つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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気がつけば、この小説を投稿して1年が経ちます。

かなり間を空けてしまったり、これからも空けてしまうことがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

では、どうぞ。


ride32 この4人で

私の前に突然現れた謎のファイター、最上ナツキとのファイトから数週間が経った。

 

自分がノスタルジア……未来の追憶『ロメリア』であること。時折感じる謎の感覚は、『アクセルリンク』と呼ばれる力であること。

 

そして……私の力は、本来のアクセルリンクとは異なる力に変化していること。

 

それを知ったのは、他ならない最上君……いや、ノスタルジアの1人。現在の追憶『レゼンタ』とのファイトが原因だ。

 

「何暗い顔してるんスか?」

 

「あ……佐原君。いや、この前言われたことを思い出していてね……」

 

「……ノスタルジアのことっスか?」

 

「……まぁ」

 

信じられない話だったが、全て真実らしい。まさか、私がノスタルジアなんて……。自覚もないし、本当にそうなのだろうか……?

 

「色々思うことがあるのもわかるっスよ?いきなり、あなたは伝説のファイターです!……なんて言われても、現実味ないのもわかるっス」

 

「うん……」

 

「けど、聞いてる限りは……あいつの、レゼンタの言うことは本当だと思ってるっス。シオリさんも……ノスタルジアだって」

 

「……確かに、本当のことだと思うよ。そうじゃないと、前から感じてるあの感覚……その説明がつかない」

 

ユニットの声が聞こえるあの感覚……あれがアクセルリンクだとするなら、全て納得がいく。

 

「……ま、とりあえずこの話は終わりっス。あんまり暗くなっても仕方ないっスから」

 

そうだね。今は、事実を受け入れることを考えよう。それに、私たちは今……

 

「せっかくの夏休み、楽しまないと損っスからね!」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

夏休み。それは、勉学に疲れる学生たちが、思いっきり羽を伸ばせる時だ。

海に祭りに、楽しみ方は多彩。楽しみすぎて、最後の1週間は宿題に追われるのも、夏休みならでは。

 

「……そうは言っても、俺たち基本ここにいるよな。なんか、夏休みって感じは全然━━」

 

「それは言わないで」

 

まぁ、小沢君がそういう理由もわかる。今は夏休み……なのに、ずっとサンシャインに入り浸っている日々だ。特に予定があるわけでもなく、私たちは暇をもて余しているわけで……。

 

それに、今は8月。夏もこれからだと言うのに、このままではクーラーの効いた店の中でヴァンガードをしていたと言う思い出しか残らない。

 

要は、いつもと変わらないことを言いたいわけだが……

 

「仕方ないでしょ?行く場所って言ったらここしかないし、どこかに行くのも、人が多くて待ち時間とかが大変よ」

 

「けど、せっかく夏休みなんだから、たまにはどこか行きたいよね?」

 

「まぁ……そうね」

 

秋に向けて、ヴァンガードの腕を磨くのも確かに大事だけど、やっぱりたまには気分転換をしたい。

 

「そうは言っても、どうするんだ?もう昼だし、人も多くなる時間帯だぞ?」

 

「そうだね……」

 

さて……どうするものか……。

 

「……あっ!」

 

「どうしたのトウジ?」

 

「思い出したっス!確か前に、こんなもの貰ってたんスけど……」

 

そう言って見せたものは、1枚の商品券。前にバトルロワイアルに参加した時に貰った、焼き肉店で使える商品券だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、今日はサンシャインにいることはなくなった。とはいえ、まだ昼間なので、さすがに焼き肉店に直行することはない。

 

「……じゃあ、どうするのよ」

 

「その店の近くに、大型の商業施設があるんスよ。そこに行くってのはどうっスか?」

 

「いいんじゃないかな?こうしてみんなで出かけるのも、全然ないからね」

 

という佐原君の提案で、みんなで商業施設に行くことになった。

子供から大人まで楽しめるように、多種多様の店が入っているため、週末には多くの人が訪れる場所だ。

 

