つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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お久しぶりです。前回の投稿から3ヶ月も間が空いてしまいましたが、これからも頑張ります。

さて、5月から新シリーズが始まりますね。まさかのリメイクと言うことですが、かなり賛否両論といったところみたいです。
個人的には、無印のアイチ編は面白かったので、有りだと思います。カードも初期から始めていたので、昔のカードがリメイクされるのもいいと思います。

騎士王 アルフレッドもリメイクされるみたいなので、今から楽しみです。昔から好きで、この小説を書くきっかけにもなったカードだったので。

毎回前置きが長くなってしまい、本当にすいません。では、本編に行きましょう。


ride39 自責と悔恨と

「進撃せよ!大地を揺るがす炎の王者!ブレイクライド!ドーントレスドライブ・ドラゴン!!(11000)」

 

何をやっていたんだ。あの時、俺が教えてもらった覚悟って奴は、こんなプレッシャーに負けるほど脆い物だったのか……?

 

『君たちはチームとして戦うんじゃないの?だったら当然、君もファイトする日がやってくるはずだ』

 

ああ、そうだ。お前は、そう言った。

 

『その時、君はチームのために勝てる?いや、勝てないね。今の君は、チーム頼みの勝利しか求めていないから。だから、必要なんだよ……覚悟が』

 

その言葉に拳を握り、悔しさを滲ませたあのファイトは、一体何だったんだろうな?

 

『覚悟を持ちなよ。チームのために戦う覚悟を。誰かのために戦う覚悟を持つ人は、それだけで強くなれる。君には、その覚悟が必要なんだ』

 

こうして今、あいつの言った状況になって気がついた。わかっているようで、俺は何もわかっていなかったんだ。

 

あいつの言う、本当の覚悟を。

 

「ブレイクライドスキル!ドーントレスにパワープラス10000!(21000) 更にアタックした時、手札3枚を捨てることでスタンドするスキルを与える!」

 

「や、ヤバいでござる……」

 

だからこそ、今見せる時だ。俺の……本当の覚悟を!

 

「ドーントレス単体で、シラユキにアタック!スキルでパワープラス2000!(23000)」

 

「やらせんでござる!シラユキは、相手のアタックに応じてリミットブレイクを発動!CB1とペルソナブラストで、アタックしているユニットのパワーマイナス20000!(3000)」

 

シラユキの周りを舞う花吹雪が、一ヶ所に集まっていく。それは、シラユキと瓜二つの姿になり、ドーントレスに激突して四散する。

 

「拙者はノーガード!」

 

「ち……ツインドライブ!1枚目、ドラゴンナイト ネハーレン。2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド。ゲット!クリティカルだ!」

 

そう言えば、ガキの手札には完全ガードがあったはず。だったら、次のドーントレスのアタックは防がれる可能性が高い……。

 

「効果は全てバーサークだ!(14000 ☆2)」

 

「……なっ!?」

 

ドーントレスが後退する傍ら、バーサークがトリガーの効果を受けて赤く輝く。

このプレイングを予期していなかったのか、思わずサスケの口から驚きが漏れる。

 

「ブレイクライドスキル発動!手札3枚を捨てて、ドーントレスをスタンドだ!」

 

ドーントレスの周りを取り囲むように現れた3枚の燃えるカード。それらがドーントレスに吸い込まれ、更なる力を与える。

 

「カルゼのブースト、ドーントレスでシラユキにアタック!再びスキルでパワープラス2000!(30000)」

 

「く……不味いでござる……」

 

ここで完全ガードを使えば、このアタックは阻止できる。が、後に控えるバーサークはクリティカルがプラスされている。何としても阻止しないといけない。

その上、ガキの手札は残り3枚。両方をガードするには、あまりにも手札が不足していた。

 

だから迷っている。ここをノーガードし、次のバーサークを完全ガードするかどうか。その選択を容易に決められないのは、俺がまだクリティカルトリガーをあまり引いていないからだろう。

 

「なかなか嫌らしいことをするでござるな!さっきまでの腰抜けっぷりはどこに行ったでござるか!?」

 

「チームのみんなが……あいつらが思い出させてくれたからな。俺は、チームで戦っているんだってこと。それに……覚悟を持つことを」

 

ドーントレスは両手を合わせ、炎の球を形成する。その輝きが、シラユキを赤く照らす。

 

