つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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さて、久し振りですね。

今回は、この小説で初の試みをすることにしました。そのせいで少し時間がかかってしまったんですが……まぁ、見ていただけたらわかります。

話は変わりますが、ヴァンガードzeroの配信楽しみですね。今週末の発表会で、配信日等の情報出るでしょうか?もちろん、名前はティアとしてプレイするつもりです。

また長々とした前書きになりましたが、本編に移りましょう。今回は長いので、楽しんでいただけたら幸いです。


ride74 歪むシナリオ

文化祭2日目。今日はホールでのクラス発表だ。

 

学年順に発表するため、私たち1年はすぐに出番が来る。もちろん、一般客も見学はOKだ。ホールの後方の席は、全て一般用に開放されている。

 

「緊張してきたね……」

 

「そうだな……。俺も星野も、森宮だって重要な役だからな」

 

今日のために、昨日も練習してきたんだ。個人練習だって、家に帰ってから欠かさずにした。

 

その合間を縫って、デッキの方も完成させることができた。今日の舞台が、このデッキの初披露となる。

 

大丈夫。きっと大丈夫……だよね?

 

「今日もシオリさんの友達の……照山さんや桃山さんは来るのかしら?」

 

「暇だし来るって、昨日帰る時に聞いたよ。ユキさんはさすがにお店あるから行けないみたいだけど……」

 

クラスごとに決められた場所の中で、私たちは横に3人並んで座っている。そこから一般客の席の方を見ると、もうシュンキ君たちの姿がある。

 

「……早いわね」

 

「うん……。ハヤト君、こっちに手を振ってる」

 

しかも大きな声で、私の名前を呼んでくるし……。よし、ここは決めた。無視しよう。

 

「立花って奴はどうなんだ?」

 

「来てると思うよ?昨日連絡先を交換してね。今日は友達と行くって連絡来てた」

 

でも、まだ来てないみたいだな。時間になったら来ると思うけど。

 

「それだけ知り合いがいると、なおさら緊張しちゃうわね。特にシオリさんは」

 

「プレッシャーかけるようなこと言わないでよ……」

 

だって主役だよ?もともと私、友達がいないことで悩むくらいの引っ込み思案なのに……。入学したばかりの頃はずっと1人でいた女の子が、文化祭で主役だよ!?

 

「どもっス、みんな!1人だけクラス違うと、ハブられたみたいで寂しいっスね~」

 

「じゃあそう言う事でいいんじゃないの?」

 

「何スか、その辛辣コメント」

 

来て早々にいじられる佐原君。まだ開始時間ではないため、私たちのところに来たみたいだ。

 

「おはよう、佐原君。緊張とかしてないの?」

 

「全然!むしろ、昨日のあれで不完全燃焼っスから、今日はやってやるっスよ!」

 

「あぁ……」

 

『あれ』と言うのは、昨日私と佐原君の行ったファイトの事。

 

互いにゲームクリアと、何故かスペシャルチョコ……何とかパフェの奢りをかけてファイトすることに。互いに一進一退の攻防を繰り返していたが、軍配が上がったのは……。

 

「あそこでトリガー見越して、ガードを余分に使わなかったら……っ!」

 

「佐原君の深読みがいけないんだよ」

 

「そうやって、してやったりみたいに言われるのがダメージあるんスよ!」

 

私でした。その時のデッキは前のデッキなので、佐原君にも新しいデッキは見せていない。

 

で、佐原君は立花さんと、わざわざ私にもスペシャル……パフェを奢ってくれた。かなり痛い出費だったけど、それでも奢ってくれる辺り、佐原君は優しいんだと実感する。

 

とは言え、やっぱり根に持つのは仕方ないようで……。

 

「今日は悪いっスけど、正義のヒーローさんには八つ当たりを受けてもらうっスよ……!」

 

「おいおい。やる気があるのはいいが、それだと結果決まってるようなもんだろ」

 

「そうよ。結末が予想できないことを売りにしているのに、これじゃあ意味ないじゃない」

 

「ふっ、大丈夫っスよ。俺には秘策がある」

 

秘策?手加減する……とかなら、わざわざこんな言い方はしないか。それに、勝つための秘策ならいくつか考えられるけど、負けるための秘策って何だろう?

