つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア
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祝!50話目です!

ここまで来るのに2年近く……。どれだけ不定期更新だったのかがよくわかる……。ですが、ここからは巻き返して行きますよ!

少し話がそれますが、時空の先導者も見ていただいているようでありがとうございます!どちらの小説も、よろしくお願いします!

さて、今回はついにあの2人のファイト。互いに望んだファイトは、どのようなシナリオを辿るのか。

では、どうぞ。


ride50 待ち焦がれた時

グランドマスターカップ秋予選。そのAブロックの決勝戦が、今行われている。

 

私の対戦相手は……月城ミズキ。偶然の出会いだったけど……私が自分から足を踏み出して作った、ヴァンガードを再開してからの初めての友達。

 

ファイトして、再戦を誓い合い、気が付けばこんなところに立っている。でも、悪い気はしない。むしろ、嬉しいんだ。こんな大舞台で、全力を尽くしてファイトできるから。

 

それは、ミズキだって同じはずだ。再戦の舞台にこの場所を選んだのは、ミズキだから。そしてミズキは、私とファイトするためにここまで来た。

 

互いの想いが交わりあうファイト。その火蓋は今、切って落とされた。

 

「「スタンドアップ!「ザ!」ヴァンガード!!」」

 

舞台は満点の星空が広がる丘。決戦の舞台としては、なかなか見栄えのある場所だ。

 

「私は……解放者 チア―アップ・トランぺッター!(5000)」

 

「私は、星を射る弓 アルテミス!(4000)」

 

向かい合う2体のユニット。その表情は、不思議とほほ笑んでいる。私たちの気持ちが、ユニットにも伝わっているのかな?

 

「嬉しいよ……シオリ。やっとファイトできる!」

 

「うん!私だって、まさかミズキが最後まで残るなんて思ってなかったから!」

 

「へ~。それって私の実力が危なっかしいってこと?」

 

「ち、違うって!もう少し前の方でファイトするのかと思ってたんだよ!」

 

おかしくて、ミズキは吹き出して笑う。私も、それにつられて笑い出した。ファイトを始める前だとは思えない光景が、そこにはあった。

 

やがて、ひとしきり笑い終えた私たちは、改めて手札を構えなおす。そして、

 

「……始めよう、シオリ。私たちのファイト!」

 

「うん、行こう!ミズキ!!」

 

この嬉しさ……ファイトでぶつけよう。

 

「じゃあ、私のターンからだね。ドロー!天地の結弦 アルテミス(7000)にライド!ソウルに星を射る弓 アルテミスがあれば、パワーは常に8000!」

 

弓だけが場に残り、アルテミスが輝く。その弓をつかんだのは、同じくアルテミスの名を持つ女性。だが、さっきのアルテミスとは見た目が違っている。

 

「さらに星を射る弓のスキル!デッキの上から7枚見て……黄昏の狩人 アルテミスを手札に加える!ターンエンド!」

 

連携ライドに成功したか……。次のライド先も確保されたし、私も負けてはいられない!

 

「私のターン、ドロー!ばーくがる・解放者(7000)にライド!チア―アップは左後ろへ。ばーくがるの後ろに、未来の解放者 リュー(6000)をコール!」

 

星空の見下ろす丘にサークルが現れ、ばーくがるとリューが登場する。チア―アップは、ちょこんと正座していた。

 

「リューのブーストで、ばーくがるのアタック!(13000) ドライブチェック……ブラスター・ブレード・解放者」

 

「ダメージチェック、幸運の女神 フォルトナ」

 

「ターンエンド!」

 

 

シオリ:ダメージ0 ミズキ:ダメージ1

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!黄昏の狩人 アルテミス(9000)にライド!ソウルに天地の結弦 アルテミスがいるので、常にパワー10000!」

 

待ち焦がれた時を進めるように、ミズキのターンは続いていく。

 

「続けて、箒の魔女 キャラウェイ(9000)と、猫の魔女 クミン(7000)をコール!クミンのスキルで、SC1!」

 

クミンがアルテミスの背中に手を当てると、アルテミスの体が緑に発光する。ソウルをためているのかもしれない。

ジェネシスのスキルは、ソウルを使うものが多い。これはその下準備だ。

 

「アルテミスでアタック!(10000)」

 

「猛撃の解放者でガード!」

 

アルテミスの弓から飛び立つ矢を、猛撃の解放者が体を張ってガードする。ヒットすればSC4。それだけは避けたかった。

 

