本当は2話くらいで簡単に済ませようと思ってたんですが……想像よりも長くなりそう。クリスマスカップまで、まだ話数かかりそうです。
でも、その分ファイトは取り入れていきたいと思うので、ご期待を。とか言いながら、今回ファイトはないんですね……。
では、どうぞ。
「フッフッフ……。我は今求める!貴様の血肉を、そして絶望を!!」
「せ、正義が悪に屈するなど……!」
「そのような筋書きがまかり通ると、一体いつ、誰が決めたのだ?こいつでお前も、世界も……終わらせてやるわ!!」
「ぬ……ぐわぁぁぁ!!」
向かい合うヒーローと悪の親玉が、互いに熱戦を繰り広げている。だが、悪の親玉の力は強大で、ヒーローは力尽きてしまう。
手に持つカードを地面に落としながら、うつ伏せに倒れこんでしまった。
「アーッハッハッハ!所詮、光は闇に飲まれるもの!我が屈することはないのだ!」
「く……っ、そんなことは、ない……っ!」
倒れたヒーローが、互いを隔てる台に手をつき立ち上がる。その台で行われていたのは、ヴァンガード。
「この程度で……正義は屈しない!お前を倒すまで、私は何度でも這い上がって見せよう!!」
『こうして、正義のヒーロー、ヴァンセイバーの戦いは続く……』
ナレーションが入り、舞台が暗転する。その間に、ヒーローと悪の親玉は退場していく。
お気づきかもしれないが……今日は文化祭のリハーサル。学年ごとに体育館を使い、劇の通し練習をすることになっていた。
「なかなか面白いわね。あいつのクラスの劇」
「うん。ファイトに時間は使うけど、特撮だから内容は簡潔に纏められる。その分、ファイトに重点を置いて、戦闘要素を演出しているんだね」
「星野……。何だか評論家みたいだぞ……」
前にも言ったと思うけど、これでも映画好きでね……。だから、ついそう言う目で見てしまうんだよね。
「てか、何であいつが悪役なんだよ」
「あぁ言うのに憧れてたりするんじゃない?子供っぽいし」
「はまり役だと思うし、いいんじゃないかな……」
そうしている間に、次のクラスの劇が始まる。どうやら、このクラスはミュージカルをするみたいだ。思い切った選択だな……。
私たちのクラスの練習は、このミュージカルの後。学年のラストを飾る、重要なポジションにいた。
「でも、よく通ったわね、あの意見」
「ヴァンガードも認知度があるし、実際面白いと思ったからだろ」
そう。私たちのクラスの発表は、この前提案したヴァンガードと青春のストーリーになった。一応ダメ元だったけど、思いの他評判は良く、満場一致でOKされた。
やっぱり、人気があるって大切なんだな……。
「ふぃ~疲れたっスよ……」
「あ、お疲れ。佐原君」
さっきまで着ていた悪役の衣装から制服に着替え、佐原君が戻ってきた。そうしている間にも、練習は続いている。
「ちょいと前振りして、動きつけながらファイトするだけなのに、マジで疲れるっスね……。特にのどがヤバいっス」
叫んでばかりだったし、本番は大丈夫なんだろうか。声をからさないかどうか、ちょっと心配。
「でも、ファイトは絶好調!今日もヒーローを返り討ちにしてやったっスよ!」
「いや、ダメだろうが。今までファイトして、佐原1回も負けてないだろ」
「んなこと言っても、手を抜くなんて真似はできないっスよ!どうにかしてもらうしか……」
それでどうにかできるなら、誰も苦労はしないと思う。私たちは当たり前にファイトしてるから慣れてるけど、佐原君の強さは相当だ。だって、秋予選では決勝戦でしか負けてないんだからね……。
「それに、彼だって経験者なんスよ?クラスでも腕のある人を選んでファイトしてるんスから、素人相手に全開で行ってるわけじゃないんスよ」
「本人には悪いが、とてもそうには見えないんだけどな」
あのヒーロー役の男子も、後半涙目になってたしね……。
「リサさんは、彼の事を覚えてるっスよね?」
「えぇ。チームの3人目の候補に挙がってたわよね。結局、勧誘はしなかったけど」
ヒーロー役の彼と、そんなエピソードがあったなんて……。
「てなわけで、明日の本番も期待しておくっスよ!常識なんて言葉で、結末は決められないことを見せてやるっス!」
「はいはい。……あ、終わったみたいだわ」
