つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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ride76 幕引きを飾る輝きは

「私が少しでもダメージを与えて、シオリさんがとどめをさしやすい状況を作る。後の事は、シオリさんを信じて託すわ」

 

現在、ダメージは5対5。いまだに動きのないこのファイトで、突破の糸口を作ろうとしているのは、リサさんだった。

 

私に全てを託して……リサさんはつなげようとしている。勝利へのバトンを。

 

「お願いね、シオリさん」

 

「……わかった。任せてよ」

 

その想い、受け取ったよ……リサさん!

 

「ライドなし。そして、バシルとタイダルの位置を交換して……バシルでヴァンガードにアタック!スキルで、1回目のアタックによりパワープラス2000!(10000)」

 

「ベラベラと何かをほざいていたようだが、所詮は悪あがきだ。我が身に受けてやろう!」

 

「パワーが足りないから、アタックはヒットしない。けど、スキルを発動したバシルは、アタック後に同列のリアガードと位置を交換する!タイダルが前列に移動するわ!」

 

さっきのターンと同じ流れだ。つまりまた、テトラドライブの2回のアタックが行える。

 

「テトラドライブのアタック!2回目のアタックにより、このターンもアタック後にリミットブレイクを発動させてもらうわ!(11000)」

 

「そのアタック、ゴーレスキューが守る!」

 

「ツインドライブ!1枚目、ストームライダー バシル。2枚目、ジェットスキー・ライダー。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てグローリーへ!(16000 ☆2)」

 

上手くアタックはヒットしなかった。でも、グローリーのパワーとクリティカルは上げることができている。

 

しかも、まだパワーを上げるチャンスはリサさんに残っている。

 

「この瞬間、テトラドライブのリミットブレイク!2回目のアタックの終了時、リアガードが4回目のアタックを終えた時、CB2と手札2枚を捨てることでスタンドできるスキルを得るわ!」

 

もう1度ツインドライブも発動できる。トリガーゲットのチャンスは、また巡ってきた。

 

「タイダルでアタック!(9000)」

 

「当然、ガードするまでもない」

 

「タイダルはターンに1回、パワーマイナス5000してスタンド!(4000) そのままアタック!(4000)」

 

「バシルと言い、タイダルと言い……そんな貧弱なユニットで、我に傷をつけようなど笑止千万!」

 

でも、これでテトラドライブの条件は満たしている。このアタックに全く意味がなかったわけじゃない。

 

「だったら、テトラドライブの得たスキル発動!CB2、手札2枚を捨てて、テトラドライブをスタンド!」

 

バシルと遊撃のブレイブ・シューターを手札から捨てる。リアガードにはグローリーもいるから、後2回のアタックだ。

 

「つなげてやるのよ……絶対!テトラドライブで、もう1度アタックよ!(11000)」

 

「ノーガードだ」

 

「おい、トウジ。我のガードはいらないのか?」

 

「必要ない。それに……そろそろいるのではないのか?」

 

「……なるほど」

 

いる……?まさか、切り札を握っているってこと?

 

「なら、遠慮なく手札は温存させてもらおう。次のターン、一気に攻めるためにもな」

 

「フフ、案ずるなよワタル。闇の力を纏う暗黒の王者が、この程度の攻撃にひれ伏すなど――」

 

「……ドライブチェックするわよ」

 

「……はい」

 

でも、前のターンでの私の推測が当たっているなら、切り札は恐らくあのユニット。なら、次のターンが勝負となる。

 

私までターンが回るか、その前に決着がつくかの。

 

「ツインドライブ!1枚目、タイダル・アサルト。2枚目、虹色秘薬の医療士官。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復し、パワーをグローリーへ!(21000 ☆2)」

 

「く……ダメージチェック、次元ロボ ダイシールド」

 

「キブロスのブースト、グローリーでアタック!(28000 ☆2)」

 

「……これも作戦のうちだ。我が身に受けてやる!」

 

創生英雄 ゼロと、次元ロボ ダイドリラーがダメージに入る。これが作戦って、どういう……?

