アクセルリンク。私が感じていた感覚。ユニットとのつながりを高める、感情の極端な変動により目覚める力。
そして、私はノスタルジアの1人、未来の追憶 ロメリアだと知った。信じられない話だったが、すぐに真実だと証明された。
そんな話を、対戦相手の彼……現在の追憶 レゼンタから聞いたところだった。
そして今、私は彼とのファイトの途中。ダメージはどちらも3で、今はカースド・ランサーのアタックだ。そこで、彼は驚くことを言い出した。
「このアタックは通せ。そうすれば、あんたにとって有利になる」
彼にはデッキの中身が見えている。だから、私のデッキの一番上のカードは、ダメージに落とした方がいいカード……ドロートリガーか、ヒールトリガーの可能性がある。
けど、デッキが見えていないことを口実に、私を惑わそうとしているとも考えられる。要は嘘だ。
私の手札には十分なシールドがある。けど、ダメージトリガーが出るとしたら、使った手札が惜しまれることになる。
「…………」
本当か、嘘か。見極めなくてはいけない。
「……私は」
信じるのか、信じないのか。
「…………」
選ぶべき答えは……。
「……ガード!武装の解放者 グイディオン!猛撃の解放者!」
信じないこと。それが、私の取る出した答えだった。
「ほう……いいのか?通しておけば……」
「いいよ。小沢君の言ったように、デタラメなだけかもしれないから」
リミットブレイクは打てないが、さっきの話を信じることはできない。手札がもったいないけど、そんなこと言ってられない。
「それに、自分の選択を信じたから。その結果がどうあっても、関係ない」
「ほう……なら受け入れろ。その結末をな。ターンエンド」
シオリ:ダメージ3 レゼンタ:ダメージ3
「私のターン、スタンドアンド……ドロー」
私のドローしたカード。それはつまり、さっきダメージに落ちるはずだったカードだ。そのカードは……
(武装の解放者 グイディオン……。ドロートリガーのユニット……)
さっきダメージを受ければ、トリガーは発動した。このターンでの通常ドローと合わせて、手札差は1枚。
ガードに使ったカードを差し引きすると、その差は3枚もある。
(……彼の言ってることは本当だったんだ)
これはダメージを受けた方がよかったかもしれない。手札があれば、リアガードも展開しやすくなっただろう。さらに、リミットブレイクも打てたはずだ。
でも、負けたわけじゃない。ここから巻き返すことはできる。
「行くよ……!世界の平和を願いし王よ!未来を導く光となれ!ライド・ザ・ヴァンガード!!円卓の解放者 アルフレッド!!(11000)」
「よし、アルフレッドっス!」
「アルフレッドのスキル!CB2で、デッキトップをスペリオルコール!……光輪の解放者 マルク!(6000) クロンのブースト、アルフレッドでアタック!(15000)」
「グリム・リーパーでガード」
彼の手札は6枚。このガードで5枚になったが、それなりに多いことが活きているか……。
「ツインドライブ、1枚目……ブラスター・ブレード・解放者。2枚目……疾駆の解放者 ヨセフス。トリガーはなし」
トリガーを引きたかったけどな……。
「なら、マルクのブーストで、ファロンがモルドレッドをアタック!スキルで解放者のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(18000)」
「ノーガード。ダメージはモルドレッド・ファントムだ」
ダメージは与えた。けど、手札は1枚しか削れていない。リアガードも展開できなかった。
「……ターンエンド」
シオリ:ダメージ3(裏2) レゼンタ:ダメージ4
