本編長いので、前置きはこの辺に。その代わりに、後書きで話します。
では、どうぞ。
「さぁ、行くよ!闇照らす希望の煌めき!絶望なき未来は……光り輝く剣と共に!スペリオルライド!!」
ばーくがるとふろうがるが吠え、リューが天に手をかざす。すると、一筋の光が降り注ぎ、3体とマロンを包み込む。
光が晴れた時、そこに立っていたのは……マロンではない。輝く白い鎧をまとい、その手には一振りの剣。勇気を力とするその剣をかざし、立ち上がる剣士の名前は……!
「ブラスター・ブレード!!(9000)」
ナオヤさんのつながりが、今目の前に現れる。思わずナオヤさんには、笑みがあふれていた。
「ケイの後ろに、みるびる(6000)をコール!ういんがるのブースト、ブラスター・ブレードでアタック!(14000)」
「厳格なる撃退者でガード!」
トリガーが出たら、ガードは突破される。最上君にはデッキが見えているわけだから、ここでトリガーが出ることはない……。
「チェック、ブラスター・ダーク。トリガーなしか……。なら、みるびるのブースト、ケイでアタック!ケイは名前にブラスターを含むヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(16000)」
「こっちはノーガード。ダメージチェック、撃退者 ダークボンド・トランぺッター」
やっぱり、デッキが見えることは脅威でしかない。ナオヤさんがダメージで勝っているとはいえ、今のプレイングは完全にナオヤさんの動きを封じたものだった。
ういんがる・ぶれいぶのスキルは、ブラスターを含むユニットをブーストしたアタックがヒットすれば、自身をソウルに入れることで、デッキから新たなブラスターを手札に加えることができる。
でも、最上君はそれを阻止するために、ガードラインギリギリのところでガードした。それができるのは、アクセルリンクがあってのこと。
「みるびるのスキルで、手札を1枚捨ててドロー。これでターンエンド」
ナオヤ:ダメージ2(裏1) ナツキ:ダメージ3(裏2)
「なら、俺のターン!スタンドアンドドロー!黒き剣を振りかざし、己が理想を世界に描け!ライド・ザ・ヴァンガード!!幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム!!(11000)」
ブラスター・ダークの姿が、黒い天馬を操る騎士へと変わる。ブレイクライドのための下準備だ。
「クローダスのブースト、モルドレッドでアタック!スキルでパワープラス2000!(18000)」
「ノーガード!」
「ツインドライブ。ファーストチェック、督戦の撃退者 ドリン。セカンドチェック、氷結の撃退者。ドロートリガーだ。1ドローし、パワーをタルトゥへ(14000)」
「ダメージトリガーチェック……みるびる。トリガーなしだね」
「ドリンのブースト、タルトゥでアタック!(21000)」
「……これもノーガード」
モルドレッドとタルトゥがブラスター・ブレードを切りつける。一気に2ダメージを受けてしまい、ファイト的にもMFSの映像的にも痛ましい。
「ダメージチェック、幸運の運び手 エポナ。クリティカルトリガーだね。効果はブラスター・ブレードに与えるよ」
でも、これ以上のアタックはない。トリガーは不発となってしまった。
「……強いわね、最上は」
「けど、このまま終わることはないよ。ナオヤさんなら、きっと……」
「俺はこれでターンエンドだ」
ナオヤ:ダメージ4(裏1) ナツキ:ダメージ3(裏2)
「僕のターン、スタンドアンドドロー」
期待してはいるものの、状況があまりよくないのも事実だ。ダメージもそうだけど、手札の枚数、展開しているリアガードの枚数も劣っている。
