つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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さて、1時間遅れでつながりも投稿です。

今回はそこまで動きがないような気が。とか言いながら、意外と動きがあったりもする(どっちだ) あ、ファイトはバリバリしてます。何気に初登場のクランです。

長くなっても仕方ないので、どうぞ。


ride77 示された道

11月もそろそろ終わりを迎え、12月に差し掛かろうとしています。寒さがひどくなってくる中、私たちのやる気は燃え続けていた。

 

「こんにちは~!」

 

「シオリちゃん、いらっしゃい!」

 

とは言っても、基本はサンシャインにいるんだけど。そこで小沢君たちとファイトしている……そんなところだ。

 

「ん、来たわねシオリさん」

 

「うん。……あれ、佐原君は?」

 

森宮さんと小沢君は2人でファイトしていたけど、佐原君は店中探しても見つからない。まだ来ていないのか。

 

「あぁ、佐原か。あいつなら……」

 

「他のショップに行ってるわよ。力をつけるために、武者修行らしいわ」

 

へぇ……。何とも佐原君らしいな。前にショップ巡りを提案してたのも、佐原君だったよね。そういう経験が強さを高めることになるのかな?

 

「……と言うわけでだ。このファイトが終わったら、俺とファイトだ星野」

 

「何言ってるの?このファイトが終わったらなんて……もう勝った気でいるとはね。甘いわよ」

 

「ふん、すぐに終わらせてやる!」

 

「……仲いいなぁ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「これで終わりっス!カオスブレイカー・ドラゴンでアタック!」

 

「くそっ……!ロックされてなかったら、インターセプトと合わせて何とか防ぎきれたのに……。ノーガードだ……」

 

相手のダメージに6枚目のカードが入り、俺の勝ちが決まった。

 

「ショップ大会の優勝者は、佐原トウジ君に決まりました!」

 

で、こんな感じっス。他のショップでの大会には、積極的に参加するようにしている。少しでも経験を積むように、とは言ったものの……。

 

「これからどうするっスかね?」

 

時間はまだ余裕がある。他のショップに行くこともできるっスけど、今から移動しても参加できる大会はなさそうっスね。かと言って、もうこの店には用はないし……。

 

「……む?トウジ殿ではないか?」

 

「ん?その声……おぉっ、ミツル!こんなところで会えるなんて……久しぶりっス!」

 

そんな俺の前に現れたのは、秋予選の時にファイトした忍者ファイター、芹沢ミツル。このショップのお世話になっていたんスか。

 

「久しいな、トウジ殿。しかれど、トウジ殿はこの店には縁がないはず。何ゆえにこの店に?」

 

「自分を鍛える一環ってとこっスかね。色んな店を回って、ショップ大会とかに出てるんスよ」

 

「それはよい心がけでござるな。ならば、ちょうどいい。これも何かの縁。拙者とファイトしてはもらえないだろうか?」

 

「おっ、いいっスね!ミツルとはまたファイトしたいと思ってたんスよ!」

 

秋予選の時も、手こずった相手だ。その実力は折り紙付きだし、いい経験になりそうっスね。

 

「それはかたじけない。拙者、秋予選の敗北を糧に、新たなデッキを組んだのでござる。是非ともトウジ殿に手合わせしてもらいたかったのでござるよ」

 

「そうだったんスか。ミツルも進化してるみたいっスけど、俺だって前とは違うんス。お互いに全力でファイトするっスよ」

 

にしても、新しいデッキっスか。むらくものデッキで、何か軸を変えたのか。

 

それとも……。

 

「では、いざ参ろう!」

 

「上等!スタンドアップ、ヴァンガード!」

 

「立ち上がれ!忍道を行く……先導者!!」

 

その口上は相変わらずなんスね。初めて聞いたときには驚いたもんっス。俺も真似してみようかな……?

