「じゃ、早速ファイトを始めるっス」
「う……うん」
サンシャインにいきなり現れた青年、佐原トウジ。私はその人とファイトすることになってしまった。
別にファイトする分には文句はない。むしろ大歓迎だ。
だが、彼は強いファイターを探しているみたいで……ヴァンガードを再開したばかりの私が、彼が望む程の強さを持っているとは思わないから、不安なのだ。
「さ、デッキカットお願いするっス」
「は、はい」
お互いにデッキを交換し、シャッフルする。
(さて……対戦相手の彼女……どれほどの腕か見せて貰うっスよ)
トウジはシオリの実力に注目していた。店長が言う程なのだから、まぁある程度は強いのだろうと判断する。
「準備はいいっスか?」
「はい、いつでも」
互いにファーストヴァンガードに手をかける。
「「スタンドアップ!!「ザ」ヴァンガード!!」」
「私は、小さな拳士 クロン!(4000)」
「デスアーミー・ポーン!(5000)」
トウジの使うクランはノヴァグラップラー。リアガードをスタンドし、連続アタックをかけるのが得意なクランだ。
「さぁどっちが勝つかな?楽しみだ!」
ワタルは、このファイトを観戦するようである。
「じゃあ私のターンから、ドロー。美技の騎士 ガレス(8000)にライド!クロンは後ろへ。ターンエンド」
「俺のターン、ドローしてライド!叫んで踊れる実況シャウト!(7000)ポーンは後ろに。ブーストでアタックっス!(12000)」
「ノーガード」
「ドライブチェック、デスアーミー・ガイ」
「ダメージチェック……ディグニファイド・ゴールドドラゴン」
「ターンエンド」
シオリ:ダメージ1 トウジ:ダメージ0
(スタンドアップにtheをつける……the族っスか。アニメのキャラに影響受けたとかならわかるっスけど……)
「私のターン、ドロー……ライド!沈黙の解放者 ギャラティン!(10000)さらに左右にズームダウン・イーグル(8000)をコール。右のイーグルで、シャウトをアタック!(8000)」
「ガード!ザ・ゴングっス!」
「左のイーグルでアタック!」
トウジはノーガード。ダメージにはデスアーミー・ナイトが入る。
「クロンでブースト!ギャラティンでアタック!ドライブチェック……王道の解放者 ファロン」
「ダメージ……ツイン・ブレーダー」
「じゃあターンエンドで」
シオリ:ダメージ1 トウジ:ダメージ2
まだどちらも目立った動きはしていない。そろそろ動きがあってもよさそうだ。
「俺のターン!スタンドアンドドロー。ライド!デスアーミー・ルーク!(10000)さらにコール!デスアーミー・レディ(9000)と、デスアーミー・ガイ(7000)っス。その2体でアタック!(16000)」
「イーグルで『インターセプト』!」
グレード2には、前列からガードすることが出来る『インターセプト』というスキルがある。さらにイーグルには……
「イーグルのスキル、インターセプトした時、シールドプラス5000!」
「10000ガードっスか、なら!ポーンでブースト、ルークでアタック!(15000)ドライブチェック……おっ!ラッキーっスね!獣神 エシックス・バスター」
「グレード3……」
「トリガーはないッスけど、グレード3のユニットだから、レディとガイのスキル発動!自身をスタンドするッス!」
レディとガイは、グレード3がドライブチェックで出た時、スタンドするスキルがある。
だが、このファイトを見ていたワタルは、別のところに目が行っていた。
「エシックス・バスター!?このデッキは、デスアーミーじゃないの!?」
「……ん?もちろんデスアーミーっスけど……ただ、エシックスのスキルがデスアーミーと相性がよかったから入れてるだけで」
