つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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今回から秋予選です。ファイトもガンガンやっていきます。……まぁ、この話にはありませんけど。

それでも次回からはファイトをしていくつもりです。では、どうぞ。



第2章 秋予選編
ride34 思い出の始まり


朝6時30分。セットしていた目覚まし時計が鳴り、私はベッドから身を起こす。

 

「んっ、う〜ん」

 

軽く伸びをして、1階のリビングへと降りていく。

 

「おはよう、シオリ。今、朝ごはん作ってるから、ちょっと待ってて」

 

お父さんは既に起きていた。朝ごはんを作っている最中だったので、私はインスタントのコーヒーを飲みながら、ニュースを見ていた。

 

「できたよシオリ!さぁ、これ食べて元気つけて!この朝ごはんが、シオリの勝利につながるんだよ!」

 

「言いたいことはわかるけど……大げさだよ」

 

私は朝ごはんを食べながら思う。今日はとうとう、グランドマスターカップ秋予選の日だ。

大勢のファイターが集まり、決勝大会の切符を……全国への切符をかけてファイトする。

 

その道のりは、簡単なものではない。まだ見ぬ強いファイターがたくさん立ちはだかる。それに、ミズキや最上君も……。

 

勝ち進むのは、至難の技だ。でも、私たちは絶対に全国に行く。その想いがあるから、負けるつもりはない。

 

「……ごちそうさま!」

 

朝ごはんを食べ終え、支度を済ませる。が、まだ集合まで少し時間があったため、デッキの見直しをすることにした。

 

「…………」

 

グレードバランス……トリガー構成……問題なさそうだ。

 

「……大丈夫。きっと大丈夫。だからお願い、アルフレッド……。私に力を……」

 

アルフレッドだけじゃない。ガルモールに、ブラスター・ブレード。ファロンにマロン、リューやエポナ……。

 

私と一緒に戦ってくれる仲間たち。思えば、本来なら出会うこともなかったはずだ。なのにこうして、戦いに身を投じようとしている。

 

「……そろそろか」

 

私はデッキと最小限の荷物を持つと、部屋を出て下へと降りていく。

 

「お父さん。もう時間だから、行ってくるよ」

 

「あれ?もうそんな時間か……」

 

「うん。……絶対勝ってくる。みんなと一緒に」

 

それを聞いたお父さんは、頬を緩めて、

 

「後悔だけは、してはいけないよ。それは、シオリが一番よくわかってるよね?」

 

後悔なんて……持ち帰ってこないよ。今日持ち帰るのは、喜びだけ。

 

「……わかった。じゃあ、行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

秋予選の会場は、電車で30分ほどの距離にある。そのため、私は駅へと向かっていた。

 

少し急ぎ気味に、小走りになる。そこまで急がなくてもいいのだが、あまり人を待たせることはしたくない。

 

「……到着、と」

 

息を整えながら、私は駅の前の広場に着く。まだ人通りは少なかった。

 

「おはようっス。シオリさん」

 

「あ、おはよう佐原君。やっぱり今日は早いね」

 

他のショップ巡りの際の一件があるため、遅れて来るかと思ったけど、そんなことはなかったようだ。

 

「そりゃ、グランドマスターカップ当日なんスよ!?興奮して眠れなくて……朝も起きるの早かったんスから!」

 

遅寝早起き……うん、かなり心配だ。佐原君らしくはあるけど。

 

「よ〜し!今日はガンガン勝って行くっスよ!」

 

「あ……そう言えばさ、佐原君」

 

「ん、何スか?」

 

「前から気になってたんだけど……その、私ってノスタルジアの……ロメリアなんだよね?」

 

「え?まぁ、そうじゃないんスか?疑問形で聞かれるのも、おかしな話っスよ」

 

「だったらさ、佐原君は……何でファイトを挑んで来ないのかなって。私としてファイトすることはあっても、ロメリア相手にファイトを挑んできたことはなかったし」

 

丁度2人きりだったし、思いきって聞いてみた。ずっと追い求めた相手が目の前にいるのに、どうしてファイトを挑まないのか。

 

「そうっスね……。確かに、シオリさんはロメリアで、俺の望む相手……。今からでもファイトしたい気分っス」

 

「じゃあ、どうして?」

 

「……前にシオリさんが最上ナツキとファイトした時、俺の強さはまだまだだって、痛感してしまったんスよね」

 

挑まないのではない。挑めないのだった。まだ自分は弱いから。

 