 

気になった私は、佐原君にそのことを問い詰めようとして……。

 

『間もなく、東条高校文化祭2日目を始めたいと思います。生徒の皆さんは、クラスで指定された席へと戻ってください。一般の方は……』

 

「おっと、時間っスね。んじゃ、俺はこれで!」

 

「あっ……」

 

こういう時のタイミングは最悪みたいで、佐原君はクラスの場所に戻ってしまった。

 

「何だったのかしら、秘策って」

 

「さぁな……?俺にもよくわからん」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「絶望せよ!そして震えよ!やがてそれは、歓喜へと変わる……。私に敗北することによってな!」

 

「ぐわぁぁっ!!」

 

文化祭2日目が始まった。いつもよりも大きな舞台で、より緊張と不安が増す。

 

今は佐原君のクラスの劇だけど……さすがと言うか、何も言う事のない予想通りの展開。普通にファイト楽しんじゃっているしね……。

 

「あいつらの発表も終わりそうだし、俺たちも次の次だ。そろそろ舞台裏に向かった方がいいんじゃないのか?」

 

「そうね。みんな!準備するわよ!!」

 

他のクラスの邪魔にならないように、そそくさと退場する。そこから舞台の裏に移動する際、佐原君のクラスの人とすれ違う。

 

けど……。

 

「……あれ?」

 

「どうしたの、シオリさん」

 

「いや、佐原君の姿が見当たらないなって思って……」

 

「どうせすぐにトイレに行ったとかでしょ?今は私たちの劇に集中しましょう」

 

「うん、そうだね」

 

佐原君がいない。そのことが、どうも引っかかって仕方なかった。

 

「俺たちのセットってどこに置いた?」

 

「その奥!邪魔にならない程度に前に出して!」

 

「音響はチェック済んだよ!僕たちの方で手伝えることある?」

 

「なら、役者の衣装着せるの手伝って!」

 

まだ前のクラスが発表中のため、スムーズに始められるように最小限の準備だけ進めている。

私はクラスメイトに衣装を着るのを手伝ってもらいながら、セリフを頭の中で確認していた。

 

「……怖い?」

 

「えっ?」

 

「シオリさん、顔が強張ってたから」

 

同じように衣装を着せてもらっている森宮さんに声を掛けられ、私はよほど集中していたのだと気づく。小沢君は、別の場所で着替えをしているはずだ。

 

さっきの質問、怖いのかと聞かれると、ちょっと違う。不安……と言うのか。緊張しているのか。

 

「ううん。そうかもしれないけど……大丈夫。ここまで来たら、当たって砕けるよ」

 

「砕けちゃダメでしょ」

 

「あははっ……。そうだね」

 

ハッキリとした言葉では言えなかったけど、森宮さんと話したことで気持ちが和らいだ。衣装をまとう事で、その想いがより引き締まっていく。

 

「そろそり、前のクラスも終わりそうだね」

 

「えぇ。準備もほとんどできてるし……円陣でも組みましょうか」

 

クラスのみんなを集め、私たちは円陣で気合を入れる。前のクラスが撤収したのを確認すると、それぞれが持ち場へと移動を始めた。

 

私も、開幕のBGMが流れたらすぐ出番だ。ステージ裏で待機し、みんなの準備を待つ。深呼吸して、バクバク鳴ってる心臓を落ち着かせて……。

 

「はぁ!?そんなのいいのかよ!?」

 

と、奥の方で待機しているはずの小沢君が、いきなり大声を上げる。驚きで心臓がまた早鐘を打ち、何事かとそちらを見ると……。

 

