今回は少し淡々と進んでしまったかもしれない。そのくせ長い。どうか暖かい気持ちで読んでください(土下座)
あ、バンドリの方もよろしくお願いします。年明けすぐには投稿しようと考えていますので。
では、行ってみましょう。
「それって本当なんスか!?」
「うん……。この大会には、破滅の翼のメンバーも参加していたんだ」
観客席に戻った私たちは、ちょうど2人が戻って来ていたのをいいことに、破滅の翼がクリスマスカップに出場している事、先ほど起こった少女への恫喝行為について伝える。2人も、いい反応は示す事はなかったけど。
「……不安要素しかないわね」
「そうっスね。ま、ファイトすることになったら、全力でぶっ潰すだけっスよ!」
「その前に、敗退してくれると助かるんだけどな」
「……そうだね」
またファイトするのも、私としては止めておきたい。苛立つ気持ちを押さえられなくなるのもあるけど、あぁ見えてファイトの実力は確かだ。ここは他の誰かに倒してもらえるのがベストだろう。
「にしても、森宮さんたちに何もなくてよかったよ……」
「本当だな。さすがに心配したからな。森宮に何かあれば、どうしようかと思ったぞ」
「ばっ……ちょ、何言ってんのよ!?///」
「何を惚気てんスか!?俺の心配は!?」
「「え……まぁ、少しは……」」
「俺っていつからこんな扱いになったんスかね!?」
森宮さんたちの話によると、1回戦が終わってからデッキの調整のためにファイトをしていたらしい。それで電話にも出ず、帰りも遅くなっていたというわけだった。それならそれでよかったよ……。
「さて、次のファイトまでまだ時間もある事っスから、誰か飲み物でも買いに行かないっスか?」
「そうだな。あいつらのせいで休憩し損ねたし、行くか」
「あ、じゃあ私も行こうかな。待ってるのも何だし」
「だったら私も行くわよ。1人だけ置いて行かれるのも嫌よ」
「結局みんなついてくるんスか!?」
まだクリスマスカップは始まったばかり。私たちは、次に備えて束の間の休息を取ることにした……。
***
「……次の試合までは、まだ時間がありそうだな」
その頃ナツキは、自販機で飲み物を買っているところだった。ファイトを観戦しようにも、それだけで疲れてしまう。
何せ、人数が多い。気疲れしているのだろう。ナツキは取り出し口に落ちた飲み物を拾い上げ、どこか座れる場所を探しに行こうとして――。
「へぇ~?誰かと思えば、見慣れた顔じゃないか。レゼンタ?」
「……っ!?この声は……!?」
この声、聞き覚えがある。いや、忘れてはいけない声。奴こそが、俺が探し求めていた張本人なのだから。
「カズヤ……涼野カズヤ!」
「感動の再開が自販機の前とはね~?レゼンタ、いや最上ナツキだったか」
振り返り、俺はその人物と向き合う。やはり、涼野カズヤだ。約束は守ってくれたと言う事か。
「その口調と言い……変わらないな」
「それはそれは、褒め言葉と受け取っていいのかな?」
「……勝手にしろ」
「つれないなぁ?」
食えない男だ。歳は俺と同じくらいか。詳しいことはわからないが、どこか相手を小馬鹿にしたような言動が目立つのは確かだ。
「そんで?俺は母さんに頼まれてここに来たんだけど……ファイトしたいんだって?」
「あぁ。あの時のリベンジ、果たさせてもらう」
「全く、どいつもこいつも、どうしてこんなお遊びにそこまで真剣になれるのかもわかんないけど……そういや、レゼンタさんは何ブロック?」
「Bだ」
「それはそれは奇遇だね……。同じブロックだ」
「何!?」
運がいい。このまま勝ち進めば、いずれはカズヤとファイトができる。故意に仕組まれたものなのか、それとも本当に偶然なのか。
いや……それは気にしなくてもいい。俺にとって重要なのは、カズヤとファイトすることだ。そして勝つ。ただそれだけのこと。
「そのうちファイトできるだろう。ま、面倒だけど仕事だし、勝つつもりではいるから心配はいらないよ。それに、返り討ちにするのも悪くない」
「そうは行くか。今度は俺が勝つ」
「言ってなよ。そうやってやる気になった奴を打ち負かす瞬間も、俺は楽しいからさ」
俺たちは互いに火花を散らしあう。だが、次のカズヤの発言は、奴の戯言として無視するわけにはいかない言葉だった。
「そういや、ヴェルレーデも来てるんだって?だからこっちも、サクヤを大会に送り込んだみたいだけど」
「……サクヤだと?あいつもいるのか」
「その通り。何か目的があっての話みたいだけど、俺にはどうでもいいね。俺だって、ただ大会に出てほしいから出てるだけだし。それ以上の詮索はするつもりもない」
まさかここに来て、カズヤの妹の方もいるとはな。これは予想外だな。
だが、大会に送り込んだとカズヤは言ったな。ヴェルレーデを引き込むことが目的らしいが……どういうつもりだ?