 

「俺は、星輝兵 ダストテイル・ユニコーン!(5000)」

 

「リンクジョーカー……前と同じクランでござるな」

 

「って言ってるミツルは……やはりと言うか、何と言うか……」

 

そこにいたのは、前に戦ったむらくものユニットではなかった。それは、最初期から存在していたクランであり、いつしか忘れ去られていたクラン。

 

「忍獣 クロコ!(5000)」

 

「ぬばたま……それがミツルの、新しいデッキっスか」

 

「そうでござるよ」

 

表舞台に永遠に姿を現さないと思われていた、忍をモチーフとしたクラン。それが2年半の月日を経て、ようやく単独でデッキを組めるようになった。

 

……にしても遅すぎるっスよ。俺もぬばたまだけは、ちゃんと使ったことがないっスからね。

 

「むらくもとはまた違ったファイト……見せるでござるよ!拙者のターン、ドロー!月下の忍鬼 サクラフブキ(8000)にライド!クロコは後ろへ、ターンエンドでござる!」

 

「俺のターン!ドロー、獄門の星輝兵 バラジウム(7000)にライドっス!ダストテイルは左後ろへ。続けて星輝兵 カオスビート・ドラゴン(6000)をコール!ブーストして、バラジウムのアタック!(13000)」

 

ま、初めての経験なわけだし……ここは楽しみながらファイトしていくっス!

 

「ドライブチェック、障壁の星輝兵 プロメチウム」

 

「ダメージトリガー確認。忍竜 ドレッドマスター」

 

「ターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ0 ミツル:ダメージ1

 

 

「拙者のターン、ドロー!千本太刀の忍鬼 オボロザクラ(10000)にライド!続けて忍竜 コクジョウ(9000)と、忍竜 ドレッドマスター(7000)をコール!」

 

そもそもぬばたまの特徴って、何だったっスかね……?確か、相手の手札を捨てさせることができたはず。……あんましよくわかってないっスけど。

 

「ドレッドマスターのブースト、コクジョウでアタック!(16000)」

 

「メテオライガーでガードっス!」

 

「む、簡単には通してくれぬか……。なら、クロコのブースト、オボロザクラでアタック!(15000) ドライブトリガー確認、忍妖 オオツヅラ。ドロートリガーでござる!1枚ドローし、パワーをオボロザクラへ!(20000)」

 

ドレッドマスターを警戒してガードしたのに、逆にトリガーで手札を増やされるとは……してやられたっスね。ダメージには、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴンが入る。

 

「どうでござるか?拙者のターン終了!」

 

 

トウジ:ダメージ1 ミツル:ダメージ1

 

 

「まだ序盤っス。俺のターン、スタンドアンドドロー!星輝兵 メビウスブレス・ドラゴン(9000)にライドっスよ!」

 

まぁ、リンクジョーカーにも得意技はある。他のクランには決して真似できない芸当が。

 

「ダストテイルの前に、もう1体メビウスブレス!(9000) カオスビートのブースト、メビウスブレスでアタックっス!」

 

「ノーガードでござるよ」

 

「ドライブチェック、魔爪の星輝兵 ランタン」

 

「ダメージトリガー確認、修羅忍竜 クジキリコンゴウ」

 

「アタックヒット!メビウスブレスのスキルで、コクジョウを……ロック」

 

これで1列の動きは封じた。後ろのドレッドマスターに注意を払う心配はないっス!

 

「ダストテイルのブースト、メビウスブレスでアタック!(14000)」

 

「そこは、オオツヅラでガードするでござる」

 

「1ダメージっスか。ターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ1 ミツル:ダメージ2

 

 

「拙者のターン、スタンドアンドドロー!では行かん!闇に生きる竜よ、相対する者に惑いをもたらせ!ライド!修羅忍竜 クジキリコンゴウ!(11000)」

 

「ブレイクライドのユニットっスか……」

 

「忍獣 タマハガネ(9000)をコール!スキルで、リアガードのメビウスブレスをバインド!」

 

「……何っ!?」

 

何てスキルっスか……!見る限りグレード指定もないし、コストも一切ない。強力すぎるっスよ!?

 

「ちょ、こんなのありなんスか!?」

 

「安心するでござる。この効果でバインドしたカードは、拙者のターンが終われば手札に戻るでござるよ」

 

戻るって言っても、それをさせないようにするユニットがミツルにはいるじゃないっスか……!