「あれ、佐原君……?」

 

そこにいたのは、もう観客席に戻っているはずの佐原君。どうして、劇には関係ないのにここにいるのか。

 

「声がでかいっスよ。これはトップシークレットなんス。まだ一部の人にしか知らせてないんスから」

 

「おいおい、マジかよ……。本当に収拾つくんだろうな?」

 

「俺を信じるっスよ。もっとも、そのためにはいささか協力してもらう必要があるっスけどね」

 

何の話だろう?他のクラスメイトは、2人の話には気づいていない。密談のようなものか。

 

うん。明らかに怪しいよね。何を企んでいるのか。

 

が、そこで開始の合図であるBGMが流れる。私はほとんどステージ裏に戻れないし、聞き出す時間もない。やっぱり、この手のタイミングには嫌われているのかもね……。

 

それに、今は……。

 

「……大丈夫だよね」

 

身につけたデッキケースに手を触れ、アルフレッドから力を分けてもらう。何があっても、このステージ上ではあなたと一緒なんだ。きっと、心配いらない。

 

私は意を決して、ステージへと踏み出した……!

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「まさか、ここまで勝ち上がってくるとはな。名は……空井シオリと言ったか」

 

「あの時、ボロボロに負けた自分を超える……。これは、土田さんへのリベンジだけじゃないんです」

 

大きなミスは何もなく、劇はついにクライマックスへと突入した。小沢君扮する土田ワタルさん、そして私が扮する空井シオリ。2人が向き合い、最後の見せ場を残すのみとなる。

 

土田さんとのファイト。まだ安心するには早い。ストーリーの流れ的には、私が勝って終わらせたいからね。

けど、勝率は微妙だ。もしかしたら、向こうが勝つかもしれない。

 

「行きます……土田さん」

 

「あぁ。デッキを構えろ」

 

土田さんがデッキを取り出したのを確認して、私もデッキを取り出す。ここから先は、演技なんて関係ない。必要ない。

 

ただ全力で……勝ちに行く。

 

「絶対に勝ちます。気持ちが強ければ、それが叶うんだってことを……証明します」

 

「いいだろう。結果はすでに――」

 

「アーッハッハッハ!ちょうどいい人間がいるな!!」

 

聞き覚えのない声と共に、ステージ上の証明が落ちたのは一瞬の事だった。ざわつく観客、そして裏方のクラスメイト達。

小沢君のセリフが終われば、ファイトに移動するはずなのに。あんなセリフ、台本にはない。えっ、待ってどういう事!?これは一体、どうなってるの!?

 

戸惑う私の目の前で、再びステージを照らす証明の光が見せたのは……この場にはいるはずのない第三者。

 

「我は魔王トウジ!世界を絶望に包み込む使者なり!」

 

佐原君だった。しかも、さっきの劇の衣装のまま、役も魔王になりきって私たちに近づいてくる。不測の事態に、私はどうすればいいのかわからなかった。

 

「正義を名乗る戦士を倒し、最早……我の邪魔をする者はいなくなった!すべては我の望むままに動くことだろう!」

 

「……どういう事、小沢君」

 

「すぐにわかる。俺はさっき、佐原から事情を聞いたからな」

 

始まる前に何か話していたのは、この事だったのか。

 

「まずは手始めに、そこの人間を我が陣営へと引き込もう!」

 

「……これはこのまま進んで行くの?」

 

「そうだ。佐原が言うには、サプライズ演出らしいが」

 

そう言われても、すぐには対処できない。私は佐原君とファイトすればいいのか。でもそれだと、小沢君とのファイトはどうすればいいのか……。

 

「ハァ……っ!ぬぅん!!」

 

と、佐原君が低い姿勢で突っ込んでくる。私は後ずさるが、狙いは小沢君だった。

腹に掌底突きを入れるような形で、佐原君は小沢君に攻撃(?)を仕掛ける。小沢君は苦しむような演技を始め、佐原君はニタニタと笑っていた。

 

……もう何の劇なの。これは。

 

「……フフフフフ」

 

「え」

 

「俺……じゃない。わ、我は求めよう、強さを!絶対的な力の前に、誰もがひれ伏す世界を!!」

 

えぇ!?お、小沢君まで……。陣営って、そう言うことなの!?