「万に一つの可能性で終わるだろうって……だから、今はまだその時じゃない。まだなんスよ……。悔しいっスけど」

 

「……そうだったんだ。ごめん、そんなこと言わせていまって」

 

「いやいや!何言ってんスか!……まだ諦めた訳じゃないっスから。どうしても、ファイトしないといけないんスよ……」

 

その目つきは、とてもふざけているようには見えなかった。本当に心の底から、ファイトを願うように。

 

「だからいつか、俺が強くなったその時には……ロメリアとして、ファイトを挑ませてもらうっスよ」

 

「……でもそれって、私じゃないとダメなの?ほら、最上君でもいいんじゃない?ノスタルジアだったら……」

 

「手っ取り早くファイトを申し込めるのは、シオリさんじゃないっスか。だからっスよ」

 

私としてではなく、ロメリアとして。いつか、本当にそんな日が来るのかもしれない。

 

だったら、私は全力で応えないといけないな。佐原君の目標なんだから、それに見合うようなファイトをしよう。

 

いつか来る、その時に。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……佐原!?星野と一緒に、待っているだと!?」

 

「いいじゃないっスか!?俺だって、早起きすることはあるんスよ!」

 

「嵐でも起こるんじゃないかしら……」

 

「ちょっとリサさん!?俺は遅刻キャラか何かなんスか!?」

 

「いやほら、前にも遅刻したことあったよね……」

 

「シオリさんまで!?」

 

小沢君と森宮さんの最初の一言は、佐原君がいることへの驚きだった。3人揃って馬鹿にされ、佐原君は少しの間うなだれる。

 

「まぁ、今日は待たなくてもよかったのは幸いね……。あ、シオリさんおはよう」

 

「おはよう、森宮さん。それに小沢君も。2人で来たの?」

 

「おはよう、星野。森宮とは、さっきそこで会っただけだ。そこから一緒に来ただけで」

 

とにかく、これで4人集結だ。

 

「さて……とりあえず、トウジのおかげで、次の電車で会場に行けそうね」

 

「いや、もういいっスよ!?」

 

叫ぶ佐原君をスルーして、私たちは駅に入っていった。切符を購入し、ホームに着いた時には、後3分ほどで電車が来る状況だった。(佐原君はダッシュで追いついた)

 

「……にしても、早めに電車に乗ることができてよかったな。遅くなってたら、人で溢れかえってたぞ」

 

「本当だよ。私、この時間でも不安だったのに……」

 

「ふっ、さすが俺っスね!やる時はやる!」

 

……これまた都合がいいことで。

 

『間もなく、電車が参ります。危険ですから……』

 

と、電車が来ることを知らせるアナウンスがホームに流れる。到着した電車は、比較的空いていた。

 

「よかった〜座れるっス!」

 

「いちいち騒がないの!他の人もいるでしょ!?」

 

一瞬、親子みたいに見えたのは、気のせいじゃないと思う。

 

『扉が閉まります。ご注意下さい……』

 

4人の闘志を乗せ、今電車は動き出した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

『シオリ……ねぇ、シオリ?』

 

誰かに呼ばれた気がした。いつの間にか、眠っていたようだった。

慌てて目を開けるが、そこにみんなの姿はない。代わりに、そこは光に包まれていた。電車の中……とは思えない。

 

「ここって……」

 

私はここを知っている。記憶を頼りに、光の中を進んでいった。すると、そこには1人の人物がいた。

 

「やっぱり……あなただったんだ」

 

『久し振りだね。シオリ』

 

もう1人の私。と言っても、線の細い、幼い顔立ちをしている。これは、中学の時の私だ。

 

「本当に久し振りだね……。でも、どうして私をここに?」

 

『グランドマスターカップに出場するんだよね?それも今日。だから、その前に勇気づけようと思って』

 

「なるほどね。……そんな気はしたよ」

 

『えっ!?』

 

え、じゃないよ。同じ自分(?)のことだからわかるよ。

そうじゃなくても、何となく想像つくし。

 

『……あ、と、とにかくがんばって!』

 

「……うん、ありがとう。でも、元気もらえたよ」

 

フォローになったか、微妙だな……。

 

『でも……気をつけて。相手には、君と同じアクセルリンクを持つ……レゼンタもいる』

 

「……うん」

 

前のファイトでは、終始ファイトの指導権を握られっぱなしだった。アクセルリンクを使っても、敵うことはなかった。

 

『大丈夫。君には私がついてる』

 

「……それって」

 

『アクセルリンク。その力が……君のことを助ける。感覚にも、大分慣れてきたでしょ?』

 