「何を企んでいる?」
「俺に聞いても知らない。俺は自分の意志で動いてはいないからね。知りたかったら母さんにでも聞きなよ。……おっと、そろそろサクヤのファイトが始まってしまう」
「応援にでも行くのか」
「可愛い妹のファイトだからね。どうせ待ってるだけなのもつまんないし、退屈しのぎにはなるだろうし」
そのままファイト観戦を理由に立ち去ろうとするカズヤだったが、数歩歩いたところで振り返る。そして、
「ファイトする時が楽しみだよ。またあんたを屈服させることができそうだ」
「……その言葉に、素直にそうだとは答えられないな」
***
「全く……どうして俺が奢らないといけないんスか!?」
「いいだろうが。高々ジュースで、けち臭いこと言ってるなよ」
「それに、じゃんけんで負けた人が全員分奢りって言いだしたの、佐原君だからね?」
「……その通りで、何も言い返せないっス」
ジュースを買い終え、私たちは観客席に戻ってきた。空いている席を見つけ、ジュース片手に腰を下ろす。
と、今にも起動しそうなMFSを発見。これからファイトが始まるのだろう。けど、そこにいたファイターは……。
「あのMFSにいる人って、破滅の翼のメンバーじゃないの!?」
「俺とファイトした、なるかみ使いじゃないっスか!」
「リンクジョーカーじゃないんだ……」
対する相手は、長い黒髪をなびかせた、大人びた女の子。彼は確か、かなり攻撃的な性格だったはず。3人の中でも口数は多く、荒々しい言動を繰り返していたはずだ。
「対戦相手の人……大丈夫かな」
「まぁ、信じるしかないんじゃないっスか?」
「そうだね……」
そんな会話が繰り広げられていた中、まさにその本人たちは、ファイトの準備を進めていた。だが、彼――江原ゲンタは、かなり苛立っていた。
「くそ……!あぁ、マジでイライラする!あのクソ女、ウゼェ事ばっか言いやがって!」
デッキをシャッフルするのも、かなり乱暴だった。相手である女子のデッキまで、自分のデッキと同様の扱いだ。さすがに気分を悪くしたのか、彼女はゲンタの事を注意する。
「あの、もう少し丁寧にデッキをシャッフルしてもらえませんか?カードが傷つくので……」
「知ったことかよ。ほい、デッキ」
「……っ!?」
何と、ゲンタはあろうことか、デッキを投げて返してきた。カードの束でしかないデッキは、当然投げた勢いで崩れてしまう。空中でカードがばらけてしまい、地面に散乱してしまう。
これには彼女も我慢の限界だった。落ちたカードを拾いながら、彼女は怒りをぶつける。
「ちょっと……何するんですか!?」
「うるせぇんだよ!俺は今むしゃくしゃしてんだ。お前がどう思おうが、俺には関係ねぇんだよ!さっさとストレス発散に付き合えよ、おら!」
「…………」
関係ない。まして、自分の意見だけを通して、他人の事などお構いなしだ。人としてどうかしている。彼女の怒りは、ゲンタの言葉を受けたことでより燃え上がっていた。
「……許せないね」
「あ?」
「人の事は棚に上げて、自分さえよかったら何でもあり……。そんな横暴、放っておけるはずない。私……涼野サクヤが、全力で相手するよ!」
爆発した感情が、今度は彼の怒りに火をともす。ファイトテーブルを殴りつけ、その憤怒をむき出しにしていた。
「あぁ、ウゼェ!もう容赦はしねぇぞ!?デカい口叩いたこと、後悔させてやる!!」
「後悔するのは、あなたの方です!」
口でのファイトもほどほどに、本題のファイトに入る。手札を持ち、今スタンドアップが宣言される。
「行きます!」
「ぶっ潰してやる!」
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
MFSが光を放ち、周りの景色を塗り替える。今回は、とある神殿のようだった。
「レッドパルス・ドラゴキッド!(4000)」
「始まりの伝説 アンブロシウス!(4000)」
ゲンタはかげろう。そしてサクヤは、ロイヤルパラディン。
