「んじゃっ!俺のターン!スタンドアンドドロー!」
このターン、あいつはグレード3にライドする……。ドライブチェックで見えたから、そこは間違いないはず。
……それに比べて、俺はまだグレード1。何とかして手札にグレード2を引き寄せないと、このまま負けてしまう。
「ライド!抹消者 ボーイングソード・ドラゴン!(11000)」
く……。何でこんな時にライド事故するんスかね!?
「ロチシンの後ろに、ライジング・フェニックス(5000)をコール!スキルでSB2して1枚ドロー!スパークレインでアタック!スキルでヴァンガードが抹消者なら、パワープラス3000!(12000)」
「ノーガードっス……。ダメージは、無双の星輝兵 ラドン」
あー!!グレード2がー!?
「へへっ!またライドへの道が遠ざかったな!ブレイドハングのブースト、ボーイングソードでアタック!スキルで、相手のダメージが3枚以上でパワープラス2000!(18000)」
「くっ……!ノーガードっスよ!」
「ツインドライブ!1枚目、追撃の抹消者 ロチシン。2枚目、抹消者 デモリッション・ドラゴン。トリガーなしか……!」
「ダメージチェック……星輝兵 ネビュラキャプター。ドロートリガーっス!1枚ドロー!パワーはプロメチウムへ!(11000)」
手札が増えることはありがたい。ついでにグレード2が落ちなかったことも。
「ライジング・フェニックスのブースト、ロチシンでアタック!(13000)」
「黒門を開く者でガード!」
ロチシンの雷を、黒門を開く者が空間をねじ曲げることで回避する。
「ちぇっ。ターンエンド」
トウジ:ダメージ4 相手:ダメージ3
「俺のターン、スタンドアンドドロー……」
そろそろライドしないと不味いっスね……。ダメージ4だし、相手は戦力が十分揃ってるし……。だから、
「星輝兵 メビウスブレス・ドラゴン(9000)にライド!」
「げっ!?引いたのかよ!」
さっきのドロートリガーで上手く引けたからよかったっス……。
「もう手札事故の時間は終わりっスよ!やられた分だけ反撃行くんで、覚悟してほしいっスね!!」
***
「俺のターン、ドロー。グラヴィティボール・ドラゴン(7000)にライド。マイクロホールのスキルで、デッキの上7枚から……グラヴィティコラプス・ドラゴンを手札へ」
連携ライド成功。ライド先のグレード2も手札に加わったし、ライド事故はまずないと見ていい。
「グラヴィティボールのスキル。ソウルにマイクロホールがあれば、パワー8000。続けて星輝兵 オーロライーグル(6000)をコール。ブーストし、グラヴィティボールでアタック(14000)」
グラヴィティボールが黒い球体を作り出し、オーロライーグルが力を込めて羽で打ち出す。
「ノーガードよ」
「ドライブチェック、星輝兵 パルサーベアー」
球体はテオに激突し、爆発を起こす。ダメージには、ストームライダー ダモンが入った。
「ターンエンド」
リサ:ダメージ1 相手:ダメージ0
「私のターン、スタンドアンドドロー!」
アクアフォースにとって、ロックは厄介だ。1体でもロックされると、得意の連続アタックは難しくなる。
だから、ロックが来る前に手数で攻める!
「ティアーナイト ラザロス(10000)にライド!ストームライダー バシル(8000)、その後ろに2体目のラザロス(10000)をコール!」
「早速連続アタックか。ロックを恐れないのか?」
「そんなことじゃ、勝てるファイトも勝てないわよ!アタックよ、バシル!1回目のバトルだから、パワープラス2000!(10000)」
「ノーガード。ダメージは、グラヴィティボール・ドラゴン」
バシルが地形を上手く利用し、グラヴィティボールに高速で接近して剣を叩き込む。
「バシルのスキルで、ラザロスと位置を入れ替え!」
バシルの姿が一瞬ぶれると、ラザロスの姿に変わる。このラザロスはスタンドしているため、後2回はアタックできる。
ブレイブ・シューターのブースト、ヴァンガードのラザロスでアタック!ブレイブ・シューターのスキル、レストしているリアガードが2体以下の時にブーストしたことで、パワープラス3000!(18000)」
「ノーガード」
「ドライブチェック、終末の切り札 レヴォン」
ブレイブ・シューターの水弾がラザロスの剣に力を与える。軽々と移動し、ラザロスは肩口から剣を降り下ろす。
「ダメージチェック、黒門を開く者」
「リアガードのラザロス!(10000)」
「こいつだ。オーロライーグルでガード」
「ターンエンドよ」
リサ:ダメージ1 相手:ダメージ2
「俺のターン、スタンドアンドドロー。ライド、グラヴィティコラプス・ドラゴン(9000)。ソウルにグラヴィティボールがあることで、常に10000パワーに」
グラヴィティボールが一段と大きく成長する。連携ライドの恩恵を受け、パワーも上がった。
「さらにグラヴィティコラプスのスキル。ライドした時、相手のリアガード、ラザロスをロック」
「なっ!?」
ラザロスの周りに黒輪が漂い、虚無の空間に閉じ込める。これでラザロスは動けない。
「ロックを恐れない姿勢は評価しよう。が、少し攻め急ぎすぎたな」
やられた……!これで1列の行動を封じられた!
