つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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最近小説を書いていて、本当に語彙力ないな……って思います。萎える。

さて、今回は久々にある人が登場します。この人出すの何話ぶりだろう……。

では、どうぞ。


ride58 望まぬ再会

戦いを終えた私たちは、控室に戻っているところだった。

 

「……みんな、落ち込んでるだろうな」

 

「かもしれないな。あんたもそうだが、チーム全員が強い意志を持っている。悔しい気持ちは、よくわかるぞ」

 

だよね……。私、どんな顔して戻ればいいんだろう?気の利いた事とか、あんまり言いにくいし……。

 

「が、俺にはどうすることもできない。今この瞬間は、言ってしまえばあんたたちの敵。そんな奴に情けをかけられるほど、屈辱なことはないだろう。星野たちで何とかしてくれ」

 

「わかってる。でも……どうしたらいいのかな?」

 

次は頑張ろう!とか、元気出してよ!とか?う~ん、何か違う。励ましの言葉って、どうすればいいんだろう?

 

「……星野は、大丈夫なんだな?」

 

「私は、まぁ大丈夫かな。最上君の前で、その……変なとこ見せちゃったし」

 

「だから気にするな。……そろそろ控室だぞ」

 

うわ……緊張してきた。私は恐る恐る扉に手をかけようとして……その動きを止めた。

 

「……あれ?」

 

「どうした?」

 

「何か、落ち込んでるって感じじゃないくらいに騒がしいんだけど」

 

「は?」

 

ここは最上君のチーム、アビスナイツとも共用で使っている部屋だ。もしかしたら、あの2人が喜んでいるのかもしれない。

 

「本当だな……。きっとあいつらだ。俺が叱ってやる」

 

本当、保護者だよね……。最上君は勢いよく扉を開け放ち、ずかずかと中に入っていく。

 

「おい、お前たち!何を騒いでいるんだ!負けたチームのこともかんが……ん?」

 

「最上君?中で何が……え?」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

私は最上君の背中越しに、部屋の様子を伺う。そこには、アビスナイツのメンバー、小野ヒロム君とファイトする小沢君と、それを観戦する3人の姿があった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ちょっとタツヤさん!どうして俺が怒られないといけないんですか!?」

 

「紛らわしいことをしていたのが悪い」

 

「タツヤさんもファイト観戦してたでしょ!?」

 

「喧嘩を始めるな!全く……これはどういう状況なんだ」

 

同感だよ。私の想像していたどんよりとした控室とはかけ離れすぎている。悔しさとか苛立ちとか、そんなものも一切なく、仲良くファイトしていたんだから。

 

「ただいま……。あの、そんなに落ち込んでる感じじゃないね……?」

 

「遅かったわね、シオリさん。別に、その……落ち込んでないわけじゃないのよ?」

 

「あぁ。戻ってきたときの2人、本当に辛そうでな……」

 

じゃあ、一体何があってこんなに短時間で立ち直ることができたんだろう?

 

「でも、逆によかったって割り切ってな。今の自分に足りないものを、見つけることができたって」

 

「その通りっス。何もこれで全て終わったわけじゃない。春になれば、また予選がある。可能性は、まだ残されている」

 

「悔しい気持ちはあるわ。でも、その気持ちを引きずってるわけにもいかない。まだ、諦めてはないのよ」

 

そっか。まだ次がある。悔しさを表面に出すのは、その時でも遅くはない。

 

今は、後ろを見る時じゃない。前を見る時だ。出てしまった結果は、受け入れるしかない。

 

「んで、この佐原って人が、『そうと決まれば早速ファイトするっスよ』とか言って、こうなったってわけ」

 

「決勝に参加してないってことで、俺からファイトすることにしてたんだけどな」

 

盤面を見ると、小沢君のダメージは6になっていた。やっぱり、最上君以外も強かったってことだね。

 

「でも、心配してたんだよ?その……やっぱり、負けたことには代わりないから」

 

「……ありがとう、シオリさん」

 

「俺も珍しくへこんでたっスからね。でも、気持ちの整理はつけられたっスから」

 

「とか言ってる星野は、大丈夫なのか?帰りが遅かったが……」

 

「……うん、大丈夫。私も、次を見るよ。終わったことを嘆いても、仕方ないよね!」

 

