『……シオリ、大丈夫?』
「ん……ここは?」
気がつくと、私は見覚えのある場所にいた。昨日と同じ、あの場所だ。
『気を失ったんだよ。無理に力を使ったから』
気を……?そうだ、私は吉崎さんとファイトして……ヒールトリガーを引こうと、あの感覚になって……そしたら強い目眩に襲われて……。
『君はまだ、せいぜい1回が限度だよ。それを2回も使ったら……無理もないよ』
「……あの時は、ヒールトリガーを引くことだけ考えてたから……」
自分の意思で使ったわけじゃないし、まさか気を失うなんて思ってないし……。
『……強すぎる力は、身を滅ぼすよ。使い方は間違えてはいけない。これはあくまでも、つながりを得る力。勝利だけの力じゃない』
「……うん」
この力のことはまだよくわからないけど、さっきのファイトで痛感した。
好きなカードを手中に入れられる。普通では考えられない力に、私はつい頼ってしまった。もう少しで、もう少しで……その繰り返しになるところだった。
そんなの公平でもなんでもないし、対戦相手の気持ちを軽々と折っているものだ。自分勝手に結果をねじ曲げて、その先に得た勝利に意味はない気がする。
「使いどころは見極めるよ。どうせ1回きりの力みたいだし、まだあまり使い方もわからないし……」
『それなら大丈夫だね。力に溺れるなんてことにはならないよ』
別に悪い力ではない。あくまでつながりを得る力……らしいし、1度きりの使いどころを誤らなければいいだけだ。
どうせ無理に使おうとしても、また気を失う羽目になるし。
「……そうだ、この力の使い方、まだわかっていないんだけど……教えてくれるかな?」
『わかった。他ならない君の頼みならね』
……何だか上から目線な気がする。私の方が年上ってことでいいんだよね……?ほら、目の前の私って中学時代の私だし……。
『……って言ったんだけど……どうやらそろそろお別れみたいだ』
「えっ、お別れって待っ━━━」
そう言い終わる前に、私は現実へと引き戻された。
***
「……ここは?」
知らない部屋だ。長方形のテーブルが部屋の中心に置かれ、その近くには鏡台が置かれている。多分ここは……
「……控え室?」
と、イベントのスタッフらしき人が控え室に入ってくる。すぐに私が目を覚ましたことに気づいたみたいで……
「あっ!気がつきました?」
「はい……。えっと、ここは……」
「ステージ裏の控え室ですよ。あなたがステージで気を失って、ここに運んだんです」
やっぱり控え室で当たりだったみたいだ。
「さっきまで、お友達の5人もいたんですけど、今は客席に戻ってますよ」
5人……ということは、ミズキたちも来てくれたんだ。心配かけたな……。後で謝っておかないと。
「じゃあ吉崎さんに知らせて来ますね。あなたが目を覚ましたことを」
「あ……はい。お願いします……」
再びスタッフは控え室からいなくなり、私だけが残された。
「……今頃どうなっているんだろう?」
そのままイベントは進められているのか、それとも中断されているか……後者なら、私かなり迷惑かけてるよね!?