何よりも、デッキを見ているかどうか。これが大きな格差となってくる。
「闇は静かに光を称え、光は闇を示しだす……交わる輝きよ、今こそ目覚めよ!ライド!マジェスティ・ロードブラスター!!(10000)」
ブラスター・ブレードの姿が変化していく。鎧は白と黒の混ざり合った、灰色に近いものへ。剣は刀身が光状のものへと変わる。
兜から燃え盛る炎は、勇気を象徴するかのように強く光を放っていた。
「スターコール・トランぺッター(8000)をコール!スキルでCB2、デッキからブラスター・ブレード(9000)をスペリオルコール!」
トランペットが鳴り響き、再び戦場にブラスター・ブレードが降臨する。
「そのトランぺッターの上から、ブラスター・ダーク(9000)をコール!トランぺッターは退却するよ!」
ブラスター・ダークと交代し、トランぺッターは役目を終えたと言わんばかりに消えていった。
「ダークで、タルトゥにアタック!(9000)」
「ノーガードだ。タルトゥは退却」
ブラスター・ダークがタルトゥに迫る。タルトゥも剣を抜いて迎え撃つが、競り負けてしまった。
シャドウパラディンでありながらロイヤルパラディン側につき、自分の本来属するクランと戦っている光景は、何とも不思議なものだ。
けど、ブラスター・ブレードとブラスター・ダーク。2体のブラスターが集うことで、マジェスティの真の力は発揮される。
「ういんがるのブースト、マジェスティでアタック!マジェスティのスキルで、リアガードのブラスター・ブレードとブラスター・ダークをソウルに入れることで、パワープラス10000!」
ブラスター・ブレードが白く、ブラスター・ダークが黒く輝き、やがてその姿は光となってマジェスティと1つになる。
「さらに、マジェスティのもう1つのスキル!ソウルにブラスター・ブレードとブラスター・ダークの両方がある時、常にパワープラス2000!クリティカルプラス1!(27000 ☆2)」
パワーはともかく、クリティカルが常に増え続けるのは、かなりのプレッシャーだ。
「ち……暗黒の撃退者 マクリールで完全ガード!コストは氷結の撃退者!」
「ツインドライブ!1枚目、友誼の騎士 ケイ。2枚目、世界樹の巫女 エレイン。ゲット!ヒールトリガー!!今度はダメージを回復できるね。パワーはケイに追加だ!(12000)」
強力なマジェスティのアタックは、マクリールが持ち前の盾で防いでみせた。だが、マクリールが立っている場所には、深く踏み込んだ跡が残っていた。
「みるびるのブースト、ケイでアタック!ブラスターを含む名前のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(21000)」
「……エアレイド・ドラゴン、氷結の撃退者でガード!」
「ここでガードを……?ターンエンド!」
ナオヤ:ダメージ3(裏2) ナツキ:ダメージ3(裏2)
「俺のターン、スタンドアンドドロー。さっき、俺がどうしてガードしなかったのかが気になってそうだな?」
「その通りだよ。ダメージを受けたら、リミットブレイクは発動する。ブレイクライドも使えたはずなのに、どうして……?」
そう。ケイのアタックをノーガードすれば、ダメージは4。しかも、マジェスティはこのファイト中はクリティカルが2。ダメージ3からノーガードすれば、クリティカルトリガーを引いた時点で終了だ。
つまり……マジェスティは、相手にリミットブレイクを使う機会を与えないようにファイトを進めることが可能になるユニットともいえる。
いくらデッキが見えているとは言っても、いつまでもそんな状態で続けてはジリ貧になってゲームオーバーになる。最上君はあえて、自分から危険な道を選んだことになる。
だとしたら……何のために?