「ん?あいつ、なるかみじゃないっスよ!?」
「俺と同じかげろうか……。軸はわからないが、クランを変えたという事か」
観客席でトウジが驚く中、ようやくファイトがスタートする。
「私のターン、ドロー。ライド、小さな賢者 マロン!(8000) アンブロシウスは左後ろへ。ターンエンド!」
「速攻で終わらせてやる!ドロー、ディアブルドライブ・ドラゴン(7000)にライド!レッドパルスは後ろに来やがれ!」
その頃ナツキは、シオリたちとは離れた場所でこのファイトを観戦していた。涼野サクヤのファイト。実際には見たことがなかったため、少し興味があったのだ。
「涼野サクヤ。前にヴェルレーデとファイトした時とは、クランが違うみたいだな……」
どのようなデッキかはまだ不明だが、実力は確かだ。何せ、彼女もカズヤ同様にナツキたちノスタルジアを打ち負かした存在。その相手こそ、ヴェルレーデだった。
「あいつは……Bブロックにいるのか。なら、このまま進めばファイトすることもあり得るのか」
そうなれば、気を引き締めないといけない。ナツキはファイトに意識を戻し、その行く末を見守る。
「レッドパルスのブースト、ディアブルドライブでアタック!(11000) ドライブチェック、槍の化身 ター。クリティカルトリガー!効果はディアブルドライブだ!(16000 ☆2)」
ディアブルドライブの炎がマロンを焼き尽くす。ダメージには湖の巫女 リアンと、まぁるがるが入り、まぁるがるのドロートリガーが発動。1枚ドローし、手札を増やした。
「ちっ……だが2ダメージだ。ターンエンド!」
サクヤ:ダメージ2 ゲンタ:ダメージ0
「私のターン、ドロー!ライド、沈黙の騎士 ギャラティン!(10000) 続けてナイトスクワイヤ アレン(7000)をコールし、小さな賢者 マロン(8000)もコール。マロンはアンブロシウスの前へ」
一気に3列にリアガードを展開し、攻めの姿勢を取る。言うならば、速攻の布陣だ。
「アレンでアタック!(7000)」
「ふん、カラミティタワーでガード!」
「ギャラティンでアタック!(10000)」
「そいつはノーガード!さっさとドライブチェックしろ!」
アレンでカラミティタワーを引き付け、空いたところをギャラティンが声を張り上げながら横なぎに斬る。
「……ドライブチェック、決意の騎士 ラモラック」
「ダメージチェック、魔竜導師 キンナラだ」
「アンブロシウスのブースト、マロンでアタック!(12000)」
「ノーガードに決まってんだろ!」
マロンが書物を広げ、何か呪文のようなものを唱える。すると、その手から雷撃が迸り、ディアブルドライブへと激突する。当たった衝撃で爆風が起こり、手応えを感じたマロンは書物を閉じた。
「ダメージチェック、ドラゴンモンク ゲンジョウ。くそっ!無駄ヒールかよ!?」
ダメージがサクヤの方が多いため、ヒールトリガーを引いても回復はできない。ゲンタはそのままダメージゾーンにゲンジョウを置くだけで終わってしまう。
「ターンエンド」
サクヤ:ダメージ2 ゲンタ:ダメージ2
「俺のターン、スタンドアンドドロー!ドミネイトドライブ・ドラゴン(9000)にライド!続けて、ワイバーンストライク テージャス(8000)、ドラゴンモンク ゴジョー(7000)をコール!」
互いにリアガードを展開してきた。ただ、両者の違いはアタック回数を重視するか、1列のパワーを重視するかだ。
「レッドパルスのブースト、ドミネイトドライブでアタック!(13000)」
「アラバスター・オウルでガード!」
「ドライブチェック、バーサーク・ドラゴン。ちっ……トリガーじゃねぇのかよ!なら、ゴジョーのブースト、テージャスでアンブロシウスをアタック!(15000)」
「後列をアタック……」
テージャスは同列限定だが、後列のユニットにもアタックできるスキルを持っている。リアガードを徹底して退却させようと言う考えから採用されたのだろう。