今日は平日だけど、私たちと同じように夏休み真っ盛りの人たちが訪れていて、かなりの人がいた。

 

「……というわけで、これからどうするっスかね?」

 

「そうね……。じゃあ、男女で分かれて行動するのはどう?それなら、あんまり気を使わなくてもいいんじゃない?」

 

「そうだな……。じゃあ、そうするか?」

 

で、私と森宮さん、佐原君と小沢君に分かれて商業施設を散策することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは女子組。まず向かった先は……

 

「これ可愛い……!あっ、こっちも!」

 

「最近、服屋なんて全然行ってなかったな……」

 

「そうなの?私はよく行くわよ。休みの日は、友達と結構色んな店を見て回るし」

 

「へぇ〜」

 

リサの提案で、服屋を見て回っているところだった。シオリにとっては久しぶりの服屋だったので、楽しみながら見ている。

 

「確かに、休みの日にはサンシャインに集まることってあまりないからね」

 

「流石にずっとヴァンガードってわけにもいかないわよ。グランドマスターカップを目指すのはそうだけど、休みくらいはみんな自由でもいいんじゃない?」

 

「そうだよね」

 

大体、私たちはサンシャインにいると思われがちかもしれないけど、それは平日に限った話だ。休みの日に集まるのは、たまにだけ。

 

「シオリさんは、休みの日って何してるの?」

 

「何って……そうだな」

 

学校の宿題とか、お母さんがいないから、家事をすることが中心だけど……。

 

「映画とか、よく見るかな。映画館に行くこともあるし、DVDで見ることもあるよ」

 

「シオリさんって、映画通だったのね」

 

「自覚はないけど、多分そうかもしれないな……。映画の話なら、結構長続きするし。最近クラスの女子にも、そうやって言われたことあるし」

 

「えっ、そうなの!?そんな話聞いたの初めてよ!?」

 

多分100本……それくらいはDVDあったかな?とにかく映画は、昔から好きだった。よく家族で映画館に行ったな……。お父さんと、お母さんと……。

 

「けど、シオリさんが映画好きなんて、知らなかったわ」

 

「私だって、森宮さんが服屋巡りしてるなんて知らなかったよ」

 

「そうね。こういう機会にお互いを知ることができたのはよかったわ」

 

気分転換の甲斐はあったというわけだ。知らない一面を知ることもできたし、たまにはこういうのもいい。

 

「……さて、それはそれとして。どうしようかな?せっかくだし、何か買っていこうかな……?」

 

「私も……どうしようかしら?」

 

何かにお金を使う予定も、今のところない。次のブースターも9月だし……大丈夫かな。

あぁでも、それならそれで迷うな……。向こうにある服も可愛いけど、あっちのスカートとかもいいな……。

 

「……よし、決めた!」

 

「えっ、決めたの?私はまだ……」

 

「……違う店も見に行きましょ?」

 

おっと……これは、余計に選択肢が増えて、判断をこじらせてしまう要因になりかねない気が……。

 

「そんな目で見ないでよ!?ほ、ほら。他の所には、もっといい服があるかもしれないわよ」

 

「わかるけどさ……」

 

「だからほら、行きましょ?ね?」

 

「…………うん」

 

で、結局この後、何軒かショッピングモール内の店を見て回ることになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

一方の男子組。どうしているのかと言うと……

 

「……よし、ちゃんと売ってたな」

 

「それって、この前発売したばかりの漫画っスよね?」

 

「あぁ。クラスの奴と話してたら、この漫画の話題になってな」

 

ショッピングモールの一角にある、本屋へと来ていた。どうやら、ワタルの提案によるものらしい。

 

「俺は読んだことなくてな。けど、話を聞いてるうちに気になって、買いに行きたいとは思ってたんだ」

 

「へぇ〜。ワタル君も漫画とか読むんスね?」

 

「結構読んでるぞ?アニメも見るし、ゲームとかも暇な時にはやったりしてるしな」

 

「そうなんスか。俺もアニメとか、ゲームはするんスけど……」

 

すると、トウジはあるジャンルの本が並べられている棚から、適当に1冊の本を取り出して、

 

