つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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ようやくクリスマスカップに近づいてきた……。この話を含めて、後2話です。そこからはファイトの大盤振る舞いといきますので、楽しみにして下さい。

後……ヴァンガードzeroが2019年に延期になりましたね。残念ですが、ゲームの質向上のための延期みたいなので、期待していることにしましょう。

では、どうぞ。


ride78 集う場所

12月。暖かさはどこへ行ったのか、寒さだけが容赦なく襲う時期だ。吹く風は冷たい、と言うより痛い。夏にはあまり風が吹かないのに、どうして冬だけ……!なんて考えてしまう。

 

そんなときには、建物のありがたさを本当に感じる。風を妨げてくれるだけでも、大きく違うからね。……寒いのに変わりないけど。

 

「本当、寒いって嫌っスよね」

 

「えっ!?」

 

「え……なんスか、シオリさん。まさか、熱いより寒い方が好きなタイプだったっスか?」

 

「あ、いや、そうじゃないよ」

 

ピンポイントで佐原君が私の独り言(頭の中)に相槌打ってくるから、びっくりしただけだよ……。

 

「でも、冬は好きかな。何だか、ロマンチックな気分になれると言うか……」

 

「ふ~ん。俺なら絶対嫌っスね。寒いし、マジ寒い!」

 

「だったら手を動かしなさい。そうすれば、身体も温まってくるわ」

 

「とは言っても……」

 

迫るクリスマスカップ。もう1ヶ月を切った今、日々強くなるためにサンシャインに通う毎日。そんな中、今日は……。

 

「むらくもか……ヒャッキヴォーグ?見た事ないな?」

 

「今回のЯユニットは、よくわからないのよね。あ、ドーントレスドミネイトドラゴンね」

 

「あっ、これは……ガンスロッド・ゼニスだ!」

 

光輝迅雷。新たなブースターの発売日だった。私たちは、特に私と小沢君は、必死に開封作業をしている。収録されているクランに、ゴールドパラディンとかげろうがあるからだ。

 

「よ~し、俺も!……おっ、SP!しかも全知の神器 ミネルヴァ!こいつはいいっスよ!!」

 

……謎の強運を見せながらも、開封作業は続いていく。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「こんなもんっスかね」

 

「えぇ。小沢君はどう?」

 

「カードについては問題ないな。ただ……」

 

開封作業を終えたワタルは、テーブルの上にカードを並べて何かを考えているようだった。

 

「……今の俺のデッキに無理に入れるカードはないかなって。基本ジ・エンドにブレイクライドするスタイルだし、このドーントレスドミネイト・ドラゴン“Я”も、1~2枚……そもそも採用するかどうかで迷ってるくらいだしな……」

 

ハッキリ言って、オーバーロードを主体とする小沢君には、今回のブースターには採用を検討するようなカードはあまり見られない。もう少し言うと、そこまで目を引くカードがない。

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「それがわからないから困ってるんだ、星野。デッキはそろそろ強化したいけど、これじゃあどう改良していいのかもわからないしな」

 

「確かに、光輝迅雷のカードは概ねドーントレスをサポートするカードばかりっスから……。思い切って、ドーントレスに寄せるってのも……」

 

「いや、俺はあくまでオーバーロードをサポートするためのドーントレスドライブだからな。そこにドミネイトを入れると、また違ってくるだろ」

 

「そうっスね……。使いたいカードがあるなら、やっぱりそっちに合わせた方がデッキとしては結果的によくなるっスからね」

 

が、どうにもうまくいく方法がない。私たちで頭を悩ませていると……。

 

「だったら、あのブースターなんてどうかしら?」

 

「「「え?」」」

 

森宮さんが助け舟を出す。それは、光輝迅雷の少し前に発売されたブースターだった。

 

「デッキも強化したい。そのための新しいカードが欲しい。なら、このブースターはどうかと思ったの。これならかげろうのカードが収録されているし、特定の名称に縛られるカードばかりじゃないわよ」