「……ふっ、だから言っただろう?あの時ダメージを受ければ、有利な状況になっていたと」
「今は不利でも……次のターンで……!」
「次か……。どうやら、状況をわかっていないみたいだ」
「どういうことっスか!?」
「簡単だ。このターンで……あんたは負ける」
「「「「!?」」」」
この状況で……勝負を決める!?まだ私のダメージは3。余裕はあるけど……。
「スタンドアンドドロー。さぁ、来たれ!黒き剣を振りかざし、己が理想を世界に描け!ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!!幽玄の解放者 モルドレッド・ファントム!!(11000)」
シャドウパラディンのブレイクライド……そのスキルは、
「CB1!モルドレッドにパワープラス10000!(21000)さらにデッキからグレード2以下のユニットをコールする!」
リアガードを増やしつつ、パワーも上げてくるのか……。
「俺は秘薬の魔女 アリアンロッド(7000)をバイヴ・カーの後ろにコール!この効果でコールされたユニットは、パワープラス5000される!(12000)」
けどこれだけじゃ、残り3ダメージを与えるだけの破壊力は期待できない……。
「カースド・ランサーの後ろのアリアンロッドのスキル。レストし、手札のマーハを捨て、1ドロー。カースド・ランサーで、ファロンをアタック!(9000)」
「……ノーガード!」
「なら次だ!ダークゴードのブーストで、モルドレッドのアタック!スキルでパワープラス2000!(27000)」
ダメージは3だ。ここで無理なガードをする必要はない。
「ノーガ……」
「よく考えろよ?俺にはデッキが見えているんだからな」
ここでこう言ってくるということは……トリガーが出る?そうじゃないと、このターンで決めるなんて言わないはずだ。
けど、今の私の手札で無理にガードすると、後に響く。ここは……
「それでもノーガードでいいです」
「ツインドライブ。……まぁ、俺には見るまでもないがな。両方デスフェザー・イーグル。ダブルクリティカルだ」
「……っ!?」
ここで、2枚ともクリティカルトリガー!?これじゃあ、私は……
「よく考えろと言ってやったんだがな。パワーはバイヴ・カー(19000) クリティカルはモルドレッドへ(27000 ☆3)」
3ダメージを受けることになる。彼のダメージは4だ。耐えきるためには、5枚目以降のダメージでヒールトリガーを引く必要がある。
「ダメージチェック……1枚目」
「光輪の解放者 マルクだ」
当たっていた。いまさらだけど、やっぱり見えているんだね……。
「2枚目……!」
「希望の解放者 エポナ。トリガーだが、もはや何の意味も成さない」
「……ダメージはエポナ。トリガー効果はアルフレッドへ(16000 ☆2)」
「最後のダメージは、解放者 フレアメイン・スタリオン。トリガーではない」
私の負けを宣言する。デッキが見えてるのだから他のカードが来ることはないのだろう。
「……ダメージ、チェック。3枚目……!」
可能性があるとしたら、あの感覚。アクセルリンク。
「どうした?早く引くといい。一番上はトリガーじゃない。俺には見えているんだ」
確かに……そうだろう。既に決まった事実を、ねじ曲げることはできない。けど……!
「それでも……!私は引く!見えてるからって、結果を決められる理由にはならない!!」
その時だった。波紋が広がるような感覚。それに、聞こえてくる……ユニットの声が。
間違いない……これは、アクセルリンク。ユニットとのつながりを高める力。この力が使える、それはつまり……!