「ぐぬぬ……だったら、仕方ないでござる!ノーガード!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド。2枚目、ドラゴンモンク ゲンジョウ。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復し、パワーをバーサークへ!(19000 ☆2)」

 

シラユキめがけて放ったドーントレスの火球は、周りの木々を燃やしながら、シラユキに見事に命中する。

だが、まだ終わりではない。ガキの賭けは成功し、延命することに成功してしまったからだ。

 

「ダメージは……静寂の忍鬼 シジママルでござる」

 

「キンナラのブースト、バーサークでシラユキにアタック。まぁ、防がれるのはわかっているけどな。(25000 ☆2)」

 

「そんな皮肉は要らないでござるよ!忍獣 リーフスミラージュで完全ガード!コストはナイトパンサー!」

 

「ターンエンドだな」

 

 

ワタル:ダメージ4 サスケ:ダメージ5(裏1)

 

 

「……拙者のターン、スタンドアンドドロー!コクエンマルのスキル!CB1と自身をソウルに入れることで、山札の上から5枚確認して、グレード3を1枚手札へ!夢幻の風花 シラユキ!」

 

と言うことは、次のターンにはまたペルソナブラストを使うことができる……。

 

「このターンで決めてやるでござる!シラユキでアタック!(11000)」

 

「そうは行くかよ!ゲンジョウでガード!さっきみたいなミスはもうしないぞ!」

 

ドーントレスの前にゲンジョウが立ちはだかり、シラユキの花吹雪を受け止める。

 

「まだでござる!ツインドライブ、1枚目、隠密魔竜 マンダラロード。2枚目、忍獣 ブラッディミスト。トリガーはないでござる……」

 

助かったか……。いや、向こうはまだ2回のアタックを残している。

 

「く……マンダラロードで、ドーントレスにアタックでござる!(11000)」

 

「バーサークでインターセプト!」

 

「シジママルのブースト、カースドブレスでアタックでござる!(16000)」

 

「ここはノーガード。ダメージチェック、槍の化身 ター。クリティカルトリガー!効果は一応ドーントレスへ!(16000 ☆2)」

 

「決めきれなったでござるか……。カースドブレスのスキルで、アタックヒット時に山札の上から5枚確認。その中にマンダラロードがあれば、手札に加えるでござるが……」

 

そのまま山札に戻したところを見ると、5枚の中にマンダラロードはなかったようだ。シャッフルを終え、再びガキは手札を構え直す。

 

「拙者のターン、終了……。次こそ決めるでござる!」

 

 

ワタル:ダメージ5 サスケ:ダメージ5(裏2)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!悪いが、もう次のターンはないぞ!」

 

「何!?」

 

「終焉を告げる灼熱の龍!秘めたる闘志を解き放て!ブレイクライド!ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド!!(11000)」

 

ドーントレスの足元で回転するサークルが、赤く輝きながらドーントレスの姿を包み込む。

次にそこから現れたのは、赤と金の鎧に身を包み、4本の腕にそれぞれ銃火器を携えた帝国の竜王。ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンドだ。

 

「ブレイクライドスキル!ジ・エンドにパワープラス10000!(21000)さっきと同じく、スタンドするスキルを与えるぞ!」

 

「あわわ……不味いでござる……」

 

「ペリコウスティドラゴン(9000)をコール!そしてキンナラのスキル!CB1、自身をソウルに入れて、シジママルを退却!」

 

ペリコウスティの後ろで、キンナラが杖から炎を放つ。炎を浴びたシジママルは、光となって消えていく。

 

「ペリコウスティで、カースドブレスにアタック!(9000)」

 

「ノーガードでござる!」

 

よし、インターセプトは潰した。これで狙うのは、ヴァンガードだけだ。

 

「ジ・エンドでシラユキにアタック!(21000)」

 

「まだでござる!シラユキのリミットブレイク!CB1とペルソナブラストで、ジ・エンドのパワーをマイナス20000!(1000)」

 

再び花吹雪から生まれたもう1体のシラユキが、ジ・エンドに激突して力を奪い取る。

 

「拙者はこれでノーガード!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ガトリングクロー・ドラゴン。ゲット!ドロートリガー!1枚ドローし、パワーはジ・エンドへ!(6000)2枚目、ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド」

 

トリガーは発動したが、パワーダウンのせいでシラユキにアタックがヒットしない。けど、これで終わりじゃない。

 