「星輝兵 パルサーベアー(8000)、黒門を開く者(7000)をコール。黒門のスキル。相手のリアガードが2体以下なら、手札1枚を捨ててドローする」
ロックされたカードはリアガードとして扱わないため、条件はクリアしている。
「オーロライーグルのブースト、グラヴィティコラプスでアタック。イーグルは相手よりリアガードが多いなら、パワープラス4000(20000)」
「ノーガード」
「ドライブチェック、星輝兵 ネビュラキャプター。ドロートリガー。1枚ドローし、パワーをパルサーベアーへ(13000)」
ラザロスがグラヴィティコラプスの打撃を受け、大きく後方に飛ばされる。
「ダメージチェック、翠玉の盾 パスカリス」
「黒門のブースト、パルサーベアーでアタック。スキルで相手よりリアガードが多いなら、パワープラス3000(23000)」
「ノーガード。ダメージは……ジェットスキー・ライダー。クリティカルトリガー……」
トリガーが不発してしまったが仕方ない。アタッカーが落ちなかったと割りきろう。
「ターンエンド」
リサ:ダメージ3 相手:ダメージ2
「私のターン、スタンドアンドドロー!」
グレード2の時点で、もうロックを使えるとは。バシルはこのターン、使い物にはならなくなった。
だからといって、何もできないわけじゃない!
「嵐を纏いし蒼き竜王!誓う想いは正義と共に!今、決意の咆哮を放て!!ライド!蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム!!(11000)」
ラザロスの背後にサークルが現れる。吸い込まれるようにラザロスの姿が消え、そこから代わりにグローリー・メイルストロームが咆哮を上げて姿を見せた。
(リンの受けた悔しさは……私が必ず晴らして見せる!)
「コール、終末の切り札 レヴォン!(11000) レヴォンで、ヴァンガードにアタック!(11000)」
「ネビュラキャプターでガード」
「ブレイブ・シューターのブースト、グローリー・メイルストロームでアタック!ブレイブ・シューターは、スキルでパワープラス3000!(19000)」
「ノーガード」
「行くわよ、ツインドライブ!1枚目、ティアーナイト キブロス。2枚目、発光信号のペンギン兵」
背中の突起物を射出し、グラヴィティコラプスに無数の金属質の雨を降らせる。
「ダメージチェック、飛将の星輝兵 クリプトン」
「ターンエンドよ……」
ラザロスのロックが解け、戦線に復帰する。が、次は向こうのターン。しかも、ロックを本格的に使えるグレード3になってしまう。
リサ:ダメージ3 相手:ダメージ3
「俺のターン、スタンドアンドドロー。ライド、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン(11000)」
グラヴィティコラプスが、インフィニットゼロに変わる。狙いはブレイクライドね……。
「飛将の星輝兵 クリプトン(10000)をコール。クリプトンで、ラザロスにアタック(10000)」
「させないわ。ガード、キブロス!」
キブロスが銃を乱射し、クリプトンの進路を防ぐ。
「オーロライーグルのブースト、インフィニットゼロでアタック。インフィニットゼロのスキル、パワープラス2000(19000)」
「ノーガード!」
「ツインドライブ。1枚目、グラヴィティコラプス・ドラゴン。2枚目、星輝兵 メテオライガー。クリティカルトリガー。パワーをパルサーベアー(13000) クリティカルはインフィニットゼロだ(19000 ☆2)」
インフィニットゼロの放ったエネルギーの咆哮が、グローリーを貫き、爆発する。
「うっ……!ダメージチェック、輝石通信のラッコ兵。ドロートリガーよ!1枚ドローし、パワーはグローリーへ!(16000)」
2枚目は、蒼翔竜 トランスコア・ドラゴン。トリガーではない。
これでダメージは5……。不味い。もう後がない……!