「トリガーは……」
見るまでもない。前に何度か、助けられてきたのだ。この力に。
「……っ!?馬鹿な……一番上のカードが……変化していく!?」
「……来た!霊薬の解放者。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復して、パワーをアルフレッドへ!!(21000 ☆2)」
この土壇場で発動してくれてよかった……!けど、まだ1回アタックを残している……。
「その瞳の輝き。やはり……アクセルリンクで間違いないな」
「本当だ……星野の瞳は、青色になってる……」
「これが、力の……」
私からは見えない。いや、見えたらおかしいんだけど、私の目は青く輝いているらしい。
(……凄いな。いきなりユニットの姿が霞み、別のユニットへと変化していった……)
見えていたはずのものが狂い、違うカードが来ることになったのだ。レゼンタは、内心驚いていた。
(……だが)
互いのデッキを再確認したレゼンタは、口元に笑みを浮かべる。少し予定がずれたが、やはり俺の勝利は揺るがない。
……あの時の選択を、星野シオリが誤ったから。
「……まだアタックは残っている。アリアンロッドのブースト、バイヴ・カーでアタック!」
「……今のバイヴ・カーって、パワーどれだけあるんだ?」
「モルドレッドのスキルでアリアンロッドにパワープラス5000。トリガー2枚の効果で、バイヴ・カーにパワープラス10000。だから、9000+7000+5000+10000で、合計31000よ」
森宮さん、計算ありがとう。小沢君……私は計算できてたよ。
「カード!希望の解放者 エポナ、武装の解放者 グイディオン!」
ダメージトリガーが2枚発動したおかげで、必要な手札が少なくて済んだ。
「ターンエンド。……仕留めきれなかったな」
「へっへ〜ん!ファイナルターン失敗っスね!」
シオリ:ダメージ5(裏1) レゼンタ:ダメージ4(裏1)
「私のターン、スタンドアンドドロー」
何はともあれ、これでまた私にターンがまわる。
「アルフレッドのスキル!CB2で、デッキトップのカードをコールするよ!……小さな解放者 マロン!(7000)さらにブラスター・ブレード・解放者(9000)をコール!」
これで解放者が4体……!けど、まずは先にすることがある。
「ブラスター・ブレードのスキル!CB2で、カースド・ランサーを退却!」
インターセプトはもういない。後は……
「アルフレッドのリミットブレイク!解放者のリアガード1体につき、パワープラス2000!4体でパワープラス8000!(19000)」
彼の手札は7枚……。わかっているのが、デスフェザー・イーグルくらいしかない。どんなカードがあるのか、全くわからない。
「マルクのブースト、ファロンでアタック!解放者のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(18000)」
「ガード!デスフェザー・イーグル!」
これでイーグルが1体消えた……と。
「次!クロンのブースト、アルフレッドでアタック!(23000)」
「ガードは……しないでおこう」
(ガードしない……ということは、トリガーは出ない?)
「ツインドライブ!1枚目、霊薬の解放者。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復。パワーはブラスター・ブレードへ!(14000)」
そうなると、2枚目はトリガーではない。逆に、ここでトリガーを引けたら、勝てる。
(何とか、クリティカルトリガーを……!)
と、祈りが通じたのか、再び波紋が広がる感覚を、シオリは感じる。
「2回目か……。だが、覚えているぞ。吉崎ナオヤとのファイトでは、発動できなかったことを」
(その果てに、気を失っているが……普通のアクセルリンクなら、そのようなことは起こらないはずなんだがな……)
何かあるのは確かなのだろうが、本人がこれでは、確かめようがないか。
「そんなの……わかってるよ……!」
けど、この状況を考えたら、これしかない。が、現実は無常だった。
(く……!やっぱり2回目は無理か……)
目眩が襲う。少し頭痛もしてきた。
(けど、止め方なんて……!)
知ってるわけないでしょ!?とにかく、静まって……お願い……!このままだと、また前のように……!
(……って、あれ?)
すると、そこまで労することなく、波紋は収まった。目眩ももうほとんどない。前はこんなに簡単に止めることもできなかったのに……。
何となく この感じ……掴めたような気がする。
「なら、仕方ない。自力をトリガーを引く……2枚目!」
このトリガーは……自分の運が問われるトリガーだ……!