「……ノーガード」
ワイバーンの口から機関銃の雨が放たれる。何発も銃弾を浴びたアンブロシウスは、光となって消えていった。
「ターンエンドだ」
サクヤ:ダメージ2 ゲンタ:ダメージ2
「私のターン、スタンドアンドドロー!白竜の加護よ、尊き剣に宿れ!ライド!白竜の騎士 ペンドラゴン!!(10000)」
ギャラティンの姿が白く変化し、やがてその姿は白く鋭い剣を携えた剣士に変わる。その背後には、一瞬白い竜の姿が見えた。
「ペンドラゴンのスキル!ライドしたターン、パワープラス5000!(15000)」
1ターン限定だが、トリガー分のパワーを補えるのは大きい。
「アレンを後ろに下げ、決意の騎士 ラモラック(10000)をコール!マロンでテージャスをアタック!(8000)」
「ノーガードだ!」
「ペンドラゴンでアタック!(15000) ツインドライブ、1枚目……虹を呼ぶ吟遊詩人。2枚目……幸運の運び手 エポナ。クリティカルトリガー発動!」
ここでトリガーが発動。やや均衡した状況が崩れたか。
「パワーはラモラック(10000) クリティカルはペンドラゴン!(15000 ☆2) 食らいなさい!」
「ダメージチェック、1枚目、ドラゴンダンサー マリア。ちっ!2枚目、ガトリングクロー・ドラゴン。来たな、ドロートリガー!1ドローして、パワーをドミネイトドライブへ!(14000)」
手札は増やされたが、押しているのはサクヤだ。その上、まだ1回アタックがある。
「アレンのブースト、ラモラックでアタック!(22000)」
「そうそうダメージはやらせるかよ!ターでガードだ!」
「……ターンエンドするよ」
サクヤ:ダメージ2 ゲンタ:ダメージ4
「俺のターン、スタンドアンドドロー!ドーントレスドライブ・ドラゴン(11000)にライド!」
まずはブレイクライドの下準備。そのためのドーントレスドライブだ。
「レッドパルスのスキル!CB1、こいつをソウルに入れて、山札の上5枚から……へっ、来たぜ!ドーントレスドミネイト・ドラゴン“Я”を手札に加える!」
ライド先も確保された。しかもドーントレスドミネイトは、クロスライドを狙えるユニットでもある。
「レッドパルスのいた場所に、カラミティタワー・ワイバーン(5000)をコール!スキルでSB2して1ドロー!続けてバーサーク・ドラゴン(9000)をコール!」
「く……リアガードもまだ展開しきれていないのに……」
「お前にとって不都合なら、こっちにとっては都合がいいなぁ!CB2、ラモラックを潰せ!」
バーサークの口から放たれた炎が、ラモラックの姿を灰に変えていく。退却したラモラックをドロップゾーンに置きながら、サクヤは熱風による煽りとゲンタによる煽りで、より不快になっていく。
「ドミネイトドライブ・ドラゴン(9000)をコールし、そのままアタック!ドーントレスを含むヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(12000)」
「湖の巫女 リアンでガード!」
「カラミティタワーのブースト、ドーントレスドライブでアタック!お前よりリアガードが多いことで、パワープラス2000!(18000)」
「ノーガード!」
「ツインドライブ!1枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド。クリティカルトリガー!パワーはバーサーク(14000) クリティカルはドーントレスへ!(18000 ☆2) 2枚目、ディアブルドライブ・ドラゴン」
ドーントレスの火球が、ペンドラゴンを焼き尽くす。強引に剣を振り払って逃れるが、鎧の一部が損傷を受けていた。
「ダメージチェック、1枚目……沈黙の騎士 ギャラティン。2枚目……閃光の盾 イゾルデ」
「ゴジョーのブースト、バーサーク・ドラゴンでアタック!(21000)」