「黒門のブースト、パルサーベアーで……ラザロスだ(20000)」
「の、ノーガード!」
トリガーでパワーの上がったヴァンガードを狙うよりは、リアガードを潰す方が得策だと踏んだのだろう。
「ターンエンド。どうした?俺に勝つと言いながら、この様か?」
「く……!」
リサ:ダメージ5 相手:ダメージ3
「私のターン、スタンドアンド……ドロー!」
私は、また……負けるの?みんなに、また迷惑をかけるの?
『迷惑だとか、そんなことを思う人はリサのチームにはいないと思いますわよ?』
『……負けたから責める仲間なんて、仲間とは呼べませんわよ』
リン……あなたの言うことは、何も間違ってなんかいないわよ。でも……!でも……っ!!
「ライドなし!そして……バシルを前に移動して、レヴォンの前に発光信号のペンギン兵(5000)をコール!」
『アクアフォースなんてクランを使ってるのなら、もっと周りを見なさい』
仲間を頼るしかできないなんて、結局それは、私が弱いって事じゃないの!?負担を押しつけてしまっているんじゃないの!?
私が勝たないと……!私1人のせいで、チームを終わらせないために!!
私1人が何もできないまま、終わりたくはない!負けたくない!!
「ペンギン兵のスキル!SB2、1枚ドロー!続けて、ティアーナイト テオ(8000)をコール!」
「……?リアガードを主軸とするアクアフォースが、リンクジョーカー相手にもうリアガードをフルに展開するのか?」
いつまでもゆっくり攻めているわけにはいかない!またみんなの負担にはなりたくないのよ!
「ペンギン兵のブースト、レヴォンでアタック!(16000)」
「……ノーガード。ダメージは、障壁の星輝兵 プロメチウム」
ダメージ4!後2枚だ!!
「どうした?さっきから何を焦っている?」
「うるさい!ブレイブ・シューターのブースト、グローリー・メイルストロームでアタック!」
私のダメージは5……。逆境だからこそ、使える一手がある!
「グローリーは、今こそ究極を超える!アルティメットブレイク!!CB1で、パワープラス5000!グレード1以上でガードできない!(21000)」
完全ガードを封じただけじゃない。ほぼ全てのカードをガードに回せない。これなら、行ける!
「……なら、グレード0でガードすればいい。星輝兵 メテオライガーでガード」
「でも、パワーが並んだだけよ!大人しく負けなさい!」
「何がお前をそこまで駆り立てるのかは知らないが……インターセプト。クリプトン、パルサーベアー」
「しまった……!インターセプトを……」
手札からのガードはできないが、インターセプトなら盤面からのガードだ。問題なくガードできる。
「序盤は冷静だと思っていたが……拍子抜けだ。そんな奴に黙ってやられてやるほどお人好しではない。悪いが、お前は俺に勝てない。何もできない」
勝てない……?何もできない……!?
「くっ……!ツインドライブ!!1枚目、虹色秘薬の医療士官。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを回復して、パワーはバシル!(13000)」
グローリーが突起物を射出し、インフィニットゼロの退路と、盾となるユニットの侵入を塞ぐ。が、それを掻い潜って3体のユニットが守りに徹する。
その後ろで、バシルがトリガーの効果を受けて力を溜めているとは知らずに。
「2枚目!スーパーソニック・セイラー。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てバシル!!(18000 ☆2)」
クリティカル付きのダブルトリガー。このアタックがヒットすれば、私の勝ち!!
