つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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ride28 戦士の境遇

『……シオリ、大丈夫?』

 

「ん……ここは?」

 

気がつくと、私は見覚えのある場所にいた。昨日と同じ、あの場所だ。

 

『気を失ったんだよ。無理に力を使ったから』

 

気を……?そうだ、私は吉崎さんとファイトして……ヒールトリガーを引こうと、あの感覚になって……そしたら強い目眩に襲われて……。

 

『君はまだ、せいぜい1回が限度だよ。それを2回も使ったら……無理もないよ』

 

「……あの時は、ヒールトリガーを引くことだけ考えてたから……」

 

自分の意思で使ったわけじゃないし、まさか気を失うなんて思ってないし……。

 

『……強すぎる力は、身を滅ぼすよ。使い方は間違えてはいけない。これはあくまでも、つながりを得る力。勝利だけの力じゃない』

 

「……うん」

 

この力のことはまだよくわからないけど、さっきのファイトで痛感した。

好きなカードを手中に入れられる。普通では考えられない力に、私はつい頼ってしまった。もう少しで、もう少しで……その繰り返しになるところだった。

 

そんなの公平でもなんでもないし、対戦相手の気持ちを軽々と折っているものだ。自分勝手に結果をねじ曲げて、その先に得た勝利に意味はない気がする。

 

「使いどころは見極めるよ。どうせ1回きりの力みたいだし、まだあまり使い方もわからないし……」

 

『それなら大丈夫だね。力に溺れるなんてことにはならないよ』

 

別に悪い力ではない。あくまでつながりを得る力……らしいし、1度きりの使いどころを誤らなければいいだけだ。

どうせ無理に使おうとしても、また気を失う羽目になるし。

 

「……そうだ、この力の使い方、まだわかっていないんだけど……教えてくれるかな?」

 

『わかった。他ならない君の頼みならね』

 

……何だか上から目線な気がする。私の方が年上ってことでいいんだよね……?ほら、目の前の私って中学時代の私だし……。

 

『……って言ったんだけど……どうやらそろそろお別れみたいだ』

 

「えっ、お別れって待っ━━━」

 

そう言い終わる前に、私は現実へと引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

 

知らない部屋だ。長方形のテーブルが部屋の中心に置かれ、その近くには鏡台が置かれている。多分ここは……

 

「……控え室?」

 

と、イベントのスタッフらしき人が控え室に入ってくる。すぐに私が目を覚ましたことに気づいたみたいで……

 

「あっ!気がつきました?」

 

「はい……。えっと、ここは……」

 

「ステージ裏の控え室ですよ。あなたがステージで気を失って、ここに運んだんです」

 

やっぱり控え室で当たりだったみたいだ。

 

「さっきまで、お友達の5人もいたんですけど、今は客席に戻ってますよ」

 

5人……ということは、ミズキたちも来てくれたんだ。心配かけたな……。後で謝っておかないと。

 

「じゃあ吉崎さんに知らせて来ますね。あなたが目を覚ましたことを」

 

「あ……はい。お願いします……」

 

再びスタッフは控え室からいなくなり、私だけが残された。

 

「……今頃どうなっているんだろう?」

 

そのままイベントは進められているのか、それとも中断されているか……後者なら、私かなり迷惑かけてるよね!?

 

そうならないためにも、やはりあの感覚になる時には気をつけないとな……。

 

「……つながりを得る力、か」

 

ユニットとのつながりをもたらす力。結局、発動の仕方も聞きそびれたわけだけど……

 

「できれば使ってみたいな……。アルフレッドたちとつながっていられる、この力を」

 

とは言え、使い方もわからなければ、回数制限もあるわけだし……。回数に関しては、むしろありがたいけどね……。

 

「……入っていいかな?」

 

その時、控え室の扉を叩く音が聞こえた。そうして入って来たのは、さっきのスタッフではなく……

 

「……吉崎さん!?」

 

「え、そんなに驚かれるもの!?」

 

「いや、あのステージの方は……?」

 

「ちょうど休憩時間に入ったから問題ないよ。それに、星野さんのことが心配だったし」

 

まさかの吉崎さんの登場で、私は正直ビックリしている。けど、心配してもらえたのは嬉しかった。

 

