけだ。けど……懐かしい。
戻ってきたって感じがする。景色や雰囲気、全てが記憶を呼び起こす。……いい意味でも、悪い意味でも。
「で、トウジ。今度は大丈夫なんでしょうね?」
「だっ、大丈夫っスよ」
森宮さんが恐ろしい形相で詰め寄るものだから、佐原君も言葉を詰まらせる。本当に大丈夫かどうかは別として。
「こっちのショップは場所をメモしておいたっスから」
「……じゃあ何で、さっきのショップの場所はメモしなかったのよ」
まぁ、それなら大丈夫なんだろう。私的には、それじゃあ嫌なんだけど……。
「えーっと、確かここに……メモが……」
「早くしなさい。いつまでも立ち止まっているのはごめんよ」
「ちょ……待つっス。ここに入れ……あれ?」
カバンを漁る佐原君は、明らかに焦っていた。これはつまり……雲行きが怪しいよ?
「……本当に悪いっス。メモ忘れてきたみた━━」
「「またこのパターンか!?」」
……全くもって同感だ。結局、さっきと同じ迷子状態じゃないか……。
「ちょっと……どうするのよ?私はそのアテナってショップは知らないわよ?」
「俺もだぞ。一応、今調べているけどな……」
「……マジですまないっス。シオリさんは知らないっスか?」
「えっ!?あ、えーっと……私は……」
……流れで来たか。まぁ、そうだよね。みんな知らないなら、私に聞いてくるのも無理ないか。
「……知ってるよ、私」
「えっ、本当っスか!?どこにあるんスか?」
「……口で言ってもわかりにくいから、ついてきて。私が案内するから」
どうせ調べたら場所はわかる。さっきのように人に聞きながらでもたどり着けるだろうし。
それなら、不本意だけど、私が案内した方がいい。
「シオリさん、この辺りのこと知ってるの?」
「……私が中学の時にいた町だよ。今の場所には、引っ越してきたから」
あまり深くは語らずに、簡潔に話す。というよりは、話したくないからね。
けど……久しぶりだ。この町は何にも変わってない。昔はあった店がなくなっていたり、逆に新しい店ができていたり……。
そういう変化はあるけど、この町の雰囲気は……変わらない。
だからかな?何というか……落ち着かせてくれる。この町は故郷だから。そんなこの町が、私は好きだった。ずっといられるなら、居たかった……けどね。
「……ここだよ」
いつの間にか、アテナの前にたどり着いていた。2年ぶりだというのに、迷わず来られたな。それほど、私がこのショップに思い入れがあるんだよな……。
大通りに接し、建物も大きい。近くには学校や商業施設もあり、その学校に私は通っていた。
学校帰りに寄って、そこでヴァンガードして……懐かしい。
「じゃ、早速入ろーっス!」
「……うん」
アテナの出入口は自動ドアなので、前に立てば自然と中に迎え入れてくれる。けどな……
「……星野、本当に大丈夫か?」
「大丈夫。……大丈夫」
踏ん切りがつかない。既にアテナの外観を見ただけでも、少し胸が締め付けられるようなのに……
「じゃあ俺が一番っス!」
「……小学生ね、本当」
「逆にすごいけどな。人目を気にせず、あんな大声出せるのは」
私が1人でグダグダしているうちに、3人は中に入っていった。……もうこうなったら入るしかない。1人で待っているのも何か嫌だし。
意を決して、私は自動ドアの前に立つ。ドアが開き、中に入る。
内装は何も変わってない。奥にファイトスペースがあり、手前にシングルカードやブースターが売られている。みんなはファイトスペースの方にいた。
何も変わらない、あの頃のままだった。変わってしまったのは……
「……私たちだよね」
ダメだ。また辛い記憶が心を抉る……。入ったの間違いだったかな……?