 

「ターンエンドよ」

 

 

シオリ・リサ ダメージ5(裏1) トウジ・ワタル ダメージ8(裏4)

(シオリ2 リサ3{裏1})(トウジ4 ワタル4{裏4})

 

 

「我のターン、スタンドアンドドロー」

 

ワタルはカードをドローし、手札を一瞥する。そして、その中の1枚を掲げて……。

 

「やはり持っていたか、同志よ」

 

「来る……!」

 

「奮いし力に正義が宿り、秩序は綻び……崩壊の加速が始まる!クロスブレイクライド!究極次元ロボ グレートダイユーシャ!!(11000)」

 

“Я”と対を成す、究極のダイユーシャにライドした。

 

「ソウルにダイユーシャがいる事で、常にパワーは13000に。さらにブレイクライドスキル!CB1で、パワープラス10000、クリティカルプラス1!(23000 ☆2)」

 

「ふっ、ワタルよ。我の痛みを糧に、その力を使え」

 

「もちろん。その身を賭してつないだコスト……使わせてもらう!」

 

「……っ!さっきからノーガードしていたのは、表のダメージを増やして、コストを確保するため!?」

 

互いに攻めて、守って、協力するだけがタッグファイトじゃない。時に委ねて、自分を犠牲に味方を最大限にバックアップすることも、タッグファイトなんだ……!

 

「さらにこの瞬間、グレートダイユーシャは理を超える!リミットブレイク!!」

 

グレートダイユーシャのリミットブレイクは、確か……。

 

「ソウルの次元ロボが3枚以上あれば、ターン中だけパワープラス2000!クリティカルプラス1!(25000 ☆3)」

 

「クリティカル3!?」

 

「しかもパワーも申し分ないわね……」

 

あの時のダイハートのスキルが、ここに来て活きているなんて……!

 

「この程度で怯えるか。我のグレートダイユーシャの力は、まだまだ上がるぞ」

 

「えっ!?」

 

「ここから少し時間を取る。ダイマグナムのスキル!ソウルに入れ、グレートダイユーシャのパワープラス4000!(29000 ☆3)」

 

上がるって言われても……どこまで上がるのか。

 

「次元ロボ ゴーキャノン(6000)をコールして、スキル発動!自身とダイブレイブをソウルに入れ、グレートダイユーシャにクリティカルプラス1!(29000 ☆4)」

 

「アタックが通れば、そこで即死のクリティカル数ね……」

 

「左前列に次元ロボ ダイドリラー(8000)をコール。スキルでCB1、闇の力を分け与えよ!グレートダイユーシャにパワープラス4000!(33000 ☆4)」

 

「確か、手札にはまだ……」

 

「そうだ、次元ロボ ダイランダー(6000)をコール。ダイドリラーと同じく、CB1で闇を解き放つ!(37000 ☆4)」

 

貯めたコストを使って、グレートダイユーシャのパワーを一気に上げていく。このターンに全てをかけているんだ。

 

「2体目の次元ロボ ダイランダー(6000)をコールし、スキルでCB1、パワー4000をグレートダイユーシャへ!(41000 ☆4)」

 

今のコールで、ワタルは手札を使い切った。パワーは40000超え。クリティカルも脅威の4。しかも、ワタルの場にはコマンダー・ローレルがいる。

 

「グレートダイユーシャよ、マロンを潰せ!(41000 ☆4)」

 

「……ここはノーガード!」

 

「ツインドライブ、1枚目、次元ロボ ダイバトルス。クリティカルトリガー!パワーはグレートダイユーシャへ(46000 ☆4) クリティカルはダイドラゴンへ!(9000 ☆2) 2枚目、ジャスティス・コバルト。クリティカルトリガー!」

 

ダブルクリティカル!?さらに殺傷力が高まってしまう……。

 

「効果は先ほどと同じだ!(ユーシャ 51000 ☆4)(ドラゴン 9000 ☆3) そして、アタックヒットによりローレルのスキル!」

 

マロンをドロップゾーンに置いたのを確認し、ワタルはダイドリラー、ローレル、2体のダイランダーをレストする。

 

「4体の血肉を糧に……再び立て!グレートダイユーシャ!!」

 

「ぐ……!」

 

「そのまま、ガンスロッドにアタック!!(51000 ☆4)」

 

ここは何としても防がないといけない。でも、私の手札は5枚。少し心持たない。しかも、そこにダイカイザーのブレイクライドスキルが加わってくる。

 

「この一撃で、全てを無に帰す!もう諦めろ!!」

 

グレード3は、このファイトであまり出ていない。それに、ダイカイザーを採用している以上、グレード3は多めに入れているだろう。

見えているグレード3だけでも3種類。4枚入れていると考えても12枚。グレード3は……まず出る。

 