「ドライブチェック、戦巫女 ククリヒメ。クリティカルトリガー!効果は全てキャラウェイへ!(14000 ☆2)」

 

「もうトリガーを……」

 

「まだまだ!クミンのブースト、キャラウェイでアタック!(21000 ☆2)」

 

「……防げないね。ノーガード!」

 

キャラウェイが箒に乗ったまま、ばーくがるにのしかかる。何とか抜け出したが、ダメージはダメージだ。

 

「ダメージチェック。1枚目、王道の解放者 ファロン。2枚目、円卓の解放者 アルフレッド」

 

「ターンエンドだよ」

 

 

シオリ:ダメージ2 ミズキ:ダメージ1

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー」

 

まだ序盤だ。ダメージ差はすぐにひっくりかえ……せ……?

 

「ミズキ?笑ってるの?」

 

「ごめん。もうずっとワクワクしててさ。私、本当に嬉しいからさ。柳田さんにも協力してもらって、ここに来られたから」

 

「私も嬉しいよ。だから……このファイト、今の全力をぶつける!」

 

私は1枚のカードを掲げる。1人の少年、そして彼との出会いがもたらした、この舞台での再戦の約束に感謝を込めて。

 

「ライド・ザ・ヴァンガード!勇気の光を受けて輝く、黄金の剣を掲げし戦士!ブラスター・ブレード・解放者!!(9000)」

 

ばーくがるが嘶き、足元にサークルが現れる。白のマントをなびかせた神聖なる剣士が、ばーくがるの姿から変化して登場する。

 

以前は何も言ってなかったのに、自然と私の口から出たライド口上。それは、ミズキとのファイトがもたらした変化なのかもしれない。

 

「コールだよ!横笛の解放者 エスクラド!(9000) リューのブースト、ブラスター・ブレードでアルテミスにアタックするよ!(15000)」

 

「ブラスター・ブレードのスキルを使わない……。ということは……ノーガード!」

 

「ドライブチェック、武装の解放者 グイディオン。ゲット!ドロートリガー!!1枚ドローして、パワーはエスクラドへ!(14000)」

 

リューが後に続き、ブラスター・ブレードがアルテミスに剣を一閃する。

 

「ダメージチェック、天地の結弦 アルテミス」

 

「チア―アップのブースト、エスクラドでアルテミスにアタック!(19000)」

 

「やっぱり、そういうことなんだね。だったら止めるよ!戦巫女 ククリヒメでガード!」

 

エスクラドは、アタックをヴァンガードにヒットさせると、CB1でデッキトップのユニットをスペリオルコールできる。ただし、ブラスター・ブレードのスキルを使ってしまうと、コストが不足してしまう。

 

私はエスクラドのスキルを優先させ、リアガードを増やすことを選んだ。けど、ミズキはそれを読んでいた。私にリベンジするための対策は、万全ということか……。

 

「ターンエンド」

 

 

シオリ:ダメージ2 ミズキ:ダメージ2

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!」

 

アルテミスの連携ライドによるパワーアップが、エスクラドのアタックを寄せ付けない一因となった。けど、私にとってはまだ都合がいい。

 

コストを使わなかったらそれで、次のターンであの一手が打てる。

 

「私も成長している。……前のデッキとは違うユニットを見せるよ!ライド!英知の守り手 メーティス!!(11000)」

 

アルテミスが輝き、弓とは異なり、杖を携えて丘に立つ女神、メーティス。

これって……あれ?どんなユニットだっけ?そもそも普通のブースターに収録されてるカードだっけ?

 

「黄昏の狩人 アルテミス(9000)をコール!さらにメーティスの後ろに、戦巫女 ミヒカリヒメ(8000)をコール!」

 

いや……ダメージにはフォルトナがいる。もしかしたら、フォルトナのサポートカードの可能性がある。

 

「アルテミスで、ブラスター・ブレードにアタック!(9000)」

 

「エスクラドでインターセプト!」

 

「次はミヒカリヒメのブーストで、メーティスのアタック!メーティスはアタックした時、SC1して、パワープラス1000!(20000)」

 

このスキル……確か、ジェネシスのユニットで同じものを持つユニットがいた。神託の女神 ヒミコ。ブレイクライドのスキルを持つユニットだ。

 

ということは、あのメーティスも……?