 

「クロコのブースト、クジキリコンゴウでアタック!(16000)」

 

あのクロコだ。ブーストしたアタックをヴァンガードにヒットさせると、SB1でバインドゾーンのカード2枚をドロップゾーンにおける。

しかも、クロコはスキル等でソウルに入ることはない。コストさえあれば、次のターンもスキルは使える。

 

「ツインドライブ!1枚目、嵐の忍鬼 フウキ。2枚目、忍妖 マシロモメン。スタンドトリガーでござるな……。クロコをスタンドさせ、パワーはタマハガネへ(14000)」

 

「スタンドトリガーだったのは幸いっスけど……ダメージチェック、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。よし!クリティカルトリガーっス!効果はメビウスブレス!(14000 ☆2)」

 

「互いにトリガーを引いたでござるか。ならば、クロコのスキル!SB1で、バインドされたメビウスブレスをドロップ!」

 

仕方ないっス。ここで無理にガードしたら、それこそミツルの思い通りになってしまう。

 

「タマハガネ、アタックでござる!(14000)」

 

「そうっスね……ここもノーガード!ダメージチェック、ちっ、またインフィニットゼロっスか」

 

「上手くデッキが回っているようでござるな。拙者のターン終了!」

 

このタイミングでコクジョウのロックが解け、リアガードとして戻ってくる。

 

 

トウジ:ダメージ3 ミツル:ダメージ2

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!じゃあ俺も、前には見せられなかったユニットを見せるっスか!」

 

予選の時期がもう少しずれていたら、ミツル相手にも使えていたんスけどね……。何回も言ってるっスけど。

 

「光を切り裂き、闇が渦巻く……混沌なき世界を生み出す、破滅を刻む刃をかざせ!星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン(11000)にライドっスよ!」

 

今回はブレイクライドできなかった。今はもう使っていないっスけど、もしこれがネビュラロード・ドラゴンだったら、後列しかロックできない上にコストも重い。

 

けど、カオスブレイカーなら……。

 

「魔爪の星輝兵 ランタン(7000)をコール!そして、カオスブレイカーのスキル!CB1、手札から1枚捨てて、コクジョウを再び……ロック」

 

コストも軽いし、前列も狙える。安定感は抜群っス。

 

「ランタンのスキルで、相手リアガードがロックされた時、パワープラス2000!(9000) 続けてダストテイルのスキル!CB1、自身をソウルに入れて、クロコを……ロック。ランタンは再びパワーアップ!(11000)」

 

タマハガネをロックするよりは、厄介なクロコをどうにかしたい。しかも、リミットブレイクが使えるようになったら、ロックが解けたリアガードを退却できるっス。

 

「星輝兵 コロニーメイカー(9000)をコール!コロニーメイカーのスキルで、相手にロックカードがあるなら、CB1でデッキから獄門の星輝兵 バラジウム(7000)をスペリオルコールっス!」

 

一気に手札を使って戦力整えたっスけど……これも考えあっての事。ぬばたまの特性もあっての事っスけど、カオスブレイカーのリミットブレイクなら手札も増やせる。そう思っての話だ。

 

「ランタンでアタックっス!(11000)」

 

「サクラフブキでガードでござる!」

 

「次!カオスビートのブースト、カオスブレイカーでアタック!カオスビートのスキル!ロックカードが相手にあるなら、パワープラス5000!(22000)」

 

この専用ブースターも使いやすい。ブレイクライドなしでもこのパワーっスからね。条件自体も、カオスブレイカーのスキルで余裕にクリアできる。

 

「ツインドライブ!1枚目、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。ゲット!クリティカルトリガーっス!パワーはコロニーメイカー(14000) クリティカルはカオスブレイカーへ!(22000 ☆2) 2枚目、無双の星輝兵 ラドン」

 

「く、ダメージトリガー確認!1枚目……忍獣 タマハガネ。2枚目……忍獣 ミジンガクレ」

 

トリガーもなく、完全ガードまでダメージに入った。上々っスね。ここから追撃……!

 

「バラジウムのブースト、コロニーメイカーでアタックっス!(21000)」

 

「オボロザクラでガード!加えて……忍獣 ハガクレ!」

 

ん?ハガクレ……って、そのカードは!?

