つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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今回の話で、初投稿から2年が経ちます。ここまで見てくださっている方には、本当に感謝しています。

作者の都合で投稿が滞った時もありましたが、最近は順調に進み、秋予選もクライマックスとなりました。これからも、よろしくお願いします。

今回でついに、決勝戦の決着がつきます。シオリたちは勝って、全国への道を切り開くことができるのか。

では、どうぞ。


ride57 波紋が導く結末

「小沢君……」

 

もう正直諦めかけてたのに、あなたの応援を受けたら、そんな気持ちなんてどこかに消えちゃったじゃない……!

 

「……全く。全国に行くなんて、軽々しく言ってくれるわよ、本当」

 

けど、私たちはそのためにここまで来た。目の前にあるのに、足元見てたらダメに決まってるじゃない。

 

「…………」

 

テツジさんからもらったペンダントを握りしめる。私は、1人で戦っているわけじゃない。横ではシオリさんとトウジが。後ろには、小沢君がいてくれる。

 

不思議だ。そう思うだけで、負けることへの恐怖がなくなっていく。諦めたくない……!

 

「ガード!ジェットスキー・ライダー、虹色秘薬の医療士官!!」

 

「トリガー1枚で突破かよ……!」

 

わかってる。そのわずかな可能性に賭けたのよ、私は。

 

「なら……ドライブチェック!」

 

スペクトラルデュークのリミットブレイクの効果で、ドライブチェックは1回となっている。引くか引かないか、それだけだった。

 

「お願い……!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……フレイム・オブ・ビクトリー。クリティカルトリガー!効果は全て、スペクトラルデュークへ!(31000 ☆3)」

 

ガーディアンを薙ぎ払い、ハルバードをテトラドライブに深々と突き立てる。クリティカルは3。もう残りのヒールトリガーでは、持ちこたえることはできない。

 

後は任せたわよ……トウジ、シオリさん……。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ははっ……諦めるなって言っても……」

 

俺はまだ諦めたわけじゃない。まだ、頭は次のターンのことだけを考えている。

 

「そんな風に見せ場を持ってくなんて、ひどいもんっスよ!ワタル君!!」

 

勝負はここからだ。俺はまだ、カオスブレイカーの真の力を出せてはいないんスから。だから……。

 

「コロニーメイカー!お前もインターセプトっス!」

 

カオスブレイカーの護衛に、コロニーメイカーも加わる。これでダブルトリガーでも突破はできない!

 

「ツインドライブ!1枚目、アビス・ヒーラー。ヒールトリガー!ダメージを1枚回復して、パワーはオーバーロードへ!(26000 ☆2) 2枚目、デスフェザー・イーグル。クリティカルトリガー!効果は同じく!(31000 ☆3)」

 

オーバーロードの攻撃を、4体が個別にさばいていく。連携はあまりとれていないが、数で押し切ることに成功した。

 

「よっしゃあ!!無駄なガードにはならなかったっスよ!」

 

「ち……ターンエンド!」

 

この瞬間、ネヴァン、カロン、カースド・ランサー、グルルバウのロックが解ける。が、カオスブレイカーの前では通用しない。

 

「ここで……カオスブレイカーのリミットブレイク!相手リアガードのロックが解除された時、1体につきSB1を払ってそのリアガードを退却!さらに俺は1枚ドロー!」

 

俺は4体分のコストを払い、全てを退却。そして4枚のカードをドローした。

 

「くそ……!」

 

 

トウジ:ダメージ5(裏3) タツヤ:ダメージ4(裏3)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン(11000)と、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン(11000)をコール!」

 

空いたリアガードを埋めるために、カオスブレイカーとインフィニットゼロが宙から現れた。

 

「カオスブレイカーのスキル!CB1、手札のランタンを捨てて、残ったグルルバウを……ロック」

 

唯一のリアガード、グルルバウがカオスブレイカーから放たれた黒輪に縛られる。それに呼応して、ランタンのパワーも上昇する。

 

「ランタンのスキル!リアガードがロックされたことで、パワープラス2000!(9000)」

 

さて、期待されてるわけだし、こっから反撃、行ってやるっスよ!!