ステージのセットが片付けられている。そろそろ準備に行った方がよさそうだ。
「よし、行くか」
「うん!」
ステージ上に集まり、各自段取りを確認する。照明や音楽、役者など、それぞれが所定の位置についたところで、劇の開始の合図である音楽が鳴った。
私たちの劇のストーリーは、新米のヴァンガードファイターの話だ。ヴァンガードは好きだが、実力が伴わずに苦悶する日々を送る主人公。
そこに現れたベテランファイターとの出会いをきっかけに、自分を変えていく物語だ。
あくまで劇だし、そこまで深く掘り下げることはできないが、最後には超えるべき強敵も登場する。もちろんファイトも行うが、真剣に行うのは最後の見せ場だけだ。他は、序盤の主人公の弱さや、成長を演出するためにワンシーンを使うだけ。
そして、最後のファイトの勝敗で、エンディングを分岐させる。そこは、佐原君のクラスと同じ流れだ。
「はぁ……。また負けた……」
今は序盤のファイトを終えて、主人公がたそがれているシーンだ。そしてこの主人公は……他でもない私。
本当は裏方をするつもりだったんだけど、発案者でありヴァンガードをしていることもあって、主役に抜擢されてしまった。周りの支持もあり、秋予選で準優勝だったことが知られていたのも大きな要因だった。
そこまで持ち上げられたら、私だって断りにくい。と言うわけで……。
「どうして、私はいつも勝てないんだろう……」
こうなりました。
「何を落ち込んでいるの?」
「えっ……?」
「それ、手に持ってるの、ヴァンガードのデッキよね?」
「えと、あなたは……?」
「海崎リサよ。私も、ヴァンガードファイターなの」
「え、海崎って……もしかして、あの有名な!?」
ちなみに、ベテランファイター役には、森宮さんが選ばれた。新米役よりも似合っているから、との事みたいだけど……。
そうこうしているうちに、劇は続いていく。
「――なるほど。つまりあなたは、ヴァンガードで勝てなくて困っていると」
「はい……。私、まだ始めたばかりだし、すぐには強くなれないのはわかっています。けど、どうしても上手くなれない。何回ファイトしても、勝てないんです」
「何回も……」
「デッキも見直して、ファイトの進め方も考えて。それでも……ダメなんです」
「そう……」
普通に演技しているけど、かなり緊張してる。森宮さんも、声が少し力んでいる。でも、舞台度胸はついてきた……と思う。
「あなたは、本当にヴァンガードが好きなのね」
「えっ……?」
「だって、そうじゃない。ずっと負け続けているのに、それでもあなたはファイトを重ねてる。普通なら、すぐに心が折れてしまうものよ?」
森宮さ……じゃない。海崎さんの言葉が、静かだけど力強いBGMに乗って、体育館に響いていく。
「あなたのその想いは、誰にも負けない武器になる。好きであり続けなさい。磨けばきっと、あなたは強くなれるわ。私も、ヴァンガードが好きだもの」
さっき言っていた、森宮さんがベテランの方に選ばれた理由。それは、すぐに分かった。森宮さんは、こういうセリフがよく似合うんだ。雰囲気だって、できる大人って感じだからね……。
「海崎さん……」
「私も協力してあげる。あなたのために」
「それって、私と一緒に練習してくれるってこと……!?」
「えぇ。だから、あなたの名前も教えてほしいわ。いつまでも、あなた呼びは嫌だしね」
「あ、はい。私は……シオリ。空井シオリです」
「よろしく、シオリさん」
固く握手を交わしたところで、ステージが暗転する。そこからは、特訓のシーンや成長のシーンが続き、ついにラストバトルへ。
「こいつで終わらせてやる!再スタンドしたジ・エンドで、アルフレッドにアタック!」
「エポナ、霊薬の解放者、マロンでガード!ブラスター・ブレードでインターセプト!」
「く……っ!」
「そう簡単には負けません!私は、ヴァンガードが大好きなんですよ!土田さん!!」
強敵の土田さんを演じているのは、小沢君。こっちもはまり役とのことで選ばれた。
「私のターン、スタンドアンドドロー!狼牙の解放者 ガルモールをコールして、アルフレッドのリミットブレイク!」
……でも、これっていつもの私たちな気がするんだよね。
「まさか、この俺が負ける……!?強さだけを求めて戦ってきた、この俺が!?」
