ヴァンガードGシリーズも、後少しで終了みたいですね。集大成となるブースターも2月に発売するようで。1年間続くと思ってただけに、ちょっと残念な気がします。
まぁでも、アニメは新シリーズに突入するみたいなので、今から期待しておきましょう。
この小説にゼロスドラゴンが登場するのは、一体いつになるんだ……。
幸先よく1回戦を突破し、挑んだグランドマスターカップ2回戦。けど、私たちは危なげなく勝つことができた。3ー0のストレート勝ちだった。
その勢いのまま私たちは3回戦に突入。ファイトはさらに熱気を帯び、想いの全てをぶつけ合う。
「よっしゃ!行くっス!インフィニットゼロ・ドラゴンで、ヴァンガードにアタック!」
「くそ……ロックさえなかったら、さっきのターンで勝てたのに……ノーガード!」
6枚目のダメージが入る。俺の勝ちが決定した。
「ふぅ……なかなか手強くなってきたっスね……」
「お疲れ、トウジ。まだまだ行けそうね」
デッキを片付け、傍で応援していたリサさんのところに向かう。まだ、シオリさんたちのファイトは終わっていない。
「そんなに余裕じゃないっスよ?けど、足踏みはしてられないっスから」
「そうね」
「後、いつもと違った環境でファイトできるのも、なかなか新鮮っスね!相手も強くて燃えるし、MFSの映像とかもう……興奮しっぱなしっスよ!」
しばらくはこんなファイト、経験できそうにない。しっかりと堪能しておかないと。
「……ん、シオリさんのファイト、動きがありそうっスね」
「そうみたいね。状況は……こっちが有利みたい」
俺たちの視線の先、市街地を舞台に戦う、シオリさんの姿があった。
「くそ……こいつでアタック!」
「エポナでガード!」
「ちぃ!ガルモールのリミットブレイクで、手札が温存されていたのが活きてるのか……!」
実際、シオリにはまだ5枚の手札がある。その上、リアガードはフル展開されていた。
だが、ガルモールのリミットブレイクは、単に手札の用途を守りに回すだけのものではない。
「私のターン、スタンドアンドドロー!世界の平和を願いし王よ!未来を導く光となれ!!ライド・ザ・ヴァンガード!円卓の解放者 アルフレッド!!」
「げっ!?そいつは……」
「アルフレッドのリミットブレイク!解放者のリアガードは5体!フルパワー!パワープラス10000!」
アルフレッドのリミットブレイクを最大限に活かすための下準備。それこそが、ガルモールの真の役割だ。
「行くよ!アルフレッドで、ヴァンガードにアタック!」
市街地を駆けるアルフレッド。建物を影にしながら、徐々に接近していく。そしてそのまま……
「……ノーガード!」
相手のヴァンガードに刃を滑り込ませ、6ダメージ目を与えた。
「勝利チーム!エレメンタルメモリー!!」
ワタル君のファイトも丁度終わり、3回戦も3ー0で勝ち進むことができた。順調な滑り出しで、このまま行けるのではないかと思ってしまう。
けど、油断は禁物。勝ち進めば、それほど相手も強くなって行くんスから。
***
次の試合まで時間があるので、私たちは観客席に来ていた。
「多いね……人」
「そうね……。これだけのファイターが一同に集まって、それを見に来る観客も観客で、すごいわね……」
「これが全国大会なら、もっと多くの人に囲まれてファイトすることになるんスね……!今から興奮が止まらないっス!」
全国か……。私も楽しみだな。
「……にしても、喉乾いたな。誰か、一緒に飲み物買いに行かないか?」
「ん、じゃあ、俺が一緒に行くっス。シオリさんたちの分も買ってくるっスよ」
「ありがとう。じゃあ、頼んでいいかな?」
「もちろんっス!」
小沢君たちが飲み物を買いに行く間、私たちは空いている席を探し、座って待っていることにした。
「次で4回戦か……。かなり勝ち残れてる方だよね?」
「初めての参加にしてみれば、上等な結果だと思うわ。それでも満足してないけどね」
目指す場所は、もっと高いところにあるのだから。
「あ……そう言えば、気になってたんだけど」
「何だった?」
「そのペンダント、初めて見るなって。可愛いペンダントだね」
「昨日、テツジさんから貰ってね。お守り代わりだって。一緒に戦えるように、あげるよって」
いとおしそうにペンダントを見つめる姿は、幸せそうに見えた。