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「スタンドアンドドロー!ライドなし。そしてアルフレッドのスキル!CB2で、デッキトップのカードをコールする!私は……王道の解放者 ファロン(9000)をスペリオルコール!」

 

小沢君に励まされ……アルフレッドがつないでくれたこのターン、無駄にはしない!

 

「グイディオンの上から、横笛の解放者 エスクラド(9000)をコール!グイディオンは退却するよ!」

 

エスクラドがグイディオンと入れ替わりで、サークルから登場する。グイディオンはサークルの中へと消えていった。

 

これでパワーラインも問題ない。後は……。

 

「アルフレッドのリミットブレイク!!解放者のリアガードは5体!フルパワー!!パワープラス10000!(21000)」

 

アルフレッドがリアガードから力をもらう。団結し、目の前の黒き竜を見据えている。

 

「行くよ」

 

「あぁ。来い、星野シオリ」

 

「エポナのブースト、ファロンでアタック!スキルで解放者のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(17000)」

 

「暗黒医術の撃退者でガード!」

 

ファロンと暗黒医術の剣が交わる。その隙に、アルフレッドとエスクラドがレイジングフォームに迫る。

 

「マロンのブースト、行くよ!アルフレッド!!(28000)」

 

「……ノーガードだ!」

 

ここでノーガードか。ということは、クリティカルには期待できないよね……。

 

「ツインドライブ!1枚目、疾駆の解放者 ヨセフス。2枚目、希望の解放者 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!!」

 

いや、引いた。なら、当然ダメージにはヒールトリガーが……。

 

「……効果は全て、エスクラドへ!(14000 ☆2)」

 

「何っ……!?」

 

アルフレッドが、レイジングフォームの胴体に無数の傷跡をつけていく。だが、致命傷にはならなかったみたいだ。

 

「ダメージチェック、幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム」

 

「言ったよね?私も成長してるんだよ!そんな見え透いた策に踊らされるほど、私は甘くない!!」

 

「ふっ……さすがに、冷静に対処してきたか」

 

ということは、次のダメージはヒールトリガーで確定だ。なら、エスクラドのアタックが通れば、オーバーキルで勝利する!

 

「ばーくがるのブースト、エスクラドでアタック!これで……決める!!(21000 ☆2)」

 

「……まだだ!魁の撃退者 クローダスでガード!ブラスター・ダークでインターセプト!」

 

エスクラドが音撃を放とうとした瞬間、マスカレードが突進して怯ませ、そこにダークが割り込んで蹴りを入れる。

 

「くっ……でも、策は破ったよ!ターンエンド!!」

 

 

シオリ:ダメージ5(裏5) ナツキ:ダメージ5(裏4)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー。暗黒医術の撃退者(5000)、ブラスター・ダーク・撃退者(9000)をコール」

 

コールしたのは、ブラスター・ダークとヒールトリガーのユニット。ドローしたカードはこれだと、プレイングで伝えたかったのか。

 

「俺も少し甘かったか。ワンパターンだったからな」

 

「だから読めたんだ。あの場なら、絶対に6点ヒールを狙っていると思ったから」

 

「そうか……」

 

そう言って笑う最上君の表情は、感心しているように見えた。称賛を含んだ、敵意のない笑み。

 

「だが、勝負は勝たせてもらう!ドリンのスキル!同じ縦列にブラスター・ダーク・撃退者がコールされた時、ダメージを1枚表に!」

 

ということは、表のダメージが2枚……。ダークのスキルのコストを、無理やり確保してきた!?

 

「ダークのスキル!CB2、ファロンを退却!」

 

ファロンが背後からダークに貫かれ、塵となって退却する。

 

「まだだ!暗黒医術の前に、暗黒の撃退者 マクリール(6000)をコール!」

 

完全ガードまでコールしてきた……。しかも、これで手札はない。ここを勝負所と決めたんだね……!