「すぐにわかるさ。ドリンの前にブラスター・ダーク・撃退者(9000)をコール。ドリンのスキルで、同じ縦列にこいつがコールされたことで、ダメージを1枚表に」
ブラスター・ダークのスキルは未使用だった。退却できる対象の前列には、ケイしかいなかたからだろう。
「続けて、虚空の撃退者 マスカレード(9000)をコール!マスカレードで、マジェスティをアタック!撃退者のヴァンガードがいることで、パワープラス3000!(12000)」
「そうだな……ここは、エレインでガード!」
「クローダスのブースト、モルドレッドでアタック!スキルでパワープラス2000!(18000) ツインドライブ、ファーストチェック、撃退者 ダークボンド・トランぺッター。セカンドチェック、無常の撃退者 マスカレード」
マスカレードの大剣をエレインが受け止めるも、その横をモルドレッドが駆け抜け、マジェスティにすれ違いざまに斬撃を加える。
「く……!ダメージチェック、ふろうがる。ゲット!スタンドトリガー!!ケイをスタンドし、パワーはマジェスティへ!(17000 ☆2)」
「……だったら、ドリンのブーストでブラスター・ダークはケイにアタック!(16000)」
パワーが12000であることが、トリガーと相まって大きく影響している。ダークはケイをアタックするしかなくなったのだ。
「ノーガードだね」
「俺はこれでターンエンドする」
ナオヤ:ダメージ4(裏2) ナツキ:ダメージ3(裏1)
「僕のターン、スタンドアンドドロー!」
最上君の行動も気になるけど、これはナオヤさんにとって好機だ。上手くファイトを進めていけば、最上君にリミットブレイクを使わせずに済む。
それは恐らくナオヤさんもわかっているはずだ。だから、これからどう動くかを考えていることだろう。
「このファイト、まだまだ先がわからないな」
「そうっスね。押しているのは最上ナツキっスけど、状況を考えると、吉崎ナオヤの方が有利でもある」
「どっちにしろ、今は吉崎ナオヤのターンよ。このターンで何か動きがあるかもしれないわ」
「そうだね……。頑張って、ナオヤさん」
互いに均衡した状況。それを崩すために、ナオヤさんが動き出す。
「みるびるの前に、マジェスティ・ロードブラスター(10000)、続けて友誼の騎士 ケイ(7000)をコール!」
最小限のアタッカーを確保してきた。リミットブレイクを打たせないためには、ダメージを与えに行くスタイルではいけない。これくらいが妥当だ。
「ケイでマスカレードをアタック!スキルでパワープラス3000!(10000)」
「ノーガード」
「次!ういんがるのブーストで、マジェスティ・ロードブラスターアタック!(17000 ☆2)」
普通にダメージを受けたら、最上君のダメージは5で収まる。けど、クリティカルトリガーを引けば、その瞬間に敗北が確定する。
要は、ダメージ4の時点でヴァンガードのアタックをガードするかしないか……という場面に似ている。けど、デッキが見えている最上君には、駆け引きにすらならないわけで……。
「……ノーガード!」
「ガードしない……。賭けに出たってところかな?」
「そういうことだ。さぁ引いてみろ、吉崎ナオヤ!クリティカルトリガーを!」
口ではこう言ってるけど、ノーガードしたということは……そういうことなのだろう。
「わかった。なら、引いて見せる!ツインドライブ!1枚目、ブラスター・ダーク」
トリガーではない。なら、2枚目もトリガーではないか。いや、クリティカル以外のトリガーが出ることもある。あるいは……。
「2枚目……!幸運の運び手 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!!パワーはリアガードのマジェスティへ(15000) クリティカルはヴァンガードのマジェスティへ!(22000 ☆2)」
ホール内は歓声に包まれる。重要な場面で見事にトリガーを引いて見せたのだから。でも、私たちの反応は違っていた。
「……まだね」
「あぁ。俺でも、この先の展開がわかるぞ」
「私、あの戦術破ったんだけどな……」
初ファイトの人だから使ったってことなのかもしれないけど。けど、これで答えは1つ。
「……引いたか。なら、俺もヒールトリガーを引き、持ちこたえるだけだ!」
「……わざとらしいわ」
「だよね」
「この言われようっスからね。後で話せる機会があれば、今の話するっスか」
それはそれで面白いかも。
「ファーストチェック、暗黒の撃退者 マクリール。セカンドチェック、黒衣の撃退者 タルトゥ」
最上君がダメージゾーンにカードを置くたびに、マジェスティの刃がモルドレッドに傷をつけていく。そして、3度目の刃がモルドレッドに差し迫りーー!