「まだだ!ブレイクライドスキルで、手札3枚を捨てることでスタンド!」

 

ガトリングクロー、ジ・エンド、そしてバリィ。捨てられた3枚のカードの力が、ジ・エンドを再び立ち上がらせる。

 

「カルゼのブースト!ジ・エンドで……シラユキにアタック!(33000)」

 

咆哮をあげて飛翔するジ・エンドが、手に持つ銃火器をシラユキに向ける。しかし、

 

「忍妖 ユキヒメ、忍獣 キャットデビル、忍獣 ブラッディミストでガード!」

 

現れる3体のユニット。このままではアタックは通らない。

 

「トリガー1枚で突破でござる!」

 

「だったら引いてやる!ツインドライブ!」

 

ガキの手札はまだ1枚残っていたが、それはガードに使えないグレード3のカード、隠密魔竜 マンダラロード。

 

千載一遇のチャンス。決めるなら、ここしかない!

 

「1枚目、封竜 カルゼ……」

 

ジ・エンドの撃ち続ける無数の弾丸にも、ユニット達は耐えている。後一歩の決め手は、次のドライブチェックにかかっていた。

 

「2枚目!」

 

勢いよくめくったそのカードを、俺はファイトテーブルに叩きつける。そこにあったカードは……

 

「……ブルーレイ・ドラゴキッド。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てジ・エンド!(38000 ☆2)これで終わりだ!!」

 

トリガーの後押しが、ジ・エンドの猛攻に耐えていたユニット達を吹き飛ばす。

そして、丸裸のシラユキに、今度こそ終焉の一撃を与えたのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「やったっスよ!これで5回戦進出っスね!」

 

何とか5回戦に進んだエレメンタルメモリーだったが、その結果は辛勝と呼ぶのが相応しいものだった。

4人はそのことを確認し、今は観客席でファイトを観戦している。

 

「お疲れ様、小沢君。ヒヤヒヤする場面もあったけどね」

 

「そのことに関しては悪かったな、星野。それに、佐原と森宮も」

 

「結果オーライっスよ。むしろ、よくがんばってくれたっスね、ワタル君!5回戦に進めたのも、ワタル君のおかげなんスから!」

 

私なんて、応援することしかできなかったんだから。このファイトの一番の立役者は、小沢君だ。小沢君のおかげで、私たちは勝つことができた。

 

「別にお礼なんて要らないわよ。あんな情けない姿を見てたら、いてもたってもいられなかっただけよ」

 

「……悪かった」

 

「だからいいって。……私だって、負けてるんだし」

 

顔を逸らし、森宮さんは私達と視線を合わせないようにしながら、言葉を続ける。

 

「あんなこと言っておいて何だけど、私が負けていなかったら、小沢君が変にプレッシャーを感じることもなかったはずでしょうからね……」

 

1人の敗北が、致命傷につながりかねないチーム戦。森宮さんは、自分が負けたことを責めている。負けることの重さを、理解しているからこそ。

 

「あなただけが悪い訳じゃない。むしろ、謝るのは私の方なのに……」

 

「そんなことない。森宮は俺に━━」

 

「謝らせて。力不足で、チームに迷惑をかけることになってしまって……ごめんなさい」

 

私達に向き合い、深々と頭を下げる。小沢君の制止を聞かずに、森宮さんは謝罪の言葉を口にした。

 

「ったく、何やってんスかリサさん。せっかく勝ったんスから、暗くなること言わずに頭を上げるっス」

 

「そうだよ、森宮さん。負けることのない人なんているはずない。そんなに自分を責めないで」

 

ゆっくりと顔を上げた森宮さんだったが、やはりまだ重い表情をしている。気持ちの整理をつけることが、森宮さんは完全にできていない。

 

「小沢君は、本当によくやってくれたわ。それなのに私は……情けないわね。チームに貢献するなんて、もっての他だった」

 

「そんなことない、森宮。俺は勝つことができた。けど、あのまま1人でファイトしていたら、無理だった」

 

「何が言いたいのよ」

 

「森宮は、十分チームの為にベストを尽くしてくれてるってことだ。だから、俺を叱ってくれたんだろ?」

 

チームのことを何よりも考え、行動する人がいる。それが、どれだけチームの支えになるだろう。この3回戦、もし森宮さんがいなかったら、負けていたはずだ。

 