 

それに、このブースターの看板ユニットは確か、他のユニットとは違った強力なユニットだったはず。オーバーロードのデッキにも、無理なく採用できるはずだ。

 

「そうだな。なら、早速不要なカード売って、買ってくるよ」

 

「そうするっス」

 

小沢君は余ったカードを持って、レジに向かって行った。店長もいるし、後は大丈夫だろう。

 

問題は、私。

 

「シオリさんはデッキの調整はできたんスか?」

 

「ううん。デッキ自体は頭の中でイメージできているんだけど、私そろそろ行かないと」

 

「そうだったわね。今日は、彼らに呼ばれているんだったわね」

 

そう……。今日は、前にここでハヤト君と約束した日。12月の初めに、アテナに来てほしいと言っていたのが、まさに今日の事だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……そう。わかった。今、ハヤトが駅に向かってる。全然変わってないから、すぐにわかるよ。それじゃあ、また後で」

 

誰かに電話していたシュンキが、通話を終えてスマホをポケットにしまう。その表情には、一種の懐かしさが現れていた。

 

「どうだった?」

 

「あ、店長。もうすぐ着くみたいです。元気そうで何よりでしたよ」

 

アテナの店内。そのバックスペースにシュンキはいた。段ボールを持った店長が通りかかり、先ほどの電話について話を聞いている。

 

「それに、シオリさんもそろそろ来ると思います。一応連絡はしたので」

 

「それはよかったよ。前もすぐに帰ってしまったからね」

 

「後は、あいつが来てくれるかどうかなんですけど……」

 

シュンキが電話していた相手とは別の人物。電話はしたものの、完全に無視されている。メールの返信もない。

 

「……まぁ、それは仕方がないね。彼だって、彼なりに思うところがあるんだろう」

 

「けど、あいつにはいつまでも立ち止まってほしくないんですよ。彼以上に辛かったはずのシオリさんだって、またこうしてヴァンガードと向き合っているのに……」

 

「シュンキ君……」

 

「シオリさんが今、こうしてヴァンガードを頑張っている姿を一番見せたい相手は、きっと彼ですよ。峰塚レイジ」

 

その話題になった途端、空気が重くなる。そんな空気を入れ替えるために、シュンキはすぐに話題を変えた。

 

「……それにしても、まさかあれが出てくるなんて思いませんでしたよ。店長が持っていてくれたんですね」

 

「もちろん。これは君たちの大切な物。失わせるわけにはいかないよ」

 

今店長の持っている段ボールこそが、シュンキの言っている例の物だ。それは、正方形の小さめの段ボール。中に入っているのは、決して大きなものではない。

 

「在庫処理もあったし、これは君たちが持っていないといけないものだと思ったからね」

 

「そうですね。これもいい機会でしたし、あいつの都合のいい日まで待ってもらう事になったんですけど……2か月も待たせてしまいましたね」

 

「それくらい構わないよ。他県の高校に通うために下宿しているって話だよね?」

 

「あいつは頭もよかったですから。地方の有名な高校に推薦で入学するくらいの天才でしたからね」

 

それこそが、わざわざ集合日を2ヶ月先まで延ばしていた理由だった。目的自体はすぐに達成できるものだったが、全員がそろう日を決めた結果、今日になったわけだ。1人を除いて。

 

「シュンキ君!まだ電話してるの~?」

 

「もう終わったよ!……じゃあ店長、ヒナさんが呼んでいるので」

 

「またみんな揃ったら呼びに来てよ。それまでは、こっちの整理をしているから」

 

「了解です」

 

店長の元を離れ、ヒナのところに戻ってくる。今日はアテナを臨時協業にして、シュンキたちの貸し切り状態になっている。そこにヒナが1人、椅子に腰かけて足をぶらぶらさせながらシュンキを待っていた。

 

「それで、もう来てるの?」

 

「多分、今頃ハヤトと合流できているんじゃないかな?相変わらずって感じだったよ」

 