「サードチェック!……暗黒医術の撃退者。ヒールトリガーだ!!」
これには観客も驚きを隠せない。まさかヒールトリガーを引き当てるとは思ってもみないだろう。
「ダメージを1枚回復、パワーはモルドレッドだ!(16000)」
マジェスティの刃は、モルドレッドの手前で暗黒医術の撃退者に防がれる。マジェスティが下がったのを確認し、暗黒医術はモルドレッドの回復を始めた。
「く……!まさか、本当にヒールトリガーを引かれるなんて思ってなかったよ。けど、ういんがる・ぶれいぶのスキル!」
ういんがるが吠え、口にくわえた剣が光を放つ。
「ブラスターを含むユニットをブーストしたアタックがヒットした時、自身をソウルに入れて、デッキから……ブラスター・ブレードを手札に!」
ドライブチェックでブラスター・ダークは手札に入っている。マジェスティのスキルを再び使うために、この選択をしたということか。
「みるびるのブースト、マジェスティでアタック!(21000)」
「無常のマスカレードでガード!ブラスター・ダークでインターセプト!」
「ターンエンド。まさか耐えられるなんてね。前に女の子の友達とファイトした時のことを思い出すよ」
それって……私のことだ。アクセルリンクを発動し、ヒールトリガーで次につなげた、あの時の……!
ナオヤ:ダメージ4(裏2) ナツキ:ダメージ5
「俺のターン、スタンドアンドドロー。さて、かなり危なかったが、さっきのプレイングを見る限りは……ここが仕掛け時だな」
「ここで来るんだね」
「あぁ!竜の息吹は時を超え、受け継ぐ想いは常に変わらず!ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン!!(11000)」
モルドレッドの足元にサークルが出現し、その姿を荒々しい竜へと変化させていく。
「見せてやろう。あの時ノーガードしなかったわけをな!」
一体狙いはどこにあったのか。それが今、明らかになる。
「ブレイクライドスキル!CB1、レイジングフォームにパワープラス10000!(21000) さらにデッキから、ブラスター・ダーク・撃退者(9000)をスペリオルコール!パワープラス5000!(14000)」
「ダークをコール……うん。何となく、狙いがわかったよ」
「このプレイングだけで読み切るとは。さすがは世界レベルだ。ドリンのスキルで、同じ縦列にブラスター・ダーク・撃退者がコールされたことで、ダメージを1枚表に。これでブレイクライドのスキルは帳消しだ」
私にも、多分わかった。最上君のしようとしていたことが。でも、これって……。
「続けてダークのスキル!CB2、マジェスティを退却!」
「くっ……!」
「手札から督戦の撃退者 ドリン(7000)をコールし、クローダスのスキル!CB1、自身をソウルに入れて、デッキからブラスター・ダーク・撃退者(9000)をスペリオルコール!もちろん、今コールしたドリンの前だ!」
これでまた、さっきと同じコンボが発動する。