「ノーガード。ダメージチェック……世界樹の巫女 エレイン。ヒールトリガー発動!ダメージは同じだから、1枚回復してパワーをペンドラゴンへ」
ヒールトリガーによって、ダメージが再び並ぶ。これでまた均衡した状況になった。
「くそっ、ヒールなんか引きやがって……!ターンエンドだ、おらぁ!さっさとターン回せ!」
サクヤ:ダメージ4 ゲンタ:ダメージ4(裏3)
「まだそんな言葉を使って……!私のターン!スタンドアンドドロー!」
リアガードの状況、手札の面。全体的に見て、不利なのはサクヤの方だ。だが、
「ライドはしない。けど、ここでペンドラゴンのリミットブレイクが発動する!」
ダメージは4枚。つまり、リミットブレイクが使える。もちろんゲンタもダメージは4枚だが、今はサクヤのターンだ。
「デッキの上から5枚見て、グレード3を1枚探してライドする!……よし、白竜の加護よ、尊き剣に宿れ!スペリオルライド!白竜の騎士 ペンドラゴン!(10000)」
手札にライド先がなくても、新たなユニットにライド出来る。この場合、一見すると同じユニットにライドしただけにしか見えないが……。
「ペンドラゴンのスキル!ライドしたターンは、パワープラス5000!(15000)」
「またかよ、くそっ!」
ペンドラゴンには、ライド時のスキルがある。しかも、次のターンに回ればリミットブレイクは再使用できる。そう考えると、むしろこのライドはありがたい。
「ペンドラゴンの後ろに、虹を呼ぶ吟遊詩人(6000)、マロンの後ろにナイトスクワイヤ アレン(7000)をコール!前列に何もいない列のアレンを前に移動し、そのアレンのスキル!CB1でパワープラス1000!2回使ってパワープラス2000!(9000)」
アレンにオーラが宿り、闘志は高まったと言わんばかりに笑みを浮かべる。
「そのアレンで、ドミネイトドライブにアタック!」
「させねぇよ!ディアブルドライブでガード!」
アレンの剣は阻まれたが、十分に役目を果たした。リアガードを守るために手札を使わせること、それこそが目的だったのだから。
「吟遊詩人のブースト、ペンドラゴンでアタック!(21000)」
「ブルーレイ、ゲンジョウでガード!トリガー2枚引かねぇと、アタックは通らねぇよ!」
「ツインドライブ。1枚目、閃光の盾 イゾルデ」
これでゲンタは完全ガードが確定した。2枚目でトリガーを引いても、効果はリアガードにしか与えられない。
「2枚目、世界樹の巫女 エレイン。ヒールトリガー発動!ダメージを1枚回復して、パワーをマロンに!(13000)」
ブルーレイの射撃と、それを援護するゲンジョウによって、ドーントレスドライブの元に近づけないペンドラゴン。それならばと、マロンが書物を広げ、魔法による遠距離攻撃を試みる。
「アレンのブースト、マロンでバーサーク・ドラゴンにアタック!(20000)」
「……バーサークだと!?」
「そう言ってる。で、ガードはどうするの?」
「ち……ノーガード!」
無理にダメージを与えても、ダメージは5で止まってしまう。なら、リアガードを狙う方がいい。その判断は、ゲンタの反応を見る限りは正解だったみたいだ。
「ターンエンドだね」
サクヤ:ダメージ3(裏1) ゲンタ:ダメージ4(裏3)
「くそっ、俺のターン、スタンドアンドドロー!」
手札にグレード3があることはわかっている。このターンでブレイクライドされてしまうことは確定だ。
「ウゼェな……!戦う気力が少しも衰えていないってのは!」
「当然だよ。まだ諦めるような場面じゃないから」
「そうやってやる気全開でいられるのも今のうちだぜ?こいつでお前の闘志を折ってやるよ……!」
「そのカードは……」
ゲンタは1枚のカードを掲げる。それは、ドーントレスドライブの闇の力を解き放つカードだった。
「弱者の上に立ち、強者たる威厳を示す竜!滅びの炎で、闘志を砕け!!クロスブレイクライド!ドーントレスドミネイト・ドラゴン“Я”!!(11000)」