「終わりよ!テオのブースト、バシルでアタック!!(26000 ☆2)」
グローリーの咆哮が、ガーディアンを焼き払う。爆風が視界を遮り、インフィニットゼロは1人取り残される。
その背後に素早く接近するのは、テオの支援を受けたバシル。無防備なインフィニットゼロに、今まさに剣を横凪ぎに払い━━
「……さっきの奴と言い、あんたと言い、よく似ているものだ。なぜ、俺が完全ガードを持っていないと決めつける?」
バシルの剣を受け止める。半透明のバリアを張った兵士。それは、リンクジョーカーの守護者、プロメチウムだった。
「コストはグラヴィティコラプス・ドラゴン」
「……ターンエンド」
リサ:ダメージ4 相手:ダメージ4
「俺のターン、スタンドアンドドロー。結局、お前はさっきのターン、何もできなかったな」
「私は、何もできないわけじゃない!」
「そうか……否定するか。なら、嫌でも見せてやる。人には限界があることを。人は孤独となった時、無力であることを!!」
向こうのダメージは4……まさか、ブレイクライド!?
「虚空より生まれし絶望の竜!全てを封じ、孤独の中で苦しむ裁きを与えるがいい!ブレイクライド!シュバルツシルト・ドラゴン!!(10000)」
黒い球体がインフィニットゼロを取り囲む。やがて、その姿はマイクロホールから続く連携ライドの最終形態、シュバルツシルト・ドラゴンへと変わった。
「ソウルにグラヴィティコラプスがあることで、常にパワー11000。そしてブレイクライドスキル。シュバルツシルトにパワープラス10000し、(21000) バシルとブレイブ・シューターをロックだ」
2体が黒輪に包まれ、1列のアタックとヴァンガードのブーストが封じられる。
「アクアフォース……。リアガードと言う仲間による連続アタックで真価を見せる、いいクランだ」
「それが……どうしたのよ」
「逆に言えば、仲間がいないと何もできない無能なクランだ。誰かに頼ることでしか力を発揮できない無能さを、その身に刻め!シュバルツシルトのリミットブレイク!」
リミットブレイク……ということは手札にある!?もう1枚のシュバルツシルトが……!
「CB3、そしてペルソナブラスト。これで、相手のリアガードを3体ロックできる」
私の残っているリアガードは、レヴォンとペンギン兵、そしてテオ。ということは……。
「これで、全リアガードはロックされた」
グローリー・メイルストロームの周りに、5つの黒輪が漂う。敵でもなく、味方でもなく、ただそこに留まるだけ。ヴァンガードの、リサの助けになることはない。
「そんな……!」
「どうだ?頼れる仲間を失い、孤独となった気分は」
「くっ……!」
「思い知っただろう?無能を。リベンジなどと大それたことを言いながら、この有り様を見ろ」
ヴァンガードである私以外には、頼れる仲間は何もいない戦場。それは、今の私を写し出す鏡でもあった。
「たった1人……何ができる?これまでの結果は、仲間がいたからこそ成し得たものだ。その仲間がいない今、お前にできることはない」
何もできない……。私は、仲間がいることでしか、強くいられない……。勝つことなんて、できない……。
あいつの言うとおりだ。ヴァンガードだけでダメージを与えてきたわけじゃない。リアガードがいて、ガーディアンが守ってくれたから……戦えた。
テツジさんの時だってそうだ。リンがいて、シオリさんがいたから、自分だけで苦しんできた過去を終わらせることができた。
トウジは、ヴァンガードを教えてくれた。小沢君は、プレッシャーに負けそうになりながらも、チームのために体を張ってくれた。私とは、大違いだ。
なら、私には何ができる?私は……1人じゃ勝てない。さっきのファイトも、私だけの力じゃ勝てなかった。
「……悔しいか?苦しいか?それとも、自分への怒りか?その涙には、何の意味がある?」
「え……?」
指摘されて、初めて自分が泣いていたことに気づく。無力と絶望が、ギリギリとところでつなぎ止めていた気持ちを断ち切る。
「まぁいい。リミットブレイクの効果は続いている。ロック後、パワープラス10000とクリティカルプラス1(31000 ☆2) さらに、星輝兵 パルサーベアー(8000)をコールだ」
シュバルツシルトの傍らに、追撃のためにパルサーベアーが登場する。
「オーロライーグルのブースト、シュバルツシルトでアタック。イーグルのスキルで、相手よりリアガードが多いなら、パワープラス4000(41000 ☆2)」
球体が収束し、そこから黒い光線が一直線に放たれる。無防備なグローリーは、感情のないリサと相まって動こうとはしない。