 

「ハガクレはガードした時、拙者の手札がトウジ殿より少なければ、CB1を払う事で相手に自身の手札を捨てさせるでござる!」

 

「げっ……!」

 

まさかハガクレが出てくるとは想定外。調子に乗って手札を使ったのがいけなかった。俺の手札、もう3枚しかないんスよ……。

 

「……ラドンをドロップ。ターンエンドっス」

 

 

トウジ:ダメージ3(裏3) ミツル:ダメージ4(裏1)

 

 

「拙者のターン、スタンドアンドドロー!いや~、前より腕を上げているようでござるな、トウジ殿!」

 

「ミツルも強くなっているっスよ」

 

むらくもとは違ったファイトスタイルを、もう自分の物にしている。俺たちが強くなっている間にも、周りはもっと強くなっていくんスね。

 

「話は変わるが、トウジ殿はクリスマスカップなるものには出場するのでござるか?」

 

「もちろんっスよ。なんたって、グランドマスターカップの決勝大会の優先参加権がかかっているっスからね!」

 

「そうでござったか。拙者、クリスマスは友人と食事の予定が入ってるのでござるよ。残念ながら、出場は辞退するでござるよ」

 

「ほ~う?友人と言っておいて、本当は彼女とかじゃないんスか?クリスマスに食事って……」

 

「あいや待たれい!それは拙者としては本望でござるが、男だけでむさ苦しく集まるだけでござるよ!」

 

本望って言っちゃうんスね……。しかもむさ苦しい……。

 

「そっ、それはそうと、トウジ殿はクリスマスカップにまつわるあの噂についてはご存知か?」

 

「噂?」

 

「む?知らないのでござるか?今ネットで密かに囁かれているのでござるが、クリスマスカップに、ヴェルレーデを名乗るファイターが出場するかもしれないとの話でござるよ」

 

「……え?」

 

今、ミツルは何て言った?ヴェルレーデが、クリスマスカップに出場……!?

 

「その話、詳しく聞かせてもらえないっスか!?」

 

「うぉっ!?お、落ち着くでござるよ!」

 

「これが落ち着いていられるわけない!俺は、そいつらを探してファイトするのが目標なんスよ!」

 

机に身を乗り出し、俺はミツルに詰め寄る。ここしばらくマークしていたヴェルレーデの情報が、偶然にも手に入ろうとしている。奴の足取りを掴めるチャンスだ。

 

「わ、わかったでござる。まずは一旦、席に座るでござるよ」

 

「あ……悪かったっス。少し取り乱してしまったっスね」

 

「構わぬ。ヴェルレーデは、トウジ殿にとって大切な人であることは理解したでござるからな」

 

俺は椅子に座りなおし、ミツルと向き合う。ヴェルレーデの大会出場。その情報を知るために。

 

「その様子だと説明するまでもないでござるが、念のため。ヴェルレーデは、ビリー・ブレイカーのリーダーとして注目を集めている、素性不明の女子高生でござる。ヴァンガードの腕は確かで、これまで多くの人間を改心させているでござるよ」

 

「なるほど。ヴァンガードって言うから、てっきりノスタルジアの方で広まってるのかと思ったっスけど……そっちっスか」

 

「ノスタルジア……言われてみれば、そのような御仁もいたでござるな。しかし、今ではビリー・ブレイカーの方が有名でござるからな」

 

とは言っても、俺には同一人物にしか思えないっスけどね。確実な理由はないっスけど、やっぱりヴァンガードの絶対的な自信が気になる。

 

どんな人間にだって、完全はあり得ない。その時の対戦カード、心理状態、運の良し悪しすらも勝敗には直結する。自分のプレイングだけでは、どうしても100%勝てるとは言い切れない。

 

にもかかわらず、ヴェルレーデを名乗る人物はヴァンガードを抑止の道具に仕立て上げている。

 

それができるのは、よほどのバカか。負けるのを恐れない屈強な戦士か。いや、話を聞く限り、ビリー・ブレイカーのヴェルレーデはそんな愚行を行うじゃない。そもそも、自ら非行を止めようと動く奴が、わざわざ危険なパフォーマンスを選ぶとは思えない。

 

なら、それが正々堂々と行えるのは、たった一人。本物のヴェルレーデだけ。

 

「それで、ヴェルレーデがクリスマスカップに出場するって言うのは、本当なんスか?」

 