 

「暗黒医術のブースト、マクリールでアタック!(11000)」

 

「ヨセフスでガード!」

 

マクリールが盾を前面に押し出して突進する。それをヨセフスが横から殴って止める。

 

「ドリンのブースト、ブラスター・ダークでアタック!(16000)」

 

「エポナで……ガード!」

 

「防いだか。だが、ここまでは……」

 

「想定内……なんだね」

 

次のアタックが……勝負を決めることになる。

 

「行くぞ!レイジングフォームで、アタック!!(11000)」

 

「リューでガード!エスクラドでインターセプト!」

 

これで、必要なトリガーは2枚。果たして、最上君に見えている景色は、どのようなものなのか。

 

このファイトの結末を賭けた、運命のドライブチェックが始まる。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ランタンのブースト、インフィニットゼロでアタック!(20000)」

 

「デスフェザー・イーグルでガード!」

 

「カオスビートのブースト、カオスブレイカーでアタック!カオスビートのスキルで、相手のロックされたリアガードがいるなら、パワープラス5000!(22000)」

 

「なら……暗黒の盾 マクリールで完全ガード!コストは、グリム・リーパー!」

 

マクリールが両肩の盾を展開し、カオスブレイカーの鎌を受け切って見せる。これ以上は無理だと判断したカオスブレイカーは、すぐに後退する。

 

「ツインドライブ!1枚目……星輝兵 コロニーメイカー。2枚目……星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン。トリガーなしっスね。なら、バラジウムのブーストしたカオスブレイカーでアタック!(18000)」

 

「アビス・ヒーラーでガード!」

 

「ターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ5(裏4) タツヤ:ダメージ5(裏4)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!」

 

俺は向こうのターンが始まったのを確認して、自分の手札を見る。手札は5枚。1枚はグレード3で、ガードには使えない。

 

けど、残る4枚のシールド値は計25000。インターセプトは使えないっスけど、これなら大丈夫じゃないっスかね?

 

「ライドなし。続けて、ファントム・ブラスター・オーバーロード(11000)、黒の賢者 カロン(8000)、厳格なる撃退者(5000)をコール!」

 

3体のリアガードをコールして、手札を使い切ったっスか。ここをしのげば、がら空きのあいつのヴァンガードにとどめを刺すだけ。

 

ここが踏ん張りどころっスよ……?

 

「厳格なる撃退者のブースト、ファントム・ブラスター・オーバーロードでアタック!(16000)」

 

「星輝兵 ステラガレージ!コロニーメイカーでガード!トリガーは2枚!!」

 

とは言ったが、1枚でもダメだ。そうなると、次のアタックが防げない。

 

けど……まだ終わらせない!

 

「しぶといな……!ツインドライブ!1枚目、幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム。2枚目……!」

 

このままトリガーが出なければ……!

 

「アビス・ヒーラー。ヒールトリガーだ……!ダメージを1枚回復し、パワーはリアガードのオーバーロードへ!(16000)」

 

「……!」

 

ファントム・ブラスター・オーバーロードが、ステラガレージとコロニーメイカーを力づくで押しのける。開けた道を飛翔するのは、もう1体のオーバーロード。

 

「これで、決める……!行け!カロンのブーストした、ファントム・ブラスター・オーバーロード!!(24000)」

 

カオスブレイカーに片方の剣を突き立て、今にも2本目の剣が刺されようとしている。

 

「……俺は、まだ諦めてないっスよ。ヒールトリガーを引けばいいだけの事っスから!ノーガード!!」

 

意を決して、俺はデッキからカードをめくる。そのカードは……!

