つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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連日投稿です。今回は、次の話につなげるための前振りみたいなものなので、少し短めです。

今回から、とうとう秋予選が終わりに向かい始めます。と言うか、今確認したら秋予選始めてから1年近く経とうとしていましたよ……。長い。話覚えている人いるのかな?いや、それ以前に見てくれている人がいるのかも不安。

ネガティブ思考になりましたが、本編始まります。


ride46 あの時の約束を

チーム破滅の翼をストレートで下した私たちは、次の試合に向けて備えていた。これまで以上に闘志をみなぎらせ、デッキの確認を行っている。

 

「とうとうここまで来たな、みんな」

 

「うん。これで次は……」

 

「Aブロックの決勝戦。それに勝てば、Bブロックを勝ち上がったチームとの決勝戦。そのファイトで……全てが決まる」

 

「おお!もうそんなところまで来ていたんスね!燃えてきたっス!!」

 

佐原君の言うとおり。後2勝で、目標の全国大会に向かうことができる。

 

「Bブロックを勝ち上がるチームは、まずあいつらだよな……」

 

「あの時の……ノスタルジアの1人ね」

 

現在の追憶、レゼンタ。ユニットとのつながりの力、アクセルリンクを持ち、互いのデッキを見通すことができる。

 

私も同じ力を持ち、ノスタルジア……未来の追憶、ロメリアと呼ばれているらしい。でも、私の力だけ変化していたり、謎の部分が多い。

 

「うっかり負けてくれないっスかね?」

 

「ないだろ」

 

「絶対ね」

 

「佐原君も、サンシャインでのファイト見てたよね?」

 

「何なんスか!ちょっとくらい期待してもいいじゃないっスか!」

 

可能性としては、チームメイトが負けて敗退……なんてシナリオが思いつく。でも、最上君のチームメイトだ。そんなことはなさそう。

 

「となると、問題は次の決勝戦でどんなチームとファイトするかっスよね……」

 

「さっきみたいな奴らはごめんだぞ」

 

「多分、大丈夫。きっと、私たちの相手は━━」

 

「シオリ〜!」

 

言いかけて、まさに私が話そうとしていた人物が私を呼ぶ。月城ミズキだ。

 

「ミズキ!……あれ、1人?」

 

「うん。2人は飲み物買いに行ってね。ところでどう?まだ……残ってる?」

 

「大丈夫。私たちは勝ち残ってる。次はAブロックの決勝戦」

 

「……そっか。ふふっ」

 

「ミズキ?」

 

話の流れから考えても、別に笑う場面じゃない。気になって尋ねてみると、

 

「ごめん、シオリ。つい……嬉しくて」

 

「嬉しい……ってことは、決勝戦の相手、やっぱりミズキが……!」

 

「そうだよ。シオリの相手は……私」

 

そうだろうと思っていた。いつかはファイトすることになると。だって……。

 

「約束したから。シオリと、この舞台でファイトするんだって」

 

「忘れてないよ。もう少しで、ファイトできる」

 

ナオヤさんのイベントの帰り道で交わした約束。グランドマスターカップで、必ずファイトすると。リベンジしてみせると。

 

ただのファイトとは違う。このような場所で、互いに全力を出してファイトする。心踊らないわけがない。ミズキもそうだろうし、私だってそうだ。

 

「全力で行くから。最高のファイトにしようね」

 

「わかってる。ミズキとのファイト、絶対に負けないから」

 

拳を合わせて、健闘を誓い合う。待ち望んでいたファイトが、すぐそこまで迫っている。

 

「じゃあまた後でね。シオリ」

 

「うん。決勝戦の舞台で会おう」

 

ミズキは元来た道を引き返していった。チームのところに戻ったのだろう。

 

「そうだったな……。肝心の相手と戦ってなかったな」

 

「でも、ここまで勝ち残ったと言うことは……」

 

「強敵には間違いないっスね」

 

きっとそうだ。簡単には勝てない相手。でも、私の心は今、興奮でいっぱいだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「どこ行ってたんだよ、ミズキ!飲み物買って戻ったらいないし、探してたんだぞ!?」

 

私が戻ると、既に二人は飲み物を手にしてその場にいた。柳田さんが私にオレンジジュースを手渡す横で、ユウトが私に注意する。迷子じゃないんだから……。

 

「ご、ごめんユウト。さっきシオリに会ってね」

 

「シオリちゃんと?」

 

「勝ってた。次の相手は……シオリたちだよ」

 

それを聞いたユウトは、驚きと喜びでテンションが上がっているようだった。

 

「……なぁ、月城」

 

「何ですか?」

 

「俺は、あいつらのことについてはほとんど知らない。月城や平本は仲が良いようだが……どんな奴らなんだ?」

 

「どんな奴って言われても……いきなりですね」

 