私の言葉を聞いて、みんなは安心したみたいだった。そして私は、みんなの強さを知った。

私が勝手に心配しているだけで、みんなは思っている以上に強いんだってことを。

 

「話しているところ悪いが、そろそろ表彰式だ。あんたたちも準優勝だし、一応表彰はしてもらえるしな」

 

「ムカつく言い方っスね!」

 

「そう怒鳴るな。佐原……だったな」

 

最上君はタツヤ君たちを引き連れて、先に控室を出ていく。私たちも、後に続いて控室を出た。

 

「あいつ、俺のこと名前で呼んでたっスか?」

 

「それは……最上君なりの友好の証だよ、きっと」

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

というわけで、私たちはさっきの場所に戻っていた。MFSの姿もなく、秋予選は終わりを迎えようとしている。

 

……ただ2台だけ、向かい合うようにセッティングされているMFSを除いて。

 

『ではこれより、表彰式を始めたいと思います!まずは準優勝のチーム、エレメンタルメモリーの代表者はステージへ!』

 

賞状を手に、ステージに現れる優美な大人の女性。彼女こそ、CFフォートレスの社長でもあり、ヴァンガードの開発部長。

 

「マジな涼野マサミっスよ!こんな近くで会えることなんてないっスよ!」

 

「はいはい。悪いけど、ステージに上がるのは私だから」

 

森宮さんがチームを代表してステージの上へ。涼野さんは賞状を読み上げる。

 

「準優勝、エレメンタルメモリー。あなたたちのチームは、今日という日においてすばらしい結果とファイトを残しました。その栄誉を称え、これを表彰します。よくやったわね」

 

「ありがとうございます」

 

『続いて優勝チーム、アビスナイツの代表者はステージへ!』

 

森宮さんと入れ替わりで、最上君がステージに上がっていく。

 

「優勝、アビスナイツ。あなたたちのチームは、今日という日においてすばらしい結果とファイトを残し、見事決勝大会への参加資格をつかみとりました。その栄誉を称え、これを表彰します。よくやったわ」

 

「ありがとう。……口先だけのお言葉に、感謝する」

 

何かつぶやいたみたいだったけど、聞き取れなかったな。涼野さんは変わらない笑みを浮かべるだけ。最上君は、すぐに戻ってきた。

 

『では続いて、優勝チームに副賞の授与をしたいと思います!アビスナイツの代表者は前へ!』

 

「1度に行えよ……」

 

最上君は弟に賞状を預けて、またステージにあがる。そう言えば、副賞って何だろう?予選前にも、情報は公開されていなかったし。

 

『みなさんは、先ほどから気になっているでしょう。もう秋予選は終わりました。しかし!2台だけ、MFSが準備されていることに!』

 

「ってことは、ファイトでもするのか?」

 

「でも小沢君、誰とするのよ?まさか、あの涼野マサミさんとじゃないわよね?」

 

他に考えられる可能性なんてないよね……。今からファイトすることだけは、間違いないだろう。

 

『今回用意した副賞は、スペシャルエキシビションマッチ!今日のために、とあるファイターが駆けつけてくれています!』

 

「……誰だ?」

 

「えっ、有名なファイターでも来るんスか?」

 

一体誰だろう?私、あんまり有名なファイターの事は知らないからな……。観客席では、対戦相手の予想合戦で騒がしくなっている。

 

そう考えていると、ステージ脇の扉にスポットライトが当たる。そこから登場するということか。

 

「一体誰なのかしらね?」

 

「私には全然わからないよ……」

 

『それでは、アビスナイツの代表者とファイトする人に登場してもらいましょう!この型です!!』

 

扉が開き、自分に当たるライトのまぶしさに目をひそめながら、ステージに向かって歩く1人の少年。観客が歓声を上げる中、私たちは驚いていた。それは、最上君もそうかもしれない。

 

でも……多分私が1番驚いている。だって、今出てきた人は……!