 

「我の名は、えっと……魔将ワタル。魔王トウジの命に従う者!」

 

「う、嘘でしょ……」

 

「さぁ、これで2対1だ。我とこの男を前に……ヴァンガードで勝負をしようではないか」

 

ここでヴァンガードを持ち出してくるのか。さっきの劇の延長線上なのか。どっちにしても、ヴァンガードはするつもりだったし、問題はない。

 

だけど、2対1なんてどうファイトすればいいのかもわからない。相手も相手だし、勝ち目があるかと言われたら、かなり低い。

 

それに、人数的にもこっちが不利なことに変わりはない。せめて、こっちにもう1人味方がいてくれたら……。

 

「1人じゃないわ、2人よ!」

 

「えっ……?」

 

そこに現れたのは、何と森宮さんだった。出番は終わったはずなのに、どうして……?

 

「その声は、お……いや我に並ぶファイター、海崎リサではないか!」

 

「何で森宮さんがここにいるんですか……?」

 

「話は後。とりあえず、これを見て」

 

すれ違いざまに、1枚のメモを渡してくる。そこには殴り書きで、佐原君からのメッセージが書かれていた。

 

「『急遽予定変更!最後のファイト、俺とワタル君、リサさんとシオリさんでタッグファイトをするっスよ』……タッグファイト!?」

 

予想外の事態に、私もついて行くのが精いっぱいだ。普通のファイトではなく、森宮さんとペアを組んで、タッグファイトをすることになるなんて。

 

「ほう?新たな人間か」

 

「噂には聞いていたわ、魔王トウジ!そのファイト、私も参戦させてもらうわ!」

 

「ふっ、自ら危険を冒すか……。いいだろう!なら、2対2のタッグファイトだ。かかってくるがよい!」

 

そこに用意されたファイトテーブルも、タッグファイト用の大きなものだった。

 

「ルールは理解しているな?」

 

「一応……」

 

「大丈夫。私も、ある程度は理解しているわ」

 

2対2のファイトで、ダメージは2人の合計で合算して数える。先に9ダメージを与えたら勝ちで、普通のファイトとは違ったルールとなる。それは、その場面が来た時に説明することにして……。

 

「ど、どうするんですか、森宮さん……」

 

「こうなったら、やるしかないわ。私だって、さっきあいつから聞いただけなのよ」

 

「でも、進行とかどうなの?普通のファイトよりも、時間かかるんじゃない?」

 

「……もう手は打ってあるみたい。先生も承諾済みよ」

 

「えっ!?」

 

じゃあ佐原君は、最初からタッグファイトをするつもりだったってこと!?

 

「タッグファイトなんてやったことないのに、あいつも勝手にこんな事して……。でも、今更引けないわ。私たちであんなアホな奴ら倒してやりましょう」

 

いや、小沢君は被害者だと思うんだけどな……。

 

「わかってるよ。それに、私も今日のファイトには、ちょっと力入れてたから。デッキだって、いつもとは少し違うんだよ」

 

「そうなの?」

 

「うん。だから、負けるつもりはないから。一緒に頑張ろう!」

 

ファイトには変わりないんだ。それに、こっちの方が盛り上がるのは確かだ。その証拠に、観客の声は大きくなっている。

まさに予期せぬ事態。そんな舞台で、このデッキを使うのか……!ちょっと緊張するけど、楽しみかも。

 

「……ったく、とにかく悪役っぽい演技して、ファイトすればいいんだな?」

 

「そうだ。期待しているぞ」

 