「星野シオリと小沢ワタルは、お前たちが相手をする。だが、そうなると俺は残り2人のどちらかを相手にすることになる。少しでも相手の情報を知り、ファイトの役に立てばいいと思ったんだが……」

 

「柳田さん……」

 

柳田さんは、特に昔からの知り合いだったわけじゃない。私やユウトがお世話になっているショップの実力者だった。

 

つまり……チームに入るまでは少し顔を合わせる程度の他人。私は、そんな柳田さんをチームに引き入れた。

 

誘ったときは困惑していた。どうして俺なんだ?そう私に尋ねていた。向こうも私のことは、多分知らなかったわけだし。

まぁ、本人は承諾してくれたし、仲良くやれている。無愛想で、会話もすぐに途切れるし、あまり何考えてるかわからないから、実際のところは柳田さんにとってはどうかはわからない。

 

でも……彼はね。見ていて辛かったんだ。だから、どうにかしたかった。

 

数年前に、行方不明になった友人に似ていたから。

 

「……優しいです。柳田さんは」

 

「は?」

 

「私たちに気を遣ってくれたんですよね?」

 

「気を遣うも何も……あの2人とファイトするのは、たちだと決めていたはずだ。ただそれだけのことだ」

 

「……そうですか」

 

素直じゃないな……。私は、思わず笑いが漏れる。

 

「どうして笑うんだ?」

 

「何でもないですよ」

 

「いや、はぐらかさないでほしいんだが。そういうの、俺にはダメージが大きい……」

 

「大丈夫ですよ、柳田さん!ミズキはどうせ、素直じゃないな……とか思っただけなんですから!」

 

「え、ちょっとユウト!?///」

 

何で言っちゃうの!?付き合い長いから、私の考えてることはわかるかもしれないけど!

 

「とにかく、次はワタルたちとのファイト。ミズキ、柳田さん。あいつらにガツンと、俺たちの力を見せつけてやりましょう!」

 

「わかってるよ。そのために、ここまで来たんだから」

 

「当たり前だ。お前たちの足手まといにはならないからな」

 

2人とも、闘志は有り余っている。私はもちろん、シオリとファイトできるだけでウズウズしている。

 

「早速だが、情報を教えてくれ。使うクラン、切り札、戦術……何でも構わない」

 

「わかりました。まずは、森宮リサさん。彼女はアクアフォースを使っていて……」

 

チームを組んだ当初は、この3人でやっていけるかどうか不安だった。けど、今の私たちの想いは1つ。

 

シオリたちに勝つ。このチームで……必ず!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ミズキと別れた後、私は空きスペースでデッキの調整を行っていた。ミズキとのファイトに向けて集中したかったこともあって、私1人だ。

 

「これで……大丈夫かな」

 

50枚のカードをまとめ、私はデッキケースにしまう。一番上にきていたアルフレッドのカードと、目があった気がした。

 

「行けるよね……みんな」

 

「ユニットに話しかけてるのか?頭がおかしくなったか?」

 

その声……聞き覚えがある。

 

「最上君……」

 

「あの時以来だな、ロメリア。いや……星野シオリだったか。これからは星野と呼んだ方がいいか」

 

そうだね。できれば、ロメリア呼びはやめてほしいかな……。自覚ないし。

 

「何気に今日会うの初めてだよね?」

 

「確かにな。だが、どこかで会えるとは思っていたぞ。ロメ……星野」

 

それは、私が勝ち残ることを信じていたってこと?一応、評価してはくれているんだね……。

 

「で、ここで何をしていた?やはり、頭がおかしくなったか?」

 

「……ユニットの声が聞こえるおかしな力を持ってるのに、よく言うよ」

 

「それを言うなら、星野もだろう?」

 

そうだけどさ……。でも、頭がおかしいわけじゃないからね!?

 

「……次の決勝戦に向けて、デッキを確認していたんだよ。前にこの舞台でファイトする約束をしていたからね。気合い入っちゃって」

 

「そういうことか。チームメイトの姿が見えないと思っていたから、1人で飛び出してきたのかと疑ったぞ」

 

「そんなわけないでしょ……。心配してくれたの?」

 

「まさか。あんたがいなくなれば、優勝への障害が1つ無くなってくれるのだから」

 

真っ向から否定しなくてもいいのに。

 

「それに……もしそんなことがあっても、俺にはどうすることもできないからな。悩みを聞いてやることもできないし、解決なんてもっての他だ。……自分のことですら、何もできなかったからな」

 

「最上、君……?」

 

私はその言葉の裏に何かを感じた。妙な違和感。最上君の内にある、絶望の一端に触れたような……。

 

「そういえば……ちょうどいい。星野に話しておくことがあった」

 

「何かな?」

 

「俺が凉野マサミに会うために、この秋予選に参加したことは覚えているか?」

 

「うん。覚えているよ」

 

アクセルリンクについて知るために、興味本位で接触するって話だったけど……。

 

「運良くコンタクトが取れた。予選が終わったら、部屋に来るように話をつけることができた」

 

「えっ!?そうなの!?」

 

私の知らないところで、何してるのさ……最上君。

 

「お前も来るか?凉野マサミに会うために。あいつには、力のことについても聞きたいことがあるだろう」

 

「いいの?私がついていっても」

 

「……ふっ、冗談だ。真に受けるな」

 

あれ。最上君って、こんなこと言う人だっけ?