「漫画よりは、こっちの方が好きなんスよね」

 

「……なるほど。ライトノベルか」

 

アニメの原作になることもあり、ライトノベルの存在自体は知っていた。機会があれば、読んでみたいとも思っている。が、

 

「俺……字だけの本って、どうもな……。教科書ですらアウトなのに」

 

「教科書でもダメなんスか!?」

 

極度の文字嫌いに、トウジは意外に感じて驚いている。トウジとワタルのクラスは違うため、授業中はどうしているのか少し気になった。

 

「わかってないっスね……。文字だからこそ、伝えられるものだってあるんスよ。情景をイメージして、キャラの心情を読み取る……それが楽しいのに」

 

「そうは言ってもな……」

 

「ヴァンガードだって、イメージが大事じゃないっスか」

 

「……それは、確かに」

 

ファイトの戦略、相手の心理。挙げると多いが、ヴァンガードにおいて、イメージすることは重要だ。イメージだけなら、やっていることは小説を読むことと何ら変わりはない。

 

「いや、でもヴァンガードとは訳が違うだろ。そういうのって……」

 

「何を言うんスか!ヴァンガードに必要なのはイメージ!それを鍛えるための1つの方法でもあるんスよ!文字からイメージを掴むことができないワタル君は、まだまだ実力不足ってことっスね〜?」

 

「く……」

 

ワタルは凄く苛立っていた。この状況で実力不足を指摘されたことはもちろんだったが、

 

(……佐原のくせに、やたらの筋の通ったことを言ってくれるな……。何かムカつく)

 

それが正論なのかどうかは別として、妙に説得力のある話ではあった。イメージをつけることで、実力もつける。だったら……

 

「……おっ」

 

「この際ついでだ。試しに1冊買ってみる。がんばって、読んでみるつもりだ」

 

ワタルは本棚から、1冊のライトノベルを取りだす。これもイメージをつけるためだと割りきって。

 

「そうっスか!だったら、その本よりも面白い本を紹介するっスよ!ストーリーとか、結構オススメな本があるんスよね」

 

「おう、頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「……結構買いすぎたわね」

 

「だから言ったのに……」

 

一通り店を見て回ったシオリたちは、ベンチに腰かけて休んでいるところだった。

シオリは、悩んだ末に、白のスカートを購入。そう言えば、あまりスカートは持ってなかったな……ということでだ。

 

で、リサはと言うと……

 

「紙袋4つって、いくら何でも買いすぎだよ……」

 

「し、仕方ないじゃない!選びきれなかったのよ」

 

「……9月のブースター、大丈夫だよね?」

 

「……多分」

 

「多分!?」

 

別々の店の紙袋が4つ。それも、1つの店で複数の服を買っている。お金の使い道に予定がなかったら、別にそれでもよかったのに……。

 

「……まぁ、ブースター買う分のお金は残ってるわよ。お小遣いだって、もう少しでもらえるし」

 

「なら、よかったんだけど……」

 

一応、考えて使っていたみたいだ。それならいいけどさ、限度があるでしょ……?

 

「さて……これからどうしようか」

 

「そうね。時間は……4時前か」

 

まだ焼き肉には早いな……。もう少し、時間を潰せるといいんだけど……。

 

「そう言えば、トウジたちはどうしているのかしら」

 

「あー確かに……」

 

今何してるんだろう?服屋巡りをしている時も、遭遇することはなかったからな……。

 

「ちょっと探してみましょうか?」

 

「このまま座っているのも退屈だからね」

 

で、私たちは再び立ち上がって、佐原君たちの捜索を始めた。のはいいんだけど、男子がいそうなところって……

 

「どこにいるんだろう?」

 

「そこなのよ。闇雲に探しても、疲れるだけだし……」

 

「……森宮さんの場合は、ちょっと違うでしょ」

 

靴屋、スポーツ店、一応服屋とかも覗いていたけど、姿を見つけることはできない。一体、どこにいるのか。

 

「……そうだ」

 

「何、森宮さん?」

 