そうならないためにも、やはりあの感覚になる時には気をつけないとな……。
「……つながりを得る力、か」
ユニットとのつながりをもたらす力。結局、発動の仕方も聞きそびれたわけだけど……
「できれば使ってみたいな……。アルフレッドたちとつながっていられる、この力を」
とは言え、使い方もわからなければ、回数制限もあるわけだし……。回数に関しては、むしろありがたいけどね……。
「……入っていいかな?」
その時、控え室の扉を叩く音が聞こえた。そうして入って来たのは、さっきのスタッフではなく……
「……吉崎さん!?」
「え、そんなに驚かれるもの!?」
「いや、あのステージの方は……?」
「ちょうど休憩時間に入ったから問題ないよ。それに、星野さんのことが心配だったし」
まさかの吉崎さんの登場で、私は正直ビックリしている。けど、心配してもらえたのは嬉しかった。
「でも、あの時いきなり倒れたのはビックリしたよ」
「いや……何か、すいません……」
「別に謝らなくてもいいよ。けどそれは、星野さんがヴァンガードのことを、気を失うほど好きだってことでしょ?」
凄いな、それ。けど、それくらいの想いがないと、ユニットとのつながりなんて生まれないか。私の勝手な考えだけど。
「ヴァンガードが好き……って言うよりは、ファイト中にも言いましたけど、私はアルフレッドが好きなんです」
「アルフレッドが……」
「……私、ずっと1人で、友達もいなくて……。そんな時に、このカードと出会って友達ができたんです」
自然と、私は自分自身のことについて話していた。
「それから色々あって、一度止めてしまったんです。ヴァンガードを。けど、高校生になってから、私はまたアルフレッドと出会って、もう1度ヴァンガードを始めたんです」
そうすることで、また友達にも恵まれることもできた。あの時、アルフレッドと出会わなければ、みんなとの出会いもなかっただろう。
「今日使ったデッキは、昔の物です。今使っているのは、ゴールドパラディンのデッキで……」
「ゴールドパラディンでアルフレッド……ということは、解放者だよね?」
「はい。高校生になってから……と言ってもまだ1年も経ってないですけど、ずっとゴールドパラディンで、今日も久しぶりにロイヤルパラディンを使って……」
あの時は、本当に偶然だった。クランを変えて、私の前に現れたあなたからは、過去から変わらないといけないというメッセージを感じた気がした。
それで、あなたを……アルフレッドを手にして、ヴァンガードを再開した。思えば、あの時はヴァンガードをする気すらなかったのに。
「そうなんだ……ん?」
「どうしたんですか?」
「高校に入って、まだ1年も経っていないってことは……1年生?」
「え?そうですけど……?」
「じゃあ、僕たち同級生だ!僕と同じくらいかなって思ってたけど、本当に同い年とは思ってなかったけどね」
「えっ!?吉崎さんと同級生って……それで、世界レベルなんて……」
凄いよ、実際。私と同じだけ生きて、それで世界って……立っている場所が明らかに違う。
「……でも、僕が世界レベルになれたのは、他でもないブラスター・ブレードのおかげだ」
吉崎さんにとって、大切なユニット……。そう言っていたはず。
「……実はさ、僕も昔からずっと1人だったんだ」
「……えっ」
吉崎さんも……1人だった……!?
「けど、ただ1人だったわけじゃない……。まわりから、ひどい仕打ちをね……何年も、終わりが見えないほど続いたよ」
……言葉でははっきり言わなかったけど、それは虐めだ。頼れる仲間もいない中、毎日当たり前のように、ひどい目にあっていたのだろう。
「そんな時だよ。僕はある人を知った。先導アイチって言う、アニメの中の架空の人物だけどね」
「あ……」
「僕と似た境遇でありながら、1枚のカード……ブラスター・ブレードに導かれ、多くの仲間を得ていった。そんな姿を見て、僕もアイチのようになれたら……そう思ったんだ」
絶望しかない日々の中で、吉崎さんはブラスター・ブレードに……と言うよりは、先導アイチに光を見いだしたのだろう。