「……よかったね」
「えぇ。今日のファイトも、このペンダントのおかげで勝ててるのかも」
「そうじゃなくて……森宮さんがまた、その人と大切な時間を過ごすことができて」
「あ……」
自責に駆られ、テツジさんを避けて、それが正しいことだと思い込んで、大切な時間をずっと手放してきた。
その事が間違いだと気づかせてくれたのは、リンだった。それに……シオリさん。
「……そうね。本当に嬉しいわ。どれだけ言い訳を作って、どれだけ目をそらしていても、テツジさんは優しかったわ。そんなテツジさんと一緒にいることが、こんなにも嬉しいなんてね……」
「当たり前だよ。大切な人なんでしょ?」
「もっと早く、自分に素直になっていたらよかったのかもしれないわね……。悲しい思いをさせたって聞いたから……」
「そんなことないよ。間違いに気づいて、今会うことができているんだから、それでいいんじゃない?会えなくなったわけじゃないんだから」
取り戻せる後悔なら、取り戻せばいい。本当に取り返しがつかなくなる後悔だけは、してはいけないんだ。
「……シオリさんは、強いわね」
「え、そうかな?」
「誰かを励ませる人っていうのは、心の強い人じゃないとできないわよ」
「そんなことないけどな。でも、励みになったなら、よかったよ」
ペンダントを握りしめながら、森宮さんは表情を緩める。本当に、大切なものなんだな。
「お〜い、シオリさ〜ん!飲み物買ってきたっスよ!」
「ありがとう佐原君!あ、席こっちだよ!」
戻ってきた佐原君から、飲み物を受け取った。森宮さんも飲み物を貰い、4人で並んで、しばらくMFSのファイトを観賞する。
「こうして見ると、すごいな……」
「迫力あるっスね!」
ファイト目当てに観戦に来る人が多いのも、納得がいく。どれも白熱したファイトだが、それ以上に、動くユニットの姿に目を惹かれる。これは見たくなるのも無理はない。
「……ん?」
バックルが光った。どうやら、ファイトのようだ。番号は、2番。
「よし!今回もやってやるっスよ!」
「当たり前よ!さぁ、気合い入れて行くわよ!」
「おう!任せろ!」
移動を始める4人の傍らで、照明に照らされたペンダントが、輝きを放っていた。
***
「……ヴァンガードに、アタック!」
「ノーガード……負けました」
「よし!」
こちらはミズキたち。今のファイトで、チームの勝利が確定した。順調に前へと進んでいる。
「やったな、ミズキ!」
「うん!柳田さんも、お疲れ様です」
「チームのためだからな。これくらいどうってことない」
特に苦戦することもなく、チームとしての状態も悪くない。まだまだ先に行けるだろう。
「本当、頼れる仲間だぜ!柳田さんは!」
「そんなことない。平本もいい腕だ」
「まぁな!今日のために、腕を磨いてきたんだからよ!」
ユウトとミズキ。2人の目標はあくまで、シオリたちへのリベンジだ。大舞台で、本気のファイトをする。そして、勝利する。
「次のファイトまで、時間ありますね。せっかくですから、戦術の見直しのためにファイトしませんか?柳田さん」
「そうだな。さっきのファイトの課題を、克服するのもいいかもしれん」
「あっ、なら俺も!ミズキ、俺ともファイトしてくれ!」
「わかった。柳田さんの後でね」
広場を出て、エントランスへと向かう。その途中、ミズキは遠くにシオリの姿を発見した。
「シオリ……負けないでね。絶対、ファイトするんだから」
今からファイトなのだろう。MFSの方に向かっているようだった。だから、心の中に留めておくだけにする。
「お〜い、ミズキ!何やってるんだ!早く空いてるところ見つけて、ファイトしようぜ!」
「……わかってるよ!後、柳田さんが先だからね!?」
***
今回は、私たちの方が早く到着したみたいだ。まだ相手のチームは来ていない。
「もう少しゆっくりでもよかったっスかね?」
「早いなら、それに越したことはないわ。どうせだし、じゃんけんで代表を決めておきましょう」
無言で頷き、拳を構える。今回も出られるといいんだけどな……。
「「「「じゃーんけん……!」」」」
その結果。
「よっしゃ!ファイトできるっス!!」
「さっきは応援だったから、ファイトできてよかったわ」
「……で、応援は星野か」