「一つ心当たりがあるわ。多分そこよ」

 

森宮さんに言われるままに、私たちはその場所に向かう。なるほど、確かに。そこに着いたときの感想はそんな感じだった。

 

そして案の定、2人の姿は、その場所にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なかなかやるっスね」

 

「そっちこそ、上手いじゃないか」

 

互いに向かいあい、目の前の盤に全神経を集中する。手にも自然と力が入り、汗も滲んでいる。

 

「これで……どうだ!?」

 

「そうは……いかねぇっスよ!」

 

ワタルが攻め、トウジが守る。今度はトウジが攻め、ワタルが守る。一進一退の攻防が続く。

 

「うおおお!!」

 

「とりゃあ!!」

 

「……何やってるのよ、2人で」

 

「「ん?」」

 

と、横から投げかけられた第三者の声に、両者の気がそれる。その間を狙ったかのように、コミカルな音が鳴り響く。

 

「……あ、ゴールだ」

 

「って、はぁ!?ちょっと、今のなし!なしっスよ!」

 

「仕方ないだろ。勝手にゴールしたもんは」

 

「いや、でも……もう、リサさんが悪いんじゃないっスか!?タイミングくらい考えてほしいっスよ!」

 

「何でこっちに八つ当たりよ!?って言うか、よくそんなに盛り上がれるわね。……ホッケーで」

 

2人がいたのは、ゲームセンター。そこで、エアホッケーをしている最中だった。そこにリサが声をかけ、今のような状況になっている。

 

「今の点で、俺負けたんスよ……。どっちも後一点取られたら負けっていう、緊迫した試合だったのに……」

 

「あ……それは残念だったね。佐原君……」

 

「そうっスよ!え〜い、こうなったら……もう1回っスよ!ワタル君!」

 

「またかよ……。これで8回目だぞ」

 

「「え!?」」

 

いくら何でもやりすぎではないか。さすがにずっとホッケーしてたわけじゃないだろうし、他のゲームもしてたとなると……

 

「……結構、お金使ったんじゃない?」

 

「ここに来る前に寄った本屋で使ったのと……このゲームセンターの分で……まぁ、それなりに」

 

「お小遣い前だし、問題ないっスもん」

 

「それはトウジの話でしょ!?」

 

「って言うか、よく見たらリサさんも、何かいっぱい買ってんじゃないっスか!?」

 

痛い所を突かれ、逆に言いくるめられてしまった。森宮さんは気まずそうに視線をそらしている。

 

「……うるさいうるさい!大体、お小遣い前だからって余裕かましてるけど、どれだけ貰えてるのよ?」

 

「俺?まぁ、月に……10万とか?」

 

「「「……はぁ!?」」」

 

いやいやちょっと待って。10万……って、今言ったよね!?十分の一ならまだわかるけどさ……。って、そうじゃなくて!

 

「10万を……小遣いに」

 

「1年で120万……ってことだよね」

 

「不平等よ!しかも、トウジだから余計に腹立つわ!」

 

「何でっスか!?」

 

お年玉ならまだわかる(それでも多い気がしなくもない)けど、お小遣いでそんな大金を……。しかも、それが毎月続くんだよね……?

 

「俺なんか、月に3000円だぞ!?」

 

「私だって、5000円よ!?」

 

「……私なんか、お小遣いが貰えない月もあるのに」

 

「「「えっ!?」」」

 

まぁ、そうなるよね……。こんな話になると、必ず驚かれる。本当なんだから仕方ないじゃん……。

 

「でも、貰える時は10000円とか、それなりに貰ってるからさ……」

 

「俺の小遣い、3ヶ月分ちょいかよ……」

 

「それでも、10000円でしょ!?ちょっとトウジ!どれだけ金持ちの家に住んでるのよ!?何でこんなのが……」

 

「そんなこと言われても困るっスよ!?……大事業の家に、運よく拾われただけなんスから。養子として」

 

養子。それが意味することを考え、私たちは、軽率な物言いを悔やんでいた。

 

佐原君の両親は……既に、亡くなっている。養子になるくらいだから、多分両方。

 