 

「な……最上の相手が、あの人だと!?」

 

「ははっ……!今日は眼福な日っスね!」

 

私は、その人を知っている。全国という舞台で再選を誓った、世界を相手に戦う強豪のファイター。

 

「初めまして……だよね。吉崎ナオヤです。今日はいいファイトができることを期待するよ」

 

それは、予期せぬ再会。今最上君の前に立つのは、間違いなくナオヤさんだった。

 

「……まさか、あの吉崎ナオヤとファイトできるとはな。前のイベントにも参加したが、その時は生憎ファイトできなかったからな」

 

「えっ、そうだったの?じゃあ、初対面ってわけじゃないみたいだね」

 

「あぁ。俺はあんたのファイトを覚えているが、一介の参加者でしかない俺の事を覚えている方が不思議なものだ。気にする必要はない」

 

「ありがとう、最上君」

 

軽くやり取りを交わす中、ナオヤさんが一瞬こっちを見てきた。少し悔しそうな表情をしていたが、すぐに視線を最上君に戻し、笑顔になる。

 

『では、早速ファイトを始めましょう!それぞれファイトの準備を行ってください!』

 

最上君たちはステージを降りてMFSへ。私たちは邪魔にならないように、ステージの上へと移動した。

 

デッキを取り出し、既にファイトテーブルの形に展開されているMFSに置く。シャッフルし、手札の引き直しも済ませたみたいだ。

 

「さて、と。僕はいつでもいいよ。そっちは?」

 

「問題ない」

 

『わかりました!それでは、スペシャルエキシビションマッチ!最上ナツキ対吉崎ナオヤのファイトを始めます!』

 

実力者と、能力者。このファイト……どんなものになるのか。

 

「「スタンドアップ!「ザ!」ヴァンガード!!」」

 

2人のファーストヴァンガードが表になる。それを合図にまわりの景色が、荒野へと変わっていく。

 

「魁の撃退者 クローダス!(5000)」

 

「ういんがる・ぶれいぶ!(5000)」

 

青い体毛を持つ、剣を加えた子犬。そして、槍を構えた黒色の鎧をまとった少年。2人の案ガードが、にらみ合いを始めた。

 

「さぁ、行こう!観客たちも、僕たちのファイトを楽しみにしているよ!」

 

「なら、俺から行かせてもらおう!ドロー!」

 

ついに始まった。最上君は手札から1枚のカードを出す。

 

「無常の撃退者 マスカレード(7000)にライド!クローダスは後ろへ移動し、ターンエンド!」

 

クローダスが後ろに下がり、さっきまでいた場所にマスカレードが現れる。

 

「撃退者なんだね。気は抜けないな」

 

「せっかくの機会だ。世界の実力がどれほどのものか、味わうとしよう」

 

そういうと、最上君は目を閉じる。次に開いた時、その瞳には黄金の輝きが宿る。アクセルリンク。序盤から全開だね……。

 

「なら、世界の実力を見せるよ!僕のターン、ドロー!」

 

思えば、MFSを使ったナオヤさんのファイトを見るのは初めてだ。どんなファイトになるのか、注目しておこう。

 

「小さな賢者 マロン(8000)にライド!ういんがる・ぶれいぶは後ろへ移動するよ!」

今度はマロンが登場し、ういんがるもまた、後ろに下がる。

 

「友誼の騎士 ケイ(7000)をコールして、そのままマスカレードにアタック!(7000)」

 

コールされたケイがすぐさまマスカレードに向かって駆け出す。そのアタックに対して、最上君は……。

 

「ノーガードだ。ダメージチェック、ブラスター・ダーク・撃退者」

 

手に持つ槍で、マスカレードを叩きつける。一撃食らわせたケイは、後退する。

 

「ういんがるのブースト、マロンでアタック!(13000)」

 

「これもノーガードだ」

 

「ドライブチェック。未来の騎士 リュー。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てマロンへ!(18000 ☆2)」

 

魔導書を開き、魔法を放つ。マスカレードは魔法を受け、その爆発に巻き込まれる。

 

「ダメージトリガー。ファーストチェック、魁の撃退者 クローダス。セカンドチェック、暗黒医術の撃退者。ヒールトリガーだ」

 

これも、見えていたからこそのプレイングだよね。一気に3ダメージとはいかなかったか。

 

「ダメージを1枚回復し、パワーは一応マスカレードへ」

 

「ターンエンドするよ」

 

 

ナオヤ:ダメージ0 ナツキ:ダメージ2

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

とは言え、ファイトはまだ始まったばかり。次はどんな策を見せてくるのか。

 