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「トリガーは2枚か」

 

「まだ諦めたくはないからね。最後まで抗って見せる!」

 

手札、そして残ったインターセプトを全て使い切った。最上君のアタックは、もう残っていない。そして、この状況を打開するためには、トリガーを2枚引くことが条件。

 

「なら、抗ってみせろ!ツインドライブ!ファーストチェック……黒衣の撃退者 タルトゥ」

 

「トリガーじゃない……!」

 

「そうか……タルトゥか……」

 

もうこれで、最上君ができることは何もない。いくらトリガーを引いても、このターンで私に傷をつけることはできないはずだ。

 

「……悪いが、俺が勝ったな」

 

「え!?どういう……!?」

 

トリガー2枚しか、道は残ってないはず。もう他にアタックできるユニットはいないし……。

 

「……まさか」

 

いや、いる。トリガーを引かなくても、突破できる方法は。けど、このタイミングで狙って……!?

しかも、デッキが薄くなっているとは言っても、まだ残り枚数は多いのに……!?

 

「セカンドチェック」

 

迷いなくカードを引く。そして、ふっと笑った。そのカードを私に見せつけながら。

 

「撃退者 レイジングフォーム・ドラゴンだ」

 

「そんな……!」

 

レイジングの炎に、リューとエスクラドが焼かれて消える。これで、アルフレッドの前に立つものはいない。

 

「このアタックはガードされたが、まだターンは続く!レイジングフォームのリミットブレイク!」

 

レイジングの体が、揺らめく炎と化していく。それは、さらなる命を得るための転生。

 

「暗黒医術の撃退者、マクリール、ドリンを退却!これにより……!竜の息吹は時を超え、受け継ぐ想いは常に変わらず!スペリオルペルソナライド・ザ・ヴァンガード!撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン!!(11000)」

 

これで最上君は、もう1度レイジングフォームでアタックできる。つまり……。

 

「この効果でライドしたレイジングフォームには、パワー10000が追加される。(21000) が、別に必要ないな。あんたにはもう……」

 

守るすべを、私は持っていないのだから。

 

「それでも……!まだ、勝負を捨てない!諦めない!!」

 

「……いい覚悟だ。レイジングフォーム・ドラゴン!これが、ラストアタックだ!!(21000)」

 

「ノーガード!」

 

「ツインドライブ!ファーストチェック、幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム。セカンドチェック、氷結の撃退者。ドロートリガーか。1枚ドローし、効果はレイジングフォームへ!(26000)」

 

炎となり、その身を焦がしたレイジングフォームの塵から、新たなレイジングフォームが誕生する。黒くたぎる灼熱を溜め込み、眼下のアルフレッド目掛けて一気に放出する。

 

「ダメージチェック……!」

 

こうなったら、ダメもとでアクセルリンクを使うしかないのか……!?意識を集中させ、波紋を感じようと試みる。

 

「……っ、うう!」

 

ダメだ。眩暈と頭痛が、私を容赦なく襲う。このまま続けても、ナオヤさんの時の二の舞になるだけだ。

 

それなら、私の手で引くしかない!

 

「…………」

 

「…………」

 

目を瞑り、デッキの1番上のカードを目の前に持ってくる。まだ、このカードが何なのかはわからない。

 

恐る恐る目を開け、私は目の前のカードを確認した……!

 

「……!」

 

思わず、力が抜ける。手に持ったカードが、ゆっくりとダメージゾーンに落ちる。

 

円卓の解放者 アルフレッド。私の敗北が、ここで決まった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

『き……決まりました!!グランドマスターカップ関東地区秋予選!優勝は……まさかのストレート勝ち!チームアビスナイツです!!』

 

MFSが、機能を止めて収納されていく。会場の熱気は急上昇するが、私は敗北の喪失感に苛まれていた。

 

『では、準備の都合もありますので、今から20分後に表彰式を行います!観客のみなさんは、今のうちに休憩をとりましょう!』

 

観客席がざわつきだす。今のファイトのことで、話題は持ちきりだろう。

 

「…………」

 

私は、動けなかった。デッキを片付けたことが、私にはやっとだった。

 