「うん。けど……使う時は見極めるよ。簡単にこの力に頼るようじゃ、まだまだだからね」

 

『その言葉が聞けて、満足だよ』

 

と、まわりの光が一際強く輝いていく。視界が光に遮られ始めた。

 

『……もう時間みたい。今回はここまでだね』

 

「そっか。……ちょっと残念だな」

 

「大丈夫。……1人じゃない。私もいるから。その力で、つながりを感じて━━』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「━━シオリさん!起きて!シオリさん!!」

 

「……っ!?」

 

気がつくと、そこは電車の中。もう少しで目的地へと到着するところだった。

 

「おい佐原、起きろ!もう着くぞ!」

 

「わかってるっスよ!起きてるっス!」

 

「さっきもそう言って寝たからな!?」

 

どうやら佐原君も寝ていたようだ。そんな気はしてたけど。

 

『間もなく、駅に到着致します。下りられるお客様は、お忘れ物のないよう……』

 

「……着いたみたいだね」

あぁ。ついにここまで来たんだ。私たちの挑戦が、今……!

 

「よし、みんな!忘れ物がないか確認してよ!」

 

「大丈夫だ」

 

「OKっス!」

 

「……うん。いいよ」

 

みんな大丈夫みたいだ。それを確認して電車を……

 

「危ない!財布置いてくとこだったっス!」

 

「「「………………」」」

 

何とか回収できたからよかったけど……せっかく感慨深い気持ちになってたのに、台無しだよ……。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

セントラルホール。この場所が、グランドマスターカップの秋予選が開催される場所だ。

 

「ふぇ〜でかいっスね。結構な人数が入るんじゃないっスか?」

 

私たちは早速、入り口で受付を済ませる。

 

「……はい。エレメンタルメモリー。受付完了です。では、こちらをどうぞ」

 

係の人が渡してきたのは、小さな液晶画面のついたバックルだった。今日の予選で使うものだろう。

 

「奥が広場になっておりますので、開会式までしばらくお待ち下さい。健闘をお祈りしています」

 

言われるままに、私たちはホールの中心部、広々とした円形の広場にいた。今日の予選は、ここで行われるらしい。

観客席は、この広場を囲むように2階にあり、どの位置からでもファイトが見られるようになっていた。

 

また、広場の外に出ると、大型のスクリーンが設置されたエントランスになっており、私たちはそこから入ってきた。

エントランスから左右に別れた道の先に、観客席に続く階段があり、その途中には、休憩スペースもある。

 

「……私たち、こんなところでファイトするんだ」

 

「そうっス。けど、それ以上に興奮することもあるっスよ?」

 

「……そうか!この予選のファイトは全てMFS……モーション・フィギュア・システムが使われるんだよな!」

 

ユニットのイメージを立体画面に映し出し、まるでユニットがその場にいるかのようなファイトができるシステム。

設備の都合上、このような大会でしか使われないが、迫力のあるファイトができるだけあって、これ目当てに大会に出る人もいる……らしい。

 

確かに、楽しみだ。

 

「それはそうと、かなりの人がいるわね……。どこを見てもファイターばかりよ」

 

どの人たちも、今日という日を待ち望んでいたに違いない。目指すものをつかみとるために。

 

「……ん?」

 

数多くのファイターがいる中、私はよく知る人物の姿を見つけた。向こうもこちらに気づいて、手を振りながらこちらに向かってくる。

 

「ミズキ!」

 

「シオリ!2ヶ月ぶりだね!」

 

「よっ!ワタル!」

 

「元気そうだな。ユウト」

 

ナオヤさんとのイベントで、秋予選に参加することを決めた、私の友達。月城ミズキ。

宣言通り、今日はファイターとしてここに来ていた。

 

「今日は敵同士!リベンジできる機会でもあるからな!絶対勝つぜ!」

 

「……望むところだ」

 

「私も、シオリにはリベンジするつもりだから。今日は負けないよ!」

 

「こっちこそ、また勝たせてもらうから!」

 

いい意味で、2つの火花が散りあう。そんな中、

 

「……盛り上がっているところ悪いけど、そちらの人が、月城さんの3人目のチームメイトよね?」

 

ミズキたちの後ろで、腕を組んで私たちの様子を見つめる青年。私たちよりも、少し年上だと思う。

 

「あぁ。……柳田ケンゴ。月城のチームメイトだ。よろしく」

 

「えっ……あ、はい。よろしくお願いします……」

 