「それから僕は、ヴァンガードについて調べ、ブラスター・ブレードを手にし、デッキを組んだ。ヴァンガードは世界的に流行していたから、もしかしたら、ヴァンガードを通じて友達ができるんじゃないかって、淡い期待を持ってた。けど……」
そこで吉崎さんの表情が暗くなる。
「……そこまで上手くいくほど、甘くはなかったよ。いくらヴァンガードを始めたからって、そんなにすぐに環境が変わるわけじゃなかった」
私と……いや、それ以上かもしれないほど……大変だったんだな。
「けど、ヴァンガードを続けていくうちに、まわりの環境も少しずつ……変わっていったよ。友達もできた。一緒にチームを組んでくれた仲間も」
いつしか、吉崎さんの表情は晴れ晴れとしたものになっていた。
「やがて僕は、グランドマスターカップ決勝大会で優勝を果たし、今では世界で戦っている。その高みまで僕を導いてくれたのは、先導アイチであって……他でもないブラスター・ブレードだ」
想像以上の話が、そこにはあった。私には、シュンキ君やヒナ……多くの仲間がいた。でも吉崎さんは……ずっと1人で……。
「…………」
「あ、いや暗くならないで!そんなつもりで話したんじゃないから……。でも、他人にこんな風に話したのは初めてだよ」
話の流れからとは言え、過去を打ち明けることには勇気がいる。辛いことに目を向ける勇気。それを他人に知ってもらう勇気。
私には……まだできないだろうな。もし、小沢君たちに過去を話すことになったら……逃げ出してしまうかもしれない。
「何かごめんね。僕の話に付き合わせて……」
「そんなことないですよ、吉崎さん」
「ナオヤでいいよ。同い年だし、そんな上下関係もないし。今日はいいファイトができたし……ね?」
ひょんなことから仲良くなれる。ヴァンガードをしていると、こういうことがあるからいいものだ。
そう言えば、ミズキと知り合ったのも、ショップでたまたま出会ったからだったよね……。
『……ミズキでいいよ、シオリちゃん』
「……シオリでいいよ、ナオヤさん」
「……うん、わかった。じゃあ改めて、よろしくシオリさん!」
***
それからナオヤさんは、休憩を終えてステージに戻った。私は体調も良くなってきたので、客席に戻った。
やはりみんな心配していたみたいで……ミズキなんか泣いてくれたよ。本当にありがとう。
で、それ以降は何事もなく、ファイトもナオヤさんが全勝した。けど、最後にナオヤさんが、
「今日はいいファイトをありがとうございました!僕もみなさんも、いい経験になったと思います!特に、星野シオリさんとのファイトは、強く印象に残りました!」
そう言ってくれただけでも、私は十分な結果を残すことができたと思う。
その言葉を以て、イベントは終了。参加者も次々と帰っていった。
「はぁ〜。結局ファイトできなかったっスね……」
「でも、シオリちゃんはファイトできたんだろ?羨ましいな〜おい!」
「って、ユウトが普通に話してますけど……一緒にいていいんですか?私たち……」
「いいわよ、そんなの。シオリさんの友達でしょ?」
「はい。前にサンシャインで━━」
で、私たちはこんな感じで。エレメンタルメモリー+αで、ステージの近くで談笑してる……ってところ。
「……大丈夫なのか、星野?気分とか、悪くないのか?」
「シオリちゃん、急に気を失ったから……私、本当に心配だったんだよ……?」
「ありがと、ミズキ。もう大丈夫だよ。むしろ、スッキリしてるかな?」
「全く……何かあったら、ちゃんと言いなさいよ!私たちは仲間なのよ!?」
「ごめん、森宮さん。これからは気をつけるよ」
私の不注意(って言うかどうかはわからないけど)が招いた結果だ。これからは気をつけないとな……。
「……ところでシオリさん」
「ん、何?佐原君?」
「今日使ってたデッキ……いつもと違ったっスけど、あれは何なんスか?」
「あ…それは…」
佐原君からしてみれば、気になるのもわかる。問題はこのデッキについて、私が何て言うか……。
「…………」
「あ、何かこう……深い意味があるなら詮索はしないっスけど……」
その言葉に、気持ちが傾きかける。……けど、
「……あのデッキは、私が……昔使ってた、デッキなんだ……」
今日の吉崎さんの姿に、少し勇気をもらえたから。昔、という言葉を使う勇気を。