と言うことです。まぁ、ずっとファイトだったから、たまには応援も悪くないかな。
……欲を言うなら、今回もファイトしたかったけど。
「いや〜すまぬすまぬ!腹が痛くて、遅れてしまったでござるよ」
「「「「……!?」」」」
今、忍者言葉が聞こえたような気がしたのだが……。
「ここが2番のMFSでよかったでござるな。拙者たちの相手は、お主らということでござるか」
いや、気のせいではない。しかも、私たちの対戦相手だ。
忍者を意識してか、暗い色の服で統一されている。その頭には、はちまきをしていた。その上で、この口調。
「……何だ、あの忍者もどきは」
「む、お主。今忍者を馬鹿にしたでござるな!」
「よさぬか、サスケ」
「でも、主君!」
「「「…………」」」
これは、1人が忍者になりきっている訳でもなさそうだ。相手のチームは計5人いるが、今のやり取りからして、全員このキャラだろう。
「主君って……」
「まぁ、面白くていいんじゃないかな?」
「そうだけどな……」
悪い気はしないが、それでも戸惑いはある。そんな中、一際食いつきを見せたのが、
「おお!こういう人たちもいるんスね!服装はともかく、忍者になりきってるじゃないっスか!」
「……トウジは、ああいうの好きだからね」
目を輝かせ、純粋にすごいと思っているトウジ。聞けば、時代劇にはまっていた時期があったみたいで。
「なかなか食いつくでござるな。忍者に興味があるのでござるか?」
「興味はあるっスよ。さすがに、ヴァンガードほどじゃないっスけど」
「しかし、興味はある様子。話が合うかも知れぬでござるな!」
「そのようっスね!」
何故か意気投合している2人をよそに、審判の人が4回戦の準備を進めていく。
「では、両チームが揃いましたので、これより4回戦、エレメンタルメモリー対隠密SINOBIのファイトを始めたいと思います!まず、両チームは代表者を━━」
「私たちのチームは、出揃ってます。向こうのチームは……」
「拙者たちも決まっているでござるよ」
談笑しているリーダー(さっき、主君と言われていた人)を放っておいて、メンバーの1人が代わりに答える。
「そうですか。では、早速始めたいと思います!両チーム代表は、MFSの前へ!」
話をしていた2人も、MFSの前に立つ。変形し、ファイトテーブルが現れた。
応援役の人は、離れたところで待機となるため、シオリは壁際に移動して、ファイトを観戦できるようにした。
「……さて、俺の相手は誰っスかね?」
どんな奴が相手でも、勝つだけっスけど。
「何と!お主が相手でござったか!」
「あれ、マジっスか!?巡り合わせがすごいんスけど!」
よりにもよって、この2人がファイトすると言うことになった。気の合う相手なだけに、互いにいいファイトができると思った。
「楽しく話ができるのみならず、ファイトまでできるとは……嬉しく思うでござるよ!」
「こっちもっスよ。……そういや、名前をまだ名乗ってなかったっスね。俺は佐原トウジっス」
「拙者は、芹沢ミツルでござる」
他の2人も、対戦相手が決まったようだ。既に手札の引き直しまで終えているみたいだった。
「では、拙者たちもファイトの準備を始めるとしようぞ」
「そうっスね」
早いところ準備を済ませ、伏せてあるファーストヴァンガードに手をかける。それを確認した審判が、ファイトの開幕を告げた。
「それでは、試合開始!」
「「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」」
「「「立ち上がれ!忍道を行く……先導者!!」」」
「「「「!?」」」」
特殊なスタンドアップから始まったこのファイト。チームの意もこめた口上だろうが、かなり珍しい。
驚きはしたが、互いに表情は真剣そのもの。ファイトはそろそろ、一筋縄ではいかなくなってきた……。
***
「レッドパルス・ドラゴキッド!(4000)」
「変わり身の忍鬼 コクエンマル!(4000)」
むらくもか……。まぁ、格好から想像はしてたけどな。これで他のクランだったら、完全にペテンだし。
後、かなりガキだな。まだ小学生の中学年くらいだろうか。さっき、サスケとか言われてた奴か。
それは放っておいて……軸は何だ?マガツストームではなさそうだが……むらくもで他に思い当たるものは何かあったか……?