「……希望の解放者 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!パワーはブラスター・ブレード(19000) クリティカルは当然アルフレッドだ!(23000 ☆2)」
「ってことは……」
「シオリさんの勝ち……ってことっスよね……?」
3人は顔を見合わせ、喜んだ表情になる。何せ、伝説のファイターであるノスタルジアに勝ったのだ。
「…………」
(確かに、これで私の勝ち……だけど、何か変だ。力を使わず引いたトリガーなら、彼には見えてたはずなのに……)
手札はあった。ガードできないなんてことはないはず。
「さすがだ。ここでクリティカルを引くとはな。……力を使わなくても、トリガーが来ることはわかっていたがな」
その一言で、私たちの表情は凍りつく。
「何を今さら……俺にはデッキが見えている。このノーガードも、あんたがトリガーを引く上でのことに決まっているだろう?」
だとすると、考えられるのは……1つしかない。
「ダメージチェック、暗黒の盾 マクリール。そして……」
これこそ、希望が絶望に変わる瞬間だろう。そこにあったのは……
「アビス・ヒーラー。ヒールトリガーだ。ダメージを回復させ、パワーはモルドレッドへ(16000)」
「そんな……6点ヒールで耐えるんスか……」
おかしいとは思った。デッキが見えてる以上、トリガーが見えないわけがないのに。
単純な仕掛けだったのだ。……自分のダメージに、細工がしてあった。
「でも、まだアタックは残っている!マロンのブーストで、ブラスター・ブレードのアタック!(26000)」
「デスフェザー・イーグルと、カースド・ランサーでガード」
「……ターンエンド」
いいようにしてやられた……。彼は最小限の手札で、このターンを防ぎきったのだ。しかも、全て公開済みのカードで。
シオリ:ダメージ4(裏4) レゼンタ:ダメージ5
「じゃあ俺のターンだな。……そう言えば、さっき言ってたな。ファイナルターンを失敗させたと」
「そうだったじゃないっスか」
「……なら、今度こそ言わせてもらおう!これが、ファイナルターンだと!!」
「えっ!?」
「スタンドアンドドロー。……光も届かぬ闇に轟く、殺意の咆哮!!ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!!」
そこに現れたのは、シャドウパラディンの中でも有名なユニット。またの名を奈落竜とも言うユニット。
「ファントムブラスター・ドラゴン!!(10000)」
「ここで、そのユニットを……!」
「先に言っておく……。あんたはこのターン、ガードすることはない。その先にヒールトリガーが待つこともな」
私は手札を見る。残りは4枚。エポナ、霊薬の解放者、ヨセフス、エスクラド。そのシールド値は合計30000。しかも、2体のインターセプトがいる。だから、合計で40000。
その上、ヒールトリガーで回復している。このターンで決着をつけることは……。
……いや。ファントム・ブラスター・ドラゴンなら、できるかもしれない。
「ブレイクライドスキル!CB1で、ファントム・ブラスター・ドラゴンにパワープラス10000!(20000) さらにデッキから暗闇の騎士 ルゴス(10000)をスペリオルコール!ルゴスにパワープラス5000だ!(15000)」
リアガードが増えてきた……。ファントム・ブラスター・ドラゴンは、強力かつリアガードが揃うことで発揮される……。
「アリアンロッドのスキルでレストし、手札1枚を捨て、ドローする。そして、ファントム・ブラスター・ドラゴンのスキル!」
……きた!
「CB2、バイヴ・カー、レストしたアリアンロッド、ダークゴードを退却!これにより、パワープラス10000!クリティカルプラス1!(30000 ☆2)」
シャドウパラディンの特徴は、自身のリアガードを犠牲にすることで強力な効果を発揮することができることだ。
特にファントム・ブラスター・ドラゴンは、パワーとクリティカルを同時に増やすことができ、その上昇値も、他のユニットより一回り高い。
「まだ終わりはしない!俺はもう1体のアリアンロッドのスキルを使用!レストし、カードチェンジ。さらに、暗黒魔導師 バイヴ・カー(9000)をコール!スキルで自身のデッキトップをコールする。……バイヴ・カー!こいつをスペリオルコールだ!(9000)」
「もう1体のバイヴ・カーだと!?」
「……レゼンタはデッキが見えている。だから、バイヴ・カーがどこにあるかもわかっていた。けど、それにはデッキのカードを上手く調節しないといけない……。そのためのアリアンロッドっスか……!」
彼にとってのアリアンロッドに、ここまでの意味があったなんて……!