 

「ノーガード」

 

「ツインドライブ、1枚目……サイバー・タイガー。ゲット、クリティカルトリガー!パワーはキャラウェイに(14000)、クリティカルはメーティスに!(20000 ☆2)」

 

さっきのターンもそうだけど、ミズキは上手くトリガーを引き当てている。これも、ファイトへの想いの強さが引き起こしているのか。

 

「2枚目、挺身の女神 クシナダ。トリガーなしだね」

 

「クリティカルに完全ガードまで引くとはね……。ダメージチェック。1枚目、光輪の解放者 マルク。2枚目、未来の解放者 リュー」

 

「クミンのブースト、キャラウェイでアタック!(21000)」

 

「……ノーガード」

 

メーティスとキャラウェイが、遠方から魔法を使って攻撃する。最初は剣で弾いたり、かわしたりしていたが、2発の光線が命中してしまう。

 

「ダメージチェック。ブラスター・ブレード・解放者」

 

こっちには全然トリガーが来ない……。

 

「キャラウェイのスキル!アタックがヒットした時、CB2で1ドロー!ターンエンド!」

 

 

シオリ:ダメージ5 ミズキ:ダメージ2(裏2)

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー」

 

まずいな。もうダメージ5だよ……。ミズキはソウルこそあまり溜まってないけど、このまま普通に押し切られそうだし……。

 

それに、私の手札にはまだアルフレッドはない。でも、代わりにあのユニットがいる。

 

「響け雄叫び!その威光に、金色の戦士たちよ……応えよ!!ライド・ザ・ヴァンガード!狼牙の解放者 ガルモール!(11000)」

 

「ガルモール……。アルフレッドじゃない」

 

ブラスター・ブレードが剣を地面に突き立てると、その場所から光が沸き上がる。やがて、ブラスター・ブレードの姿は、ガルモールに変わる。

 

「チア―アップのスキル!自身をソウルに入れることで、このターン中、ガルモールはデッキからリアガードがコールされるたびに、パワープラス3000!」

 

コールすればするほど、ガルモールのパワーは一気に上昇することになる。けど、デッキからのコールでしか発動しない。1ターンに連発して狙えるスキルではない。けど、

 

「そして今こそ!ガルモールのリミットブレイク!!CB3、これにより、デッキトップのユニットをスペリオルコールする!この効果は、リアガードが5体になるまでコストを払わずに繰り返し行う!」

 

今、私のリアガードはリューのみ。デッキから4体のユニットをコールできることになる。この状況は、ガルモールのリミットブレイクを使うのにかなり適しているといえる。

 

「1枚目、王道の解放者 ファロン!(9000) 2枚目、武装の解放者 グイディオン!(5000) 3枚目、円卓の解放者 アルフレッド!(11000) 4枚目、疾駆の解放者 ヨセフス!(7000)」

 

ガルモールの雄叫びが、絆でつながる仲間を呼び出す。

 

「リアガードを5体に……!」

 

「これで4体コールしたことで、ガルモールはチア―アップの与えたスキルでパワープラス12000!(23000) さらにヨセフスのスキル!デッキからコールされた時、SB1で、1ドローする!」

 

集いし仲間から力を受け取り、ガルモールはさらに激しくいきり立つ。さぁ、ミズキ。今度はこっちの反撃だ。

 

「グイディオンのブースト、アルフレッドでアタック!(16000)」

 

「サイバー・タイガーでガード!」

 

アルフレッドの剣を、サイバー・タイガーが噛みついて止める。力任せに剣を振り抜いたアルフレッドは、今度は頭からサイバー・タイガーを両断する。

 

「リューのブースト、行け!ガルモール!!リューのスキルで、他の解放者のリアガードが3体以上いるから、パワープラス4000!さらにガルモールのスキルで、グイディオンをデッキの下に戻してパワープラス4000!(37000)」

 

グイディオンが光となり、両腕の武器に溢れる輝きを灯す。そのまま跳躍したガルモールは、メーティスに向けて武器を振り下ろす。

 

「パワー30000越え……。ノーガード!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ばーくがる・解放者。2枚目、霊薬の解放者。ゲット!ヒールトリガー!!ダメージを1枚回復して、パワーをファロンへ!(14000)」

 

「ダメージチェック、月夜の戦神 アルテミス」

 

「ヨセフスのブースト、ファロンでアタック!ファロンのスキルで、解放者のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(24000)」

 

「これもノーガード!ダメージは……戦巫女 サホヒメ」

 

「ターンエンド!」

 

 

シオリ:ダメージ4(裏2) ミズキ:ダメージ4

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!」

 