向こうも、この状況を受け入れる準備はできたみたいだ。小沢君は、かなり損な役回りになりそうだけどね……。

 

「もう役に入ってるのか……。よし、ならデッキをーー」

 

「いや、待て。貴様にはこのデッキを使ってもらう」

 

「は?おい、何でだよ。自分のデッキはあるぞ」

 

「何を言う。臣下の者が、格上の者に背いて違うクランを使っていいと思うのか?」

 

「マジかよ……。そこも悪役として、雰囲気合わせないといけないってことなのか」

 

魔王トウジにデッキをもらい、小沢く……え~と、魔将ワタルは、デッキの内容を確認する。

 

「……おい、佐原。俺、かげろう以外のクランは使ったことないぞ」

 

「心配ない。我も同じクランを使う。それに、構成は似ているからな。見よう見まねで動かし方を掴み、後は貴様の思うようにファイトしろ」

 

「いい加減だな……」

 

それなら、相手は本調子じゃない。この勝負、案外勝てるんじゃないか。

 

「準備はいいか、人間どもよ!」

 

「しゃべってばかりで大変ね……」

 

「……いつでもどうぞ」

 

「俺……あ、いや我もOKだ」

 

キャラがブレているけど、まぁいっか。観客の熱気は、さっきよりも高まってきたのだから。

 

「「「「スタンドアップ!「ザ……!」ヴァンガード!!」」」」

 

4人同時にスタンドアップする。盤面は、ステージ奥のスクリーンに投影されるようになっているので、観客も楽しんでファイトを見ることができる。

 

「行くわよ、バブルエッジ・ドラゴキッド!(5000)」

 

森宮さんはいつも通りのアクアフォース。デッキの内容も、テトラドライブ仕様に戻しているだろう。

 

「我は、運命の戦士 ダイ!(4000)」

 

「お……我は、次元ロボ ダイマグナム!(5000)」

 

2人は、ディメンジョンポリスを使う。魔王トウジとして、佐原君が劇で使っていたクランだ。

 

そして私は……。

 

「小さな闘士 クロン!(4000)」

 

「……あれ、チア―アップじゃないのね?戻したの?」

 

「すぐにわかるよ」

 

実戦で使うのも、今日が初めてだ。上手く使えるといいんだけどな。

 

「では、我が先攻をいただこう!」

 

「いいから、早くしなさい」

 

「そこはノリを合わせるとこっスよ……。ドロー!」

 

まぁ、こんな感じでファイトは始まった。けど、タッグファイトなんてやったことないよ……。ルールは一応知っているけど、何せ経験がないからね。

 

デッキの事もあるし、どこまでくらいついて行けるのか。そこが、勝敗を大きく分けることになりそうだ。

 

「次元ロボ ダイブレイブ(7000)にライド。ダイよ、後ろに下がるがよい」

 

「……俺もこんな風にファイトしないといけないのか」

 

「王様気取りでファイトすればいいだけだ。ターン終了。次は貴様だぞ、海崎リサ」

 

「わかってるわよ。私のターン、ドロー!」

 

タッグファイトでのターンの交代は、∞の字を描くように回っていく。

今回は魔王トウジからターンが始まり、次は向かい側の海崎リサさんのターン。そして、斜め前の魔将ワタルのターンに映り、最後に私のターンになる。私のターンが終われば、またトウジのターンからだ。

 

「遊撃のブレイブ・シューター(7000)にライド!バブルエッジは後ろへ。ターンエンド」

 

「よし、次だな。俺の――」

 

「我……だろう?」

 

「……我のターン、ドロー」

 

えっと、その……ドンマイだよ、小沢君……。

 

「こいつだな……ライド!次元ロボ ダイブレイブ!(7000) ダイマグナムは後方へと下がれ。ターン終了!こ、これくらいなら……!」

 

私たちのメイド並みに黒歴史の予感しかしない……。

 

「私のターン、ドロー!未来の解放者 リュー(6000)にライド!クロンは後ろへ」

 