デスアーミーと言われても、ガイとレディしか思いつかないシオリに対し、そこに獣神という知らないユニットが出て来たため、話についていけない。
「あの……ダメージは、ぽめるがる・解放者でトリガーはないけど……」
「あっ、中断して悪かったっス。それじゃ、再びガイでブースト、レディでアタック!(16000)」
「……霊薬の解放者でガード!」
「これでエンドっス。次はそちらのターンっスよ」
シオリ:ダメージ2 トウジ:ダメージ2
「私のターン、スタンドアンドドロー。世界の平和を願いし王よ!未来を導く光となれ!ライド・ザ・ヴァンガード!!円卓の解放者 アルフレッド!!(11000)」
アルフレッドにライド成功。シオリは少し安心する。
「さらに王道の解放者 ファロン(9000)をコール。イーグルの後ろへ小さな解放者 マロン(7000)をコール」
解放者が集い始め、リミットブレイクの準備を進める。
「ファロンでルークをアタック!スキルで解放者のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(12000)」
「ここはシャウトでガード!」
「く……。次はクロンのブースト、アルフレッドでアタック!(15000)ドライブチェック!1枚目、未来の解放者 リュー。……2枚目、運命の解放者。ゲット!スタンドトリガー!効果は全てファロンへ!(14000)」
これでファロンはもう1度アタック出来る。
「ダメージチェック、ザ・ゴング。ドロートリガーっスね。1枚引いてパワーはルークへ。(15000)」
「なら、ファロンでレディをアタック!再びスキルでパワープラス3000!(17000)」
「ここは……ノーガードっスね」
「マロンのブースト、イーグルでアタック!(15000)」
「通すっス。ダメージは……エシックス・バスター。トリガーなし」
「じゃあこれでターンエンド」
シオリ:ダメージ2 トウジ:ダメージ4
これで、トウジのダメージは4。リミットブレイクを発動できるようになる。
「行くっス!スタンドアンドドロー!ライド!獣神エシックス・バスター!!(11000)」
トウジは、先ほどのデスアーミーとは全く異なる姿をしたユニットにライドした。
「ガイの前に再びデスアーミー・レディ!(9000)さらにエシックス・バスター(11000)、バトルライザー(3000)をコール!」
「バトルライザー……」
「まずはガイのブーストで、レディ!アルフレッドにアタック!(16000)」
「イーグルでインターセプト、再びスキルでシールドプラス5000!」
なかなか重宝するな。このスキル。
「続けて、ポーンのブースト、エシックス!アルフレッドを!エシックスのスキルでパワープラス2000!(18000)……まぁ、今は増えても関係ないっスけど」
「ノーガードするよ」
「じゃあドライブチェック、1枚目、ターボライザー。スタンドトリガー!効果は全てレディへ!(14000)」
ターボライザー……じゃあやっぱりこれは………
「……このデッキ、スタンド重視のデッキ……?」
「ご名答。よくわかったっスね。バトルライザーとターボライザーのスキルを使って、デッキにトリガーを戻し、何度もトリガーが発動するようにする。これがこのデッキの戦い方っスよ!」
バトルライザーとターボライザーは、リアガードをブーストしたターン終了時、スタンドトリガーである自身をデッキに戻すことが出来る。
トリガーがデッキに戻れば、トリガーが発動しやすくなり、終盤で有利になる。
また、戻すためにコールしなくても、シールドは10000あるため、攻めも守りも使い分けることが出来るのだ。
(けど、初心者にしては、カードに詳しい……。飲み込みが早いのか、それとも元々知識があったか……?)