「噂でござるから、半信半疑と言ったところでござるな。情報の発信源も特定はできていないでござるし、偽の情報かもしれないでござるが」

 

「よくあるガセネタに過ぎないって事っスか?」

 

「かもしれないでござる。が、信ぴょう性は高いと思うでござるよ」

 

「……どういう事っスか?」

 

ただネット民が騒いでいるだけなら、嘘と本当の区別もつかずに情報が散乱するだけの可能性が高い。そうとは言えないだけの証拠があるのなら、信じることはできるんスけど……。

 

「噂によるとヴェルレーデは、ある人物とファイトするために出場を決めたような書き込みが多いのでござるよ」

 

「特定の人物とファイトするために、わざわざ大会に……?」

 

「その人物は、涼野サクヤ。CFフォートレスの社長、涼野マサミの娘でござるよ」

 

涼野サクヤ……娘がいたんスね、あの社長。

 

「実名での書き込みもわずかに存在する故、間違いないでござるよ。そして実際、涼野サクヤも、母上が大会の開催者である以上は出場はすると踏んでいるでござる」

 

ヴァンガードを設立した会社の社長の娘に、一体どんな理由でファイトを挑みたいと願っているのか。けど、これだけピースがあれば、不確定な噂も一つにつながる。

 

「ヴェルレーデは、本当に出場するって事っスか……」

 

「あくまでも拙者の推測。他にも同じような結論にたどり着いたネット民は数多くいるらしいでござるが」

 

忍者の格好した奴が、ネット民なんて言葉を使うのに違和感を感じてるっス……。

 

「拙者から話せるのは以上でござる」

 

「……そうっスか」

 

間違いない。ヴェルレーデは、確かにクリスマスカップに出場する。俺たちの敵として、どこかで必ず立ちはだかる。

 

「こんなところで、ノスタルジアの情報を手に入れるなんて思ってなかったっスよ」

 

「こいつは、願ったり叶ったり……。全国への切符を手に入れるどころか、まさかこんなにも早くヴェルレーデとのファイトができるかもしれないなんて……!」

 

俺はなんて運がいいんスかね。ずっと夢見てきた、ノスタルジアとのファイトがすぐそこに現れるとは。シオリさんや最上ナツキとは違う、完全に存在が謎に包まれた、まさに生きる伝説との邂逅。

 

興奮しないわけないじゃないっスか……!

 

「やる気がみなぎっているようでござるな、トウジ殿」

 

「当然!そうと決まれば、少しでも力つけないといけないっスね!」

 

「ならば、拙者もこのファイトでトウジ殿に尽力するとしようぞ!」

 

手札を構えなおしたミツルを見て、俺も数少ない手札を持ち直す。たった2枚しかないっスけど、まったくのゼロじゃない。

 

「行くでござる!闇に生きる竜よ、相対する者に惑いをもたらせ!ブレイクライド!修羅忍竜 クジキリコンゴウ!(11000)」

 

「……っと、ここでっスか」

 

「ブレイクライドスキル!クジキリコンゴウにパワープラス10000!(21000) そして、トウジ殿には手札を1枚捨ててもらい、1枚を裏でバインドしてもらうでござる!」

 

要するに、手札2枚を使えなくすると……。バインドされたカードは、ターンが終われば手札に戻る。クロコもいないし、そこは大丈夫っスけど……もう1枚は完全になくなる。

 

……って、あれ?それじゃあ、今1枚捨てて、1枚バインドってことは……。

 

「ちょ、えぇ!?このスキルで手札を2枚失うってことは、俺の手札なくなるじゃないっスか!?」

 

「はっは!そうでござるな!」

 

ござるなじゃないっスよ……。これじゃあ、ガードなんてコロニーメイカーのインターセプトに頼るしかない。

 

「……ヴァイス・ソルダードはドロップ。こっちのカードは裏でバインド」

 

「タマハガネの後ろに、嵐の忍鬼 フウキ(7000)をコール!クジキリコンゴウで、コロニーメイカーをアタックでござる!(21000)」

 

「俺のヴァンガードじゃなく、リアガードを狙う……?」

 

ブレイクライドでパワーも上がっているのに、どうしてこのタイミングでチマチマ攻めるような真似を……。

 