佐原君の今の家族は、血のつながらない形だけのもの。だからこそ、注がれる愛情は並ではない。これ以上、悲しい思いをさせないように……。

多額のお小遣いも、義親にできる愛情の形。それを佐原君がどう受け取っているのかは、本人にしかわからない。

 

ただ、どれだけ愛情を注がれていようと、佐原君の経験した傷は、根深く残っているのだけはわかった。私だって……お母さんを亡くしているから。

 

「……悪かったわ。あんまり、言わせたくなかったわよね?」

 

「いやいや、別にそんなに気にすることもないっスよ?義父さんには、本当に感謝してる。自分の息子のように接してくれて……」

 

そう言ってても、佐原君がやけに悲しく見えるのは、気のせいなのだろうか……?

 

「両親を亡くしたのも、10年くらい前の話っス。だから義父さんは本当に、俺の親みたいなものっスよ。身寄りもなかった俺を、育ててくれたんスから……」

 

何だか、気分が暗くなってしまった。ゲームセンターの軽やかな音楽も、心を躍らせることはなかった。

 

(……何か、気分転換を……あ)

 

「そうだ、みんな」

 

「ん?なんスか、シオリさん?」

 

「ちょっと、行きたいところができたんだけど」

 

「「「??」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、シオリさんが来たかったのは、ここっスね」

 

「けど、意外だな。星野が……」

 

「たまには、みんなでこういうのもいいでしょ?」

 

私が行きたいと言った場所。それは、ショッピングモールに内接する、映画館だった。

 

「シオリさん、映画観るのが好きなんだって」

 

「へぇ。そうなんスか」

 

私もよく、気分転換には映画を見る。そう思ってのチョイスでもあった。それに……

 

「今上映している映画で、面白くてオススメのがあるからさ。どうせ暇してたところだし、みんなでこの映画観ようかなって」

 

で、その映画と言うのが……

 

「『トライアングル』って映画。テレビとかで、よく紹介されてるの見たことない?」

 

「「「あぁ〜」」」

 

1人の気弱な高校生少年が主人公のラブコメ映画。少年はある日、同じ高校に通う少女に恋をする。

控えめな少女だが、少年とは気が合い、徐々に仲良くなっていく。

 

が、同じ学年の優等生である男子もまた、その少女のことが気になり、アプローチをしていることを少年は知る。

 

自分とその男子の差に劣等感を感じた少年は、一度は少女のことを諦めようと距離を置く。が、自分の少女への想いを再認識したことで、少年と少女、そして優等生男子との三角関係が始まる……。

 

「ね?面白そうでしょ?まだ観たことなかったから、ちょうどよかったなって」

 

「確かにね。私も観たいとは思ってたのよ」

 

「……なるほど。シオリさんも、こういう恋愛願望みたいなのがあるんスね〜?」

 

「なっ!?いや、その……別に、そういうのじゃ……///」

 

そうこうしながら、映画のチケットを購入。飲み物やポップコーンも買うことにしたのだが……

 

「何で俺の奢りになるんスか!?」

 

「ホッケー付き合っただろ。だから、ほら」

 

「私、今日は服にお金使いすぎたのよね」

 

「理不尽なのもいいところっスよ!?特にリサさんは、自分が悪いんじゃないっスか!?」

 

何故か佐原君の奢りで購入する話に。さっきのことがあったから、わからなくでもないけど……

 

「……私、自分で払うよ」

 

「ちょっとトウジ〜?シオリさんにだけお金使わせるの?なかなかお小遣い貰えてないシオリさんに〜?」

 

森宮さん。もう少し棘を引っ込めて。私にも刺さってる。

 

「だけって何スか!?……あぁもう!わかったっスよ!」

 

「え、いいよ。私は自分で……」

 

「いや、いいっスよ。今日は俺の奢りってことで。……リサさん以外は」

 

「何でよ!?」

 

「散々煽られたのに、奢る気なんかないっスよ!?それに、自分が悪いんスからね!?」

 

「ぐ……」

 