「……ガード。虹色秘薬の医療士官、スーパーソニック・セイラー、ジェットスキー・ライダー、ティアーナイト キブロス、輝石通信のラッコ兵」
「これほどのシールドを温存していたとはな……」
ガードに手札を割いたのは、ファイターとしての反射的な反応だったのだろう。だが、既に気持ちは折れている。
「ツインドライブ、1枚目、星輝兵 ステラガレージ。ヒールトリガー。ダメージを回復、パワーはパルサーベアー(13000) 2枚目、シュバルツシルト・ドラゴン」
ガーディアンが光となって消えていく。このアタックを防げたのも、ユニットたちがいたから……。
「黒門のブースト、パルサーベアーでアタック。スキルで相手よりリアガードが多いなら、パワープラス3000(23000)」
「……ノーガード」
そして、私1人じゃアタックを防ぐことなんてできやしない。むざむざダメージを受けることしか、選択肢がない。
ダメージには、ティアーナイト ラザロスが入った。これで私のダメージは、5に戻る。
「ターンエンド。予想外のガードで仕留め損なったが……次は決める。覚悟しておけ」
リサ:ダメージ5 相手:ダメージ3(裏2)
「……私の、ターン。スタンドアンド、ドロー……」
力なくドローし、私は盤面に目を向ける。全てロックされたリアガード。動けるのは、ヴァンガードだけ……私自身だ。
結局……私は、1人じゃ何もできない。みんなに頼らないと、勝つこともできない……。
ヴァンガードもそうだ。一緒に戦ってくれるリアガードがいないと、私には何も……。
「……何やってますの、リサ!!」
その時だった。観客席から一際大きな声が聞こえてきたのは。
「リ、ン……」
「何て情けない顔してますの!?まだファイトは終わってませんわよ!?」
「あいつは……さっきのファイトで俺が倒した奴か」
最前列から身を乗り出して叫ぶのは、リンだった。
「まさか、もう諦めましたの!?あなたの言う全国への夢は、負ける前から捨てられるほどちっぽけなものでしたの!?」
「そんなわけない……」
「だったら、戦いなさい!自分の勝つ姿を見なさい!」
勝つ姿……?無理だよ、リン。私、1人じゃ何もできない。今の状況と同じ。勝てるわけない。
「ダメなのよ……どうせ、私は仲間に頼らないと前に進めない。私1人の力は、どうしようもなく小さなもので……迷惑しか、負担しかかけられない」
「言ったはずですわ。1人で戦ってるのではないと。今この瞬間、一緒に戦ってくれる人がいるのではありませんか?」
「でもっ……。このファイトは私のものよ。誰かに力を借りることなんてできない。私、1人じゃ何も━━」
「だからっ……!誰が1人で戦っていると言いましたの!?」
私の言葉を、真っ向から受け止めて一蹴する。力強く、それでいて頼りがいがあって……。
ああ……どうして、あなたはいつも、そんなに強くいられるの……?
「リン……」
「あなたが首にかけてるそれはっ!何の意味がありますの!?」
「首……?」
自然と手が伸びる。そこにある金属質の何かに触れた。これは……テツジさんのペンダント。
「あ……っ」
『このペンダントをつけてくれたら、俺も一緒に戦える。ペンダントを通じて、リサちゃんに戦う力を与えていられる……』
私は、馬鹿だ。すぐそこに、仲間はいてくれたじゃないか。たった1人?そんなことはなかった。
1人じゃ何もできない。でも、想いを託してくれた人がいる。チームを命運を決めるために踏み出した、孤独と言う名の戦いの場でも、常に変わらずそばにいた。
「……そうよね。私って、本当に馬鹿みたい」
私はリンから視線を外し、相手に向き合う。
「勝つわ!この状況でも、あなたに!!」
「たった1人で何ができる?」
「そうよ。私は1人じゃ何もできない。みんなに頼ってきたから、今ここに立てている」
1人じゃ何もできない。誰かに頼る事でしか、私は前に進めない。
だったら、頼らせてほしい。チームとして、みんなの望んだ舞台に進むためにも、力を貸してほしい。
そして、私自身として、1人で戦い抜けないのなら、あなたの支えを受けて立つ。私自身が、彼らの力に応えるために。
「でも……私は、もう見失わない!支えてくれる人の想いと共に、あなたを倒す!!」
テツジさん……。私は、あなたにまだ何も返すことができていない。それでも、あなたが私と共に戦ってくれるなら……どうか。
みんなで一緒に、全国に行くために。だからこのファイト、今度こそ……シオリさんたちの元へ、勝利を引き連れて戻っていこう。