「……シオリ!?」
そんなことを考えている時だった。私の耳に、聞きなれた声が届く。ファイトスペースの傍ら、呆然と立っている1人の少女のものだ。
「久しぶりだね……ヒナ」
「やっぱり……!会いたかったよ、シオリ!」
***
思わぬ再会で、私も驚いた。見たところ、他にはいないみたいだけど……。
同じように、小沢君たちも不思議そうにしていた。関係というか、全くわからないだろうしね。
そんなわけで、みんな私のところに来て、5人でファイトテーブルに座っている。
「……で、シオリさん。この人は?」
「あぁ、えっと……」
「桃山ヒナ。シオリとは、中学の時からの友達です」
「へぇ〜。俺は佐原トウジっス。シオリさんとはチーム組んでんスよ」
「私は森宮リサ。同じく、チームメイトよ」
「知ってるよ。シュンキ君から聞いてるから、あなたたちのこと」
話したのか……。別に知られたくないことはないんだけどさ。
「結構強いみたいだし……。せっかくだから誰かとファイトしてみたいな」
おっと、唐突にファイトを……。私がヴァンガードを再開したのも、シュンキ君から聞いてることだろうし、私もファイトの相手に入ってるよね……?
「よし、じゃあ俺がファイトを━━」
「待ってくれ、佐原」
やる気マンマンで佐原君がデッキを取りだそうとすると、それを遮るように小沢君がヒナの前に立つ。
「ここは……俺にファイトさせてくれないか?」
「ん、珍しくやる気っスね」
「珍しくは余計だ。……少し戦ってみたい」
確かに、小沢君が自分からファイトを申し出たことってなかったはず。何か理由があるのだろうか。
「いいよ、じゃああなたとファイトしようか」
「……あぁ」
***
俺がファイトしたい理由は至って単純だ。奴は照山の知り合い。つまり、奴と同格のファイターだ。
あの時の俺は、覚悟もなくファイトして負けた。そして知ったのだ……覚悟の魅せる強さを。
「ところで、あなたの名前は?」
「……小沢ワタルだ」
奴もグランドマスターカップには参加すると言っていた。なら、照山と同レベルのファイターと戦うことは、いい経験として活きてくる。
再びまみえた時、あの時になかった覚悟をみせるために……。
「ワタル君か。じゃあ、始めようか」
「……あぁ」
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
「レッドパルス・ドラゴキッド!(4000)」
「銀の茨のお手伝い イオネラ!(5000)」
ペイルムーン……銀の茨?まさかこいつは……。
「な…黒輪縛鎖のカードじゃないっスか!?しかも、このカードを単品でデッキに入れることはしないはず……。ということは、もう名称デッキを!?」
「大正解。組んだばかりだから、色々試してみたいと思ってね」
今日発売されたばかりだぞ。もうデッキを組んでいるとは……行動が早い。
「じゃあ私から行くね。ドロー、銀の茨の獣使い アナ(7000)にライド!イオネラは先駆で後ろへ。ターンエンド!」
「俺のターン。ドロー、ドラゴンモンク ゴジョー(7000)にライド!レッドパルスは先駆で後ろ。2体でアタック!(11000)」
「おっと、ダイナマイト・ジャグラーでガード!」
「ガードか。ドライブチェック、槍の化身 ター。……クリティカルトリガー」
ガードされているから、せっかくのトリガーが無駄になった。本来は2ダメージ与えられたはずなのにな……。
「ターンエンドだ」
ワタル:ダメージ0 ヒナ:ダメージ0
「私のターン、ドロー。銀の茨の操り人形 りりあん(10000)にライド!」
パワー10000か……。攻めにくいな。
「銀の茨 ライジング・ドラゴン(9000)をコール!イオネラのブースト、りりあんでアタック!(15000)」
あいつみたいにガードする必要はないな。むしろ、俺はブレイクライドを使うデッキだから、ダメージは受けた方がいいだろう。
「ノーガード」
「ドライブチェック!パープル・トラピージスト」
「ダメージチェック、希望の火 エルモだ」