「コールされたバイヴ・カーのスキル!再びデッキトップをコールする。……ブランバウ・撃退者(6000)をスペリオルコール!」
これで失ったリアガードを取り戻し……いや、まだだ。彼にはまだ2枚表のダメージがある。ということは……
「そして、再び!ファントム・ブラスター・ドラゴンのスキル!CB2、2体のバイヴ・カーと、アリアンロッドを退却!パワープラス10000、クリティカルプラス1!(40000 ☆3)」
「ファントム・ブラスター・ドラゴンのスキルは、コストが重い。リアガードを3体失うリスクがあるし、1回が普通のはずよ……?なのに、それを2回も……」
「言っただろ?これがファイナルターンだと。ルゴスでファロンをアタック!(15000)」
「……ノーガード!」
ファロンには悪いけど、次のアタックを考えると、ここでガードに使える手札はない。
「これでラストだ……!ブランバウのブースト、ファントム・ブラスター・ドラゴンでアタック!ブランバウのスキル、自身のリアガードが相手より少ないことで、パワープラス4000!(50000 ☆3)」
「パワー50000!?しかも、クリティカルは3かよ……」
「これは……防げないっスかね……?」
ファロンが退却したことで、シールド値は合計35000になる。全てをガードに使っても、50000には届かない。
「……こいつは、今の俺でも勝てそうにないっスね」
終始安定したファイト。デッキを把握し、最善の選択で勝利を切り開く。
現在を勝利に変える……それが、彼が現在の追憶と呼ばれる由縁ってことっスか……。
「まだ、挑む時じゃない……」
力量を悟れるだけでも、十分だ。今は、見届けよう。このファイトの結末を。
「……ノーガード」
「言ったはずだ。このターン、ガードすることはないと。そして、ヒールトリガーは……あんたのもとには来ない」
仮に来ても、凌ぐことはできない。……ヒールトリガーの数が、デッキに残っているものでは足りない。
「ツインドライブ、どちらもトリガーなし。さぁ、後は受け入れろ。結末を」
「……ダメージチェック、1枚目は猛撃の解放者。クリティカルトリガー」
もはや何の意味もない。トリガー処理も行わなかった。
「……カースド・ランサーのアタックを受けていれば、有利になると言ったな?」
「それが……何?」
「あの時、ダメージに落ちるはずだったのはドロートリガー。そうなれば手札も増え、このアタックを防ぐこともできただろう」
けどそれは、ファイトの一部分でしかない。結果にまで直結するわけじゃない。
「……だが、俺は決してそれだけのことで、有利になると言ったわけではない」
「え……どういうこと!?」
これには、4人も耳を疑う。あの時の選択には、裏があったというのか。
「よく思い返してみろ。あんたがドロートリガーをドローしてから、デッキの上から順番にあったカードを」
ドロートリガーを引いた時からのカード……?
「その順番を頭に思い浮かべた上で考えてほしい。……もし、あの時ドロートリガーを発動させ、同じようにファイトしていたらどうなっていた?」
「どうって言われても……」
「なら、もう少し簡単に言おう。もし、カードが来るタイミングがトリガーによってずれていたら、どうなった?……もう、わかるな?」
上から順に……それがトリガー分、ドロートリガーだから2枚分ずれていたら……
「……まさか!?」
「気づいたな?もしそうなっていたら、そもそもこのターンが来ることはなかった。ファントム・ブラスター・ドラゴンにライドすることなく、負けていたからな」
「シオリさん、どういうこと!?」
「……彼の言った通りだよ。もしカードのタイミングがずれていたら、私が勝ってたかもしれない。そうなると……次のダメージは、クリティカルトリガー」
「察しがいい」
私は、2枚目のダメージを確認する。それは紛れもなく、クリティカルトリガーのユニット。希望の解放者 エポナだった。
***
「だから言っただろ?あの時俺は、既にここまで見えていた。途中で予期せぬヒールトリガーがあったが、そうしなくても6点ヒールは打てたはず。その返しのターンでダブルクリティカルを引いてあんたの勝ち……」
その場合、6点ヒールで耐えていなくても、ダブルクリティカルは出ていた……。
あの一瞬の判断が、結末を大きく変えてしまったのか……。
「……でも、いいよ。どうせあの時ダメージを受けても、同じようにファイトが進んでいたとは限らないから」
「ふん。そうか」
でも、勝てたかもしれないんだよね……。
「……凄かったっス。あんたのファイト。力のこととか、思い知らされたっスよ」
「どうやら、信じたみたいだな」
「それはまあ。……けど、一つ納得いかないことがあるっス。何であんたは、そこまで自分の力に詳しいんスか?力が使えるだけで、その力の云々が理解できるとは思えないっス」
そう言えばそうだ。何で彼は、この力のことを知っているんだろう?力の名前も、力の目覚め方も、どのような能力なのかも、詳しすぎるほどだ。
「ある人に教えてもらってな。ノスタルジアカップが終わってからのことだ。俺も最初は信じられなかったさ。だが、この訳のわからない感覚を説明するには、辻褄が合いすぎていた」
彼は教えてもらって、何で私は教えてくれなかったんだろう……?ダメだ。思い出せない。
「その人って……誰っスか?」
「……ヴァンガード開発部長。CFフォートレスの社長でもある……凉野マサミ」
「は!?CFフォートレスって、ヴァンガードの産みの親である会社じゃないっスか!?」
CFフォートレス。ヴァンガードをしている人なら、一度は聞いたことのある会社だ。
ヴァンガードのカードを発売しているのは、この会社。それだけでなく、アニメやコミックなどの各メディアへの展開もしている。
また、大会でも使われるMFS……モーション・フィギュア・システムも、この会社が開発している。(私はまだ使ったことはない)
要するに、ヴァンガードの会社。その社長ともあろう人がどうして……?