だからと言って、数で守るにも私の手札では限界がある。さっきも言ったけど、手札は5枚しかないんだから。

 

……私だけなら。

 

「戦っているのは……」

 

「シオリさんだけじゃないわ!ガード!スーパーソニック・セイラー2体、ジェットスキー・ライダー、タイダル・アサルト、虹色秘薬の医療士官!!」

 

「「何っ!?」」

 

リサさんが手札を全て使い切り、ガードに参加する。これには、トウジとワタルも意表を突かれたようだ。

 

「これはタッグファイト。1人じゃ危なかったけど……支えてくれる仲間がいる!」

 

「くっ……。我がワタルのためにコストを稼いだように、海崎リサも手札を貯めていたというのか!?」

 

でも、ここまでのシールドを温存してくれているとは、正直思っていなかったけどね。

 

「だが、パワーは5000超えただけだ。トリガー1枚でも突破は可能!ダイカイザーのスキルも健在だ!」

 

「なら……ここで新しい仲間の力、使わせてもらうよ!ガード、レディバグ・キャヴァリー!!」

 

「な、ここで……レディバグ・キャヴァリー!?そんなカードまで入れてるんスか!?」

 

「ガードした時、CB1でシールドプラス5000!さらに、光輪の解放者 マルクで完全ガード!コストは霊薬の解放者!」

 

別に霊薬の方をガードに出してもよかったんだけど、そこはレディバグ・キャヴァリーに出番を作ってあげたかったからね。

 

「大量のシールドと、完全ガードを同時に……」

 

「これじゃあ、グレード3を2枚引こうが、ガードは突破できないではないか!」

 

マルクを潰しても、シールド値で勝る。シールド値を削っても、マルクの完全ガードがある。どっちにしても、ガードは成功する。

 

例えグレード3を2枚引き、どちらも狙ってきたところで、こっちのシールドはギリギリ5000上回る。このターンは切り抜けられる。

 

「いや、まだだ。向こうは手札も尽きかけている。ここでクリティカルトリガーを引き、ダイドラゴンにクリティカルを乗せることができれば……」

 

「ダイドラゴンのクリティカルは4……。いいぞ、ワタル!貴様の手で、この戦いに終止符を打つのだ!」

 

いや、そっちから仕掛けてきてるんでしょ。

 

「当然だ。……俺も、そろそろ精神的にもたない」

 

ワタルはともかく、このガードに賭けるしかない。このアタックだけは、絶対に通してはいけないんだから。

 

「ツインドライブ!1枚目、超次元ロボ ダイカイザー。グレード3を引いたことで、ブレイクライドスキル発動!ガードしているマルクを退却!」

 

さらに、マルクの持っていた完全ガードの効果が無効化される。けど、それはいい。問題は……次。

 

「2枚目……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……次元ロボ ゴーレスキュー。ヒールトリガー。ダメージを1枚回復し、パワーはダイドラゴンへ……!(14000 ☆3)」

 

危ない……!けど、このアタックをガードするだけの手札は、私たちにはもう……。

 

「ダイドラゴン!ガンスロッドをやれ!次元ロボのヴァンガードが存在するため、パワープラス3000!(17000 ☆3)」

 

「……ノーガード」

 

ダメージには、ヴィヴィアンと猛撃の解放者、エスクラドの3枚が入る。クリティカルトリガーの猛撃の解放者が落ちたけど、効果は一応ヴァンガードへ。これで8ダメージ……。

 

「ターン終了。次の当時のターンでとどめをさしてやろう」

 

 

シオリ・リサ ダメージ8(裏2) トウジ・ワタル ダメージ7(裏7)

(シオリ5{裏1} リサ3{裏1})(トウジ4{裏4} ワタル3{裏3})

 

 

「私の、ターンだね」

 

耐えきったけど、私の手札は2枚。アルフレッドとシルバーファング・ウィッチだ。ブレイクライドは使えるけど、ヒールトリガーでダメージを回復されている。

 

その上、クロスライドに成功して守りも堅い。ワタルもトウジも、手札はそれぞれ4枚と3枚。このターンで2ダメージを与えるのは、ハッキリ言って厳しい。

 

かと言って、トウジにターンを回すわけにはいかない。守りの手段がほぼ尽きている私たちには、“Я”ダイユーシャのリミットブレイクによるパワーダウンを凌ぐ手段はない。

 

もう、成す術はないのか……?