「ドリンのスキルで、ダメージを1枚表に。ダークのスキルで、ケイを退却。これでリアガードは潰したぞ」
「やっぱり。狙いは僕のリアガードを減らすことだね。ブラスターデッキは、構成上、あまりリアガードの展開に特化していないからね」
「それに、スキルを使い終わったマジェスティなど、単体パワー12000のアタッカーでしかない。クリティカルが増える利点を活かせるのも、こちらのダメージが少ない時だけだ」
ブラスターデッキ、特にマジェスティを主体にするデッキは、グレード2の枠をブラスター・ブレードとブラスター・ダークでほとんどを占めてしまう。なので、他にリアガードをそろえやすくするためのパーツを入れにくい。
一応、グレード3の相方にアルフレッド・アーリーや……私のつながりでもある、騎士王 アルフレッドなどを入れることでカバーはできる。
でも、全体的に見てもブラスターデッキは構成が固定化されてしまうところに弱点がある。だから、あながち最上君の策は間違いではない。
けど、今回の最上君の策は、無理やり押し通している部分が強い。だって、今の話なら別にあの時ノーガードしていても、この状況になったはずだから。ヒールトリガーを引いて危険な橋を渡ることもなかったはずなのに。
「正しいように聞こえるけど、やっぱり狙いが別にあったようにしか思えない……」
「えぇ。あいつの狙い、多分わかったわよ」
「俺もだ。わかれば納得だったがな」
あれ、2人共わかったの?佐原君は考えるのを諦めてるみたいだけど……。
「あの時最上がガードしたのが気になって、奴の手札をのぞいてみたんだ。そうしたら……」
「その時の手札にグレード3はなかった。そして次のターン、最上ナツキのターンでドローしたのは……撃退者レイジングフォーム・ドラゴンだったのよ」
「え、じゃあ……!?」
本当の狙いは、ブレイクライド先の確保……。あの時ノーガードしていれば、ダメージにはレイジングフォームが入っていたから、それを手札に加えるため……。
しかも、最上君はこのターンになるまでグレード3を引いていない。手札にもダメージにも、全くない。
「……だったらデッキをシャッフルするなりして、カードの並びを変えたらよかったんじゃない?クローダスなら、スキルを使えばデッキを自動的にシャッフルすることになる」
「シャッフルしても、グレード3は来ないと踏んだんだろ。確定じゃないみたいだし、あくまであいつは……デッキの中身が見えるだけなんだろ?」
不確定にデッキをシャッフルして賭けるのと、確定しているカードをドローするのと、どっちがいいかと言われたら後者に違いない。
「みんなさっきから何の話っスか?ファイト見なくてもいいんスか?」
そうだ、ファイトだ。謎も解けたし、今はファイトを見ることにしよう。
「レイジングフォーム・ドラゴンの後ろに、撃退者 ダークボンド・トランぺッター(6000)をコール!ドリンのブースト、右のブラスター・ダークでアタック!(16000)」
「……仕方ない。ブラスター・ダークでガード!
