私は全国を目指すことになった。森宮さんと佐原君、2人に誘われ、私は2人のチームに入ることになったからだ。
その傍ら、2人のファイターによるファイトが始まろうとしている。1人は森宮さん、もう1人は……小沢君。
なんだけど……。
「……あの、2人とも、もしかしてここでするの?」
今いる場所は体育館裏。地面にカードを置いてなら、ファイト出来ないこともないけど……そんなところでしようとは思わない。
「……リサさん、俺でも地面でファイトしようとは思わないっスよ」
「……わかってるわよ。もちろん場所は移動するわ」
「あー俺、ここでするのかと思ってたんだけど……」
「「「…………………」」」
小沢君……本当に?
***
で、私達はサンシャインに来た。
「……ワタルとあの女の子、一体何があったの?」
2人の尋常じゃない気迫を見て、店長が私に尋ねて来る。
「ちょっと色々あって……」
「実力を測るためのファイトっスよ」
「ん?君は……」
「佐原トウジっス。この前はお世話になったっスね」
「あぁ、あの時の!」
そう言っている間に、2人は手札の引き直しも終えてファイトを始めようとしていた。
「シオリさん、どうやら始まるみたいっスよ」
「そうみたい。じゃあ私達は観戦していようか」
***
「始めるわよ」
「いつでも!」
全国か……!目指したいとは思ってたけど、チームに入れて貰えるなんて!
……けど、早々に実力を見るためにファイトって……。まぁ、ファイト出来るから文句はないけど。
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
「リザードソルジャー コンロー!(5000)」
「士官候補生 エリック!(4000)」
アクアフォースか……。確か連続攻撃するクランだったはず。
「私のターンから、ドロー。アクセラレイテッド・コマンド(6000)にライド!エリックは後ろへ。ターンを終えるわ」
「俺のターン、ドロー!ドラゴンモンク ゴジョー(7000)にライド!コンローはそのまま後ろへ。続けて、希望の火 エルモ(6000)を右前、魔竜導師キンナラ(6000)を左前にコール!」
森宮さんのヴァンガードはパワーが低い。この隙に多くダメージを与える!
「エルモでアクセラレイテッドをアタック!(6000)」
「ノーガード。ダメージチェック……虹色秘薬の医療士官、ヒールトリガー!パワーはアクセラレイテッドへ。(11000)
「……なっ!」
これじゃあキンナラのアタックが通らない!……いや、まだトリガーが出る可能性がある。
「コンローのブースト、ゴジョーでアクセラレイテッドを!(12000)」
「バトルシップ・インテリジェンスでガード」
「ドライブチェック!……バーニングホーン・ドラゴン、トリガーなし……」
……トリガーさえ出ていなければ、次のキンナラのアタックはヒットしたかもしれないのに……。
「ターンエンド!」
まだ1ターンたっただけだ。気持ちを切り替えよう。
ワタル:ダメージ0 リサ:ダメージ1
「私のターン、ドロー。ストームライダー バシル(8000)にライド!ティアーナイト ラザロス(10000)をコール。さらにバシル(8000)をもう1体」
……?なんでラザロスにライドしなかったんだろう?バシルの方がパワーが低いのに……。
「ラザロスで、キンナラをアタック!(10000)」
「キンナラ!?……ノーガード」
「リアガードのバシルでエルモにアタック!エリックのブーストをつけるわ(8000)」
「……また、リアガードを」
俺の手札は、グレード2か3のカードしかない。このアタックをガードすることは……。
「……ノーガードするよ」
「ヴァンガードのバシル、ゴジョーへ!(12000)」
「ノーガード!」
「ドライブチェック、バトルシップ・インテリジェンスね。クリティカルトリガー!効果はバシル!(17000 ☆2)」
くそ……!しかも、ドライブチェックできっちりクリティカルトリガー引いて来たし……!