 

「スタンドアンドドロー……あっ」

 

あなたは……。まさか、この土壇場で来てくれるなんて。

 

しかも、このスキルならもしかして……。

 

「…………」

 

行けるかもしれない。この状況から、勝てるかもしれない。

 

「どうしたのだ?ライドはしないのか?」

 

「……もちろん、するよ」

 

けど、ライドするのは……アルフレッドじゃない。

 

あなたに賭けるよ……全て!!

 

「翔ける想いは天高く!今、絶望は輝きに染まる!!ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!!」

 

ガンスロッドから、新たなユニットへ。それは、解放者には属さない……このデッキの、もう1つの切り札。

 

「光輝の獅子 プラチナエイゼル!!(11000)」

 

このタイミングで来てくれるなんて、本当に嬉しいよ……!

 

「なっ、プラチナエイゼル!?」

 

「解放者のデッキにそいつを入れるんスか……。ハハッ、思い切ったことをするもんっスね、シオリさんは!」

 

トウジも役を忘れ、佐原君に戻ってしまうほど。あなたの力、存分に使わせてもらうよ!

 

「ガンスロッドのブレイクライドスキル!プラチナエイゼルにパワープラス10000!(21000) さらにリアガード3体にパワープラス5000する!」

 

「でも、リアガードは2体しかいないわよ」

 

「わかってる。けど、次のターンが望めない今、やれるだけの事をするだけだよ!アルフレッドとリューにパワープラス5000!(アルフ 16000)(リュー 11000)」

 

少しでもパワーは上げておきたいからね。クロスライドを超えるには、火力は不可欠だ。

 

「シルバーファング・ウィッチ(5000)を左後列にコール!コールした時、SB2で1ドロー!その前に、円卓の解放者 アルフレッド(11000)を、右のアルフレッドの後ろに、疾駆の解放者 ヨセフス(7000)をコール!!」

 

これでリアガードは5体……。準備は整った。

 

「さぁ、行くよ!プラチナエイゼルは、今こそ究極を超える!アルティメットブレイク!!」

 

何気に使うの初めてだな、アルティメットブレイク。プラチナエイゼルの持つスキルは、この状況では大いに活きるはずだ。

 

「CB3、これで私のリアガード5体は、パワープラス5000される!(右アルフ 21000)(ヨセ 12000)(リュー 16000)(左アルフ 16000)(シルバー 10000)」

 

「くっ……」

 

重いコストだけど、その分得られる効果は強力だ。全てのリアガードに、トリガー分のパワーを与えることができるからね。

 

「だが、そのスキルはコストの都合上、1回が限度!その程度のパワーなら、我とワタルのガードは……」

 

「それは普通のファイトならね。けどこれは……タッグファイトだよ。私のダメージにはまだ、3枚の表のカードが残ってる!」

 

「なっ、ま、まさか……!?」

 

1対1のファイトなら、6ダメージで負けとなる。どんなにダメージをためても、表のダメージは最大で5しかたまらない。そこからCB3を発動すると、残りは2。連続では使えない。

 

けど、タッグファイトは9ダメージで負け。表のダメージは、最大で8までためられる。つまり、ダメージの使い方次第では、連続してスキルを発動することもできる!

 

「タッグファイトだからこそできた、アルティメットブレイクの重ね掛け!もう1度……アルティメットブレイク!!」

 

「ターン中に2度目のアルティメットブレイクだと!?」

 

「CB3!コストは貰うよ、リサさん!」

 

「えぇ、やってやりなさい!」

 

私から1枚、リサさんから2枚。これにより、プラチナエイゼルの力を再び発動する。

 

「リアガード5体に、パワープラス5000!(右アルフ 26000)(ヨセ 17000)(リュー 21000)(左アルフ 21000)(シルバー 15000)」

 

「こんなことが……。だが、我のグレートダイユーシャは、簡単には負けん!」

 

「だったら、押し通す!このターンで勝つ!シルバーファングのブーストした、左のアルフレッドでアタック!(36000)」

 

「ここは……ノーガードだ!」

 

ダメージには、次元ロボ ダイシールドが入る。ワタルの手札は全てわかっているから、完全ガードを心配する必要はない!