「この想いを乗せて……行け、アルフレッド!!」
「く……くそぉぉっ!!」
6枚のダメージが、小沢君もとい土田さんの盤面に並ぶ。こうして、リハーサルはハッピーエンドで終わらせることができた。
「……なるほど。今日はシオリさんの勝ちっスか。こっちはいい勝負をしてくれるっスね」
劇ではなく、ファイトの結果に注目し、トウジは感心する。
「でも、俺たちの方はどうもな……。彼が悪いわけじゃないのはわかってるっスけど、結果が見えてしまっているのが……」
事実、ヒーロー役の男子もトウジに言っていた。本当に相手が務まっているのかと。そうは言っても、クラスの中でトウジの相手をできる人は他にいない。
「……あ」
そうだ。せっかく都合のいい部隊がそろっているんだ。少し手回しは必要だが、もう少し盛り上がる方法を見つけた。
「…………」
そんなトウジの視線が、ステージ上のシオリに向けられていることを、この場にいる誰も知らない……。
***
「カオスブレイカーのスキル!ベリコウスティを……ロック」
「ちっ!安定してロックが使えるのは、かなり厄介だな!」
「対リンクジョーカーだって、想定しておかないといけないじゃないっスか?カオスビートのブースト、カオスブレイカーでアタック!ロックカードがあることで、カオスビートのスキルでパワープラス5000!」
「しまった!そのスキルを忘れて……。ノーガードしかない!」
その日の放課後。私たちはサンシャインに立ち寄り、クリスマスカップに向けた特訓をしていた。今は小沢君が、リンクジョーカーを相手にファイトをしている。
それって、いつもの佐原君だって言うのは、突っ込んじゃいけない。
「ダメージチェック……ガトリングクロー・ドラゴン。トリガーだけど、俺の負けか」
「リンクジョーカー相手に、ロックの事も考えて行動はできてるっス。けど、少し慎重になりすぎて、攻め時を無駄にしてる場面がよくあったっスね。もう少し大胆になってもいいと思うっス」
「なるほどな……。ロックされたらその時の話だ、程度に考えたらいいってことだな?」
「そう言う事っス」
さすがはリンクジョーカー使い。アドバイスも上手い。
「じゃあ、シオリさん。今度は私とファイトしてもらえない?」
「いいですよ。やりましょうか」
私もがんばらないと。今の私にできるのは、ファイトの腕を磨くことだけだ。解放者のカードは、種類もそこまでないから、デッキを強化するにもできないからね……。
「ところで、さっき森宮さんデッキをいじってたみたいですけど……」
「ちょっと試したいカードがあったからね。アクアフォースは、それなりにカードの種類も多いから」
「へぇ~。じゃあ、行きますよ」
「いつでも来なさい」
「「スタンドアップ!「ザ」ヴァンガード!!」」
私はチア―アップ・トランぺッター。森宮さんは、バブルエッジ・ドラゴキッドのはず。
……はずだった。
「それって……少し前のブースターで収録されてたカード……」
「えぇ。始まりの波紋 アレックスよ」
森宮さんは、波紋を中心にしたデッキに挑戦していた。カード自体は知っていたけど、ファイトはしたことない。さて、どれだけ使いこなせるのか……。
「轟く波紋 ジノビオスのリミットブレイク!アタック終了時に、前列のレストしているユニットが3体以上いるなら、CB2とペルソナブラストで、リアガードを全てスタンド!」
「ここで再スタンド!?」
きっちりリミットブレイクを決めてきた。これはマズい展開かもしれない。
「ホイール・アサルトのブーストした、トランスコア・ドラゴンでガルモールにアタックよ」
「う……マロンでガードして、ファロンのインターセプト……」
「最後は、ホイール・アサルトのブーストで、グローリー・メイルストロームのアタック!」
「……ノーガードです」
ダメージトリガーはない。森宮さんとのファイトは、私の負けだった。
「なかなかいいわ。けど、ペルソナブラストが難点ね。それに、連携ライドなのも不安定さが目立つわ」
どうやら、森宮さんの中で波紋は微妙だったみたいだ。またしてもデッキを見直し、入れていくカードを選択していく。
「色んなカードを試すんですね」
「まぁね。今使っているデッキも確かにいいけど、そこで満足したら成長はないわ。もしかしたら、他にも可能性があるかもしれないから」