俺のダメージにはワイバーンガード バリィと、ドラゴニック・オーバーロードが入る。
「……ターンエンド」
ワタル:ダメージ2 リサ:ダメージ1
***
「……ねぇ、佐原君。どうして森宮さんはラザロスじゃなくてバシルにライドしたの?」
「あれは……リサさんの作戦っスね」
「……どういうこと?」
「低めのパワーのユニットにライドする、それはすなわち、相手のアタックを通しやすくすることになる。……ここまではいいっスか?」
「うん」
「リサさんはそのことを逆に利用して、低いパワーのユニットにアタックを多くヒットさせようとコールしたユニットを、次のターンで倒していくつもりなんスよ」
「……え~っと、要するに?」
「相手に手札を使わせること……っスかね?」
パワーの高いユニットを相手に、序盤からリアガードを展開しようとは思わないが、低いユニットが相手なら、パワーの低いユニットを展開してまでもダメージを与えるだろう。
森宮さんは、その思考を利用し、わざとパワーが低いユニットにライドしておくことで、展開したリアガードを次の自分のターンで倒す。それは間接的に、相手に手札を使わせることにもなる。
「……まぁ、小沢君がそれに対抗できることが、このファイトの中でまずしないといけないことっスね」
***
「……ライド!ドラゴンナイト ネハーレン!(10000)」
森宮さんがなんでバシルをヴァンガードにしたかは知らないけど、さっきと同じくチャンスだ。
「コール!バーニングホーン・ドラゴン、(9000) ベリコウスティドラゴン!(9000) ベリコウスティで、ヴァンガードをアタック!(9000)」
「ダメージチェック。輝石通信のラッコ兵、ゲット、ドロートリガー!パワーはリアガードのバシルへ。(13000)1枚ドローするわ」
せっかくのダメージトリガーの効果を、リアガードのバシルへ?
「ネハーレン、コンローのブーストで、ヴァンガードをアタック!(15000) ドライブチェック!槍の化身ター、クリティカルトリガー!パワーはバーニングホーン、クリティカルはネハーレンへ!」
「ダメージチェック、1枚目、ティアーナイト キプロス。2枚目、翠玉の盾 パスカリス。どちらもトリガーなし」
「バーニングホーンで、ヴァンガードへ!(14000)」
「ガード、バトルシップ・インテリジェンス」
「ターンエンド」
ワタル:ダメージ2 リサ:ダメージ4
「……私のターン、スタンドアンドドロー」
と、ここで森宮さんが、
「あなたって……本当に乗せられやすいのね?」
「な……何!?」
「低いパワーのユニットでリアガードをコールを誘ったり……さっきのトリガーも、ヴァンガードに攻撃させるように、わざとリアガードにパワーを与えたり……」
……言われてみれば。じゃあ、ここまでは森宮さんの想定内!?
「チームに入れないとは言わない。弱いって言うつもりもないけど……こんなことに乗せられるようじゃ……はっきり言ってまだまだよ」
……図星過ぎて言い返す言葉も見つからない。
「よく考えてみなさい。あなたが乗せられ、ヴァンガードにアタックし続けた結果、私のダメージが今何枚になっているかを」
森宮さんのダメージの枚数?1、2、3……
「……まさか!?」
「スタンドアンドドロー!ライド!蒼嵐竜 メイルストローム!!(11000)」
森宮さんのダメージは4枚……このターン、リミットブレイクが発動する……!