さて、ようやく私のターンだ。そしてこのターンからは……。

 

「シオリさんのターンから、アタックができるようになるわね」

 

「うん。小さな解放者 マロン(7000)を左前列にコールして、アタック!スキルで解放者のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(10000)」

 

4ターン目のファイターから、アタックは可能になる。ただし、アタックできるのは前のファイターだけ。私はワタルに。リサさんはトウジにだけだ。

 

「ノーガード!ダメージチェック、次元ロボ ダイドラゴン」

 

「クロンのブースト、リューでアタック!(10000)」

 

「ダイバトルスでガードするぞ!」

 

「ドライブチェック、光輪の解放者 マルク。ターンエンド」

 

 

シオリ・リサ ダメージ0 トウジ・ワタル ダメージ1

(シオリ0 リサ0)(ワタル1 トウジ0)

 

 

「ところでワタルよ」

 

「どうした?魔王トウジ」

 

「さっきのやり取り、キャラがブレまくっていたではないか。ガードだって、あれではいつもの小沢ワタルだろう」

 

観客席から笑いが起こり、魔将ワタルになり切れていない小沢君は頭を抱える。

 

「……これでもダメなのかよ。口調は真似しているだろ」

 

「わかってないな、悪役と言うものを。王と言うものを。貴様は……甘く見ている!!」

 

「……っ、佐原!?」

 

「もっと激しく、大胆に!己の中に秘めた欲望を、今こそ解き放つのだ!!」

 

何か、いきなり力説が始まったよ……。

 

「悪とは何か、このターンでワタルに教えてやる!貴様の中に眠る力を、我が呼び覚まして見せよう!!」

 

「さっさとしなさい」

 

「遮るな!まぁいい……我のターン!ドロー!!」

 

リサさんが止めてくれなかったら、まだまだこの話続いてたよね……。ファインプレーだよ。

 

「次元ロボ ダイファイター(10000)にライド!そして、闇の力に導かれし精鋭を、ここに呼ぶ!召喚!次元ロボ ダイドラゴン!!(9000)」

 

召喚って……。これはもう、中二って感じだよね。詳しくは知らないけど。

 

「ソウルのダイブレイブのスキル発動!このカードを魂から解き放ち、ダイファイターに新たなる力を授ける!」

 

ソウルブラストね。

 

「ダイファイターよ。ダイの力をその身に宿し、ブレイブ・シューターに裁きを与えよ!アタックだ!!(14000)」

 

「アタックがわかりにくいわよ……。ノーガード!」

 

「ドライブチェック……ククク、ジャスティス・コバルト。クリティカルトリガー!パワーをダイドラゴンへ(14000) クリティカルはダイファイターへ!(14000 ☆2)」

 

ノリノリだね、佐原君……。ダメージには、ホイール・アサルトとタイダル・アサルトが入る。

 

「アタックヒットで、ダイブレイブが与えたスキル発動!CB1で1ドロー!」

 

「お……っ、我のダメージを使うんだな」

 

「そうだ。コストは貰うぞ」

 

これがタッグファイトにしかないルールの1つ。互いのダメージ、ソウルは共有することができる。

 

つまり、自分のダメージが足りなくても、カウンターブラストを味方のダメージから使うことができる。ソウルブラストの枚数が足りないなら、味方のソウルを使うことで補える。

 

「漆黒の空を翔けよ、ダイドラゴン!次元ロボの力を呼応させ、パワープラス3000!(17000)」

 

「ここで3ダメージは痛いけど……仕方ないわね。ノーガード!」

 

ちなみに、分かりにくいと思うけど、ダイドラゴンのスキルはマロンの次元ロボ版。ヴァンガードが次元ロボなら、アタック時にパワープラス3000される。

 

「ダメージチェック、翠玉の盾 パスカリス」

 

「我のターン、終了だ」

 

 

シオリ・リサ ダメージ3 トウジ・ワタル ダメージ1(裏1)