「拙者のターン、ドロー!いざ、ライド!忍獣 ミダレエッジ!(6000) コクエンマルは後ろに移動!ターン終了でござる!」
「俺のターン!ドロー、ヒートネイル・サラマンダー(6000)にライドだ!レッドパルスは……左後ろ。その前に、魔竜導師 キンナラ(6000)をコール!」
舞台は、夜の山奥。そこにヒートネイルが、炎を撒き散らしながら現れる。
「ヒートネイルで、ミダレエッジをアタック!(6000)」
「ノーガードでござる!」
「ドライブチェック、ドラゴンナイト ネハーレン」
「ダメージトリガー確認。忍竜 カースドブレスでござる」
炎の球体を放ち、山を燃やしながら、ミダレエッジを丸焼きにしていく。
「レッドパルスのブースト、キンナラでアタック!(10000)」
「む……ミダレエッジでガードでござる!」
手にした杖で、キンナラがミダレエッジを殴りつけるが、煙となって消えてしまった。どうやら、分身だったようだ。
「ターンエンドだ」
ワタル:ダメージ0 サスケ:ダメージ1
「拙者のターン!ドロー!忍獣 ホワイトメイン(9000)にライドでござる!そして、忍妖 ミッドナイトクロウ(8000)をコールし、スキル発動!
きた……!むらくもの特徴であるスキルの代表格が……!
「CB1で、山札よりミッドナイトクロウを、1ターンだけスペリオルコール!(8000)」
ミッドナイトクロウの姿が一瞬ぶれて見えたかと思うと、直後には2体に分かれていた。
同名カードを一時的にコールするこのスキルは、相手にするとかなりきつい。役目を終えたらすぐに消えるため、こちらにできることは何もない。
まして、俺のヴァンガードのパワーは6000と低い。連続アタックでダメージ差を大きくつけられるわけにはいかない。
「まずは右のミッドナイトクロウで、ヒートネイルをアタックでござる!(8000)」
「ガトリングクロー・ドラゴンでガードだ!」
「次はコクエンマルのブースト、ホワイトメインが参る!(13000)」
「ノーガードだ」
「トリガー確認……忍竜 カースドブレス」
宙に揺らめく青い炎が、ヒートネイルに激突する。爆発の余波が、木々をしならせる。
「ダメージチェック、バーサーク・ドラゴンだ」
「ホワイトメインのスキルで、ダメージを1枚表へ。左のミッドナイトクロウ!ヒートネイルをアタックでござる!(8000)」
「こっちもノーガードだ。ダメージチェック……っ!」
俺は思わず顔を潜めてしまった。デッキから捲られたそのカードは……ジ・エンドだった。
「ジ・エンドでござるか……。ということは、オーバーロード軸。ある程度の内容は把握できたでござるよ」
「何たった1枚のカードで見通した気になってんだ、忍者のガキ」
平静さを保ちながら、俺は仕方なくジ・エンドをダメージゾーンに置く。
「ガキって言うな!そんな風に呼ばれる筋合いはないでござる!」
食いつくポイントはそっちかよ。それに、どう見てもガキだし。
「拙者のことをガキと呼ぶ不届き者は、成敗してくれるでござる!……しかし、このターンはもう何もできぬ。ここは、ターンエンドでござる!」
と、忍者のガキがターンエンドしたのと同時に、効果でコールしたミッドナイトクロウが、デッキに戻る。これが厄介なんだよな、むらくもは。
ワタル:ダメージ2 サスケ:ダメージ1
「俺のターン、スタンドアンドドロー」
さて……今ジ・エンドが落ちたのは、状況を考えると、かなりまずかった。
切り札でもあるジ・エンドは、ペルソナブラストを使うのに必要となってくる。そのため、ダメージに落ちてほしくなかったのが1つ。
それ以上に問題なのが、今の俺の手札だった。なぜなら、今の俺は手札にグレード3を……持っていない。
ジ・エンドはグレード3。それがダメージに落ちたため、まずい状況になっている。