それでも、森宮さんは素直に受け入れることができない。いくら励ましの言葉を貰ったところで、そこに結果が伴っていないから。

 

チームを危険にさらした事実は、想像以上に重くのしかかっていた。

 

「それに、森宮はリーダーだ。リーダーがそんな弱気でどうするんだよ?」

 

「リーダーね……。これでも一応、私はリーダーなのよね……」

 

自嘲するように笑い、深くため息をつく。そうすることで、気持ちの整理をつけることができたのか、森宮さんの顔色がわずかによくなる。

 

「わかったわよ。まだ終わった訳じゃないし、何とか気持ちを切り替えて見せるわ」

 

「それでこそ、リサさんっスよ」

 

「ええ。次は絶対、こんな事態にはさせないから……」

 

「森宮さん……」

 

チームのことを考えるからこその自責。そしてその決意は、周りから見たら脆く危ういものだった。

 

「1つだけ……私から言ってもいいですか?」

 

「シオリさん?ええ。何でも言ってくれて構わないわ。どんな言葉でも、私には受け止める義務がある」

 

「別に責めるつもりじゃないよ。ただ、これだけは覚えてほしいって思って」

 

だから、言っておきたかった。脆さと危うさを抱えて、決意を突き通した先にあるものを、私は知っているから。

 

「苦しい時は、抱えこまないで。もっと周りを見て。自分だけで、どうにかしようとしないで。1人だと……思わないで」

 

「シオリさん……」

 

「絶対に、忘れないで。頼れる仲間がいることが、どれだけ心強くて、大切なのか。きっと、その大切さに気づけない時が来るよ。今の森宮さんのままだったら」

 

自分だけで考え、決意を示し、そうして破滅を辿った人物を、私は知っているから。

 

「……わかったわ」

 

森宮さんは、短く言葉を返した。けど、私の想いが届いたのかどうかはわからないままだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「流石に、浅はか過ぎたか……」

 

人気のない通路に設置されたベンチに腰かけ、俺は……最上ナツキは、自らの行動を省みていた。

 

凉野マサミに接近する機会は、大きな大会くらいしかない。だから、あえて強行突破する道を選んだのだが……。

 

「そうだな。冷静になって考えたら、何をやってるんだろうな。俺は」

 

アクセルリンクを使う時よりも、粗雑な考え方だ。だが、それだけ必死になる理由がある。

 

俺は……ある人物の行方を追っている。

 

その人物と最も近い立場にいるのが、他でもない凉野マサミだった。無理を承知な行動をとったのも、他に道がないからだ。

 

「くそ……どうする?参加者の中にも奴の名前はなかった。凉野マサミにも会えず終いか……」

 

手がかりを何1つ得られることなく、今日という日を終えてしまう。それが惜しい。

 

「…………」

 

2年前のあの日から、俺はあいつと再会することだけを考えていた。忘れもしない、ノスタルジアカップの日から。

 

「あの時受けた屈辱は……必ず返す。もう一度、奴とファイトした時に、リベンジという形で返してやる」

 

それが、俺がここにいる理由。正直、グランドマスターカップなるものに興味はないが、奴の手がかりを突き止めるために、仕方なく行っていることだ。

 

「……そろそろ戻るか。あまり1人で時間を潰すわけには━━」

 

俺は、思わず息を飲んだ。俺の方に向かって歩く人影を、視界に捉えたからだ。

 

それがただの他人なら、ここまで過剰な反応はしない。今日、まさに探していた人物に他ならなかったからだ。

その人物こそ……

 

「凉野マサミ!」

 

俺は立ち上がり、通路を塞いでいた。千載一遇のチャンス。向こうから近寄ってきた幸運を、棒に振るわけにはいかない。

 

「お前はレゼンタ……。久しいな。まさか、このようなところで再会するとはな」

 

険しい表情の俺とは対称的に、凉野マサミは薄く笑みを浮かべ、余裕を見せている。その所作に、どこか妖艶な雰囲気を感じるようだった。

 

「尤も……開会式の前にこそこそ嗅ぎ回っていたらしいが?」

 

「あいつについて、聞きたいことがある!そのために、あんたに接触する目的でここに来たんだ!」

 

「やれやれ……せっかくの再会だと言うのに、そう吠えるな。もっと喜びあおうではないか」

 

「はぐらかすな!奴と関係がなかったなら、あんたのような汚れた人間と、またこうして顔を合わせることもない!」

 