「トウジ殿はガードできぬでござるから、このままツインドライブ!1枚目、忍獣 タマハガネ。2枚目、修羅忍竜 カブキコンゴウ。トリガーではござらぬな」

 

コロニーメイカーは、アタックがヒットしたことで退却する。これで、俺はこのターンでガードする術を失ってしまった。

 

「フウキのブースト、タマハガネでランタンをアタック!(16000)」

 

「またリアガードを!?ノーガードしかできねぇっスよ!」

 

「ターンエンドでござる。これでリアガードのロックは解ける」

 

コクジョウとクロコは、ロックから解放されてしまった。なら、こっちもそれに合わせて……。

 

「俺もバインドされたカードを手札に。んで、こっちが本命!カオスブレイカーのリミットブレ――」

 

「待つでござる。トウジ殿のダメージは、今何枚でござるか?」

 

「え?何枚って、そりゃあ4ま……っ!」

 

違う!まだ3枚しかない!と言うことは、リミットブレイクによる退却と、手札補充はできない!

 

「だから執拗にリアガードをアタックしてたんスか……!」

 

「今頃気づいても、既に遅いでござるよ」

 

それだけじゃない。ブレイクライドスキルで手札も削った状態でリアガードを狙った。ガードされることを恐れずに、堂々と戦力を潰しにかかっている。俺の手札がないのをいいことに、やりたい放題っスね……。なら、

 

「く……これならどうっスか!バラジウムのスキル!CB1と自身をソウルに入れて――」

 

だが、それすらも叶わない。なぜなら……。

 

「なっ、しまった……!表のダメージが、コストがない……っ!」

 

完全に俺のプレイングが招いた結果だった。これじゃあ、次のターンでカオスブレイカーのスキルを使う事も出来ない!

 

「どうしたでござるか?さっきまでの意気込みはどこに行ったでござるか?」

 

 

トウジ:ダメージ3(裏3) ミツル:ダメージ4(裏1)

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!ライドなし、星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン(11000)をコール!カオスビートのブースト、カオスブレイカー・ドラゴンでアタックっス!(17000)」

 

「ロックカードがないから、カオスビートのスキルは発動しないでござるな。ならば、マシロモメン、タマハガネでガード!トリガー2枚でござる!」

 

トリガー2枚っスか……。ミツルの手札は残り1枚。こっちも手札はわずかと言っても、向こうもそう大差ない。

 

しかも、さっきのドライブチェックで何のカードかはわかっている。修羅忍竜 カブキコンゴウだ。ガードには使えない、グレード3のユニット。

 

つまり、ドライブチェックでクリティカルトリガーを引けば、このターンで3ダメージ与えられる可能性が高い。向こうのダメージトリガーにもよるっスけど、それを気にしたらしかたない。それよりも、まずは駆け引きに持ち込めるかどうかだ。

 

「ツインドライブ!1枚目、魔爪の星輝兵 ランタン」

 

トリガーでも何でもないっスか……。けど、次だ。次で引けば……。

 

「2枚目……星輝兵 ステラガレージ。あぁ~っ!ヒールトリガーっスか~!」

 

トリガーはトリガーでも、ヒールトリガーっスか……。しかも、このタイミングだとダメージは回復できない……。

 

「……パワーはリアガードのカオスブレイカーへ!(16000) バラジウムのブースト、コクジョウにアタックっス!(23000)」

 

「ノーガードでござるな」

 

ここはダメージを狙うのではなく、攻めのスピードを遅らせる。どうせ次にブレイクライドが来るのはわかっている。なら、手札がなくなるのも時間の問題だ。

 

「ターンエンドっス。全然動けなかった……」

 

 

トウジ:ダメージ3(裏3) ミツル:ダメージ4(裏1)

 

 

「拙者のターン、スタンドアンドドロー!では、ここで決めさせてもらうでござるよ!」

 

慈悲はないっスね……。いや、むしろ本気でぶつかってくれる事こそが、慈悲とも言えるっスか。

 

「音なき世界、影もなく現れる鎖で全てを縛れ!ブレイクライド!修羅忍竜 カブキコンゴウ!!(11000)」

 

「ち……!」

 