 

「リューのブースト、プラチナエイゼルでアタック!リューのスキルで、他の解放者のリアガードが3体以上いるなら、パワープラス4000!(46000)」

 

「ダイバトルス、ジャスティス・コバルト、ゴーレスキューで守ろう!」

 

「こちらからは、ダイバトルスとダイドリラー、ゴーキャノンでガード!」

 

トリガー2枚でも突破できないか。けど、トウジの手札は尽きた。それに、ワタルの手札も1枚だけ。それも、ガードには使えないグレード3のカード。超次元ロボ ダイカイザーだ。

 

全てをガードすることを諦め、ヒールトリガーに全てを賭けたんだね……。なら、弾かれないことを祈る以外に、方法は1つ。

 

「ツインドライブ!1枚目、レディバグ・キャヴァリー。2枚目、希望の解放者 エポナ。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全て、右のアルフレッドへ!(31000 ☆2)」

 

「くそ……!」

 

クリティカルを乗せて、過剰にダメージを与えるだけだ!

 

「これで決めるよ!ヨセフスのブーストした、右のアルフレッドで……アタック!(48000 ☆2)」

 

「くっ……くそぉ!ノーガードだ!!」

 

ワタルの最後のダメージは、究極次元ロボ グレートダイユーシャ。勝利の女神が悪に微笑むことはなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「いや~マジ楽しかったっスね~!」

 

「疲れただけだ……全く」

 

文化祭も終わり、私たちはホールの外に置かれているベンチに腰かけていた。劇の事もあって、すぐに帰る体力が残っていないのが理由だ。と言っても、もう夕方だからあまり長くはいられないけど……。

 

「いきなりタッグファイトなんて、本当にびっくりしたよ……。魔王トウジが出てきたときもだけど……」

 

「へっへっへ!サプライズ成功っスね!」

 

「じゃないわよ!私たちまで巻き込んで……」

 

「でも、盛り上がったじゃないっスか」

 

「それは……そうだね」

 

反響も大きかったみたいだしね。それに、私の新しいデッキが活躍できたから、結果オーライなのかな。

 

「お~い、シオリ~!」

 

「あっ、ハヤト君!それにみんなも!」

 

ハヤト君とヒナ、シュンキ君の3人だ。何気に今日会うのは初めてだ。

 

「劇、面白かったよ。君の悪役っぷりもなかなかだった」

 

「……それはどうも」

 

「シオリ凄いね!アルティメットブレイク2連撃決めた時なんかもう……鳥肌立っちゃった!」

 

「ありがとう、ヒナ。私も、あの時は興奮してた」

 

あんなプレイングは、しばらくはお目にかかれないだろうね。

 

「お疲れさんだな。あんたのアクアフォースも、いい仕事してたぜ」

 

「そう言ってもらえると、私も嬉しいわ。けど、1人じゃ勝てなかったと思う」

 

「謙遜すんなって。あんたとは、またファイトしてみたいな。森宮リサさん」

 

「……えぇ。私も、ぜひ相手してほしいわ」

 

今日は時間もないからね。この約束が果たされるのは、いつになるのか。

 

「あ、そういやあんた、グローリーをデッキに入れてるんだな」

 

「えぇ、そうよ。それがどうかしたの?」

 

「いや悪い。ケチをつけるつもりじゃねぇよ。ただ、感心してな。テトラドライブは確かに強力なユニットだが、それだけを頼りにしているわけじゃない。ちゃんと考えてデッキ組んでるんだと思ってよ」

 

確かに、テトラドライブはそれなりにコストもあるし、盤面の状態も要求されるからね。単体じゃパワーが低いのも、欠点と呼べるのかもしれない。

 

「言われてみれば、確かにそうかも。でもね、私はそんなに考えてグローリーを入れてたわけじゃないの」

 

「と言うと?」

 

「単純に……好きなのよ。グローリー、いえメイルストロームが」

 

確かに、森宮さんも私と同じように、ずっとグローリーをデッキに入れていた。切り札が変わろうと、そこだけは変わっていなかった。

 

「力を合わせて、途切れることなく攻めるクランを探していたの。最初はとにかく色んなクランを試したわ。そんな時、たまたま買ったブースターで……出会ったの」

 

「そいつが……」

 

「えぇ。蒼嵐竜 メイルストロームよ」

 

だから森宮さんは、メイルストロームを……。

 

「アクアフォースが私の理想に合ったクランだったこともあって、すぐにデッキを組んだわ。それが、メイルストロームを使い続けるきっかけ」

 