2体のブラスター・ダークが剣を交える。両者は互角の戦いを繰り広げていたが、ドリンが加勢したことで均衡が崩れる。
「ダークボンドのブースト、レイジングフォームでアタック!(27000)」
「…………」
今度はナオヤさんが、ガードするかを迫られている。ナオヤさんの手札は残り3枚。内2枚は、ブラスター・ブレードとエポナだ。残り1枚は何かわからないけど、その2枚だけでは守れない。
安易にノーガードするにも、クリティカルを引かれたら終わりだ。それにレイジングフォームには、撃退者のリアガード3体を退却させて、手札のレイジングフォームにライド。再アタックするリミットブレイクがある。
様々な脅威がある中、ナオヤさんの取った選択は……。
「……僕もトリガーを信じるよ。ノーガード!」
「そうか。……ツインドライブ!ファーストチェック!」
相手のトリガーが出ないことを信じるのか、自分のトリガーが出ることを信じるのか。どちらかはわからない。
けど、トリガーを信じてノーガードしたナオヤさんの想いは……。
「……撃退者 レイジングフォーム・ドラゴンだ」
ある意味で当たり、ある意味で外れていた。
「セカンドチェック、虚空のマスカレード。トリガーはないが……」
「これでもう1度、アタックが来るってことだね」
そうなると、残る2回のアタックを防げるかどうかわからなくなってくる。まさか、最上君がこのまま勝つ……!?
「……ダメージチェック。ふろうがる。ゲット!スタンドトリガー!!みるびるをスタンドして、パワーはマジェスティへ!(17000 ☆2)」
いや、このトリガーは大きい。まだわからないか……!?先が読めないな。
「だったらレイジングフォームのリミットブレイク!既にレストしたドリン、同じくレストしたブラスター・ダーク。そしてダークボンドを退却させる!」
これで準備は整った。後は手札から……レイジングフォームにライドするだけだ。
「竜の息吹は時を超え、受け継ぐ想いは常に変わらず!スペリオルライド・ザ・ヴァンガード!撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン!!(11000)」
ドリンとダーク、ダークボンドがサークルを作り、レイジングフォームの姿が黒いサークルに吸い込まれていく。そこから再び、レイジングフォームが姿を現した。
「リミットブレイクによりライドしたレイジングフォームには、パワープラス10000!(21000)」
「さっきとパワーが変わらないのか……」
「行け、レイジングフォーム・ドラゴン!スキルでCB1、パワープラス3000!(24000)」
ダメージトリガーでパワーが上がっているとは言え、状況が悪いことに変わりはない。もうノーガードはできないから、ガードするしかない。けど……。
「ナオヤさん……」
レイジングフォームが空高く飛び上がり、咆哮を放つために力をためる。マジェスティは、ただその光景を見ていることしかできない。
やがて、その咆哮が一気に眼下のマジェスティに撃ち放たれてーー。
「……まだ、終わりじゃないよ!閃光の盾 イゾルデで完全ガード!コストはブラスター・ブレード!!」
「なっ!?残りの1枚はイゾルデだったか……!」
マジェスティの上空で腕を突き出し、盾状に変化させて受け止める。だが、すぐそこにはもう1体のブラスター・ダークが迫っている。
「……ちっ!ツインドライブ!ファーストチェック、撃退者 エアレイド・ドラゴン。クリティカルトリガー!効果は全てブラスター・ダーク!(14000 ☆2) セカンドチェック、幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム」
それでもしっかりトリガーは引いてくるか。けど、このアタックは通らない。
「ドリン、ブースト!ダークでアタック!!(26000 ☆2)」
「エポナでガード!」
ダークが死角から剣を薙ぎ払う。が、切っ先が捉えたのは、エポナだった。
「これでも世界で戦ってるんだ。そう簡単に勝ちを譲るほど、僕は甘くないよ!」
「そうか……ターンエンド」
ナオヤ:ダメージ5(裏2) ナツキ:ダメージ5(裏5)
「僕のターン、スタンドアンドドロー!」
何とかナオヤさんは耐えたけど、状況は深刻だ。リアガードは左後列のみるびるだけ。手札はこのドローで得た1枚だけ。
最上君の手札は4枚。インターセプトも1回は使える。正直、このターンでナオヤさんに勝ち目があるかと言われたら……ない。しかもこのターンを逃せば、次のターンで最上君は確実に決めてくるだろう。
まさに絶望。そう言うしかないほどに、ナオヤさんは追い詰められていた。
「もう無理っスかね……?」
「まさか、最上が勝つのか……!?」
観客にも、悲観の色が見え始めていた。このファイトの決着は、ほぼついたと。
「そもそもの条件が違いすぎるのよ。デッキが見えるなんて、そんなのどうやって勝てばいいのよ」
ナオヤさんですら、この理不尽極まりない力には抗えないのか。誰もが絶望し、諦めていた中、ナオヤさんは……。
「……笑ってる」
それでも、ナオヤさんの顔は……絶望を感じないほどに楽しんでいるように見えた。見ているこっちも、わずかな希望を見出せるかもしれないと思うほどに。
「嬉しいよ、最上君。こんなにハラハラしたファイトができるなんて、思ってもみなかった!」
「そう言ってもらえるのは、俺も満足だ」
「君のファイトは、やっぱりあの時のファイトを思い出させるよ。アルフレッド使いのファイターとの、興奮が止まらないファイトを!」
……そんなこと言ってくれるなんて、嬉しくて仕方ないよ。
「ありがとう……ナオヤさん」
多分聞こえてはいないけど、私に目標をくれたあなたに、改めて感謝の言葉を。
「このファイト、本当に最高だよ!だから、僕の感謝を君にぶつける!これが、僕の全力だ!!」
そう言うと、ナオヤさんはドローしたカードを天に掲げる。まさか、ここから新たなるユニットにライドするというの……?