ドーントレスの姿が黒く染まっていく。背中には巨大な黒輪を宿し、完全に別の存在と化していた。
「ソウルにドーントレスドライブがいることで、常にパワーは13000となる!ブレイクライドスキルで、ドーントレスドミネイト“Я”にパワープラス10000!(23000) スキルを与える!」
サクヤにはまだダメージ面で余裕があるが、このブレイクライドスキルはかなりの殺傷力がある。その余裕も、いつまで持たせることができるのか。
「ゴジョーのスキル!レストして手札1枚破棄!1ドローだ!その後、ドーントレスドミネイト・ドラゴン“Я”(11000)をコール!」
ガトリングクローが手札から捨てられ、新たにカードをドローする。吉と出るのか凶と出るのか。それはゲンタ本人にしかわからない。
「行くぜ……!ドーントレスドミネイト“Я”のリミットブレイク!CB1、ゴジョーをロックして、ドライブチェックでグレード1以上のリアガードが出るたびに、相手のリアガードを1体潰してパワーを3000上げるスキルを獲得!」
サクヤのリアガードは全てグレード1。ドーントレスドミネイト“Я”の対象となり、かなり危険な状態となっている。
「ヴァンガードのドーントレスドミネイト“Я”でアタック!ブーストはしねぇよ!(23000)」
「……ノーガード!」
「なら、お楽しみのドライブチェックの始まりだ。1枚目、ドラゴンダンサー マリア。グレードは1だ。よって、リミットブレイクの効果で吟遊詩人を退却!パワープラス3000!(26000)」
ドーントレスドミネイト“Я”が、無作為に上空から炎の雨を降らす。その一端が吟遊詩人に直撃し、爆発して消えていく。
「2枚目、ブルーレイ・ドラゴキッド。グレードは0だが……クリティカルトリガーなんだよなぁ!パワーはドミネイトドライブへ(14000) クリティカルはヴァンガードへ!(26000 ☆2)」
降り注ぐ炎を、ペンドラゴンは剣を盾にすることで耐え抜いて見せる。だが、その鎧には少しずつ傷がついていく。
「ダメージチェック……1枚目、決意の騎士 ラモラック。2枚目、まぁるがる。ドロートリガー発動!1枚ドロー、パワーはペンドラゴン!(15000)」
「ちっ……だが、それぐらいじゃ止められねぇよ!ブレイクライドスキル!手札3枚を捨てて、ヴァンガードをスタンドする!」
ゲンタの残り手札は3枚。その中には完全ガードも含まれていたが、再アタックを優先させた結果だ。
「トリガー引いて、まだいけるとか思ってんのなら……その甘ったるい考えを潰してやるよ!カラミティタワーのブースト、ドーントレスドミネイト“Я”でアタック!(31000 ☆2)」
炎の雨が再びペンドラゴンを襲う。咄嗟に剣を前に出すも、それで防ぎきれるとは到底思えない。それは、ペンドラゴン自身にもわかっていたはずだ。
「ははっ、お前のダメージは5。このアタックで、終わらせてやるよ!」
騎士としての誇りか、最後まで守りの姿勢を崩さない。だが、炎は今にもペンドラゴンを捉えて焼き尽くそうとしていて――。
「……あなたはもう勝った気でいるんだね。閃光の盾 イゾルデで完全ガード!コストは小さな賢者 マロン!」
イゾルデが腕に装備された盾を展開し、炎を軽々と防ぐ。その隙に、ペンドラゴンは軽く頭を下げて後ろに下がる。
「んだと!?くそっ……ツインドライブ!1枚目、槍の化身 ター。クリティカルトリガー!効果は全てリアガードのドーントレスドミネイト“Я”へ(16000 ☆2) 2枚目、ドラゴンモンク ゲンジョウ。ヒールトリガー!効果は同じ奴だ!(21000 ☆2)」
リミットブレイクは発動しなかったが、ダブルトリガーは厳しい。その上、まだ2回のアタックを控えている。
「ドミネイトドライブでアタック!ドーントレスを含むヴァンガードは健在!よって、パワープラス3000!(17000)」
「エレインでガード!」
「ドーントレスドミネイト“Я”でアタック!こいつでいい加減諦めろ!!(21000 ☆2)」