そんなわけで、私たちは佐原君の奢りで飲み物などを買う。森宮さんだけは、本当に自腹での購入となった。

 

「……覚えてなさい」

 

「だから悪いのは自分じゃないっスか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから程なくして、映画の上映時間となった。私たちは、ちょうど真ん中あたりの席だった。

 

「いい場所が空いてたっスね」

 

「スクリーンに近すぎず、遠すぎず。このベストな場所を取れるかどうかで、変わってくるんだよ」

 

今回は4人ともいい場所を取れた。席は既に満席に近かったが、運がよかった。

 

「やっぱり映画が好きなだけあるな。ここだ、って言う席の場所とかあるんだな」

 

「私の中での話だけどね」

 

程なくして、映画が始まった。私たちは皆、スクリーンに釘付けになる。

 

ずっと気弱で、休み時間も1人でいるような主人公。1人の少女との出会いで、自分の殻を破っていく様子は、見ていてよかった。

 

恋のライバルが現れ、葛藤するシーンも凄く同感できた。それでも諦めずに想いを貫こうとする姿に、私は感動した。

 

「どうして……私のことを、そんなに……」

 

「決まってる。僕が、君のことを……忘れられないからだ!」

 

「っ!で、でも私……あんまり人付き合いとか得意じゃないし、一緒にいても楽しくない……。きっと、後悔させる」

 

「後悔なんてするわけない。僕は、後悔『してた』んだ。勇気も出せずに、1人の世界に閉じこもることを選んだから。そこから救い出してくれたのは……君なんだ!」

 

「……っ!」

 

「君と出会って、僕は変われた。後ろ向きだった僕が……前を向けた。そんな君と一緒にいたいと思えた。好きだって……思ったから」

 

このシーンは、凄く印象に残った。少年の言葉は、私に深く刺さってきた。聞いていて、共感できた。

 

だって……少年の言葉は、私を表しているみたいだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「普通に面白かったな」

 

「でしょ?この映画を選んで正解だったよ」

 

「いいわね……。私も、あんな風に恋してみたいわ……」

 

満足してくれたみたいで何よりだ。私も、大満足している。

 

「4時30分過ぎに映画が始まって……6時前っスか。そろそろ焼き肉店に行ってもいいんじゃないっスか?」

 

「そうね。近いと言っても、徒歩じゃ距離もあるし。移動し始めましょうか」

 

私たちは、ショッピングモールを出て、焼き肉店へと歩き始める。焼き肉店までは、ショッピングモールから徒歩で10分ほどだ。

 

「おっ、着いたっスね」

 

その焼き肉店は、世間でも評判のいい店だった。肉は美味しいし、そこまで高すぎない値段設定が人気の理由だ。

 

「ちょうど空いてるわね」

 

「今で6時……。少し早い気がしなくもないけど」

 

「いいじゃないっスか。どうせ昼ご飯も食べてないんスから」

 

言われて見れば、確かに……。と思った所で、私のお腹が鳴ったことには、できれば触れたくない。

 

「じゃあ、入っていいんだな?」

 

「そうね。早めの夕食だと思って、焼き肉食べましょう」

 

「商品券もあるし、食べまくるっスよ!」

 

という事で、私たちは店の中へ。店員に案内され、空いているテーブルに向かう。

 

「とりあえず、何でもいいでしょ?」

 

「一通り頼んで、足りなくなったらまた頼めばいいだろ」

 

「そんなケチくさいことしないで、もっと一気に頼めばいいじゃないっスか!」

 

「……じゃあ、頼みすぎてお肉残ったら、ちゃんと完食してくれるわよね?」

 

「……悪かったっス。軽く考えてたっス」

で、森宮さんが選んだ結果、肉と野菜のセットを4人分注文することになった。途中、佐原君が野菜のセットについて文句を言いかけたが、森宮さんに一蹴された。

 

「でも、こんな風に皆で外食するなんて初めてだよね」

 

「確かにな。どこかに出かけることはあったけどな」

 

「桜川リンのバトルロワイヤルとか、他のショップに経験を積みに行ったりとかっスね」

 