「忘却の彼方、絶望の果て……希望なき世界に生まれる、昏き世界を描き換える光!ライド!!」
マジェスティの足元にサークルが現れる。そのサークルの輝きがマジェスティを包み、やがて天空へと一筋の光が上る。
光は雲を裂き、その割れ目から舞い降りる白銀の戦士。観客も、私たちも、その神々しさに目を奪われる。
まさに、希望。そのユニットは、絶望を救う存在……。
「エクスカルペイト・ザ・ブラスター!!(12000)」
光を放ちながら、レイジングフォームを見下すエクスカルペイト。レイジングフォームは、ただ見上げることしかできない。
「エクスカルペイト・ザ・ブラスターは、グレード3のロイヤルパラディンがヴァンガードじゃないとライドできない。それに、ソウルにブラスター・ブレードがいないとアタックもできない。でも、その条件はどっちもクリアしている!」
デメリットが目立つユニットのため、使い勝手は難しい。でも、今この瞬間だけは、窮地を救う希望となる。
「ここで来てくれるなんて、本当に嬉しいよ……。さぁ、行くよ!」
「くっ……!」
デメリットのせいで使える場面が限られた特殊なユニット、エクスカルペイト・ザ・ブラスター。けど、引き換えに強力なスキルを持っている。
「エクスカルペイトのスキル!CB3、これでエクスカルペイトは、相手ユニット全てにアタックできる!」
似たようなスキルに、ドラゴニック・カイザー・ヴァーミリオン等のリミットブレイクがある。けどあれは、前列全てにアタックできるものだ。
このスキルは、後列も含めたユニット全てにアタックできる。他に類を見ない、驚異的なスキルだ。
「みるびるを前に。エクスカルペイト・ザ・ブラスターで、全てのユニットにアタック!!」
けど、全てのユニットにアタックできるといっても、パワーは12000。少し心持たない。が、エクスカルペイトにはもう1つスキルがある。
「エクスカルペイトのスキル!アタックする時、ソウルのブラスター・ブレード以外のカードを全てドロップゾーンに置くことで、置いたカード1枚につき、パワープラス2000!」
今、ナオヤさんが捨てるカードは、ういんがる・ぶれいぶ。マロン。ばーくがる。ふろうがる。リュー。ブラスター・ダーク。マジェスティ・ロードブラスター。よって7枚。
「置いたカードは7枚!よって、パワープラス14000!(26000)」
エクスカルペイトの両腕から、剣状に光が迸る。その光を振り下ろすと、光はダークを、ドリンを、そしてレイジングフォームを包んでいく。
「……エアレイド・ドラゴン!マスカレード!氷結の撃退者でガード!トリガー1枚だ!!」
3体のガーディアンが、光の手前でレイジングフォームを守る。本来はダークもインターセプトできたが、アタックされているユニットが別のユニットを守ることはできない。だからこそ、危険な道を選ぶしかなかった。
そして、最上君の悔しげな表情が、このファイトの結果を物語っていた。ということは……。
「ツインドライブ!1枚目……アルフレッド・アーリー」
1枚目はトリガーではない。
「2枚目……!」
深呼吸し、祈りをこめてカードを引く。その動作に反応し、ファイトテーブルの色が……黄色く輝く。
「……幸運の運び手 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てエクスカルペイト・ザ・ブラスターへ!!(31000 ☆2)」
エクスカルペイトの光が輝きを増し、光を食い止めていたエアレイド・ドラゴンたちをはねのける。そのままレイジングフォームを包み込み、残ったのは……エクスカルペイト。
その姿も、だんだんと変わっていく。地面へと降り立った時、そこにはブラスター・ブレードがいた。
エクスカルペイトには、スキルの反作用としてアタック終了時にソウルのブラスター・ブレードに強制的にライドしてしまう。つまり、決められなかったらヴァンガードが弱体化する。まさに諸刃の剣だった。
けど、ナオヤさんは見事にアタックを通してダメージを与えた。後は、最上君がダメージチェックを行うのを待つだけ。
「……残念だ。後一押しだったが、ここまでか」
ダメージに置かれたのは、トリガーだった。反応したファイトテーブルが……黄色く輝く。
「2度も奇跡は起きないか。俺の負けだ」
映像が消え、フィールドに残っていたブラスター・ブレードの姿も消えていく。名残惜しそうにしていたナオヤさんだったけど、すぐに気持ちを切り替えたみたいだった。
『決着!スペシャルエキシビションマッチの勝者は……吉崎ナオヤさんです!』
司会者の声がホール内に響き、歓声が轟く。それに応えるように、ナオヤさんは手を振るのだった。
はい、というわけで、エクスカルペイト・ザ・ブラスターでした。
先に言っておきますと、今回語ったブラスターデッキの特徴はあくまで個人的な意見なので鵜呑みにしないでくださいね。
さて……今回活躍したエクスカルペイトですが、リメイク版が登場することが確定してますね。しかも100円ブースター。1パック2枚入りという。
再録多数のため、賛否両論みたいですが……新シリーズのカードに一切手を出していないので、個人的には大有りです。
なので……手を付ける気はなかったんですが、買おうかな〜と考えていたり。100円というのも、買いやすい値段なので。
と、エクスカルペイトつながりでこんな話になりましたが、次回もお楽しみに!