「その時の事、俺はまだ覚えてるっスよ。隣でパック開けて、目を奪われたような顔をしてたっスから」

 

あぁ、そうか。森宮さんと佐原君は、中学からの仲だったね。

 

「だから、メイルストロームの名前を持つグローリーは、入れておきたくてね。本当はメイルストロームがいいんだけど、スキルが心持たないから……」

 

「そうなんだ……。って、あれ?あそこにいるのは……」

 

離れたところからこっちを見て、何やら騒がしくしている3人組の女子の姿が。2人の女子に背中を押され、それを照れ臭そうに拒む1人の女子。

 

その拒んでいる女子に見覚えがあり、私の方から駆け寄って声をかける。

 

「立花さん!」

 

「ほえっ!?ほ、星野さん!?」

 

2人の女子に背中を叩かれ、立花さんは恥ずかしそうに私とみんなの元へ。友達らしい2人は、この後用事があるみたいなので、立花さんを待っていることにするらしい。と言うことは、時間はあまりないってことか。

 

「そんなに恥ずかしがる必要なかったのに。用事がどうとか言ってたけど、大丈夫なの?」

 

「よ、用事は平気です。恥ずかしかったのは……あの2人が、やたらとからかってくるので……」

 

茶化してたってことだね……。

 

「おっ、昨日ぶりだな!あんたも来てたんだな」

 

「どうもです、広瀬さん。今日は友達と一緒に来たんですよ」

 

「それはよかった。また1人だと、僕たちも心配だからね。だろ、ヒナ?」

 

「シュンキ君の言うとおりだよ。あっ、今日の劇面白かったよね!」

 

「はい!あの2人も楽しそうに見てましたよ!特に、あのタッグファイト!」

 

立花さんに指さされ、待っている2人は軽く手を振って会釈する。ご満悦みたいで何よりだ。

 

「フッフッフ……。これは俺の活躍のおかげっスね!」

 

「いや、佐原は負けただろ」

 

「そう言うワタル君も、負けてるじゃないっスか」

 

「お前がそっち側に引き込んだんだろ!?」

 

本当にお疲れ様……小沢君。

 

「えっ?佐原さんに小沢さん、劇にいましたっけ?」

 

「「いた「っス」よ!」」

 

「でも、私が見たのは、星野さんと森宮さんが、よくわからない変な敵と戦ってたくらいで……」

 

「……それが俺たちっス」

 

出たよ、天然ボケ。まぁ、格好もわかりに……あれ?でも小沢君は衣装そのままだったし、わかりやすい気がするんだけどな。

 

「埋めてくれ。もうあの時の記憶が忘れ去られるまで、しばらくどこかに埋めてくれ……」

 

「う~ん、埋めてあげたいですけど、私今スコップとか持っていないので……」

 

「いや、物の例え!真に受けるな!」

 

ここでまた被せてくるのも、天然らしい。

 

「でも、本当にいいファイトでしたよ。星野さんのデッキも、昨日と違って強そうでした」

 

「そう言ってもらえると、私もデッキを組んだ甲斐があったよ」

 

「本当はファイトしたかったですけど、時間がないのでできませんね……。今日はデッキ持ってるのに」

 

「こんな時に限って持ってんスか。もったいぶられてる気がするっス……」

 

まぁまぁ。時間もないみたいだし、仕方ないじゃない。

 

「それじゃあ、ファイトは次に会った時に持ち越しだね。お互いに、自分のデッキで」

 

「次……」

 

「あ、ダメかな?」

 

「いえ……。ただ、いつになるのかわからないなって思うと……」

 

あぁ、そうか……。そう簡単に会えるわけじゃないからね。

 

「でも、いつかまた……ファイトしましょう!約束ですよ!」

 

「うん、約束だよ」

 

「じゃあ指切りしましょう!」

 

「指切りって……。子供みたいだな」

 

「そんな事言わないの、小沢君。もちろんやるんでしょう?シオリさん」

 

いつになるかは、わからないけど……か。

 

「うん。立花さん、小指出して」

 

それでも、この文化祭で私たちは再会できた。会うべきして会ったわけではなかったのに。なら、きっといつか。小指を絡ませ、私たちは誓う。

 

「「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーます!ゆーびきった!」」

 

忘れないように、胸に刻んで。いつか果たす、再戦の約束を。

 


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