何とかして、グレード3をこのターンで手札に加えないと、ライド事故を起こしてしまう。それだけは、絶対に避けたい。
最悪の場合は、それが負けにつながることだってあり得るのだから……。
***
「先陣のブレイブ・シューター!(5000)」
「忍竜 マガツウィンド!(4000)」
一方、こちらはリサのファイト。相手はマガツ軸のようだ。
「アクアフォースでござるか。連続アタックが厄介なクランでござるな」
「そう言うあなたのデッキも、流れに乗れば数で圧倒できるじゃない」
「左様。ならば、この錦戸ミヤビとお主……どちらがより多くアタックを叩き込み勝つか、いざ勝負と行こう!」
望むところよ。連続アタックの十八番は、このアクアフォース。絶対に負けない!
「では行かん!ドロー、忍竜 マガツブレス(7000)にライド!ソウルにマガツウィンドがあることで、パワー8000になるでござる」
舞台は夜の湖のほとり。そこに現れたサークルから、マガツブレスが登場する。
離れた場所から対峙するのは、牽制するように銃口を向けたブレイブ・シューターだ。
「そして、マガツウィンドのスキル。マガツブレスにライドされた時、山札の上から7枚確認し、忍竜 マガツゲイルを手札へ。ターンエンドでござる!」
連携ライドが成功してしまったわね。でも、それで全て決まるわけじゃない。
「私のターン、ドロー。ティアーナイト キブロス(7000)にライド!ブレイブ・シューターは左後ろよ。そのままキブロスでアタックするわ!(7000)」
「そのアタック、受けるでござる!」
「ドライブチェック!ティアーナイト テオ……トリガーなし」
キブロスの右手に握られた弓形の銃から、マガツブレスに無数の光弾が放たれる。
相手のダメージには、忍獣 ホワイトメインが入った。
「ターンエンドよ」
リサ:ダメージ0 ミヤビ:ダメージ1
「拙者のターン、ドロー!では、忍竜 マガツゲイル(9000)にライドでござる!」
ということは……早速来るわね。マガツ軸特有の速攻が。
「マガツゲイルは、ソウルにマガツブレスがいることで、パワー10000になるでござる。そして、マガツブレスのスキル!マガツゲイルにライドされた時、山札から2体のマガツゲイルをスペリオルコールでござる!(9000)」
マガツブレスが光に包まれ、マガツゲイルに。そのマガツゲイルの姿が一瞬ぶれたかと思うと、3体に分身していた。
これがマガツ軸の強力なスキル。連携ライドに成功することで、デッキから同名のマガツをコールできる。
手札を減らさずにリアガードを増やせる点では、攻撃面も防御面も優れている。
「左のマガツゲイルの後ろに、静寂の忍鬼 シジママル(8000)をコール!では参るぞ、まずは右のマガツゲイルでキブロスへアタック!(9000)」
「テオでガードするわ」
長銃を構えたテオが、接近するマガツゲイルの進路を阻む。
「防ぐか……なら、中央のマガツゲイルで再びキブロスへアタックでござる!(10000)」
「ノーガードするわ」
「ドライブトリガー確認……忍妖 ダートスパイダー、スタンドトリガーでござる!効果は全て左のマガツブレスへ!(14000)」
スタンドトリガーを採用してるのね。リアガードを容易に揃えられるマガツ軸には、最適なトリガーだわ。
「ダメージチェック。くっ、発光信号のペンギン兵……」
連続アタックをする上で一番恐れる物は、ダメージトリガーの存在だ。
パワーが上がるとアタックは通りにくくなる。特にアクアフォースは、その影響をもろに受けやすいのだが、今のマガツ軸にも同じことが言える。
そのためにダメージトリガーに期待したのだが、そう都合よくはいかなかった。
「スタンドしたマガツブレスで、三度キブロスをアタック!(14000)」
「ジェットスキー・ライダーでガード!」
「なら、シジママルの支援で、マガツゲイル!キブロスへ4回目のアタックでござる!(17000)」