「そうよね。どこかに行ったのも、ヴァンガード関係のことだったし。単純に遊びに出かけたのは、これが初めてね」

 

ヴァンガードとは無縁の、休日らしい休日を満喫できた。今日の出来事が、私たちの仲を深める一つのきっかけになったらいいな。

 

「……おっ、肉が来たっスよ!」

 

すぐに肉が運ばれ、順番に焼き始めていく。美味しそうな焼ける音と、肉のいい匂いが広がっていった。

 

「俺これにするっス!」

 

「あっ、ずるいぞ佐原!」

 

「人に肉焼かせといて、勝手に食べ始めないでよ!?」

 

「……ほら、森宮さん。この辺りの肉は焼けたから」

 

「ありがとねシオリさん。……トウジたちも少しは自分で焼きなさいよ」

 

「俺はやってるぞ」

 

「お……俺も焼いてるっスよ!」

 

「「「嘘なのが丸見えな言い方されてもね!?」」」

 

こんな雰囲気で、私たちは肉を焼いては食べ進めていく。一通り焼ききった所で、ようやく落ち着いて食べ始めることができた。

 

「うん、旨い!焼き肉なんて、久しぶりに食べたからな」

 

「俺もあんまり焼き肉はなかったっスからね。もうたまんないっスよ!」

 

「これも私のおかげね?」

 

「今さら思い出したように何言ってんスか!?そりゃそうなんスけど、何かムカつくっス……」

 

確かに美味しかった。肉もそうだけど、タレも美味しい。けど、何よりも……皆で食べてるから。だから、より美味しく感じるんだと思うな。

 

「……ちょうどいいわ。せっかくの機会だから、改めて言わせて。……勝つわよ、秋予選」

 

「……森宮さん」

 

「今さらのことだし、わかってるとは思う。でも……勝ちたい。この4人で、全国に行きたい。半年だけど一緒に過ごして、仲を深めて……夢を共有できた」

 

「そっか……まだ半年なんだ」

 

高校に入学して、まだ半年。知りあいもいない中、スタートを切った4月。

 

あの頃からは、想像もつかなかった世界に私は立っている。チームに誘われた。ヴァンガードを再開した。また、アルフレッドとファイトするようになった。

 

何よりも……かけがえのない、友達ができた。

 

「私の夢は、テツジさんとの約束を果たすこと。今度こそ皆で全国を目指す。その姿を、テツジさんに見せること」

 

もう知ってたかもしれないけどね。と、苦笑しながら。

 

「俺の夢は、ノスタルジアとファイトすることっスね。……もう既に2人ほど存在がバレているんスけど」

 

こっちを見ながら言わないでよ……。

 

「……俺にも、目標がある。ファイトしたい相手ができた。どうしても、リベンジしたい相手がいるんだ」

 

「へぇ。そんな相手がいたんスね?どういうきっかけで?」

 

「……照山シュンキ。ちょっと、あいつと色々あってな」

 

シュンキ君と!?と言うと……バトルロワイヤルの時か。目標として掲げるほどだから、何かいい影響を受けたんだろう。シュンキ君のことだし、悪影響は受けてないはず。

 

「シオリさんは?」

 

「あ、私?私は……」

 

脳裏に浮かぶ、1人の男子の顔。数ヶ月前に交わした約束を、思い出していた。

 

「……ナオヤさんと、もう一度ファイトすること。全国の舞台で、待たせているから」

 

それまでも漠然と、全国を目指す想いでいた。チームに誘われた以上は、それが普通なのかと思っていた。

 

これは、私が自分の意思で、全国を目指したいと思えたきっかけ。ナオヤさんとのファイトは、私に明確な目標を与えてくれた。

 

「それぞれの夢は、違っているわ。でも、目指す場所は一緒よ。この4人で、夢を掴みましょう!」

 

「おう!」

 

「そのつもりだよ、森宮さん!」

 

「本当、今さらっスよ!言われなくてもわかってるっス!」

 

夢に向かう4人の、束の間の休息。それは、より強い結束と決意をもたらしたのだった。

 

 

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