「可能性……」
そう言えば、私は解放者しか使ったことがない。アルフレッドが解放者をメインとした構成を求めるから、統一する必要があると思ってのデッキだった。
けど、それ以外のユニットを取り入れる可能性が、全くないわけではない。むしろ、デッキの選択の幅を狭めてしまっているのではないか。
「そうね……。今度は、コバルトウェーブ・ドラゴンでも使ってみようかしら」
「何かマニアックなユニットを使おうとしてるっスね……」
「じゃあ、今度はトウジが相手しなさい。やるだけやってみないと、わからないし」
「いいっスよ?とことん相手してやるっス」
デッキ組み直すの早いな……。もうファイトを始めてるし。
「ライド、ストームライダー エウゲン!」
「魔弾の星輝兵 ネオンにライドっス!とことんコバルトウェーブに寄せてるっスね!」
「もちろん。でも、少し固執してるかもしれないって思ってるけど」
「まだグレード1なのに、気が変わるのが早いっスよ……」
と言いながらも、手は動かしてファイトを進めている。
「あっ、ところで、ヴァンガードとは全く関係ない話なんスけど……最近よく有名になっている、いじめ抑制集団って知ってるっスか?」
「あぁ。よく話題になるわね。現役の女子高生みたいじゃない」
「俺も知ってるぞ。確か、ビリー・ブレイカー。直訳すると、いじめを壊す者らしい」
読んで字のごとくって感じだ。そんな善良な人たちがいるんだな。
「私、そう言う話は知らなかったな。その人たちって、どんな人なの?」
「何でも、3人組らしいっスよ?全員が格闘術に優れていて、喧嘩ではまず勝ち目がない。話術も大したものみたいで、説き伏せた人は多い見たいっス」
「へぇ~。そうなんだ」
「でも、一番の特徴は、ヴァンガードをいじめを止める道具にしている事なんスよ。勝負の結果で、罪を認めるか見逃すかを決めるらしいっス」
「だったら、見逃した人もいるってこと?」
「それがそうでもないんスよね。話だと、負けたことはまずないみたいで、絶対の自信を持っているそうっス。だから、ヴァンガードを手段として利用できるわけっスね」
すごいな……。大きな話になるけど、他人の人生をも左右するかもしれないことになる。その選択を決めるために、ヴァンガードを使うなんて……。並のファイターなら、こんな真似はできないはずだ。
「んで、そいつはこう名乗っているらしいっス。ヴェルレーデって」
「ヴェル……あれ?どこかで聞いたような……?」
「シオリさんと同じ、ノスタルジアの1人。過去の追憶っスよ」
「あっ……!」
だから聞いたことあるんだ。会ったことはないけど、ノスタルジアカップの時に、その人もいたってことだ。当時の記憶は全然ないけど……。
「でも、どうしてその人が?」
「わからないっスけど、これは辿っていけばそいつとファイトできるチャンスっス。他の二人は、伝説感も何もないっスからね」
悪かったね……。
「だから、今この話を持ち出してきたのね。ヴァンガードと関係ないなんて、嘘じゃない」
「たまたまっスよ!けど、俺はマジでそいつの手掛かりを求めてるっス。何かわかったら、すぐに俺に知らせてほしいっスよ」
「うん、わかった」
ノスタルジアの人とファイトすることは、佐原君にとっては大きな意味があるみたいだからね。私も、協力できることはやってみよう。
「それで、次はリサさんのターンっスよ」
「えぇ、そうね。私のターン!スタンドアンド――」
けど、そんな話をしている中でも……。
「…………」
森宮さんの行動から見出した、私のデッキの可能性。
私は、それがどうしても頭の中から離れなかった。
***
「ただいま……」
「あっ、お帰りシオリ。今日も遅かったね」
「いや、今日はカードショップ……。劇の練習は、リハーサルがあったからその時にしたんだ」
その後もファイトを重ね、今日は解散となった。結局森宮さんは、そのままのデッキで行くことにしたみたいだけど。
「それで、調子はどうだい?」
「劇の方は、多分いいと思う。まだセリフ飛んだり、緊張したりするけど……みんな期待してくれてるから、頑張ってるよ」
「それにしては、ちょっと元気ないみたいだけど……?何か気になることでもあるのかい?」