ヒナの向かい側に座り、さっきの電話について話し出す。静かな空間に、2人の声が響く。

 

「そっかぁ~。あ、レイジ君はどうだった……?」

 

「……応答なし」

 

「そっか……」

 

友からの連絡をも拒絶し、1人抱えて閉じこもる。そう考えると、まだあの時の状態には戻れていない。6人で笑いあうには、もう少し時間がかかる。

 

それとも、時間をかけたところで、彼の心は戻らないのか。

 

「……何だか暗くなっちゃったね。気分転換にファイトでもどう?」

 

「いいね、そうしようか」

 

2人はデッキを取り出し、ファイトの準備を始める。

 

「じゃあ……始めようか」

 

「うん!シュンキ君には負けないよ~!」

 

「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」

 

ファーストヴァンガードが表になり、静かなファイトが始まった。

 

「銀の茨のお手伝い イオネラ!(5000)」

 

「僕は……バトルシスター えくれあだ(4000)」

 

「先攻はシュンキ君に譲るよ。はい、どうぞ」

 

「じゃあ行こうか。僕のターン、ドロー。サークル・メイガス(7000)にライド!えくれあは後ろに。続けてサークル・メイガスのスキルで、山札の上のカードを確認……」

 

シュンキの使うメイガスは、デッキの上のカードを確認し、固定化することに長けている名称デッキ。解放者や撃退者のようにはいかないが、ほぼ名称でそろえてデッキを組むことができる。

 

「よし、これでターンエンドしよう」

 

「今のよしって言うのが気になるな……。私のターン、ドロー!銀の茨のお手伝い イリナ(7000)にライド!イオネラは後ろに移動!続けてイリナのスキル、デッキの上2枚を見て……ルキエをソウルに。もう1枚をデッキの下に」

 

ソウルにあるカードを駆使してファイトするのがペイルムーンだ。いかにソウルを貯められるかが、勝負の決め手になると言ってもいい。

 

「イオネラのブースト、イリナでアタック!(12000)ドライブチェック、銀の茨の獣使い アナ」

 

「ダメージチェック、ミラクル・キッド。ドロートリガーだね。1枚ドローし、パワーはサークル・メイガスへ(12000)」

 

「だから、よしって言ったのか……」

 

サークルのスキルでチェックしたカードは、ドロートリガーだった。手札を増やされてしまったが、今はそれでいい。

 

「イオネラのスキル!ブーストしたアタックがヴァンガードにヒットした時、デッキの上2枚を見て……マリチカをソウルに。もう1枚はデッキの下に。ターンエンド!」

 

 

シュンキ:ダメージ1 ヒナ:ダメージ0

 

 

「僕のターンだ。ドロー、ライ――」

 

「ごめん!ちょっと遅くなっちゃって……」

 

そのタイミングで自動ドアが開き、中に入ってくる1人の少女。さっきまでサンシャインにいた、シオリだった。

 

「あっ、シオリ!」

 

「シオリさん、早かったね。全然遅れてないよ」

 

「それならいいんだけど……あれ、ファイトしてるの?」

 

私は盤面を見る。まだグレードは互いに1。そこまで時間は経っていないようだった。

 

「みんなが来るのを待つためにね」

 

「えっ、みんなって……!?」

 

「あ……レイジ君以外だけどね」

 

「……そっか」

 

ここにはいないけど、ハヤト君も来るんだ。と言うことは、あの人も来るのか。久しぶりだけど、顔を合わせづらいな……。

 

それに、レイジ君が来ないのは残念だな……。

 

「じゃあ、観客も来たことだし、ファイトを再開しようか。ライド、クォーレ・メイガス(9000)」

 

メイガスのユニットか。ファーストヴァンガードはバトルシスターだけど、スキルを考えて使っているんだろう。

 

「ステラ・メイガス(9000)、リビス・メイガス(7000)をコール。ステラ・メイガスでヴァンガードにアタック!(9000) スキルにより、CB1、カード名を1つ宣言し、山札の一番上のカードを公開する」