クールというか、無口と言うか、淡々としたしゃべりだった。私の方も返答に困る。

 

「あ……ごめんね、シオリ。柳田さんは、まぁ……愛想がないように思えるけど、根はいい人だから」

 

「月城……。フォローしているようで、毒を盛るのは止めてくれ……」

 

柳田さんが、深くため息をつく。ミズキは柳田さんに見られないように、軽く舌を出した。

 

「俺だって、自分のことくらい自覚はあるんだがな……」

 

「悪かったですよ、柳田さん。柳田さんは、からかいがいがあるから、ついね」

 

「そうそう!こういう性格だからこそ、逆にな!」

 

「平本まで……」

 

なんだ、結構いいチームみたいだ。仲もよさそうだし、ファイトの腕だって、ミズキが選んだ人だから強いのだろう。

 

「それじゃあシオリ。私たちは最後にデッキを見直すから。また開会式でね!」

 

「……うん!」

 

「ユウト、行くよ!」

 

「おう!……じゃあなワタル!ファイトする時を楽しみにしてるぜ!」

 

3人は広場を出て、休憩スペースの方に歩いて行った。

 

「やる気全開だったな……」

 

「それほど、ファイトできるのを楽しみにしてたんだよ。きっと」

 

「じゃあ、私たちも開会式まで、最後の見直しでもしてましょう」

 

ここにいても、特にすることはない。私たちも、広場の外に出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「……さすがに、強行突破は無理だったか」

 

セントラルホールの一角。特別室の近くで、自分の無謀さに苦笑していたのは、ナツキだった。

人ごみを避け、監視にも見つからないようにここまで来たのだが、部屋の前にも見張りはつけるか。

 

「ガードが固い……。いや、奴の顔を拝まなくても、俺の目的は別にある」

 

そのあたりを歩いていれば、不意に達成できるのかもしれないのだから。

だが、星野シオリの一件もある。個人的に気になるし、この際ついでだったのだが……

 

「……もう時間か。そろそろ戻らないと、間に合わなくなる」

 

俺は元来た道を引き返し、そのまま何事もなかったように広場へと戻った。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

長いようで、あっという間。あっという間なようで、長かった。私たちはようやく、スタートラインに立てた。

 

「今頃になって、不安になってきたな……」

 

後数分で、開会式が始まる。ファイターは皆、広場に集結していた。

 

「そんなの俺もっスよ。けど、楽しまなきゃ損っス。今日は挑戦の日でもあり……自分を高める日でもあるんスから」

 

「……そんなしてやったりな顔で言われても、響かないわよ」

 

「いいじゃないっスか!俺だって、たまには格言みたいなの言いたいんスよ!」

 

「……佐原君。自分で格言とか言ってる時点で、格言に聞こえなくなるよ」

 

「2人の言葉は、本当によく刺さってくるっスね!?」

 

丁度このやり取りを終えるか終えないか……。そんなタイミングで、照明がゆっくりと消えていく。

 

「……始まった」

 

完全に照明が消え、一瞬暗闇が訪れる。だが、すぐにスポットライトが、広場の奥のステージを照らしていた。その光の先に、マイクを片手に持つ司会者らしい人がいた。

 

「……ヴァンガード。それは、自らが先導者となり、惑星クレイのユニットを率いて戦うカードゲームです」

 

静まり返った広場に、司会者の声だけが響く。その声を邪魔する人は、誰もいない。

 

「世界的大ヒットを巻き起こしたヴァンガードは、数億人ものファイターを生み出し、今や無くてはならないほどの存在となりました……」

 

ここに集まった人の多さを見るからに、それは証明されている。

 

「そんなヴァンガードの頂点を決める大会、グランドマスターカップ!その関東地区、秋予選を……今ここに、開催致します!」

 

ホール中が歓声に包まれる。発した歓声がホールに反響して、一気にテンションも上昇していた。

 

「すごい熱気……!」

 

「燃えてきたっスね!」

 

ここにいる人たちも、同じ事を考えているだろう。溢れる熱気の中、私たちは戦うのだ。

 

「では、簡単にルールをおさらいしましょう!」

 

ステージの後ろにスクリーンが降りてくる。説明のための画像が、そこに写し出された。

 

「本予選は、チーム戦です!チームの人数は何人でもいいですが、最低3人が条件となっています!」

 

それは言われるまでなく、クリアしている。

 

「試合は各チームの代表3人が同時にファイト。先に2勝したチームが勝利となります!」

 

至ってシンプルなルールだ。わかりやすい。

 