さすが、お父さんだ。自分の子供の事だからか、妙に鋭い。隠すことでもないので、私は正直に打ち明けることに。
「実は、気になってるのはヴァンガードの事なんだ」
「ヴァンガードの?」
「今の私のデッキの事でね。あまり詳しく言ってもわからないだろうけど、デッキに入れているカードが、決まりきったものになってしまっているんだ」
「いいよ、続けて?」
「今日友達が色んな選択肢を試しているのを見て、私はこれで満足してしまってるんじゃないかなって思ったんだ」
解放者で統一することで、当然メリットは生まれる。デッキは安定し、名称によるサポートも受けられる。それに、アルフレッドは解放者がいる事で力が増す。だからこそ、解放者だけにこだわってきた。
けど、デメリットだってある。それこそが、デッキの自由度をなくしている事だった。
解放者のカードは、確かに種類を増やしている。が、それでも10人に解放者のデッキを作らせたら、全てが似たような仕上がりになってしまうのではないか。
安定感と充実した火力を出せる解放者。でも、それ以外にも道はあるかもしれない。
「それで、デッキを見直そうと思ったんだけど……どうすればいいのかわからなくて。私、解放者しか使ってないから、他のゴールドパラディン……あっ、私の使っているクランなんだけど、それについては全然知らないんだ」
まずはカードを知ることから始めないといけない。その上で、今のデッキに取り入れるべきパーツを探さないといけない。
でも、名称をそろえることで力を発揮する解放者と、非名称のカードを上手く組み合わせることはできるのか。
「……なるほどね。事情はよく分かったよ」
すると、お父さんはリビングを出て、どこかに行ってしまった。後について行こうとしたけど、そこで待っててと言われたので、大人しく待っている。
しばらくして、お父さんは何食わぬ顔で戻ってきた。何故か、両手は後ろに隠して。
「お父さん、どこに行ってたの?」
「いや、嬉しくてね。シオリがヴァンガードにここまで打ち込んでるのを見ると、昔のように楽しそうだって思えるから」
「……質問と答えが合っていないと思うんだけど」
「いやいや、本題はこれからだよ」
何をするつもりなんだろうか。
「シオリがこうして、ヴァンガードの事で困ってるんだ。少しでも力になりたいと思ってね。そこでだ」
お父さんは、後ろに隠した両手を前に出す。そこにあったものは……。
「え、お父さん。まさか……」
「そのまさか。父さんと、ヴァンガードしよう」
デッキケースに収められた、ヴァンガードのデッキだった。
***
「いつの間にデッキ作ってたの?」
「シオリがヴァンガードを再開してからだね。どうせならデッキ作って、いつかシオリとヴァンガード出来たらいいかな……って」
私たちはテーブルに座り、デッキをシャッフルする。確かにシャッフルの仕方がぎこちない。始めたばかりなのが見てわかる。
「それに、母さんからもらったあのカードを、使ってみたかったのもあるかな……」
「それって、あの時の?」
「ずっと、飾っているだけだったからね」
デッキからカードを引き、引き直しも済ませる。何気に家でファイトするのは初めてだな。
「このファイトで、何かヒントになればいいって思ってね。まだファイトには慣れてないけど、相手させてもらうよ」
「こちらこそ。お父さんとのファイトでも、勝ちに行くよ!」
「「スタンドアップ!「ザ……」ヴァンガード!!」」
互いにスタンドアップする。あの時のカードが使いたいなら、クランは恐らく……あれだろう。
「解放者 チア―アップ・トランぺッター!(5000)」
「父さんは……恐怖政治 テルミドール!(5000)」
「やっぱり、スパイクブラザーズか……」
昔、お父さんがお母さんから貰ったカードが、このクランに属していた。だから、このクランでデッキを組んでることは予想できていたけど……。
「……お父さんがスパイクブラザーズなのは、どうもイメージと違うんだよね」
性格で言えば、大人しい感じだし。体格だって、筋肉質でもないし……。
「そっ、そんなこと言わない!じゃあ、父さんのターンから!ドロー!」
お父さんのターンが始まったことで、初の親子でのファイトは動き出した。