流石にガードしきれない……。
「ノーガード!」
体を捻り投げつけたマガツブレスの手裏剣が、キブロスの体を切り裂いた。
「ダメージチェック、翠玉の盾 バスカリス」
「ターン終了でござる。この瞬間、コールされた2体のマガツゲイルは山札の下へ」
さらにマガツ軸が厄介なのは、コールされたユニットが即座にデッキ下に戻るため、こちらから対処することができないのだ。
まだグレード2の時点で、リサは苦戦を強いられることになってしまった……。
リサ:ダメージ2 ミヤビ:ダメージ1
***
「星輝兵 ダストテイル・ユニコーン!(5000)」
「忍獣 イビルフェレット!(5000)」
こちらはトウジのファイト。相手のクランはむらくも……はわかっていたが、イビルフェレットがファーストヴァンガードとなると、どんなデッキか想像しにくい。
「お互いに、全力のファイトをするでござるよ!トウジ殿!」
「当然っスよ、ミツル!」
舞台は夜の城っスか。対むらくもって感じで燃えてくるっスね!
「俺のターンからっス。ドロー、魔弾の星輝兵 ネオン(7000)にライド!ダストテイルはそのまま後ろへ。ターンエンドっス」
「拙者のターン、ドロー!静寂の忍鬼 シジママル(8000)にライドでござるよ!イビルフェレットは後ろへ。ブーストして、シジママルでアタックでござる!(13000)」
左手で刃を持ち、素早い動きでネオンの懐に飛び込む。
「ノーガードっスよ」
「ドライブトリガー確認!忍獣ブラッディミスト」
「ダメージチェック、星輝兵 メビウスブレス・ドラゴンっスね」
一太刀浴びせたシジママルが、すぐに後方へと引き下がる。
「ターン終了でござる!」
トウジ:ダメージ1 ミツル:ダメージ0
「俺のターン、ドロー!」
ここまでの流れで……と言ってもまだ3ターンっスけど、ミツルのデッキのコンセプトがわからない。
まず、マガツ軸ならイビルフェレットは使わない。可能性としては、マンダラロード、シラユキ……。意外な線で、決闘龍 ZANBAKUとかっスかね?
「無双の星輝兵 ラドン(9000)にライドっス。続けて、黒門を開く者(7000)をコール。黒門のスキルで、コールした時に相手のリアガードが2枚以下なら、手札1枚を捨ててドローするっスよ!」
ミツルのリアガードは1枚。条件はクリアしている。
「黒門を開く者の前に凶爪の星輝兵 ニオブ(9000)をコールっス!ダストテイルのブーストで、ラドンのアタック!(14000)」
「ここは受けよう」
「ドライブチェック、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。ゲット!クリティカルトリガー!パワーはニオブ(14000)クリティカルはラドンへ!(14000 ☆2)」
ラドンが正確にシジママルを射抜く。シジママルは傷口を抑え、城壁にもたれかかった。
「ダメージトリガー確認!忍獣 ホワイトメインと忍妖 ユキヒメ。ヒールトリガーでござるな」
「くっ、しかも2枚目のダメージで引く辺り、流石っスね。1枚目なら、有効ヒールじゃなかったのに……」
「ダメージを1枚回復し、パワーはシジママルへ。(13000)運がよかったでござるな」
ユキヒメがシジママルに手を当て、冷気を送る。傷口が癒え、シジママルは不敵に笑いを浮かべた。
「まだまだこっからっスよ!黒門を開く者のブースト、ニオブでアタック!(21000)」
「狐使い イズナでガード!」
「ターンエンド!」
トウジ:ダメージ1 ミツル:ダメージ1
「拙者のターン、スタンドアンドドロー!忍獣 ブラッディミスト(10000)にライド!イビルフェレットのブーストを付け、アタックでござる!(15000)」
あれ?リアガードを展開しないんスか?まさか、手札事故とか……?