「ここでイオネラのスキル!銀の茨のヴァンガードをブーストしたアタックがヴァンガードにヒットしたことで、山札の上から2枚を見て、1枚をソウルへ!」
銀の茨の獣使い マリチカがソウルに入る。ペイルムーンはソウルのカードを駆使するクランだから、それの下準備をしているのだろう。
「ライジングでアタック!スキルで銀の茨のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(12000)」
「ここもノーガード」
ダメージは、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド。トリガーではない。
「よし、ターンエンド!」
ワタル:ダメージ2 ヒナ:ダメージ0
「俺のターン、スタンドアンドドロー。バーニングホーン・ドラゴン(9000)にライド!そのままアタック!(13000)」
「銀の茨のお手玉師 ナディアでガード!」
ここも防ぐか。リアガードも展開できなかったし、アタックは通しておきたかったが……
「ドライブチェック、バーサークドラゴン。これでターンエンドだ」
ワタル:ダメージ2 ヒナ:ダメージ0
「今のところ、アタックが全然通っていないわね……」
「手札に恵まれていないんスかね?リアガードを展開しないのは……」
「けど、これからだよ。状況次第でどうなるかはわからないし」
その通りだ。ダメージを受けていないということは、リミットブレイクは使えない。一気に勝負をつけられることはまずないだろう。
「私のターン、スタンドアンドドロー!弾ける奇跡!溢れる魅力!ショーの開幕を今告げよう!!ライド、ミラクルポップ エヴァ!!(11000)」
とはいえ、ブレイクライドのユニットにライドか。こちらの行動次第で、ブレイクライドされるかが決まってくる。
「銀の茨のお手伝い イリナ(7000)をコール!スキルで、山札の上から2枚見て、イリナをソウルへ。残りはデッキの下へ」
「ソウルを貯めてきたか……」
「それだけじゃないよ?パープル・トラピージスト(6000)をコール!スキルでイリナをソウルに入れて、ソウルからマリチカ(9000)をスペリオルコール!」
質のいいリアガードに変えてきた……。さっきのイオネラのスキルでソウルに入ったマリチカが、ここで出てくるとは……。
「ライジング・ドラゴンでアタック!(9000)」
エヴァは銀の茨を含むカードじゃない。パワー上昇はないが……
「ガトリングクロー・ドラゴンでガード!」
あってもなくても、ガードに必要なシールドは変わらない……。
「イオネラのブースト、エヴァでアタック!エヴァのスキルでSC1し、パワープラス1000!(17000)」
「ここはノーガード!」
「じゃあツインドライブ!1枚目、銀の茨 ブリージング・ドラゴン。2枚目、銀の茨 ブリージング・ドラゴン。……って、え!?」
トリガーなしなのは助かったが、同名カードを引くとは……。ある意味運がいい。
「ダメージチェック、封竜カルゼだ」
トリガーは引けず、イオネラのスキルでソウルのカードがまた増える。
「うう……トラピージストのブースト、マリチカでアタック!(15000)」
「ターでガード!」
「何でドライブチェックであんな……ターンエンド」
ワタル:ダメージ3 ヒナ:ダメージ0
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
そろそろ攻めていきたい。アタックは通らないし、やられてばかりだし……。
こんなものじゃないからな……。俺の覚悟は!
「進撃せよ!大地を揺るがす炎の王者!!ドーントレスドライブ・ドラゴン(11000)にライド!」
「そっちもブレイクライド狙いか……」
「バーサーク・ドラゴン(9000)をコール!スキルでCB2、ライジング・ドラゴンを退却!さらに封竜 カルゼ(7000)をコールし、スキルでカードチェンジ!」
リアガードは整った。さぁ、行くぞ!
「レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(15000)ツインドライブ、1枚目、ドーントレスドライブ・ドラゴン。2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド」
タイミングよくトリガーが来てくれたか。これも覚悟が応えてくれたのだろうか。
「ブルーレイはクリティカルトリガー。よって、パワーをバーサークへ(14000) クリティカルをドーントレスへ!(15000 ☆2)」
「くっ、ダメージチェック。銀の茨の竜使い ルキエと、銀の茨 バーキング・ドラゴン。クリティカルトリガー!効果はエヴァへ!(16000 ☆2)」
「まだだ、カルゼのブースト……バーサークでエヴァにアタック!(21000 ☆2)」
「通さないよ?ポイゾン・ジャグラーでガード!」
「ちっ、ターンエンド!」
ワタル:ダメージ3(裏2) ヒナ:ダメージ2
「私のターン、スタンドアンドドロー。ライドもコールもしないで、アタックに行くよ!」
ライドはともかくコールもしないのか?向こうの手札は2枚。余裕もないのかもしれない。
「イオネラのブースト、エヴァでアタック!スキルでSC1、パワープラス1000!(17000)」
「ノーガード!」
「さっきみたいにならないように……ツインドライブ!1枚目、銀の茨の催眠術師 リディア。2枚目、銀の茨 バーキング・ドラゴン。よし、今度はトリガーだね!」
まずいな……。ここでトリガー、しかもクリティカルトリガーとなると、俺のダメージは5だ。
「パワーはマリチカ(14000) クリティカルはエヴァへ!(17000 ☆2)」
「……ダメージチェック!1枚目、ドラゴンモンク ゲンジョウ。よし!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復し、パワーはドーントレスへ!(16000)」
ヒールトリガーに救われたな……。ダメージ5だと、ブレイクライドされたときに辛くなる。
2枚目のダメージは、ベリコウスティドラゴンだった。
「トラピージストのブースト、マリチカでバーサーク・ドラゴンにアタック!(20000)」
いい判断だな……。無理に攻めるくらいなら、リアガードを潰すか。
「……ノーガード」
貴重なリアガードだったが、ここでガードしては後に響く。割りきる他になかった。
「このターンはまずまずかな?ターンエンド!」
ワタル:ダメージ4(裏1) ヒナ:ダメージ2
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
ヒールトリガーで回復したとはいえ、今のダメージは4。なら、
「進撃せよ!大地を揺るがす炎の王者!!ブレイクライド!ドーントレスドライブ・ドラゴン!!(11000)」
ブレイクライドが使える。これで一気に、ダメージを与えていきたい。
「ブレイクライドスキル!ドーントレスにパワープラス10000!(21000)さらにスキルを与える!」
「おっ、いい感じになってきたんじゃないっスか?」
「そうね。このブレイクライドスキルなら……」
「バーニングホーン・ドラゴン(9000)をコールし、ドーントレス単体でアタック!(21000)」
レッドパルスのブーストをつけないのは、もちろん考えあってのことだ。さて、このアタックを受けるかどうかだが……
「ノーガードするよ!」
「ツインドライブ!1枚目、ベリコウスティドラゴン。2枚目、希望の火 エルモ」
「ダメージチェック、銀の茨のお手玉師 ナディア。うっ、ヒールトリガーか……。回復はできないけど、パワーはエヴァへ!(16000)」
トリガーは来ないし、逆に向こうにトリガーを引かれる有り様だ。だが、俺にはまだチャンスがある。
「ここでブレイクライドスキル!手札3枚を捨てることで、ドーントレスをスタンドさせる!」
ドライブチェックで得た2枚と、ガトリングクローを捨てる。これでもう一度アタックし、ドライブチェックを行える。
「レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(25000)ツインドライブ、1枚目、ワイバーンガード バリィ。2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド。ゲット!クリティカルトリガー!」
よし、これはありがたい。完全ガードまで来たなら、申し分ない。
「パワーはバーニングホーンへ(14000) クリティカルはドーントレスへ!(25000 ☆2)」
エヴァとアナがダメージに入る。トリガーはない。これなら行けるか?
「カルゼのブースト、バーニングホーンでアタック!(21000)」
「バーキング・ドラゴンでガード!」
「っ、ターンエンドだ」
ワタル:ダメージ4(裏1) ヒナ:ダメージ5
「ふ〜危ない危ない……。さ、私のターン!スタンドアンドドロー!」
まず確実にブレイクライドは使ってくるだろう。問題はそのライド先なんだが……
「全てがひれ伏す鞭の音色に、従わぬ者に痛みあれ!ブレイクライド!銀の茨の竜女帝 ルキエ“Я”!!(11000)」
ルキエ……しかも“Я”の方か……!