「バシルの後ろにメイルストローム(11000)をコール。……さぁ、覚悟しなさい。まずはバシルでネハーレンをアタック!スキルで、このターン1度目のアタックにより、パワープラス2000!(10000)」
「単体でパワー10000を……ガード!ネハーレン!!」
「バシルのスキルで、後列のメイルストロームと位置を入れ換え、リアガードのメイルストロームでネハーレンをアタック!(11000)」
「ノーガード、ダメージは……ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド」
「ラザロスでネハーレンを!(10000)」
「……っ!ターでガード!」
不味い。いや、不味い以外の何物でもない。もう俺の手札は……1枚だけ。
「エリック、ブースト……メイルストローム!ネハーレンをアタック!!この時、4回目以降のアタックにより、メイルストロームのリミットブレイク発動!!パワープラス5000し、(20000) ヒット時スキルを与える!」
「……ノーガード!」
「ツインドライブ、1枚目……蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム。2枚目……スーパーソニック・セイラー、ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てメイルストロームへ!」
「……くそっ、ダメージチェック、ベリコウスティドラゴンと……ドラゴンモンク ゲンジョウ、ヒールトリガー!ダメージ1枚回復して、パワーをネハーレンへ!(15000)」
ヒールトリガーが出たのは本当幸いだ。このまま5ダメージなんてことになったら……不味かった。
「安心している暇はないわよ。メイルストロームのリミットブレイクで得た、ヒット時スキル発動!CB1で、1枚ドロー。さらにバーニングホーンを退却!」
ドローした上に退却か……このターンだけで、かなりの差を広げられたな……。
「ターンエンド」
ワタル:ダメージ4 リサ:ダメージ4(裏1)
「俺のターン!スタンドアンドドロー!……森宮さん」
「何かしら?」
「さっき言ったよね?俺には強さが足りないって」
「……まぁ」
「俺にはまだ、強さは全然ない。けど、全国を目指したいって気持ちは十分にある!今は強くないかもしれないけど、ファイトの中で強くなる!」
強さが足りないのなら、いくらでも改善できる。それこそ、チームに入って3人と腕を磨きあうとか、そんな風になれたら、もっと強くなれる。
「だからその気持ち……このターンでぶつける!終焉を告げる灼熱の龍!秘めたる闘志を解き放て!!ライド!ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド!!(11000)」
強さは見せられないかもしれないけど、思う以上の気持ちなら見せられる!
「コンローのスキル!CB1、自身を退却させ、デッキからバリィを手札に!ジ・エンドで……アタック!!(11000)」
「スーパーソニック・セイラーでガード!」
トリガーを引く……!
「ドライブチェック!1枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド、ゲット!クリティカルトリガー!効果は……ジ・エンドへ!(16000 ☆2)」
「ここでジ・エンドに?いいの?セカンドチェックでトリガーが出なかったら……」
「……このアタックは、ただのアタックじゃない。ヒットするとかしないとかじゃなく、気持ちをぶつけるためのアタック!」
トリガーが出る、アタックがヒットする、それ以上の意味を持つアタック……!
「2枚目!……ドラゴンモンク ゲンジョウ、ゲット!ヒールトリガー!!ダメージを1枚回復し、パワーはジ・エンドへ!!」
「……引いたわね」
ガードをすり抜け、リサにダメージが入る。
「……ダメージチェック、1枚目、ティアーナイト テオ」
後1枚……!
「……2枚目」
トリガー、来るな!!
「……本物ね。まさかここでダブルトリガーを引くなんて。でも、それがファイトの勝敗につながるとは限らないわ……虹色秘薬の医療士官、ヒールトリガーよ」
ここで……ヒールトリガー!?
「ダメージ回復……パワーはメイルストロームへ」
「そんな……ターンエンド」
ワタル:ダメージ3 リサ:ダメージ5
「じゃあ、そろそろ終わりにするわ。……スタンドアンドドロー。クロスライド!蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム!!(11000)」
ここでグローリーか……。
「クロスライドスキル、ソウルにメイルストロームがいれば、パワープラス2000!(13000) エリックを退却させ、戦場の歌姫 ドロテア(6000) そして、アクセラレイテッド・コマンド(6000)をコール!アクセラレイテッドのスキルで、バシルにパワープラス2000!(10000)」
どんどん場が整っていく……。
「バシルとメイルストロームの位置を入れ換え、バシルでアタック!スキルで、1回目のアタックなら、パワープラス2000!(12000)」
「インターセプト!」
「バシル、メイルストロームと位置を入れ換え!アクセラレイテッドのブースト、ラザロスのアタック!(16000)」
「ノーガード……!」
ダメージトリガーは……ドラゴンナイト ネハーレン。くっ!ない!