(シオリ0 リサ3)(トウジ0 ワタル1{裏1})

 

 

「私のターン、ドロー。ストームライダー ダモン(9000)にライドよ!」

 

次はリサさんのターン。まだ私のターンまで長いな……。

 

「ストームライダー バシル(8000)を右前列、その後ろに2体目のダモン(9000)をコール!」

 

「ほう?連続アタックか。我の闇の前に、どこまで抗えるかな?」

 

「……うっさい。バシルでアタック。スキルで、このターンの1回目のアタックなら、パワープラス2000よ(10000)」

 

「そのアタック、我が身に受けよう」

 

またしてもわかりにくいけど、ノーガードってことです。

 

「ダメージチェック、創生英雄 ゼロ」

 

「スキルを発動したアタック終了時、同じ縦列のリアガードと位置を交換。バブルエッジのブースト、ダモンでアタック!(14000)」

 

「そうはさせん。阻め、魔眼怪獣 ゴルゴーン!」

 

「ち……!ドライブチェック、ティア―ナイト キブロスよ」

 

アタックが通らない。しかも残りのアタックは、パワーが足りていないから、リアガードのダイドラゴンを狙うしかない。ふざけているけど、やっぱりファイトの腕は確かだ。

 

「リアガードのダモンで、ダイドラゴンへ!(9000)」

 

「ぬるいな。ジャスティス・コバルトよ、ダイドラゴンを守るがよい!」

 

「ターンエンドよ」

 

 

シオリ・リサ ダメージ3 トウジ・ワタル ダメージ2(裏1)

(シオリ0 リサ3)(トウジ1 ワタル1{裏1})

 

 

「さぁ、ワタルよ。今こそ、我が先ほど見せたように、闇の封印を解き放つのだ」

 

「……嫌だよ。闇とか何とかって、恥ずかしいだろ」

 

小沢君、それブーメランだから。昨日私たちにしたことを思い出して。

 

「恥?ふん。気にしなければ楽になる。そんなものなど……とうに捨てている!!」

 

「……どっかで聞いたな、さっきの」

 

「それとも貴様は、イメージがないのか?ヴァンガードは、イメージが全てだと言うのに?」

 

「……っ!ヴァンガードは、イメージが……全て」

 

小沢君が、何かに気づいたように目を開く。すると、おもむろに盤面のヴァンガードに手をかけて……。

 

「我は……ぬるま湯につかっていたようだ!強さを求め、絶望に焦がれる……それが魔将ワタルだ!」

 

あ、ふっきれた。

 

「不本意だが、俺の闇で世界を塗りつぶそう!我のターン!!」

 

いや、本音出たね。

 

「ドロー、次元ロボ ダイハート(9000)にライド!」

 

「ダイハート……。確か、あのユニットは……」

 

「闇に蠢き、暗黒の戦士に力を授ける同胞よ、来たれ!次元ロボ ダイドリラー!(8000)」

 

トウジと同様にイタイ発言をしたことで、観客席の方からざわめきが聞こえる。それは尊敬の念を込めたものなのか。それとも、引かれているだけなのか。

 

「……いちいちうるさい。少し抑えなさい」

 

まぁ、確かに長いよね。毎回これだと時間がかかる。

 

「む……なら、召喚お菜の工場は省くことにしよう。それでいいな、トウジ」

 

「え~?んなの、中二っぽいセリフが言えないじゃないっスか!断固反対!」

 

素が出ちゃってるから。観客も笑っちゃってるから。

 

「……抑えなさい」

 

「そこだけは譲れない!このキャラの楽しさは、この中二要素にあると言っても――」

 

「……二度目はないよ?」

 

「はい……」

 

じゃあ、ファイトを再開しよう。

 

「ダイドリラーのスキル!CB1で、ダイハートに眠る力を解き放つ!パワープラス4000だ!(13000)」

 

「ふっ、ワタルよ。コストは我の血肉を使うがよい」

 

「遠慮なくそうさせてもらう」

 

ダイハートには、とあるスキルがある。が、その発動条件はかなり難しく、狙うだけでも一苦労する。その難所は3つだ。

 

まず1つが、アタック前に自身のパワーが13000を超えている事。これは、ブーストによる増加ではいけない。タイミング上、トリガーを乗せてもダメだ。

 

今のダイドリラーのスキルで、この条件はクリアだ。残りは2つ。けど、そのうちの1つを満たすのは、かなり難しいけど……?