 

デッキを固定するだけがメイガスの特徴ではない。予言をモチーフとしたスキルが多いのも、メイガスならではだ。デッキの上のカードを当て、それによってスキルを発動していく。

 

「テトラ・メイガスを宣言……残念。サイキック・バードみたいだ。当たれば手札だったけど、外れたからダメージを1枚表にして、サイキック・バードはそのままデッキの上に」

 

「う……それって外れでも何でもない気がするんだけど!?」

 

うん、確かに……。クリティカルトリガーが出るとわかった上で、どう対処するかを考えないといけないからね……。かなりプレッシャーだけど、最上君とのファイトはこんな感じなんだよね。

 

「……えぇ~い、アナでガード!」

 

「なら、えくれあのブースト、クォーレ・メイガスでアタック!(13000) ドライブチェック、サイキック・バード。クリティカルトリガーだよ」

 

「わかってるよ!」

 

からかい気味にトリガーを見せるシュンキ君に、ヒナは不機嫌そうに反論する。トリガーが出るとわかっていても何もできないのだから、悔しいのもわかる。

 

「パワーはリビスへ(12000) クリティカルはクォーレへ!(13000 ☆2)」

 

「も~!ダメージチェック、1枚目、銀の茨 ブリージング・ドラゴン。2枚目、ダイナマイト・ジャグラー。クリティカルトリガー!効果は全てイリナへ!(12000 ☆2)」

 

「じゃ、リビス・メイガスでアタック!メイガスがヴァンガードなら、パワープラス3000!(15000)」

 

「これも……ノーガード!」

 

手札が悪いのかな?ダメージには銀の茨 ライジング・ドラゴンが入り、成すすべなく3ダメージを受けてしまう。

 

「ターンエンドだ」

 

 

シュンキ:ダメージ1 ヒナ:ダメージ3

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!銀の茨の操り人形 りりあん(10000)にライド!」

 

ここからどう巻き返していくのか……。

 

「パープル・トラピージスト(6000)をコール!スキルでイオネラをソウルに入れて、ソウルから銀の茨の獣使い マリチカ(9000)をスペリオルコール!」

 

ペイルムーンにとって、ソウルは第二の手札。ソウルが充実すれば、それだけやれることも増えてくる。

 

「銀の茨 ライジング・ドラゴン(9000)をコールし、リビス・メイガスにアタック!銀の茨を含むヴァンガードがいるから、パワープラス3000!(12000)」

 

「リビスか……ノーガード」

 

「りりあんでクォーレ・メイガスにアタック!(10000) ドライブチェック、銀の茨のお手玉師 ナディア。ヒールトリガー!ダメージ1枚回復、パワーはマリチカに与えるよ!(14000)」

 

リアガードを退却させつつ、ヒールトリガーでダメージも回復した。これで少しは立て直したことだろう。

 

「ダメージチェック、ヘキサゴナル・メイガス」

 

「トラピージストのブースト、マリチカでアタック!(20000)」

 

「これもノーガード。ダメージチェック、クォーレ・メイガス」

 

「アタックヒット!マリチカのスキルでCB1、ソウルから銀の茨の竜使い ルキエ(10000)をスペリオルコール!」

 

このルキエはマリチカに上書きコールした。そのため、マリチカは退却する。

 

「やられた分はきっちり返すよ!ルキエでアタック!(10000)」

 

「はい、残念。サイキック・バードでガード」

 

……まぁ、そう簡単には通してくれないよね。

 

「う~!ターンエンド!マリチカのスキルで、コールしたルキエはソウルに戻す!」

 

 

シュンキ:ダメージ3 ヒナ:ダメージ2(裏1)

 

 

「僕のターン、スタンドアンドドロー。辿りし光が示すままに、等しく未来を告げよ……ライド!ヘキサゴナル・メイガス!!(11000)」

 

オラクルシンクタンクのブレイクライドのユニットか。まだダメージは3だけど、ファイトが進めば自然と使えるようにはなるはずだ。

 