ミズキのダメージは4.もし、ブレイクライドのスキルを持つユニットだとしたら、このターンでフォルトナが来る可能性がある。もう少しダメージに気を使えばよかったかな……。

 

「ライドはなし。コールも……特にないかな」

 

あ、あれ?てっきり何か来ると思ってたんだけど、手札にライド先がいなかったってことかな。

 

「もしかして、そろそろフォルトナが来るかもしれないって思ってた?」

 

「……何でわかったの?」

 

「わかるよ。シオリ、今驚いてたもん。もうちょっとポーカーフェイスに気を付けた方がいいんじゃない?」

 

うっ、顔に出てたんだ……。少し気が緩みすぎてるのかな。バレてるなら隠すことはないと、私は正直に話す。

 

「あ、うん……。ダメージ4だし、そのメーティスってユニットのスキルはわからないけど……」

 

「あっ、知らなかった?言ってくれたら教えたのに。メーティスは、ブレイクライドのスキルを持ったユニットなんだ。使いやすいかと思って入れたんだよ」

 

やっぱりブレイクライドのユニットだったんだ……。

 

「確かに、フォルトナを使うなら今かもしれないね。でも……まだその時じゃない。このターンでは、シオリを倒すことはできなさそうだって思うから」

 

それもそうか。私の手札、8枚もあるからね……。これも、ガルモールのリミットブレイクで手札を温存した成果か。

 

「私だって、ちゃんと考えてるんだよ?負けてからずっと、シオリへのリベンジだけを夢見てたから。ユウトや柳田さんにも協力してもらって、シオリに勝つことだけ――」

 

「……ミズキ?」

 

そこで、不自然に言葉が途切れる。まるで、何かをトリガーに自分の世界に引きずり込まれたような……。

 

「……そうだったね。私はいつだって、挑む方だったよね」

 

「あの、ミズキ?」

 

ポツリと独り言をつぶやくミズキが気になり、私は声をかける。すると、ミズキは何かが吹っ切れたように透き通った笑みを向けて、

 

「……シオリなら、別にいいかな」

 

「え?」

 

「ごめん、急に。ちょっとした短い昔話だよ。何となく、話したくなったから」

 

唐突に、話を始めた。

 

「私がヴァンガードを始めたのは、ちょうどシオリが使ってるゴールドパラディンが登場した時だった。ユウトに誘われてね。ユウトは……まぁ、わかってると思うけど、なるかみを。私は、エンジェルフェザーを使ってたんだ」

 

エンジェルフェザー!?あ……でも、イメージはあるかも。

 

「毎日ショップに通って、2人でファイトしてた。そんな時だよ。私たちが、1人の女の子と出会ったのは」

 

「女の子?」

 

「と言っても、私たちと同じ中学で……もっと言えば同じクラスだった」

 

ん?だとしたら、何で出会ったなんて言い回しをミズキはしているんだろう?

 

「その子は、クラスでも浮いていて、いつも1人だった。いじめはなかったけど、とにかく他人を避けていたから、クラスではよくは思われていなかったよ。私も正直……ヴァンガードを始めるまでは、あんまりいい印象は持ってなかった」

 

孤立……とは少し違うのか。彼女の場合は、孤高と呼んだ方が正しいのかもしれない。

 

「冷たくて、無愛想で……そんな彼女が、まずユウトとファイトしたんだ。確か、ショップ大会だったかな?ユウトはボコボコにやられたんだけど、それがかえって興味を持つことになったみたい。ユウトは、強い相手ほど燃えるタイプだし」

 

「あ……何となくわかるかも」

 

「まぁ、彼女は相手にもしてなかったけどね。無視するなんて当たり前だったから」

 

何となく、しつこくつきまとう平本さんとその彼女の姿がイメージできる……。

 

「私が初めてまともに彼女と接したのは、その何日か後のことだったんだ。ユウトが私と彼女を引き合わせて、ファイトすることになったんだ」

 

「えっ?平本さん、その彼女と話できたんだ?」

 

「ま、まぁ……その……私、ユウトのそんな大胆なところがその、好きだったりするし……///」

 

隣で本人がファイトしてるのに、よくそんな恥ずかしいこと言えるよね……。私だったら……む、無理だよ///。

 

「それでファイトしたんだけど、動きは淡々としてるし、冷めててたんだ。いつもとあんまり変わらないなって。でもね」

 

「……?」

 

「ファイトが盛り上がってくると、だんだん彼女も明るくなってくるんだ。アタックが通らなかったら悔しがるし、トリガーが出たら喜ぶし。これが、本来の彼女だったんだって、思ったんだ」