 

「ダイマグナムのブースト、ダイハートよ!闇の炎を剣に乗せ、眼前の敵を斬り伏せろ!!(18000)」

 

「……シオリさん」

 

「ここは通そう。下手にガードできるほど、手札がよくない」

 

ノーガードを宣言して、ワタルはドライブチェックで次元ロボ ダイブレイブを引く。私は王道の解放者 ファロンを引いた。

 

これで2つ目の条件である、アタックをヴァンガードにヒットさせることをクリアした。後は、3つ目の条件を満たしているかどうかなんだけど……。

 

「アタックヒットにより、ダイハートの真の力が覚醒する!!」

 

「……使ってきたか」

 

「手札からグレード3の次元ロボを2枚を魂の贄とし、禁じられし門を開く!!」

 

「……指定のカードをソウルに入れて、デッキからグレード3の次元ロボを1枚選んで、レストでライドね」

 

リサさんが説明してくれた通り、手札のグレード3の次元ロボを2枚ソウルに入れることで、デッキからのライドを可能にする。ワタルは、超次元ロボ ダイユーシャと、超次元ロボ ダイカイザーをソウルに入れた。

 

これが、ダイハートのスキル。スキルによるパワー上昇に加え、アタックをヒットさせないといけない。その上で、手札にグレード3の次元ロボを2枚用意しないといけない。

 

けど、決まれば……。

 

「来たれ!破滅を司る力の奮い手!!スペリオルライド!超次元ロボ ダイカイザー!!(11000)」

 

こっちがグレード1の状況でも、グレード3にライドできる。次のターンから先にツインドライブを打たれる上に、パワー面でも圧倒される。

 

「やるではないか、我が僕よ!」

 

「フフ……俺の中の悪魔がささやくのさ。圧倒的な力によって、絶望を魅せろと!」

 

「うわ……小沢君があっち側に……」

 

「あっ、ちょ……待て星野!役!役だから!!」

 

あ、戻ってきた。

 

「ええい、惑わすな人間!闇の素晴らしさを知らぬ下等種族が!」

 

「よくわからないけど……言ってなよ。勝つのは私たちだから」

 

「シオリさん……」

 

「森宮さん。いや、リサさん。事情はどうあれ、これは空井シオリと海崎リサの、悪の敵を倒すファイトなんです。向こうだってその気なら……私たちが役を投げ出すのは違う」

 

こんな事態でも、クラスのみんなはバックアップしてくれているんだ。最初の照明だって、予想外の乱入者である佐原君を照らしていた。今も、その照明は私たちに向けられている。

 

それに、BGMは当初使う予定だったラストっぽい疾走感のあるものから、緊迫感のあるものに変更したほど。こんなものを、よくすぐに用意してくれたよ……。

 

だったら……私たちも頑張らなくてどうするんだ。

 

「……そうね。あんな小沢君も、いつまでも見たくないもの」

 

それは確かに。

 

「ほう、面白い。ようやくやる気になったか!」

 

「えぇ、やるわよ!シオリさん、私たちのヴァンガードで、あいつらを倒す!」

 

「もちろんだよ、リサさん!」

 

気持ちを切り替え、私たちはファイトに臨む。まだまだ序盤。私はグレード2にすらなっていないんだ。

 

ファイトはここから。新しい私の仲間も、早く活躍させたいからね!!

 


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