「ブレイクライドスキル!ルキエ“Я”にパワープラス10000!(21000)さらにスキルを与える!」
「……ちっ!」
「さて……どうなるっスかね?」
「小沢君……」
まずいな……どうやって防いでいくか、そのことを考えていかないと……
「銀の茨 ブリージング・ドラゴン(7000)をコール!そして、ルキエ“Я”のリミットブレイク!CB1、ブリージングをロックして、ソウルからエヴァ(11000)をスペリオルコール!」
しかもリアガードも増やしてきた……。ロックしたブリージングの前にコールされているから、ブーストは使えないが……単体でもドーントレスを狙える。
「この効果でコールされたエヴァにパワープラス5000!(16000)トラピージストのブースト、マリチカでバーニングホーンにアタック!(15000)」
「……ノーガード」
「エヴァでヴァンガードにアタック!(16000)」
「これもノーガードだ!」
ここでダメージトリガーを引けば、次のアタックに対してもガードしやすくなる。だからあえて、ノーガードを選んだ。
「ダメージチェック、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド」
……まぁ、思い通りにいかないこともあるが。
「イオネラのブースト、ルキエ“Я”でアタック!この時、ブレイクライドスキル発動!リアガード2体をソウルに入れ、ソウルから2体をスペリオルコールする!」
これがあるから、ダメージトリガーを引きたかったのだが……!
「マリチカとトラピージストをソウルへ!ソウルから、銀の茨の操り人形 りりあん(10000)と、パープル・トラピージスト(6000)をコール!」
これで後もう一回アタックができるわけだが……コールしたのがトラピージストということは……
「トラピージストのスキル!エヴァをソウルに入れて、ソウルから再びエヴァ(11000)をスペリオルコール!」
アタックを終えたリアガードを、ソウルを経由して擬似的にスタンドする……。こういったプレイングができるのも、ペイルムーンならではだ。
「続けてメインのアタック!このアタックはどう受けるかな!?(26000)」
「……当然防ぐ!ワイバーンガード バリィで完全ガード!コストはゴジョーだ!!」
「なら、ツインドライブ!1枚目、銀の茨 ライジング・ドラゴン。2枚目、ダイナマイト・ジャグラー。クリティカルトリガー!効果は全てエヴァへ!(16000 ☆2)」
残り2回のアタック……どちらもシールドは10000必要。おまけに片方はクリティカルが上がっている。
「トラピージストのブースト、りりあんでアタック!(16000)」
「ブルーレイ・ドラゴキッドでガード!」
「だったらこれで!エヴァでアタック!(16000 ☆2)」
「こっちもブルーレイでガードだ!!」
「く……防がれたか。ターンエンド!」
ワタル:ダメージ5(裏1) ヒナ:ダメージ5(裏1)
「俺のターン、スタンドアンドドロー」
強いな……。ブレイクライドスキルとトラピージストのスキルを合わせて、5回のアタックをしてくるとは。
だが、俺もやられてばかりはいられない。このターンで……決める!
「何度でも進撃せよ!大地を揺るがし、不屈の魂を宿す炎の王者!!ブレイクライドアゲイン!ドーントレスドライブ・ドラゴン!!(11000)」
「……っ!ここでまた!?」
「ブレイクライドスキル!ドーントレスにパワープラス10000!(21000)さらにスキルを得る!」
これで2回アタックができるようになる。だが、それだけでは終わらない!
「バーサーク・ドラゴン(9000)をコール!スキルでCB2、ライジング・ドラゴンを退却!」
インターセプトを潰した……これなら行けるか?
「ドーントレスでアタック!(21000)」
「まだ終わらせないよ!銀の茨の催眠術師 リディアで完全ガード!コストはブリージング・ドラゴン!」
「く……まだだ!ツインドライブ、1枚目……封竜 カルゼ。2枚目……槍の化身 ター。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てドーントレスへ!(26000 ☆2)」
「えっ!?ここでトリガーを!?」
重要な局面では来てくれるんだな。本当助かる……!これなら!!
「ブレイクライドスキル!手札3枚を捨てて、ドーントレスをスタンドさせる!」
俺の手札はちょうど3枚。それを捨てるということは、守りも捨てることになる。だが……
「……ここが攻め時なら、やるしかない!レッドパルスのブースト、ドーントレスでアタック!(30000 ☆2)」
俺の覚悟……あの時にはなかった、俺の覚悟で!このアタックを通してやる!!覚悟がくれる強さで……必ず!!