笑みを崩さず、取り合おうともしない態度に、苛立ちが募り始める。以前から……ノスタルジアカップから変わらない、その態度に。

 

「何を言う。私のどこが汚れていると?」

 

「あの時語った、あんたの計画とやらのことだ。あんな非道な思考の持ち主を、好むわけがないだろう!?」

 

あの時のこいつの言葉は、俺の中から離れない。だからこそ、俺は嫌悪している。

だが、それでも、奴にすがらなければいけない理由がある。だったら、耐えてやるしかない。

 

「非道とは失礼だな。あの計画は世界を変えるために必要なことだ。そのために、お前たちに協力を求めただけのこと」

 

「その話は断ったはずだ!協力してやることなどない!」

 

有無を言わさず切り捨てたにも関わらず、まだ表情を崩さない。くそ……底が読めない相手だ。

 

「吠えるなと言っている。今お前に協力を頼んだところで、答えは見えていることだ」

 

「だったら、あいつのことについて教えろ。あいつは今、どこにいる?」

 

「一方的に教えを乞うのは、どうかと思うがな?」

 

「こいつ……!」

 

胸元を掴んでやろうと思ったが、仮にも相手はCFフォートレスの社長。ヴァンガード開発部長でもある権力のある人物だ。

そんな相手に暴力を振るうことがあっては、訴えられるのは目に見えている。そうなれば、まず確実に不利になるのは俺だ。

 

「随分執着しているようだな。そんなにあの時のことを根に持ってるのか?」

 

「あいつには借りがある。ただそれだけのために、俺はあいつを探している」

 

「ふん。借りを返す、か……」

 

どこか含みを持たせながら、凉野マサミは鼻で笑う。いちいちムカつくが、辛うじて堪える。

 

「何がおかしい?」

 

「それは……本当にお前の借りか?」

 

「っ……」

 

こいつは……痛いところを突くな。本当に嫌いな奴だ。好きになれそうにない。

 

「まぁいい。話は後だ。お前も、次のファイトがあるだろう。私はここで失礼しよう」

 

「いや、おい待て!話はまだ終わっていない!」

 

すぐさま立ち去ろうとする凉野マサミに対して、俺は慌てて止めにかかる。

 

「思いの外、せっかちな奴なのだな。急いては事を仕損じるという言葉があるだろう?」

 

「この機会を逃すつもりはない!奴について、必ず教えてもらう!」

 

「強情だな。話をすると言っているだろう」

 

「だったら、なぜ逃げるような真似をした!話すつもりなら、その必要はなかったはずだ!」

 

「だから焦るな。話は後でする」

 

後で……だと?

 

「どういうことだ?」

 

「言葉の通りだ。この秋予選が終わった後、私の部屋に来い。そこで話をしようではないか」

 

「部屋に来いって……本気か?」

 

「まさか疑っているのか?信じろ。嘘はついていない」

 

信用しているかどうかと言われると、奴の態度から間違いなく疑いを持ってしまうが……この際、そんなことを気にしていては終わりだ。

 

「……わかった。あんたの部屋に行けばいいんだな?」

 

「そうだ。警備の者には話をつけておく。お前は何の気兼ねなく部屋を訪ねてくれたらいい」

 

せっかく向こうからチャンスを与えてくれたんだ。それに乗ってやる。

 

「最後に確認しておくが……本当に信用していいんだな?その場しのぎの適当な言い訳じゃないだろうな?」

 

「しつこいな……。そこは約束しよう。お前とは話をしたいと思っている」

 

「そこも信用できるかどうか怪しいがな……」

 

「もし私が約束を守れなかった場合、その時は相応のペナルティを受けてやろう。それで満足か?」

 

ほう。そこまで言い切るなら、何の問題もなさそうだ。素直に従ってやろう。

 

「わかった。あんたの言葉を信用しよう」

 

「そうか。では、私も忙しいのでな。そろそろ失礼させてもらう」

 

俺の横を通り抜け、凉野マサミはその場を後にする。俺は、その姿を見送ることなく、背中を向けて歩き出す。

 

「今日のファイト……せいぜい頑張るがいい」

 

不意に背後から聞こえてきた声に、俺は振り返ることなく、

 

「ふん……皮肉だな。心配する気など、あんたにはない癖に」

 

そう呟いて、俺は歩みを強めていった。

 

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