「ブレイクライドスキル!カブキコンゴウにパワープラス10000!(21000) トウジ殿にはまた、手札1枚を捨ててもらい、手札1枚を裏でバインドしてもらうでござるよ」

 

俺はランタンを捨て、プロメチウムをドロップする。せっかく完全ガードを引いているのに、全く出番を作れない。

 

「忍竜 コクジョウ(9000)をコール!フウキのブースト、タマハガネでアタックでござる!(16000)」

 

「今度はきっちりヴァンガードっスか……。なら、ステラガレージでガード!」

 

けど、これで俺の手札は尽きた。さっきと違って、インターセプトも使えない。後は、黙ってアタックを受け続けるしかない。

 

「クロコのブースト、カブキコンゴウでアタック!この時、カブキコンゴウのリミットブレイクが発動するでござる!」

 

カブキコンゴウのリミットブレイクは……え~と……。

 

「CB1、相手リアガードを全て表でバインドし、バインドゾーンに3枚以上カードがあれば、パワープラス10000!(36000)」

 

「そんなにパワー増やしたところで、俺には手札ないんスよ!?」

 

「いや、そのようなことを申されても……コクジョウもスキルで、バインドされたカード1枚につきパワープラス2000、3枚で6000プラスするでござるから……。(15000)」

 

「嫌味っスか。ノーガード!」

 

カオスブレイカー、カオスビート、バラジウム。3枚のバインドによって、2体のユニットの条件を満たしてパワーが増える。俺に手札が残っていたとしても、ガードするのは至難の技っスね。

 

「ツインドライブ!1枚目……忍獣 ハガクレ。2枚目……忍竜 クロガネ。クリティカルトリガーでござる!」

 

「嘘ぉ!?」

 

「パワーはコクジョウ(20000) クリティカルはカブキコンゴウへ!(36000 ☆2)」

 

クリティカルが出たことで、このターン俺は3ダメージ受けることが確定する。つまり……。

 

「ダメージチェック、1枚目、無双の星輝兵 ラドン。2枚目、星輝兵 ネビュラキャプター。ドロートリガー!1枚ドローして、パワーをカオスブレイカーへ!(16000)」

 

何とかダメージトリガーを発動できた。しかも、ドロートリガーで何とかなけなしの手札を確保できたっスけど……。

 

「……もはやこれまで。焼け石に水でござる。ドレッドマスターのブースト、コクジョウでアタックでござる!(27000)」

 

このアタックを手札1枚で防ぐことは不可能。やっぱり、俺はこのターン成す術がなかったようで……。

 

「あぁ、もう!悔しいっスけど、ノーガードしかないっスよ~!!」

 

6枚目のダメージを許すしかなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「マジで強いっスね、ぬばたま。恐るべしっスよ」

 

「秋予選がもう少し遅ければ、拙者が勝っていたかもしれないでござるな!」

 

「い、いやそれは洒落にならないっスから」

 

「ハッハッハ!冗談でござるよ!」

 

笑えないジョークっスよ……。

 

「けど、こんなことじゃ俺もまだまだっスね。打倒ノスタルジアを掲げているのに、この程度でやられているとは」

 

「ノスタルジア……2年前の大会で、伝説として崇められた3人のファイターでござったな?」

 

「そうっス。俺はそいつらとファイトして、勝つことが目標なんスよ」

 

「そうでござったか。ならば、少し野暮なことを聞くが、トウジ殿はどうしてノスタルジアを狙うのでござる?」

 

俺がノスタルジアに固執するわけっスか……。なるほど。言われてみれば、上手く言葉として口に出したことはなかったっスね。あくまで目標を語っているだけで、理由までは表に出しては来なかった……。

 

「無理に答える必要はないでござる。人には誰しも、知られたくない黒歴史の一つや二つあるでござるからな」

 

「いや、そうじゃないんスよ。何と言うか、上手く説明できる言葉を探してたもんっスから。まぁ、一言で言うなら……」

 

俺はその言葉を口にする。きっと、俺の奥底に眠る感情を説明するには、この言葉が一番だと思うから。

 

わかりやすく、わかりにくく、正しくもあって、間違ってもいるような……矛盾した想いを口にするには、これが最適だと思ったから。

 

「約束……っスかね」

 


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