 

ヴァンガードを通じて、本当の自分をさらけ出すことができる。彼女にとって、ヴァンガードは本当に楽しいものだったのかもしれない。

 

「でも、ファイトが終わったらすぐに帰ってね。話しかける暇もなかった。後を追いかけたけど、もう遅かった」

 

「それで……その子とはどうなったの?」

 

「そのまま諦めるわけないよ。あんな一面見たら、仲良くなりたいって思うから。だから、とにかく彼女と一緒にいたよ。相手にはされなかったけど……それでも」

 

ミズキの話を、私は相槌や質問を繰り返しながら聞いていく。MFSのユニットたちも、静かに耳を傾けているように思えた。

 

「そうしているうちに、彼女の方にも変化が出てきたんだ。口も聞いてくれなかったのに、話をしてくれたんだ」

 

「それって……!」

 

「でも、彼女は私たちに言ったよ。私は他人とどうやって接したらいいのかがわからない。だから、絶対に仲良くはなれないんだって」

 

物事は、そう簡単に上手く進むとは限らない。進んだつもりでも、逆戻りしているかも知れないのだから。

 

「それでも、私は諦めなかった。ただ仲良くなって、一緒に話をしたかった。ファイトしたかった。だって……彼女はいつも1人で、そんな姿を見ているうちに、何だか寂しそうに見えていたから」

 

「ミズキ……」

 

「その甲斐は……あったよ。少しずつ、彼女は私たちに心を開いていった。一緒にいる時間も……ぎこちないけど、話すことだって」

 

そっか……。ミズキの想いは、彼女に届いたんだ。

 

「私のヴァンガードが上達したのは、彼女とファイトしてたからだ思う。いつも負けて、そのたびに改善して、また挑む。結局、1回も勝てなかったけど……」

 

さっきの言葉って、そういう意味だったんだな……。

 

「でも、彼女は留学することが決まってね。それで、日本を離れないといけなかったんだよ」

 

「じゃあ、彼女は今、海外にいるってこと?」

 

ところが、ミズキは首を横に振る。ということは、もう日本に帰ってきているのか。

 

「彼女が海外に向かった先でね……大規模なテロに巻き込まれたんだ。何だったかな……確か、カルネージ・タワー?の建設を巡ったテロで、その時に行方が――」

 

そこで、ミズキの声が涙ぐんだ。これ以上は続けられないと、ミズキは視線をそらす。

 

「……そんなことがあったんだ」

 

そんなことしか、私は口にできない。やがて、ミズキは落ち着いたのか、私に視線を戻す。

 

「……柳田さんをチームにスカウトしたのは、彼女に雰囲気が似ていたからなんだ。1人で、冷めていて……変わることを諦めていた。だから、彼女の時みたいに力になりたいって思ったんだ」

 

そういうつながりがあったんだ。話している感じ、柳田さんの方が年上っぽいし、どうやって知り合ったんだろうとは思ってたんだけど。

 

「私の昔話はおしまい。ごめんね。こんな話して」

 

「いや……。凄いよ、ミズキは。そんな辛いことを、話すことができるんだから」

 

私は……まだ辛い。あの出来事を、断片だけでも語るのは。

 

「シオリには、知っててもらいたいかなって思ったんだ。別に何か慰めが欲しいわけじゃない。ただ、私の話を聞いて欲しかったんだ」

 

「……そっか」

 

ミズキの過去。それは、苦労の末に築き上げた友情を砕かれた、痛ましいものだった。彼女を失った時、どんなに辛かったことだろう。

 

「今は大丈夫だよ。ユウトはいてくれるし、それに……柳田さんだっているからね」

 

でも、今のミズキなら大丈夫。過去を乗り越えるだけの力を、ミズキはもう手にしている。

 

「よっしゃあ!!やった!やったぞ!!勝った!俺がワタルに勝ったんだ!!」

 

その時、これでもかと言わんばかりに、平本さんの大声が聞こえてくる。

 

「小沢君が負けた……ってことなんだね」

 

「ユウトも今日のリベンジを楽しみにしてたからね。きっと嬉しいんだろうな」

 

涙を流して喜んでいる平本さん。小沢君も、その表情は清々しい。

 

「柳田さんだって頑張ってるし、私もシオリにリベンジしないと!行くよ、シオリ!!」

 

「うん!全力で迎え撃つよ!!」

 

つかの間の休息を終え、2人のファイトは佳境に差し掛かろうとしていた。

 








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