「……ノーガードだね」
俺の想いに応えるように……6枚目のダメージが、今目の前で置かれた。
***
「いや〜彼って強いね!私も結構強い方なんだけどな〜……」
そういうの自分で言うものじゃないよ、ヒナ。
「まぁ、小沢君は強いからね」
今はファイトが終わり、私はヒナと一緒にいた。ちなみに小沢君たちはというと、
「よっしゃ〜!!ネビュラロード・ドラゴンっスよ!!」
「声がうるさいわよ……。ん、ボーイングセイバー・ドラゴン“Я”ね」
「俺は……と、狼牙の解放者 ガルモールか」
このショップで購入した、黒輪縛鎖の開封作業にあたっている。私も一緒にするつもりだったけど、気をつかってくれたのか、ヒナと2人にしてくれた。
「……どう?久しぶりにこのショップに来て」
「うん……。正直思い返したりしてちょっと辛い……。でも」
絶望を与えられた、悲しき思い出の地。忘れたくても忘れられない。全て夢なら、どれほどよかったのだろう?
でも、全てが絶望だったわけじゃない。希望だって、ここで手にいれた。この場所での思い出が、私に希望を与えてくれた。
希望と絶望、反する2つの記憶が残る場所。それがこのアテナであって……この町という故郷なんだ。
「あれ?星野さんじゃない?」
声のしたほうを見ると、そこにはこのショップの店長がいた。黒ぶちの眼鏡をかけた男性で、中学の時にはお世話になった。
「久しぶりです、店長」
「本当、久しぶりだね。1年ぶりくらいかな?」
「もう少し間空いてると思います……。今日は、グランドマスターカップに向けた特訓で、たまたま……」
「あっ、そうだったんだ。あの3人と?」
「そうだよ」
この店長も変わってないな……。最後に見たのいつだったかな?
「今日はよくこのショップに来てくれたね。星野さんにとっては、辛い場所かもしれないのに……」
「たまたまですよ。チームメイトが本当に偶然……」
「だとしても、ここに来たことは大きな成長。少しずつ、前に歩き始めた証拠です」
前に……か。私は少しずつ、少しずつだけど……前に進んでいる。けど、それは1人じゃ無理だったはずだ。
3人とのつながりが、私を変えたんだと思う。そしてこれからも、小沢君と…森宮さんと…佐原君と…つながることで変わっていける。
「シオリさ〜ん!もう時間も遅いし、駅に戻るっスよ!」
「わかった!今行くよ!」
確かに、時刻は5時を回っていた。いい時間といっていい。
「じゃあ店長、ヒナ。もう行くよ。みんなを待たせるわけにはいかないから」
「うん。行っておいで。今の仲間たちのところに」
「店長……」
「けど、シオリにとってここは思い出の場所だから、もし辛くなったら戻ってきていいからね。私もいるし、たまにみんなも顔出すから。私だって、シオリの仲間だから」
「ヒナ……」
散々行くことをためらってはいたけど、これはこれでよかったのかもしれない。前に進めたから。本の少しだけど、変われていたから。
いつの日か、完全に変われるその時は……来る。私はそう信じてる。
***
その帰り道のこと。3人と別れたリサは、自分の家に戻っている最中だった。
「シオリさんの中学時代の友達ね……。仲もよさそうだったけど、それにしては何か抵抗があったような……」
電車の中での沈んだ雰囲気、アテナに着いた時も、入るのをためらっていたようだった。
「何かあるのかしら……少し心配だわ。ん?」
そう考えているうちに家に着き、ポストを開けると、そこには白い封筒が。
「……まさか」
リサは急いで家に入り、自分の部屋に向かう。そして、丁寧に封筒を破り中を見た。
その中身を見て、リサは驚き、そして喜びの表情を浮かべる。
「……案外、私って運がいいのね……!これはすぐみんなに知らせないと……!」
そして次の日、リサによって知らされた話に、シオリたちは驚きを隠せないこととなる……。