「あの、2枚目のチェック残ってるよ」
「あっ、すまないっス!2枚目、ウォールボーイ。ヒールトリガーっス!ダメージを1枚回復し、パワーはエシックス・バスターへ!(16000)」
ここでヒールトリガーを引いてくるんだね……。
「ダメージチェック……円卓の解放者 アルフレッド」
「レディでファロンをアタック!(14000」
「運命の解放者でガード!」
「なら、バトルライザーのブースト、リアガードのエシックス・バスターで、アルフレッドをアタック!バトルライザーのスキルで、ブーストした時、パワープラス3000!(22000)」
「ノーガード。ダメージチェック……小さな解放者 マロン」
「ターンエンド。バトルライザーはスキルを発動すれば、デッキに戻してシャッフル」
シオリ:ダメージ4 トウジ:ダメージ3
ダメージは負けているが、これはシオリの想定内。なぜなら…………。
「……これで、リミットブレイクが打てる!スタンドアンドドロー!まずはクロンのスキル!CB1、自身をソウルに。デッキ上5枚見て……あった!アルフレッドを手札に!」
「成功したっスか」
「さらにアルフレッドのスキル!CB2、スペリオルコール!武装の解放者 グイディオン!(5000)」
アルフレッドのスキルは、デッキトップのユニットをコールするという不確定なものなので、トリガーユニットが出てしまうことがある。だが、解放者が増えたことに変わりはない。
「手札からアルフレッドをマロンの前、リューをヴァンガードの後ろにコール!そして、アルフレッドのリミットブレイク!解放者のリアガードは5体、フルパワー!パワープラス10000!!(21000)」
アルフレッドが最高パワーとなり、攻撃が開始される。
「まずはファロン、グイディオンのブーストをつけて、ヴァンガードをアタック!スキルでパワープラス3000!(17000)」
「ウォールボーイでガードっス!」
「次はアルフレッドでアタック!ブーストしたリューのスキルで、解放者のリアガードが他に3体以上いるからパワープラス4000!(31000)」
「そんなの……無理っス。ノーガードで」
「ドライブチェック!……1枚目、ギャラティン……2枚目、猛撃の解放者。ゲット!クリティカルトリガー!!パワーはリアガードのアルフレッド、(16000)クリティカルはヴァンガードへ!」
「2ダメージっスか……ダメージ!1枚目はザ・ゴング!ドロートリガーっス!1枚ドローし、ヴァンガードにパワーを!(16000)2枚目は……バトルライザー、スタンドトリガー!」
「……っ!ダブルトリガー!?」
「パワーはヴァンガード(21000)、リアガードのエシックス・バスターをスタンド」
さっき戻したバトルライザーかはわからないが、トリガーをデッキに戻すと言うことは、ダメージトリガーが発動しやすくなるでもある。
「……まだ!マロン、ブースト……アルフレッド!リアガードのエシックス・バスターをアタック!(23000)」
「おっと、リアガードっスか。まぁ、今の状況ならそっちの方が妥当っスね。ノーガード」
(切り替えが早い………普通なら、ダメージ5で追い詰めているところ……ヴァンガードにアタックして押しきろうと考える場面なのに、リアガードを狙って来た……)
トウジは、シオリのプレイングに、初心者とは思えないような何かを、感じとっていた。
(俺でもリアガードを狙うことはしないと思う……。彼女、相当な強さを持ってる……成長次第では、全国とも対等に渡りあえるような……そんな強さを……)
「ターンエンドだよ」
シオリ:ダメージ4(裏3) トウジ:ダメージ5
と、ここでトウジは一旦考えることをやめ、ファイトの方に専念する。
「じゃあ、スタンドアンドドロー!……宿す感情は欲望のみ、敵も味方も蝕み、強大な力をこの手に!『ブレイクライド』!!夢幻侵食体 デスアーミー・コスモロード!!(10000)」
「来た!デスアーミーのエースユニット!!」
ワタルはカードの方に気が行っていた。一方トウジは、
「……ふっ、決まった!」
超ドヤ顔。周りから見て、ウゼェ……と思う程に。そんな中、シオリはと言うと……。
「……えっと、『ブレイクライド』って何ですか……?」
一瞬沈黙、そして、
「いやいやいや!他は!?決めゼリフのことについてとかはどうだったんスか!?」
「あ、いや、よかったよ。でも今はブレイクライドの効果について説明してほしくて……」
つまり、トウジの自信タップリのライド口上は、ブレイクライド以下ということが間接的に伝わった。
「……まぁ、わかったっス。ブレイクライドは、ダメージ4枚以上の時に、同クランのユニットにライドされると発動するスキルっス。ブレイクライドは、まずヴァンガードにこのターン中、パワーを10000与えて、さらに各ユニットごとに決められたスキルを与えるっス」
「パワー10000!?それにスキルまで……」
「エシックス・バスターの場合は、ヴァンガードがアタックした時、前列2体のリアガードをスタンドさせることが出来るっスよ!」
これがブレイクライド……。私も使ってみたいかな。
「さぁ、まずはコスモロードのスキル!リアガードを2体レストして、パワープラス5000!(25000)レディとポーンを指定!さらにポーンのスキルで、他のリアガードをレストすれば、パワープラス2000(7000)ガイを指定するっス」
この時、シオリは不審に思っていた。
エシックスのスキルで前列がスタンドするのはわかっている。なのに、スタンドしない後列をレストするのは不思議だったからだ。
「さらにデスアーミー・ナイト(9000)、デスアーミー・ビショップ(7000)をコール!ナイトのスキルで、ガイ、レディをスタンド!コスモロードのスキルで、ガイとレディをレスト!そこからナイトとビショップをレスト!パワープラス10000!(35000)」
リアガードがスタンドしたかと思ったら、またレストしてパワーを高めていく……。一体何を狙って……?