「ノーガードっス」
「トリガー確認!忍獣 スペルハウンド、トリガーなしでござる」
ブラッディミストは屋根を伝い、ラドンの背後に回り込む。すれ違い様に体を引き裂き、確かな傷をつけた。
「ダメージチェック、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴンっス」
「拙者のターン、終了でござる」
トウジ:ダメージ2 ミツル:ダメージ1
さっきのターンのドライブチェックで加えたカード……リミットブレイクを自力で発動するためのカードっスね……。
ということは、リミットブレイクのカードと併用して入れていることになる。そうなると、やっぱりマガツしか思い当たらない。
読めないっスね。どんなデッキなのか……。
「俺のターン、スタンドアンドドロー!誘え!滅び渦巻く世界へ!ライド!星輝兵インフィニットゼロ・ドラゴン!!(11000)」
夜空に現れたサークルにラドンが吸い込まれる。そこから這い出すように降り立ったのは、黒輪を背負った竜。インフィニットゼロ・ドラゴンだった。
「凶爪の星輝兵 ニオブ(9000) その後ろに魔爪の星輝兵 ランタン(7000)をコール!」
相手の手の内がわからないのなら、何かされる前に攻めこんでやるっス!
「黒門を開く者のブースト、ニオブでアタック!(16000)」
「忍獣 キャットデビルでガード!」
「なら、ダストテイルのブースト、インフィニットゼロでアタック!インフィニットのスキルで、パワープラス2000!(18000)」
「ノーガードでござるよ」
「ツインドライブ!1枚目、魔弾の星輝兵 ネオン。2枚目、星輝兵 メビウスブレス・ドラゴン。トリガーなしっスか〜!」
インフィニットゼロから黒い咆哮が放たれ、ブラッディミストを飲み込む。
「ダメージトリガー確認。忍獣 キャットローグ。ドロートリガーでござる!1枚ドローし、パワーをブラッディミストへ!(15000)」
「げっ、そっちがトリガー引いたんスか!?く……ランタンのブースト、ニオブでアタック!(16000)」
「ホワイトメインでガードでござる!」
「ターンエンドっス」
トウジ:ダメージ2 ミツル:ダメージ2
やや動き出しが遅い。ミツルはリアガードを展開せず、逆にトウジはフル展開。だが、トリガーに恵まれず、なかなか押し切ることができない。
「では、拙者のターン。スタンドアンドドロー!……ふむ、ようやく拙者の切り札を見せることができるでござる!」
さぁ、何スか?その切り札は……。
「闇に揺らめく呪いの炎。妖気を放ち、災いをもたらせ!ライド!白面金毛の妖孤 タマモ!(10000)」
ブラッディミストの姿が変化し、8つの青白い炎が円を描く。その中心に燃え上がる9つ目の炎が、周りの炎を取り込んで狐の姿を形作る。
「たっ、タマモ……!?」
予想外だった。確かにリミットブレイクを持っていて、スペルハウンドを採用する理由はわかったっスけど……。
「どうしてタマモなんスか?むらくもなら、他に強いグレード3はそれなりにいるはずっスよ?」
はっきり言って、タマモは強いとは言い難い。そもそも元のパワーが10000と低い。それなら、マンダラロードやZANBAKUと言ったパワー11000のユニットの方が攻守に優れる。
リミットブレイクもあるが、それもアタックした時にパワーを5000プラスするだけ。どこか頼りなく見えてしまう。
そんなタマモを採用する理由は……?