「でも、あの時いきなり倒れたのはビックリしたよ」

 

「いや……何か、すいません……」

 

「別に謝らなくてもいいよ。けどそれは、星野さんがヴァンガードのことを、気を失うほど好きだってことでしょ?」

 

凄いな、それ。けど、それくらいの想いがないと、ユニットとのつながりなんて生まれないか。私の勝手な考えだけど。

 

「ヴァンガードが好き……って言うよりは、ファイト中にも言いましたけど、私はアルフレッドが好きなんです」

 

「アルフレッドが……」

 

「……私、ずっと1人で、友達もいなくて……。そんな時に、このカードと出会って友達ができたんです」

 

自然と、私は自分自身のことについて話していた。

 

「それから色々あって、一度止めてしまったんです。ヴァンガードを。けど、高校生になってから、私はまたアルフレッドと出会って、もう1度ヴァンガードを始めたんです」

 

そうすることで、また友達にも恵まれることもできた。あの時、アルフレッドと出会わなければ、みんなとの出会いもなかっただろう。

 

「今日使ったデッキは、昔の物です。今使っているのは、ゴールドパラディンのデッキで……」

 

「ゴールドパラディンでアルフレッド……ということは、解放者だよね?」

 

「はい。高校生になってから……と言ってもまだ1年も経ってないですけど、ずっとゴールドパラディンで、今日も久しぶりにロイヤルパラディンを使って……」

 

あの時は、本当に偶然だった。クランを変えて、私の前に現れたあなたからは、過去から変わらないといけないというメッセージを感じた気がした。

 

それで、あなたを……アルフレッドを手にして、ヴァンガードを再開した。思えば、あの時はヴァンガードをする気すらなかったのに。

 

「そうなんだ……ん?」

 

「どうしたんですか?」

 

「高校に入って、まだ1年も経っていないってことは……1年生?」

 

「え?そうですけど……?」

 

「じゃあ、僕たち同級生だ!僕と同じくらいかなって思ってたけど、本当に同い年とは思ってなかったけどね」

 

「えっ!?吉崎さんと同級生って……それで、世界レベルなんて……」

 

凄いよ、実際。私と同じだけ生きて、それで世界って……立っている場所が明らかに違う。

 

「……でも、僕が世界レベルになれたのは、他でもないブラスター・ブレードのおかげだ」

 

吉崎さんにとって、大切なユニット……。そう言っていたはず。

 

「……実はさ、僕も昔からずっと1人だったんだ」

 

「……えっ」

 

吉崎さんも……1人だった……!?

 

「けど、ただ1人だったわけじゃない……。まわりから、ひどい仕打ちをね……何年も、終わりが見えないほど続いたよ」

 

……言葉でははっきり言わなかったけど、それは虐めだ。頼れる仲間もいない中、毎日当たり前のように、ひどい目にあっていたのだろう。

 

「そんな時だよ。僕はある人を知った。先導アイチって言う、アニメの中の架空の人物だけどね」

 

「あ……」

 

「僕と似た境遇でありながら、1枚のカード……ブラスター・ブレードに導かれ、多くの仲間を得ていった。そんな姿を見て、僕もアイチのようになれたら……そう思ったんだ」

 

絶望しかない日々の中で、吉崎さんはブラスター・ブレードに……と言うよりは、先導アイチに光を見いだしたのだろう。

 

「それから僕は、ヴァンガードについて調べ、ブラスター・ブレードを手にし、デッキを組んだ。ヴァンガードは世界的に流行していたから、もしかしたら、ヴァンガードを通じて友達ができるんじゃないかって、淡い期待を持ってた。けど……」

 

そこで吉崎さんの表情が暗くなる。

 

「……そこまで上手くいくほど、甘くはなかったよ。いくらヴァンガードを始めたからって、そんなにすぐに環境が変わるわけじゃなかった」

 

私と……いや、それ以上かもしれないほど……大変だったんだな。

 

「けど、ヴァンガードを続けていくうちに、まわりの環境も少しずつ……変わっていったよ。友達もできた。一緒にチームを組んでくれた仲間も」

 

いつしか、吉崎さんの表情は晴れ晴れとしたものになっていた。

 