「ビショップのスキル!CB1で、ガイとレディをスタンド!コスモロードのスキルでガイとレディをレストし、パワープラス5000!(40000)」
パワー40000。シオリにとっては桁違いなパワーだった。
「準備は整った……!ここで、コスモロードのリミットブレイク!CB2で、リアガードを全てスタンド!さらに4体以上スタンドしたから、クリティカルプラス1!」
「だから後列のリアガードもレストして……!」
「ダメ押しのコスモロードのスキル!前列2体レストで、パワープラス5000!(45000)ポーン、ブースト……コスモロードで、アルフレッドをアタック!!(52000 ☆2)」
「……防げない。防げたところで……!」
ブレイクライドスキルで、コスモロードのスキルでレストした前列の2体はスタンドしている。つまり、後2回アタックが来る。
「ノーガード……だね」
シオリの6ダメージ目はトリガーではなく、トウジの勝利となった。
***
「……私の負けです」
「惜しかったっスけどね。けど、なかなか強かったっスよ。あそこで決められなかったら、どうなっていたか……」
実際、それは事実だった。もし、シオリにターンが回って来ていたとしたら、トウジのターンにまで回って来るかはわからなかった。
「ところで、お名前何て言うんスか?自分だけ名乗っておいて、そっちの名前知らないなんてね……」
「シオリです。星野シオリ」
「星野さんっスか。うん、いい名前っスね。覚えておくっスよ」
そう言うと佐原君は、すぐにショップを出ていった。
「何だったんだろうな?彼……」
「俺に聞かれても困るって、おじさん」
「でも……強かったな。また、ファイトできるといいな……」
そんなシオリの願いは、思いの他、すぐに叶うことになるのだが、そんなことをまだシオリは知らない……。
***
「……見つかったっスよ。有力な人」
サンシャインを出た後、トウジは、ある人に電話をかけていた。
『本当に!?誰なの!?』
「星野シオリっていう人なんスけど……」
『星野……?確かそんな名前の生徒、私のクラスにいたような……?』
「えっ、マジっスか!?」
トウジとある人との通話の中には、度々シオリの名前が出ている。
「で、その星野さん。ヴァンガードの腕は初心者らしいんスけど、俺がファイトしてみて、そうは感じなかった……。俺ももう少しで負けそうになったっスから」
『トウジが負けそうに!?……確かに、相当な強さみたいね』
「どうッスか?」
すると、トウジの話している相手は、しばらく考えた後、
『……そうね。星野さんに決まり。ただ……』
「ただ?」
『私も直接確かめる必要がある。彼女の強さを。話はそれからでも遅くない』
「……なら、後はそっちに任せるっスよ」
トウジは通話を終え、電話をポケットにしまう。
「さて……もう少しっスね。もう少しで……!」
トウジとの出会いは、また新たな出会いを、シオリにもたらそうとしていた…………。