「……エポナでガード!」
「な、何!?」
エレインとエポナが、それぞれ迫る敵ユニットの進路を防ぐ。退却をされてしまったものの、ペンドラゴンが岩陰に隠れるだけの時間は稼ぐことができたようだ。
「……ターンエンドだ!」
サクヤ:ダメージ5(裏1) ゲンタ:ダメージ4(裏4)
「私のターン、スタンドアンドドロー」
リアガードが焼け野原にならなかったことは幸いだが、クロスライドされている以上、パワーラインをどうにかしないことにはアタックは厳しい。
「とどめはさせなかったが……そうやって足搔いてくれる方が、潰し甲斐があるってもんだ!次のターンで、今度こそ終わりにしてやるよ!」
「……哀れだね」
「あぁ!?」
「そうやって自分の事だけしか見えていない。次のターンなんて、あなたには来ないよ。絶対に」
ファイト前の態度、そして煽るようなファイト中の言動が、サクヤの限界を超えて静かな炎を生み出していた。このターンで決める。そのつもりでサクヤは、ターンを進める。
「ライドなし。ペンドラゴンのリミットブレイク!デッキ上5枚の中のグレード3にライドする!」
5枚のうちの1枚を手に取り、そしてサクヤは確信する。このターンでの勝利は、ほぼ確定したと。
「邪を滅せよ!希望を阻むものに、制裁の光を与えよ!白銀の竜!!スペリオルライド!」
ペンドラゴンの後ろに一瞬竜の姿が見え、その直後にペンドラゴン自身が竜の姿へと変わっていく。それは、ライド口上さながらの白銀の竜。
「サンクチュアリガード・ドラゴン!!(11000)」
聖域を守りし竜が今、ドーントレスドミネイト“Я”の前に降り立った。
「サンクチュアリガードのスキル!ライドした時、手札1枚を捨て……デッキから虹を呼ぶ吟遊詩人(6000)をスペリオルコール!」
アラバスター・オウルが手札から捨てられ、代わりのリアガードがデッキから登場する。コール対象はグレード1以下限定だが、このサンクチュアリガードの前では、むしろ好都合だ。
「さらにサンクチュアリガードのリミットブレイク!グレード1以下の私のリアガード1体につき、パワープラス3000!4体でパワープラス12000!(23000)」
低グレードのユニットを並べていたとしても、それを力に変えることができる。盤面に左右されやすいが、強力なリミットブレイクだ。
「アレンを後ろに、沈黙の騎士 ギャラティン(10000)をコール!後ろに下げたアレンのスキル、CB1でパワープラス1000!(8000)」
パワーラインを上げ、ガードに必要なシールド値を上げてくる。だが、これで終わりじゃない。
「マロンの後ろのアレンも、同じスキルでパワープラス1000!3回使用して、パワープラス3000!(10000)」
これで左右のリアガードはどちらもパワー18000だ。クロスライドの高パワーにも対応できる。
「アレンのブースト、ギャラティンでアタック!(18000)」
「ターでガード!」
「吟遊詩人のブースト、サンクチュアリガードでアタック!吟遊詩人のスキル!サンクチュアリガード・ドラゴンをブーストした時、SB1でパワープラス5000!(34000)」
ギャラティンがターを引き付けている間に、サンクチュアリガードが咆哮を放つ。眩い閃光がドーントレスドミネイト“Я”を包むが、ガードに参加するユニットは……。
「ノーガード!」
いない。だが、まだダメージは4。これだけでは決め手には欠ける。
「クリティカルトリガーさえ出なければ……!」
「引けばいいんだよ、引けば。ツインドライブ!1枚目、ナイトスクワイヤ アレン。2枚目、幸運の運び手 エポナ。クリティカルトリガー発動!」
「何!?」
そのトリガーに、ゲンタは動揺を隠せない。もっとも、サクヤ自身もまさか本当にトリガーが出るとは思っていなかったが。
だが、これでダメージは2。サンクチュアリガードの咆哮に飲まれたドーントレスドミネイト“Я”は、MFSから姿を消していった。