「やがて僕は、グランドマスターカップ決勝大会で優勝を果たし、今では世界で戦っている。その高みまで僕を導いてくれたのは、先導アイチであって……他でもないブラスター・ブレードだ」

 

想像以上の話が、そこにはあった。私には、シュンキ君やヒナ……多くの仲間がいた。でも吉崎さんは……ずっと1人で……。

 

「…………」

 

「あ、いや暗くならないで!そんなつもりで話したんじゃないから……。でも、他人にこんな風に話したのは初めてだよ」

 

話の流れからとは言え、過去を打ち明けることには勇気がいる。辛いことに目を向ける勇気。それを他人に知ってもらう勇気。

 

私には……まだできないだろうな。もし、小沢君たちに過去を話すことになったら……逃げ出してしまうかもしれない。

 

「何かごめんね。僕の話に付き合わせて……」

 

「そんなことないですよ、吉崎さん」

 

「ナオヤでいいよ。同い年だし、そんな上下関係もないし。今日はいいファイトができたし……ね?」

 

ひょんなことから仲良くなれる。ヴァンガードをしていると、こういうことがあるからいいものだ。

そう言えば、ミズキと知り合ったのも、ショップでたまたま出会ったからだったよね……。

 

『……ミズキでいいよ、シオリちゃん』

 

「……シオリでいいよ、ナオヤさん」

 

「……うん、わかった。じゃあ改めて、よろしくシオリさん!」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

それからナオヤさんは、休憩を終えてステージに戻った。私は体調も良くなってきたので、客席に戻った。

 

やはりみんな心配していたみたいで……ミズキなんか泣いてくれたよ。本当にありがとう。

 

で、それ以降は何事もなく、ファイトもナオヤさんが全勝した。けど、最後にナオヤさんが、

 

「今日はいいファイトをありがとうございました!僕もみなさんも、いい経験になったと思います!特に、星野シオリさんとのファイトは、強く印象に残りました!」

 

そう言ってくれただけでも、私は十分な結果を残すことができたと思う。

その言葉を以て、イベントは終了。参加者も次々と帰っていった。

 

「はぁ〜。結局ファイトできなかったっスね……」

 

「でも、シオリちゃんはファイトできたんだろ?羨ましいな〜おい!」

 

「って、ユウトが普通に話してますけど……一緒にいていいんですか?私たち……」

 

「いいわよ、そんなの。シオリさんの友達でしょ?」

 

「はい。前にサンシャインで━━」

 

で、私たちはこんな感じで。エレメンタルメモリー+αで、ステージの近くで談笑してる……ってところ。

 

「……大丈夫なのか、星野?気分とか、悪くないのか?」

 

「シオリちゃん、急に気を失ったから……私、本当に心配だったんだよ……?」

 

「ありがと、ミズキ。もう大丈夫だよ。むしろ、スッキリしてるかな?」

 

「全く……何かあったら、ちゃんと言いなさいよ!私たちは仲間なのよ!?」

 

「ごめん、森宮さん。これからは気をつけるよ」

 

私の不注意(って言うかどうかはわからないけど)が招いた結果だ。これからは気をつけないとな……。

 

「……ところでシオリさん」

 

「ん、何?佐原君?」

 

「今日使ってたデッキ……いつもと違ったっスけど、あれは何なんスか?」

 

「あ…それは…」

 

佐原君からしてみれば、気になるのもわかる。問題はこのデッキについて、私が何て言うか……。

 

「…………」

 

「あ、何かこう……深い意味があるなら詮索はしないっスけど……」

 

その言葉に、気持ちが傾きかける。……けど、

 

「……あのデッキは、私が……昔使ってた、デッキなんだ……」

 

今日の吉崎さんの姿に、少し勇気をもらえたから。昔、という言葉を使う勇気を。

 

「ヴァンガード……してたんだ。中学の時にね。その時のデッキなんだ」

 

「してたって……1度止めてたのか?」

 

いつしか、4人全員が私の話に耳を傾けていた。

 

「うん。高校に入った時には……もう縁もなかったよ。そんな時だよ。小沢君と出会って、アルフレッドと出会って……ヴァンガードを再開したのは」

 

「初心者にしてはスタンドアップにザをつけるな……とは思ってたんスけど、そういう……」

 