「拙者、タマモのスキルが好きなんでござるよ」
「スキル……?」
タマモにはリミットブレイク以外にもスキルが1つある。リミットブレイクの方を好むとは思えないから、そちらのスキルのことを言っているのだと思う。
けど、そのスキル目当てにタマモを?いや、それだけじゃないように思える。
「その答え……このターンで見せるでござる!まずはイビルフェレットのスキル!自身を山札の下に置くことで、手札から忍獣 スペルハウンド(8000)をスペリオルコール!」
イビルフェレットが煙に包まれ、スペルハウンドへと姿を変える。
「スペルハウンドのスキル、CB1で山札の上から1枚をダメージゾーンへ。次にタマモのスキル。CB1で、山札からグレード2以上のリアガードと同名、すなわち、スペルハウンド(8000)をスペリオルコール!」
その後、ミツルは2体目のスペルハウンドのスキルでダメージを増やす。これでダメージは4。リミットブレイクが可能となった。
けど、これだけっスか?タマモのスキルは、手札を温存してのリアガード増加。そのためだけにタマモを使っているとは考えにくい。
「忍獣 フレイムフォックス(6000)をタマモの後ろ、忍妖 オボロカート(6000)を右のスペルハウンドの後ろへコール!」
今度はミツルがフル展開……。
「オボロカートのブースト、スペルハウンドで右のニオブをアタック!(14000)」
「ニオブっスか……ここは、ヴァイス・ソルダードでガードっス!」
「フレイムフォックスのブースト、タマモでヴァンガードにアタック!この瞬間、タマモのリミットブレイク!パワープラス5000!さらにフレイムフォックスは、タマモをブーストした時限定で、SB1してパワープラス5000!(26000)」
かなりの高パワーっスね。けど、まだダメージは2。ノーガードで切り抜ける余裕はある。
「ノーガード!」
「ツインドライブ!忍獣 イビルフェレット。忍妖 ユキヒメ。ユキヒメはヒールトリガー故に、トリガー発動!ダメージを1枚回復し、パワーは左のスペルハウンドへ!(13000)」
タマモが無造作に炎を散らし、インフィニットゼロが炎に焼き尽くされる。
「ダメージは……障壁の星輝兵 プロメチウム」
「残りのスペルハウンドで、ニオブにアタック!(13000)」
「ガードっスよ!メビウスブレス!」
「では、ターン終了。ここで、お待ちかねの時間に入ろう」
お待ちかね?その言葉を不思議に思う中、ミツルはファイトを進める。
「まずはイビルフェレットのスキル。コールしたスペルハウンドは、ターン終了時に手札へ戻る。続けてタマモのスキル。コールしたスペルハウンドを山札の下へ」
スペルハウンドが霞み、霧のように消えていく。
「そして!スペルハウンド2体のスキルで増やしたダメージを山札へ!拙者が戻すのは……忍妖 ユキヒメと忍獣 キャットローグ!」
「どっちもトリガー……っ!そういうことっスか!?」
「気づいたでござるか、トウジ殿?何故、拙者がタマモにこだわるのか」
なるほど。確かにミツルの狙おうとしていることは、他のグレード3のユニットではできない。タマモじゃないとできない。
「わかったっスよ……このデッキの狙いが。それに、タマモのスキルが何故必要なのか。それは、スペルハウンドのスキルとタマモのスキルを合わせて、毎ターンダメージに落ちたトリガーをデッキに戻すため!」
「その通り!トリガーを使い回し、かつ戦力を整えていくこのコンボ。それこそが、拙者の狙い!」
スペルハウンドを1体コールしておけば、タマモのスキルでスペルハウンドを増やし、好きなダメージのカードをデッキに戻していける。
それだけじゃない。ミツルはイビルフェレットを使い、コンボの要となるスペルハウンドをリアガードに残さないようにしている。
そうすることで、退却などによるコンボの崩壊を防いでいる……。考えられたデッキだ。
「さぁ、トウジ殿のターンでござるよ!」
やるっスね。こんな相手とファイトできるなんて、俺は恵まれている。
でも、勝つのは俺だ。絶対に負けはしないっスよ!ミツル!!
トウジ:ダメージ3 ミツル:ダメージ1
そう言えば、冒頭のガルモールの下り書いてて思ったんですけど、究極超越で解放者の新規ガルモールが登場しましたね。
まさかガルモールがストライドスキルを持つ日が来るとは、この時には考えられなかった。
ですけど、以前のカードがこうしてリメイクされるのは、結構好きですね。少し前の話ですが、ディセンダントとか、レイジングフォームとか。