「ヴァンガード……してたんだ。中学の時にね。その時のデッキなんだ」
「してたって……1度止めてたのか?」
いつしか、4人全員が私の話に耳を傾けていた。
「うん。高校に入った時には……もう縁もなかったよ。そんな時だよ。小沢君と出会って、アルフレッドと出会って……ヴァンガードを再開したのは」
「初心者にしてはスタンドアップにザをつけるな……とは思ってたんスけど、そういう……」
1名ほど、変なところで感心してるけど、とりあえず放っておこう。
「今日使ったのは、特に深い意味はないよ。久しぶりに使ってみようかな……って。だから、明日からはまた解放者のデッキを使うよ」
あまり細かなところは触れずに、最小限のことだけを話していく。これが、今の私が振り絞ることができる勇気だ。
「そういうことね。全く見たことないデッキだったから、私たちも気になってたのよ」
「けど、ロイヤルパラディンを使うシオリちゃん、様になってたぜ!」
「そう言ってくれると嬉しいです。けど……あれは昔のデッキですから。今の私は……ゴールドパラディンです」
だからもう、ロイヤルパラディンを使うことは……多分ないかもしれないな。これからは、過去とは違う新たな自分で……ゴールドパラディンで前に進んでいくから。
「シオリちゃんは……アルフレッドが好きなんだね」
「えっ?」
「今日のファイト、見ていて思ったよ。シオリちゃんは、アルフレッドが好きだって。だから、今もアルフレッドを使ってるのもわかったよ。けど……」
そう言ったミズキの表情を、夕陽がくっきりと写し出す。日が暮れるように、沈んだ表情を。
「だからわからない。そんなにアルフレッドが好きなのに、どうしてヴァンガードを止めていたのかが」
「……それは」
それはね……ミズキ……。
「……ごめん。昔についてはあまり触れてほしくないかな……」
言えないよ……。気になるかもしれないけど、それだけの勇気は、私にはない……。
「……そうだよね。こっちこそごめん。軽率だったよね?」
「あ、いや……」
「まぁ、誰にだって知られたくないことはあるもんスよ。本人にとっては大切なことなんスから、それを無理に引き出すことは……してはいけないっス」
何だか暗い雰囲気になってきたな……。どうしよう?こんな雰囲気にするつもりじゃなかったのに……。
「シオリさ〜ん!」
……いいタイミングで、思わぬ助け船だ。イベントの片付けも終わり、ナオヤさんがこちらに来てくれたみたいだ。
「あっ……ナオヤさん!」
「「「「「……!?」」」」」
あ……そうか。いきなり下の名前で呼んだら、みんなは驚くか。そう考えると、今日の私は驚かせてばかりだな。
「おい……星野って、吉崎ナオヤのこと、下の名前で呼んでたか?」
「そんなことないわ……。けど、どうして……?」
「吉崎さんがステージ離れた時に何かあったな……。どう思うミズキ?」
「あ…え…やらしいこと…とかじゃないよね…?///」
……聞こえてるよ、みんな。特にミズキは……何を想像してるの!?そういう…その…とにかく違うからね!?
「けど、凄いっスよ!マジで吉崎ナオヤっス!こんな近くで見られるなんて……感無量!!」
「そ、それはどうも……」
あからさまに反応に困ってるのがわかる。
「そうだ!もしよかったら、今から俺とファイトしてもらえないっスか?」
「何言ってるのトウジ!そんなことしてもらえるわけないでしょ!?……でも、してもらえるなら、私も……」
「さらっと本音を出すなよ……。ま、まぁ俺は別にいいけどな。できれば、できればでいいからな……」
「……………」
小沢君……その言葉、そっくりそのまま返したい。
「ごめん!今日は無理なんだ!これから行くところがあって……すぐにここを出ないといけないんだ」
「そんな〜!」
当たり前だよ……。何気に森宮さんと小沢君落ち込んでるし……。
「く〜っ!こうなったら、今から近くのショップに行くっスよ!ファイトしたくてたまらないっス!!」
「賛成よ!あなたたち……ミズキさんだったわね?一緒に来る?」
「おっ、いいのか!?よし行こう!ミズキ!」
「……私に聞いてたのに、何でユウトが答えてるのさ」
ミズキたちも一緒に来るのか。この場で解散かと思ってたから、私としては嬉しいよ。