1名ほど、変なところで感心してるけど、とりあえず放っておこう。

 

「今日使ったのは、特に深い意味はないよ。久しぶりに使ってみようかな……って。だから、明日からはまた解放者のデッキを使うよ」

 

あまり細かなところは触れずに、最小限のことだけを話していく。これが、今の私が振り絞ることができる勇気だ。

 

「そういうことね。全く見たことないデッキだったから、私たちも気になってたのよ」

 

「けど、ロイヤルパラディンを使うシオリちゃん、様になってたぜ!」

 

「そう言ってくれると嬉しいです。けど……あれは昔のデッキですから。今の私は……ゴールドパラディンです」

 

だからもう、ロイヤルパラディンを使うことは……多分ないかもしれないな。これからは、過去とは違う新たな自分で……ゴールドパラディンで前に進んでいくから。

 

「シオリちゃんは……アルフレッドが好きなんだね」

 

「えっ?」

 

「今日のファイト、見ていて思ったよ。シオリちゃんは、アルフレッドが好きだって。だから、今もアルフレッドを使ってるのもわかったよ。けど……」

 

そう言ったミズキの表情を、夕陽がくっきりと写し出す。日が暮れるように、沈んだ表情を。

 

「だからわからない。そんなにアルフレッドが好きなのに、どうしてヴァンガードを止めていたのかが」

 

「……それは」

 

それはね……ミズキ……。

 

「……ごめん。昔についてはあまり触れてほしくないかな……」

 

言えないよ……。気になるかもしれないけど、それだけの勇気は、私にはない……。

 

「……そうだよね。こっちこそごめん。軽率だったよね?」

 

「あ、いや……」

 

「まぁ、誰にだって知られたくないことはあるもんスよ。本人にとっては大切なことなんスから、それを無理に引き出すことは……してはいけないっス」

 

何だか暗い雰囲気になってきたな……。どうしよう?こんな雰囲気にするつもりじゃなかったのに……。

 

「シオリさ〜ん!」

 

……いいタイミングで、思わぬ助け船だ。イベントの片付けも終わり、ナオヤさんがこちらに来てくれたみたいだ。

 

「あっ……ナオヤさん!」

 

「「「「「……!?」」」」」

 

あ……そうか。いきなり下の名前で呼んだら、みんなは驚くか。そう考えると、今日の私は驚かせてばかりだな。

 

「おい……星野って、吉崎ナオヤのこと、下の名前で呼んでたか?」

 

「そんなことないわ……。けど、どうして……?」

 

「吉崎さんがステージ離れた時に何かあったな……。どう思うミズキ?」

 

「あ…え…やらしいこと…とかじゃないよね…?///」

 

……聞こえてるよ、みんな。特にミズキは……何を想像してるの!?そういう…その…とにかく違うからね!?

 

「けど、凄いっスよ!マジで吉崎ナオヤっス!こんな近くで見られるなんて……感無量!!」

 

「そ、それはどうも……」

 

あからさまに反応に困ってるのがわかる。

 

「そうだ!もしよかったら、今から俺とファイトしてもらえないっスか?」

 

「何言ってるのトウジ!そんなことしてもらえるわけないでしょ!?……でも、してもらえるなら、私も……」

 

「さらっと本音を出すなよ……。ま、まぁ俺は別にいいけどな。できれば、できればでいいからな……」

 

「……………」

 

小沢君……その言葉、そっくりそのまま返したい。

 

「ごめん!今日は無理なんだ!これから行くところがあって……すぐにここを出ないといけないんだ」

 

「そんな〜!」

 

当たり前だよ……。何気に森宮さんと小沢君落ち込んでるし……。

 

「く〜っ!こうなったら、今から近くのショップに行くっスよ!ファイトしたくてたまらないっス!!」

 

「賛成よ!あなたたち……ミズキさんだったわね?一緒に来る?」

 

「おっ、いいのか!?よし行こう!ミズキ!」

 

「……私に聞いてたのに、何でユウトが答えてるのさ」

 

ミズキたちも一緒に来るのか。この場で解散かと思ってたから、私としては嬉しいよ。

 

「……みたいなんで、ナオヤさん。私たちはもう行くよ」

 

「うん。僕も、もう行くよ」

 