「……ドロテアのブースト、グローリー・メイルストロームでジ・エンドをアタック!ドロテアのスキルで、3回目以降のアタックをブーストしているなら、パワープラス4000!(23000)」
パワー23000……。いや、グローリーにはまだここから強力なスキルを発動できる!
「そして、グローリーのアルティメットブレイク!CB1。パワープラス5000し、グレード1以上でガード出来ない!(28000)」
じゃあ、手札の完全ガードは使えない……!
「ブルーレイ、ゲンジョウでガード!トリガーは……1枚出たら突破!」
「じゃあ、私も気持ちを見せるわ。……トリガーを引くことで!ツインドライブ!!」
森宮さんはゆっくりとドライブチェックを始める。
「1枚目、蒼嵐竜 メイルストローム……2枚目、バトルシップ・インテリジェンス、ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てグローリーへ!(33000 ☆2)」
「くっ……!」
ただのトリガーじゃない……気持ちが応えたトリガー……。今の状況で最も必要なクリティカルトリガーを引いて来るなんて……。
しかも、森宮さんは序盤からクリティカルトリガーを多く使っている……。デッキの残りから考えても、引くのは難しかったはずだ。
「……ダメージチェック!」
なら、俺も残り少ないヒールトリガーを6枚目に引くだけだ!
「1枚目……ドラゴンモンク ゲンジョウ。……ここでヒールトリガー……」
今ヒールトリガーが発動しても、ダメージは森宮さんより多くないから、ダメージを回復できない……!
「2枚目……希望の火 エルモ。トリガーは……ない」
***
「ヒールトリガーさえ引かれなければな~!」
「でも、気持ちは本物よ。他のチームに手渡すのはもったいない程に」
「お……俺のことをそこまで……!」
「……でも、ファイトの腕はこれからみっちり鍛えてあげるわよ。覚悟しなさい?」
「……わかった」
小沢君は、気持ちの面で評価を貰えた。ただ、強さの面はまだまだみたいで、これからの成長を期待するだけだ。
「じゃあ、ファイトも終わったし……リサさん!これで、晴れてチーム結成っスね!」
「そうね。……ここまで長かった。ようやくスタート地点に立てたわ」
森宮さんは、色々と思いを巡らせているように見えた。本当に色々あったのだろう。
「……ありがとう。シオリさん、そして小沢君。私達のチームに入ってくれて、本当に感謝するわ」
「そう言って貰えると嬉しいです」
すると、そこに佐原君が、
「じゃあ、今からチーム結成の記念に何かしよーっス!」
「今から!?」
と言っても、時刻は5時過ぎ。時間はあった。
「どっかの店でパーっとするとか、そんなの!」
「……トウジ、言い方がオヤジくさいわよ。それに、今お金使ったら、封竜解放のブースターが出た時に買えなくなるわよ?」
「あっ、確かに」
……じゃあどうするものか。
「普通に缶ジュースとかで乾杯!……じゃダメなの?」
「……まぁ、この状況なら、それが妥当っスかね?」
「じゃ、おじさんに頼んで来るよ」
小沢君はおじさん=店長にジュースを貰いに行くように頼みに行く。
「「……おじさん?」」
「ここの店長、小沢君の知り合いみたいで……」
「はい、缶ジュース。ちょうど4つあったよ!」
私達は缶を開け、前に掲げる。
「じゃあ……リサさん!何か一言!」
「そうね……。じゃあ……今日と言う日を、私達の中の特別な日として、永遠に忘れないために……乾杯!」
「「「乾杯!!」」」