「えくれあのスキル。CB1、自身をソウルに入れることで、山札の上5枚を確認。その中からグレード3……ヘキサゴナル・メイガスを手札だ」

 

ライド先も確保された。ブレイクライドは確定したね。

 

「クレセント・メイガス(6000)、ダーク・キャット(7000)をコール。ダーク・キャットのスキルで、すべてのプレイヤーは1枚ドローできる。僕は引くけど、ヒナは?」

 

「引かないわけないじゃん」

 

普通なら、無条件に手札が増えるのを黙っているわけないからね。引かない理由はない。

 

「ブリオレット・メイガス(9000)をコールして、スキル発動。SB1して、1ドロー。その後、このユニットをデッキの上へ。続けて、ステラ・メイガス(9000)とロゼンジ・メイガス(3000)をコール」

 

これでデッキトップは、ブリオレット・メイガスで確定した。メイガスにおいて、この手のスキルは重要なパーツとなる。

 

「右のステラ・メイガス、ロゼンジのブーストでアタック。スキルでCB1、ブリオレット・メイガスを宣言し、チェック。当たっているから手札に。ロゼンジのスキルで、ブーストした時パワープラス3000(15000)」

 

「ナディアでガード!」

 

「ダーク・キャットのブースト、ヘキサゴナルでアタック!(18000) ツインドライブ、1枚目、サークル・メイガス。ノートリガーか。けど、これで手札は4枚になったから、ヘキサゴナルのスキルでパワープラス2000だ(20000)」

 

アマテラスのようなスキルだけど、パワー上昇の値が違う。それに、ヒナはノーガードしているから、今はあまり影響はない。

 

「2枚目、バトルシスター じんじゃー。クリティカルトリガーだ。パワーは左のステラ・メイガス(14000) クリティカルはヘキサゴナルへ!(20000 ☆2)」

 

「くっ……ダメージチェック、1枚目、ミラクルポップ エヴァ。2枚目、ポイゾン・ジャグラー。クリティカルトリガー!効果は全てりりあんへ!(15000 ☆2)」

 

「クレセントのブースト、ステラ・メイガスでアタック!(20000) クレセントのスキルでダーク・キャットを宣言。山札の上のカードが宣言したカードなら、パワープラス3000する。……残念、テトラ・メイガスだ」

 

パワーアップには失敗し、公開したテトラ・メイガスはデッキの上に戻っていく。と言うことは、デッキの上は固定されたことになる。つまり……。

 

「ステラのスキル!CB1、テトラ・メイガスを宣言。当然、デッキの上はテトラ・メイガスだ。手札に加えるよ」

 

「スキルを二重に使って、カードを手札に……。けど、ガード!銀の茨 バーキング・ドラゴン!」

 

「ターンエンド。ロゼンジはブーストしたターンの終了時、デッキに戻ってシャッフルされる」

 

 

シュンキ:ダメージ3(裏3) ヒナ:ダメージ4(裏1)

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー!」

 

それにしても、さっきのシュンキ君のプレイングは見事だった。クレセントで確認し、ステラで回収する。

 

手札を増やしたいなら、この方法で。逆にクレセントのスキルを優先させたいなら、ステラ・メイガスのスキルを先に使う事でデッキトップを確定。クレセント・メイガスのスキルを発動できる。

 

みんな強くなってるな……。シュンキ君もだけど、ヒナだって負けてはいない。

 

「弾ける奇跡!溢れる魅力!ショーの開幕を今告げよう!ライド!ミラクルポップ エヴァ!!(11000)」

 

ヒナもブレイクライドで攻めるつもりだね……。

 

「銀の茨の獣使い マリチカ(9000)をコール、ライジング・ドラゴンでアタック!銀の茨を名前に含むヴァンガードがいたら、パワープラス3000だけど……今はいないから、左のステラ・メイガスにアタック!(9000)」

 

「ここは、サークル・メイガスでガード!」

 