「……みたいなんで、ナオヤさん。私たちはもう行くよ」
「うん。僕も、もう行くよ」
これでお別れか……。
「……また、会えますか?」
「会える……かな?シオリさんが、ヴァンガードで全国まで来たら、きっと会える。ファイトだってできるよ」
……そっか。全国か。
「……なら、会えますね。私たちは……行きますよ。グランドマスターカップ決勝大会。そこが、私たちのチーム、エレメンタルメモリーの目標だから」
みんな、全国という舞台に強い想いを持っている。佐原君は、ノスタルジアと戦うこと。森宮さんは、横山さんとの新たな誓いを果たすため。小沢君は、多分バトルロワイヤルの時に何らかの影響を受けて。
そう考えると、私は明確な理由がなかった。どうして全国に行きたいのか、はっきりしていなかった。けど、今は……
「なら、約束しよう。全国の舞台で、また会うって。またファイトするって」
「約束する。必ず行くから……待ってて。私から会いに行くから」
ナオヤさんと、またファイトする。今度は、決勝大会で。今日のリベンジも含めて、必ず。
それが、私が全国に行く意味だ。
***
そうしてナオヤさんと別れ、ショップに向かっている道中でのこと。
「……グランドマスターカップに出るんだ、シオリちゃん」
「そうだよ。この4人でね」
「そっか……グランドマスターカップか……」
すると、ミズキは俯いて何やら考え始めた。しばらく黙りこんでいたが、はっと顔を上げると
「……決めた。私も、グランドマスターカップに参加するよ」
「……えっ、ミズキも!?どうして!?」
当然、平本さんも驚いていたし、小沢君たちも驚いていた。
「……前に、またファイトしようって言ったこと、覚えてる?」
「え…うん。覚えてるよ」
これから先、会えることもあまりないだろうから、もし会えたら必ずファイトしよう……そう言っていた。実際、今日まで会えなかったわけだし。
「グランドマスターカップに参加するって聞いて、またファイトするなら、そんな大舞台で全力のファイトをしたいって思ったんだ……シオリと」
「……ミズキ」
「もちろん、参加するからには本気だし、メンバーも揃えるよ。だから、約束。グランドマスターカップで、必ず私とファイトするって。シオリとファイトするまでは、負けないから……シオリも、負けないでね」
私と全力のファイトを……。あの時の再戦に選ぶ舞台が、グランドマスターカップなんて……。
「……わかった。必ずミズキとファイトする。私も、本気のファイトをミズキとしたいから!」
大きすぎるよ。私たちのファイトの舞台は、あまりにも大きい。けど、悪くない。
「……これは、強敵出現だな」
「そうだね、小沢君。けど、だからって止まれないでしょ?」
「そうだな」
突然現れた強敵。でも、私は勝つよ。ナオヤさんと約束したから。全国でファイトするって。
もしかしたら、ミズキもそんな気持ちなのかもしれないな……。私とのファイトに対する想いは。
***
吉崎ナオヤ。確かに世界レベルと言うだけある。デッキの完成度もそうだが、何よりカードの力を正確に引き出すプレイング……。
「……俺にはまだまだ真似できる芸当ではないな」
少年は、今日のイベントを思い返す。その結果に、満足そうな表情をしながら。
「今日はいいものを見ることができた。デッキとのつながりも深い……。さすが世界レベルだ」
だが、収穫はそれだけではなかった。先ほどまで吉崎ナオヤと話していた男女のグループ。その中の1人を、俺は知っていた。
「星野シオリ……だったか。まさか、こんなところで会うとはな」
2年前のとある大会での戦歴により、生きた伝説と化した3人組。追憶の名を有する、ある特殊な力を宿した存在。
「俺と同じ……ノスタルジアの1人に」
だが、少し気になる点もある。今日のイベントで見せた力が、俺たちノスタルジアの力とは根本的に異なっていたことだ。
望んだカードを手中に加えるなど……この力では考えられない話だ。とは言え、やはりあいつは……ノスタルジアの1人。
そうなると、あの力は一体……?
「……少し、確かめる必要があるな」
そう1人つぶやき、少年は会場を後にするのだった……。