「凉野マサミの話だと、この力を調べていると言っててな。だが、妙なんだ。アクセルリンクを使えるのは、俺たちノスタルジアの3人しかいない。凉野マサミもそう言っていた」
「じゃあ、調べるって……どうやって?」
「そこだ。力を持つ俺でも、教えてもらってわかったんだ。あいつの情報の出所は、一体どこなんだろうと思ってな」
目覚めること自体難しいアクセルリンクは、今は私たちだけのものだろう。なら、凉野さんは、私たちと接触がないはずなのに、どうやってこの力のことを……?
「俺はその答えを知るために、グランドマスターカップに出場するつもりだ」
「「「な!?」」」
彼も出場するの……!?いや、でもどうして出場することが、答えを知ることに……!?
「……グランドマスターカップは、決勝大会、予選大会共に、凉野マサミが表彰を行うことでも有名っス。だから、会場には必ず現れる。そこを狙うってことっスか」
「そういうことだ。上手く行くかはわからないが、直接会うためにはそれしかない」
かなり無理っぽいけど……。社長なんだから、ガードとか固そうな気がする……。
「……と言うことは、あなたとはまた会うことになるのね」
「あんたたちも、出場するのか?」
「当然よ。グランドマスターカップに参加して、決勝大会に行く。秋予選は、本気で勝ちに行くわ」
「本気か。俺だってファイターの端くれだ。勝って決勝大会に行きたい気持ちはあるさ。そこに凉野マサミの件が重なっただけだ」
これは、一筋縄ではいかないな……。相手が相手なだけに、優勝できるか不安になる。
けど、全国に行く想いは、こんなもので折れたりしない。負けるつもりもない。
「……どうやら、雨も止んだようだ。ファイトも終わったし、そろそろ帰らせてもらおう」
いつの間にか雨が止んでいた。水溜まりが、綺麗に輝いている。
「悪くなかったぞ。あんたとのファイト。力の変化も、見ることができたからな」
そう言って、彼は帰ろうと出口へ向かう。
「……待って!」
「何だ?」
「……次は、負けないから」
今日みたいに、負けはしない。秋にファイトするときは、必ず勝つ。
「……ふっ。最上ナツキだ」
「えっ?」
「俺だけあんたの名前を知っていて、あんただけ俺の名前を知らないのは、不平等だろう?」
最上君……か。
「楽しみにしているぞ、星野シオリ。秋予選で、ファイトできることを……」
その言葉を残し、最上君は店を出ていく。晴れ空が広がる中、私の決意もまた、胸の中に広がっていくのを感じていた。
ダメージを受けていれば、シオリがほぼ確実に勝ってたと思います。
と言うのも、受けるのと受けないのでは、手札に来るカードが全然違っていたからです。
多少プレイングに差異が出ても、恐らくシオリが勝っていたはずです。
気になる人は、ナツキの言ったことを試してみて下さい。きっと、その理由がわかります。