「エヴァでアタック!スキルでSC1、パワープラス1000!(12000)」

 

「こっちはノーガードで通すよ」

 

「よ~し、ツインドライブだ!1枚目、ポイゾン・ジャグラー。クリティカルトリガー!パワーはマリチカ(14000) クリティカルはエヴァ!(12000 ☆2) 2枚目、銀の茨の竜女帝 ルキエ“Я”」

 

これでヒナもブレイクライドが確定した。互いに決め手を作ることに成功してはいるけど、先にブレイクライドを使えるのは、次にターンが回るシュンキ君だ。

 

「ダメージチェック、1枚目、ブリオレット・メイガス。2枚目、ロゼンジ・メイガス。ヒールトリガーだ。ダメージは同じだから、回復してパワーをヘキサゴナル・メイガスに与えるよ(16000)」

 

「……なら、トラピージストのブースト、マリチカで左のステラ・メイガスにアタック!(20000)」

 

ヒールで回復された上に、パワーも上がってアタックを通しにくくなったから、機転を利かせてリアガードを狙ったのか。なかなかやるね。

 

「なるほど。リアガードにか……。だったら、じんじゃーでガード!アタックされていないステラ・メイガスでインターセプト!」

 

手札に余力があるからこそ、リアガードを守る選択が取れたのだろう。事実、シュンキ君の手札はガードを終えた今も4枚ある。

しかも内1枚は、さっきステラ・メイガスのスキルで加えたテトラ・メイガス。完全ガードのユニットだった。

 

「トリガーさえ引かれなかったら、ヴァンガードにアタックしたのに~!ターンエンド!」

 

 

シュンキ:ダメージ4(裏2) ヒナ:ダメージ4(裏1)

 

 

「僕のターン、スタンドアンドドロー。……さぁ、行こうか」

 

「来るね、ブレイクライドが……」

 

「辿りし光が示すままに、等しく未来を告げよ……ブレイクライド!ヘキサゴ――」

 

「悪い、シュンキ!ここ来る途中で色々回ってたら、遅くなっちまった!」

 

「ハヤト君!」

 

ライド口上を遮るように、1人の少年の声が大きく店内に広がる。開いた自動ドアの前で、両手に袋を持っていたのは、ハヤト君だった。

 

「おっ、シオリ!もう来てたんだな。悪いな、待たせちまって」

 

「大丈夫だよ。今ちょうど、シュンキ君とヒナでファイトしてたところなんだ」

 

「そいつは面白そうだな。今どうなってるんだ?」

 

「待ってくれ、ハヤト。まずはその荷物を片付けてほしいな」

 

そしてもう1人。ハヤト君に続いて店内に入ってきたのは、どこか物静かでクールながらも、優し気な口調で話す1人の少年。

 

「あっ、そうだった。こいつ、みんなのためにわざわざお土産とか買ってきてくれたんだぜ?そんな気を遣わなくてもいいのによ」

 

「何を言ってるんだ。毎日会えるわけじゃないんだし、せめて手土産くらいは用意させてくれよ。これは俺なりの気持ちさ」

 

「わ~い、お土産だ~!」

 

「ちょっとヒナ……。ごめんね、帰ってきていきなりこんな感じで……」

 

「いいんだ、シュンキ。みんな変わっていないみたいで、俺も嬉しいよ。それに……」

 

彼は荷物を脇に置き、私に近づく。後ろめたい気持ちはあったけど、意を決して向かい合う。

 

「まさかシオリも来ているとは、思ってなかったよ。元気そうで何よりだ」

 

「……私も、変わっていないみたいで嬉しいよ」

 

「そうだね。久しぶり、シオリ」

 

「こっちこそ、久しぶり……リョウヤ君」

 

神原リョウヤ。私の中学時代を共に過ごした仲間の1人であり、ヴァンガードを通じてできた友達でもある。

 

ここに、中学時代のメンバーがそろった。ただ1人、峰塚レイジを除いて。

 


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