「……行くぞ。血濡れし刃よ!うごめき、光を切り捨てろ!ライド・ザ・ヴァンガード!ブラスター・ダーク・撃退者!!(9000)」

 

「ブラスター・ダーク……」

 

「黒衣の撃退者 タルトゥ(9000)をコール!スキルでCB2、デッキから督戦の撃退者 ドリン(7000)をタルトゥの後ろにスペリオルコールする!」

 

ブラスター・ダークの左横に、タルトゥが現れる。そのタルトゥが何か呪文を唱えたかと思うと、突然ドリンが出現する。

 

「クローダスのブースト、ブラスター・ダークでアタック!(14000)」

 

「ノーガード!」

 

「ドライブチェック……厳格なる撃退者。クリティカルトリガーだ。パワーはタルトゥ(14000) クリティカルはダークへ!(14000 ☆2) さぁ、さっきのお返しだ!」

 

ブラスター・ダークが跳躍し、マロンに剣を振り下ろす。さらに着地と同時に、横なぎに剣を振る。2連撃をもろに食らってしまったマロンは、膝をつく。

 

「ダメージチェック。1枚目……スターコール・トランぺッター。2枚目……世界樹の巫女 エレイン。ここでヒールトリガーか……」

 

ヒールトリガーの出るタイミングが悪かった。これではダメージを回復することができない。

 

「……仕方ない。パワーはマロンへ!(13000)」

 

「ドリンのブースト、タルトゥでアタック!(21000)」

 

「ガードだ、ふろうがる!」

 

膝をつくマロンの前に、ふろうがるが立ちふさがる。が、タルトゥの剣に切り裂かれ、消えていった。

 

「ターンエンドだな」

 

 

ナオヤ:ダメージ2 ナツキ;ダメージ2(裏2)

 

 

「僕のターン、スタンドアンドドロー」

 

と、ナオヤさんはドローしたカードを見て少し口元を緩める。何かいいカードを引くことができたのか。

 

「ライドは……しないよ」

 

これには会場も騒然となる。ライドしないということは……手札事故。ヴァンガードにおいて、最も恐れられることだ。

 

けど、そうじゃなかった。それは、これからナオヤさんのコールするカードによって明らかとなる。

 

「ばーくがる(4000)をコール!さらに手札から、未来の騎士 リュー(4000)をコール!」

 

銀色の犬と、私も使っているリューの本来のクランでの姿が、荒野に登場した。

 

「ばーくがるのスキルで、自身をレストし、デッキからふろうがる(5000)をスペリオルコール!」

 

さらにピンクの毛の犬も、ばーくがるに導かれて現れる。この3体がそろうこと。それは、手札事故の概念を覆すことにつながる。

 

「危なかったよ。もう少しでライド事故するところだったからね。でも!リューのスキル発動!CB1、そして……ばーくがる、ふろうがる、リューをソウルへ!」

 

そしてナオヤさんはデッキから、1枚のカードを探し出す。確認したデッキはシャッフルし、元の場所に置いた。

 

「……このMFSを使ってファイトすると、いつも思うよ。僕にとって……大切な、かけがえのない存在が、目の前でファイトしてくれるんだから……!」

 

ナオヤさんは言っていた。今からライドしようとしているカードが、全てを変えるきっかけを生んでくれたと。その出会いがなかったら、ずっと絶望の中をさまよっていたかもしれないことも。

 

だから、ナオヤさんの嬉しさがわかる。私も、同じようにアルフレッドに救われたから。そんなアルフレッドを初めてMFSで見た時には、涙が出てしまったから。

 

「これが、僕にとってのつながり。いつまでも変わらない、僕の希望だ!」

 

「なら、見せてみろ。あんたのつながりって奴を!」

 

「うん!さぁ、行くよ!闇照らす希望の煌めき!絶望なき未来は……光り輝く剣と共に!スペリオルライド!!」

 

ばーくがるとふろうがるが吠え、リューが天に手をかざす。すると、一筋の光が降り注ぎ、3体とマロンを包み込む。

 

光が晴れた時、そこに立っていたのは……マロンではない。輝く白い鎧をまとい、その手には一振りの剣。勇気を力とするその剣をかざし、立ち上がる剣士の名前は……!

 

「ブラスター・ブレード!!(9000)」

 


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