「……よくやった。この秋予選、間違いなくあんたが手ごわい相手だった」

 

「最上君……」

 

私に最上君が近づいてくる。他の4人は、既に控室に戻っているみたいだった。

 

「でも、私はまだまだだったよ……。全国に行く夢も、約束も……果たせ、なくて……!」

 

悔しい。ファイトに負けて、こんなにも悔しかったことなんて今までなかった。

 

だから、最上君に声をかけられて、私はその悔しさを止めることができなかった。溢れて溢れて、止まらなかった。

 

これが、私の立っていた場所の重みだったんだ。

 

「……ごめん、最上君。私、こんなのみっともないよね……!」

 

「構わないさ。あんたが全国に抱いていた想いが、それだけ強かった証だ」

 

涙を流す私を、最上君は横に付き添って控室まで送る。そのおかげなのかな……。少しだけ気持ちが収まったのか、すぐに涙は収まった。そして、急に恥ずかしくなってくる。

 

「……やっぱり、最上君は強いよ。デッキが見えるなんて、反則みたいな能力があるんだから」

 

「痛いところを突くのは止めろ」

 

それを言ってしまえば、私にも異質な力はあるんだけどね……。

 

「だが……あんたは俺の策を2度破っている。見事だ。敬意を払おう」

 

「敬意って、貴族みたいな言い方……」

 

「そこは突っ込むな」

 

いや、なんでなの。そう聞きたかったけど。突然最上君が、改まった様子で私に向き合ってきた。

 

「……星野シオリ」

 

「えっ……何、かな」

 

控室に続く廊下。まわりには人は誰もいない。

 

「あんたの強さは本物だ。ノスタルジアと呼ばれたから……いや、そうじゃないな。あんた自身の力が強かったんだ」

 

「いきなりだね。でも、ありがとう。その言葉、素直に受け取っておくよ」

 

「ああ。俺も最後は、余裕は全くなかったからな」

 

手札を使い切ってまで、勝負に出ないといけないくらいだったのだから。

 

「アクセルリンクを手にしてから……こんなギリギリのファイトをすることが少なくなっていたような気がする。だから、俺からも礼を言う。そして、そんなファイトができる星野こそ、俺の……ライバルとして認めたい」

 

「え……」

 

「全く、こんなことを言い出すキャラではなかったはずなんだがな」

 

ライバルってことは……私の力を、少しは認めているってことなのかな。

 

「……でも、何気に上から目線なのがムカついてるんだよね」

 

「ふん。それは俺の方が強かったと証明されたからに決まっているだろう?」

 

「調子に乗ってるね」

 

「乗ってたとしたら、どうなんだ?」

 

互いに憎まれ口を叩きあい、笑いあう。静かな廊下に、私たちの声が響く。

 

「ライバル……だけじゃないよ」

 

今度は私から、最上君に向き合う。偶然の出会いから芽生えた関係を、つなぐために。

 

「私たちはもう、友達だから」

 

「……そうか」

 

最上君は歩き出す。私も、みんなの待つ控室に向かって、最上君の後を追った。

 

「いきなり話切り上げて、歩き出さないでよ」

 

「あまり長話をしていてはいけないだろう。この後に表彰式もあるんだぞ」

 

そう言ってる最上君の横顔は、少し嬉しそうで。負けたのに、何だか私まで嬉しくなってくる。

 

「次も勝つ。その時は、全国の舞台でファイトしたいものだな」

 

「私こそ、勝つよ。今度こそね!」

 

勝者もいれば、敗者もいる。長い長い戦いは、こうして幕を下ろした。結果は惜しくも準優勝だった。私たちの全国への挑戦は、一歩手前で終わってしまった。

 

でも……何も得られなかったわけじゃない。

 

新しいライバル……いや、友達。最上ナツキ君ができたから。

 

波紋が導く結末は、痛ましくも暖かい……心に残る一時だった。

 




こんな感じで終わってますが、秋予選編はもう少しだけ続きます。

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