「大会はAブロックとBブロックに分かれてトーナメント形式で行い、各ブロックの1位のチームで決勝を行います!」

 

「ブロック戦……。これは上手く行けば、弱い奴ばかりだったり……」

 

「そうじゃないチームばかりもあり得るわね。完全に運が全てよ」

 

でもこれだと、最悪ミズキとファイトできなくなる可能性もあるな……。

 

「見事決勝を制し、優勝したチームには、グランドマスターカップ決勝大会の優先参加権が与えられます!」

 

「「「「「おおーっ!」」」」」

 

「さらに、副賞もありますので、皆さん最後までがんばって下さいね!それでは、この辺で説明を終わらせていただきます!」

 

副賞もあるんだ。一体何なんだろう。

 

「続けて、各ブロックのトーナメントの組み合わせを発表します!スクリーンに注目して下さい!」

 

司会者の人が袖口まで下がると、スクリーンに組み合わせ表が写し出される。ファイターたちはスクリーンの方へ近づき、自分のチームの名前を探す。

 

「チーム名が多くて、なかなか見つけられないわね……」

 

「AかBかもわからないしな……」

 

「……あっ、あったよ!」

 

エレメンタルメモリーの名前があったのは、Aブロックだった。

 

「では、本予選で使用するMFSの準備に入りたいと思います!」

 

司会者の声を合図に、広場の床の一部分が開き始める。そこから現れたのは、テーブル状の機械。計24機。

 

「それでは、早速ファイトを始めていきましょう!ファイトの進行については、受付時に配布したバックルに表示されます!」

 

ん、さっきまで何も写ってなかったのに、緑色で数字が写っている。

 

「ファイトの時間になりましたら、1番から4番までの数字がバックルに表示されます!表示されたら、指定の番号のMFSへと向かって下さい!」

 

私たちは……4番か。ということは、今すぐにファイトが始まるのか。

 

「よっしゃ!早速暴れてやるっスよ!」

 

私たちがMFSに向かうと、既に対戦相手であるチームはいた。審判の人も、スタンバイしていた。

 

「両チームのメンバーが揃いましたので、これより1回戦を行います。最初に、チームの代表を決めて下さい」

 

相手チームは3人だったため、私たちだけが代表を決めることになった。

 

「さて……どうやって決めるか」

 

「そうね……初戦は大事だし、ここは━━」

 

「ちょっと待つっスよ、リサさん」

 

と、メンバーを選出しようとしていた森宮さんに、佐原君が割り込んできた。

 

「そんな風に決めるのも悪くないっスけど、ここは公平に決めるべきじゃないかって思うんスよね」

 

「……というと?」

 

「誰もが文句のない、公正な手段。ファイトの権利を勝ち取るのは、自分の運次第。そう!それこそが、じゃんけん!」

 

「何でまたじゃんけんよ……」

 

「まぁ、いいんじゃない?みんなが代表になれる可能性があるわけだし」

 

「そういうこと。リサさんの勝手なチョイスで、応援役にされる不満といったら、計りしれないっスよ……」

 

「そんなこと言うなら、ずっと応援していて貰うわよ!?」

 

という事で、別に異論はなく、じゃんけんで代表を選出することにしたのだが……。

 

「ノリがわかってるな」

 

「……ノリとか止めるっス!何で俺が応援役なんスか!?」

 

「言い出しっぺが負けるのは、よくあることよ」

 

「ぐ……」

 

「じゃんけんだって、1人負けだったよね、佐原君」

 

「何か今日の俺って、やたらといじられてないっスか!?」

 

という訳で、佐原君以外が代表ということになった。

 

「じゃあ、代表も決めたことだし……ファイト前に、円陣でもしましょうか」

 

「おお、円陣!いいっスね〜!……俺出ないっスけど」

 

審判の人に待ってもらい、私たちは円陣を組む。それぞれ手を組み、みんなと向かい合う。

 

「……ついにここまできたわ。この時のために、皆で一緒にがんばって……努力してきた。ここに立てたのは、シオリさんたちがチームに入ってくれたからよ。ありがとう」

 

佐原君からも言われたが、やはり2人にとって、私たちの存在は大きいものだったのだろう。

 

「さぁ……!ここから始めるわよ!私たちの全国への道を!エレメンタルメモリーを!!」

 

4人は顔を見つめあい、頷きあう。

 

「……行くわよ!」

 

「「「おおーっ!!」」」

 

私たちの気合い、そして想いが、まわりを圧倒するかのようにホールに轟いた。


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