 

「だが……星野が本気で凉野マサミに会いたいなら、予選が終わったら俺のところに来い。場所は知っているから、一緒に向かうとしよう」

 

「え、何で知ってるの」

 

「……潜入調査の賜物だと言っておこう」

 

本当に嗅ぎ回ってたんだ……。

 

「とにかく、そういうことだ。俺は行く。チームメイトが待っているからな。それに……」

 

私のバックルが緑に光る。ファイトの召集を告げるサインだ。

 

「……わかった。その話、考えておくよ」

 

「あぁ。答えは、ぜひ決勝の舞台で聞きたいものだな」

 

私は最上君との話を切り上げ、ホールへと走る。その先にある、友とのファイトのために……。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「おっ、来たっスよ!」

 

「シオリさん!こっちよ!」

 

興奮しながら私がホールの中に入ると、既にみんなは来ていた。

 

「集中できたか?」

 

「大丈夫だよ、小沢君。負ける気なんて全然しない」

 

「そうか。俺もさっきまで1人にしてもらってな。ユウトとのファイトをイメージしてた」

 

相手は平本さんだからね。前にファイトしているのを見たときも、かなり手強かった。

 

そんなミズキたちは、私たちの向かい側に立ってこっちを見ている。話をするには遠すぎるが、今更そんなことは必要ない。

 

ここから先は、ただ1つ。ミズキとのファイトに勝つだけだ。

 

「やるぞ、星野。今日も勝つぞ!」

 

「うん!」

 

迎え撃つ準備は万端。いや、迎え撃つのはミズキの方か?どっちでもいいか。

 

『大変お待たせいたしました!これより、各ブロックの決勝戦を始めます!』

 

この試合からは、各試合ごとにアナウンスが入るみたいだ。客席からも歓声が上がり、会場のボルテージは上昇する。

 

「まずはAブロックの決勝戦、チームエレメンタルメモリー対チーム祝福の星の試合を始めます!」

 

私たちにライトが当てられ、より歓声の大きさが増す。ミズキを見ると、今か今かとウズウズしているみたいだった。

 

『それでは、各チームは代表者を決定し、MFSを起動させてください!』

 

ミズキたちは3人チームだから、代表者を決めるのは私たちだけだ。でも、私と小沢君はファイトするから、残り1枠を決めることになる。

 

「どうするっスか?俺かリサさん、どっちが出るっスか?」

 

「そうね……。シオリさんたちなら問題ないと思うけど、向こうはリベンジに燃えてる。万が一もあるわ。だから、トウジが出なさい」

 

「俺の実力を買ってくれてるってことっスか?」

 

「白々しいわよ。中学の時からの付き合いなのよ?あんたの強さくらい、痛いほどわかるわ」

 

「了解。じゃあ行くっスか、二人とも」

 

佐原君だったら、確かに安心だろう。実際、ここまで1度も負けていない。圧倒的な勝率だ。

 

問題は私たち。勝つ気ではいるし、前のファイトも勝っている。けど、どれだけ力をつけているかわからない。油断すれば、足元をすくうことになる。

でも、私だって前と同じじゃない。デッキだって強化しているし、ファイトの実力もつけてきた。

 

私は、MFSの前に立ち、起動させる。変形し、ファイトテーブルになる。そこに向き合う相手は、当然……

 

「ついにこの時が来たね、シオリ」

 

「そうだね……ミズキ」

 

他の人なんてありえない。宿命づけられたようにふさわしい相手。

 

「待ってたぜ、ワタル!この時をな!!」

 

「俺もだ。全力で行く!」

 

「柳田さん……だったっスか。俺らは俺らで、全力でファイトするっスよ」

 

「当然だ。だが……月城や平本のため、勝たせてもらう!」

 

他のメンバーも、それぞれ火花を散らし合う。その様子に観客も盛り上がり、ホール内の熱気はさらに増す。

 

「……あの時」

 

「ん?」

 

「また戦おうって言ってくれたこと、嬉しかった。まさか、こんなところでの再戦になるとは思ってなかったけど……」

 

「私もだよ。でも、それ以上にファイトできることが……嬉しい!」

 

ファーストヴァンガードを伏せ、手札を引く。他のみんなも、準備は整っているみたいだ。

 

後は、始まりを待つだけ。そして、ついにその時が……!

 

『それでは、Aブロック決勝戦を始めてください!』

 

「「「「「「スタンドアップ!「ゴー!」「ザ!」ヴァンガード!!」」」」」」


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