これでお別れか……。

 

「……また、会えますか?」

 

「会える……かな?シオリさんが、ヴァンガードで全国まで来たら、きっと会える。ファイトだってできるよ」

 

……そっか。全国か。

 

「……なら、会えますね。私たちは……行きますよ。グランドマスターカップ決勝大会。そこが、私たちのチーム、エレメンタルメモリーの目標だから」

 

みんな、全国という舞台に強い想いを持っている。佐原君は、ノスタルジアと戦うこと。森宮さんは、横山さんとの新たな誓いを果たすため。小沢君は、多分バトルロワイヤルの時に何らかの影響を受けて。

 

そう考えると、私は明確な理由がなかった。どうして全国に行きたいのか、はっきりしていなかった。けど、今は……

 

「なら、約束しよう。全国の舞台で、また会うって。またファイトするって」

 

「約束する。必ず行くから……待ってて。私から会いに行くから」

 

ナオヤさんと、またファイトする。今度は、決勝大会で。今日のリベンジも含めて、必ず。

 

それが、私が全国に行く意味だ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

そうしてナオヤさんと別れ、ショップに向かっている道中でのこと。

 

「……グランドマスターカップに出るんだ、シオリちゃん」

 

「そうだよ。この4人でね」

 

「そっか……グランドマスターカップか……」

 

すると、ミズキは俯いて何やら考え始めた。しばらく黙りこんでいたが、はっと顔を上げると

 

「……決めた。私も、グランドマスターカップに参加するよ」

 

「……えっ、ミズキも!?どうして!?」

 

当然、平本さんも驚いていたし、小沢君たちも驚いていた。

 

「……前に、またファイトしようって言ったこと、覚えてる?」

 

「え…うん。覚えてるよ」

 

これから先、会えることもあまりないだろうから、もし会えたら必ずファイトしよう……そう言っていた。実際、今日まで会えなかったわけだし。

 

「グランドマスターカップに参加するって聞いて、またファイトするなら、そんな大舞台で全力のファイトをしたいって思ったんだ……シオリと」

 

「……ミズキ」

 

「もちろん、参加するからには本気だし、メンバーも揃えるよ。だから、約束。グランドマスターカップで、必ず私とファイトするって。シオリとファイトするまでは、負けないから……シオリも、負けないでね」

 

私と全力のファイトを……。あの時の再戦に選ぶ舞台が、グランドマスターカップなんて……。

 

「……わかった。必ずミズキとファイトする。私も、本気のファイトをミズキとしたいから!」

 

大きすぎるよ。私たちのファイトの舞台は、あまりにも大きい。けど、悪くない。

 

「……これは、強敵出現だな」

 

「そうだね、小沢君。けど、だからって止まれないでしょ?」

 

「そうだな」

 

突然現れた強敵。でも、私は勝つよ。ナオヤさんと約束したから。全国でファイトするって。

もしかしたら、ミズキもそんな気持ちなのかもしれないな……。私とのファイトに対する想いは。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

吉崎ナオヤ。確かに世界レベルと言うだけある。デッキの完成度もそうだが、何よりカードの力を正確に引き出すプレイング……。

 

「……俺にはまだまだ真似できる芸当ではないな」

 

少年は、今日のイベントを思い返す。その結果に、満足そうな表情をしながら。

 

「今日はいいものを見ることができた。デッキとのつながりも深い……。さすが世界レベルだ」

 

だが、収穫はそれだけではなかった。先ほどまで吉崎ナオヤと話していた男女のグループ。その中の1人を、俺は知っていた。

 

「星野シオリ……だったか。まさか、こんなところで会うとはな」

 

2年前のとある大会での戦歴により、生きた伝説と化した3人組。追憶の名を有する、ある特殊な力を宿した存在。

 

「俺と同じ……ノスタルジアの1人に」

 

だが、少し気になる点もある。今日のイベントで見せた力が、俺たちノスタルジアの力とは根本的に異なっていたことだ。

 

望んだカードを手中に加えるなど……この力では考えられない話だ。とは言え、やはりあいつは……ノスタルジアの1人。

 

そうなると、あの力は一体……?

 

「……少し、確かめる必要があるな」

 

そう1人つぶやき、少年は会場を後にするのだった……。

 

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