もうクリスマスとは無縁の時期ですが、楽しんでもらえたらと思います。不定期更新ですが……。
この小説はもちろんですが、時空の先導者やバンドリの小説も見てもらえると嬉しいです。
では、どうぞ。
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
ハヤトとコウセイのファイト。始まる前から軽く口頭でのファイトを繰り広げていたが、その中でハヤトは、コウセイに対する憤りを感じていた。
(あいつは俺が倒す。孤独を軽く見ているあいつに、一発お灸を据えてやらないといけないしな)
支えもなく、1人で絶望に沈み、手を差し出しても触れる事の出来ない闇を、お前は本当に知っていると言い切れるのか?いや、多分言えないね。
軽々しく孤独を語るなよ。安易に扱うものでもない。どうしても、あの痛ましい姿と自分の無力さを思い出してしまうからな……。
「マイクロホール・ドラゴキッド(4000)」
「……よ~し、行くぜ!獣神 ライオット・ホーン!(5000)」
だが、ファイトはファイトだ。熱くなりすぎず、けど自分のペースを保ちながら。俺は俺のファイトで、次に進んで見せる。
舞台は小惑星。あいつの……いや、こっちの国家にも合わせてあるのか。こいつは面白いファイトになりそうだ!
「行くぜ!俺のターン、ドロー!獣神 ブランク・マーシュ(7000)にライド!ライオットは左後ろへ。ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー。ライド、グラヴィティボール・ドラゴン(7000) ソウルにマイクロホールがあることで、常にパワー8000に。今度はマイクロホールのスキル。グラヴィティボールにライドされた時、デッキの上から7枚見て……シュバルツシルト・ドラゴンを手札へ」
連携ライドによって、ライド先……しかもグレード3が手札に入ったか。ペルソナブラストも使えたはずだし、厄介って感じだな。救いがあるなら、グレード2の奴が手札にないことだが……。
「小惑星のレディガンナー(6000)をコールし、ブーストしてグラヴィティボールのアタック。ドライブチェック、飛翔の星輝兵 クリプトン」
黒い球体がグラヴィティボールの手から放たれ、ブランク・マーシュの体を後方へと大きく飛ばす。
「ダメージチェック、獣神 ゴールデン・アングレット」
「レディバトラーのスキル。ブーストしたアタックがヒットしたことで、手札1枚を捨てて1枚ドローする。ターンエンド」
ハヤト:ダメージ1 コウセイ:ダメージ0
「俺のターン、ドロー!獣神 ブレイニー・パピオ(9000)にライド!さらに獣神 ヘイトレット・ケイオス(9000)をライオットの前にコール!」
いまだ飛ばされたブランク・マーシュが、空中でその姿を変える。変動の勢いでスピードを殺し、ブレイニー・パピオは地面に降り立った。
「アタックだ!ライオットのブーストした、ヘイトレット・ケイオス!獣神のヴァンガードがいる事で、パワープラス3000!(17000)」
「……なるほど。お前の狙いはわかった。ノーガードだ」
ケイオスの回し蹴りが、見事にグラヴィティボールの横腹に命中する。威力に耐え切れず、グラヴィティボールは地面に倒れ、砂煙が上がる。
「ダメージチェック、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン」
「ブレイニー・パピオでアタック!(9000)」
背中からミサイルを放ち、真っ直ぐに砂煙へと向かう。やがて爆発が起こり、新たな砂煙を巻き起こした。
だが、その煙が晴れた時には、先ほどまではなかった者の姿が……。
「……ガードだ、星輝兵 ステラガレージ」
「ちっ、ドライブチェック。獣神 デススティンガー。クリティカルトリガー!効果は……仕方ないな。ブレイニーへ!(14000 ☆2)」
「ふん。単調なファイトスタイルだな」
「そのまっすぐさが、俺の取り柄なんでね。ターンエンド!」
ハヤト:ダメージ1 コウセイ:ダメージ1
「俺のターン、スタンドアンドドロー。ライド、グラヴィティコラプト・ドラゴン(9000) ソウルにグラヴィティボールがある事で、常にパワーは10000に。さらにグラヴィティボールのスキル発動。相手リアガードを1体ロックする」
ヘイトレット・ケイオスの周りを黒輪が包む。片膝をつき、そのまま身動きが取れなくなった。
「飛将の星輝兵 クリプトン(10000)、黒門を開く者(7000)をコール。黒門のスキルで、手札1枚を捨ててドローだ」
相手リアガードが2体以下なら発動できるスキル。不要な手札を捨てて、戦力を整えるプレイングに徹しているようだった。この後には、再びレディガンナーのスキル発動のチャンスもある。
「レディガンナーのブースト、グラヴィティコラプトでアタック(16000) ドライブチェック、パラダイスエルク」
「トリガーが出なかっただけ、よしとするか。ダメージチェック、最強獣神 エシックス・バスター・エクストリーム」
「やはりそう言うデッキか。レディガンナーのスキルで、手札1枚を捨ててドロー」
コストとして、さっきドライブチェックで引いたパラダイスエルクを捨てる。このパラダイスエルクも、ドローできるスキルを持つ。ドローに重点を置いているのは明らかだった。
「黒門のブースト、クリプトンでアタック!(17000)」
「そうだな……。ここはノーガード!ダメージチェック、獣神 バンパウロス。ドロートリガー!1枚ドローして、パワーはブレイニーへ!」
「ターンエンドだ」
ハヤト:ダメージ3 コウセイ:ダメージ1
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
ヘイトレット・ケイオスがロックされ、1列は使えない。リアガードの質が重要となるクランにとっては、リンクジョーカーのような妨害系のクランは天敵としか言いようがない。
けど……まだすべてが封じられたわけではない。
「陰陽宿す獣の拳よ!揺れ動く未来をつかみ取れ!!ライド!獣神 エシックス・バスター!!(11000)」
「ブレイクライドか……」
「獣神 ブレイニー・パピオ(9000)と、獣神 マックス・ビート(7000)をコール!もういっちょおまけだ。獣神 ブランク・マーシュ(7000)をコール!」
いくらリンクジョーカーだからと言って、リアガードを出すことをためらっていては勝てない。やるべき時には一気に攻めないとな。俺はチマチマ考えるのは得意じゃないし。
それに、俺にはリンクジョーカー用の対策もあるからな。
「マックスのブースト、ブレイニーでアタック!(16000)」
「……ノーガード」
ダメージにはバイナリスターが入る。トリガーじゃないな。なら、さっきは使えなかったことだし、使わせてもらうとしますか。
「お預け食らったブレイニーのスキル!アタックがヴァンガードにヒットしたことで、CB1でマックス・ビートをスタンド!」
これでマックス・ビートはもう1度ブーストができる。が、その前のブレイニー・パピオがレストしている以上、実質何もできないのと同じだ。
「さらにマックスのスキル!こいつがスタンドした時、CB1でブレイニーをスタンド!」
「……厄介な事を」
だが、これでブレイニーもスタンドし、1列の機能が完全に復活する。1列をロックされていようと、他で補う事で対処することができた。ノヴァグラップラーの特性であるスタンドを上手く駆使したコンボだ。
「ブランク・マーシュのブースト、エシックス・バスターでアタック!スキルでパワープラス2000!(20000)」
「……先ほどのようなプレイングはしないか。ブランク・マーシュにも、リアガードをスタンドできるスキルがあるだろう」
「生憎、俺もそこまで単純じゃないんでね。臨機応変に対応するくらいの柔軟性は持ってるって事だ」
「……ふん。ノーガード」
「よっしゃ、ツインドライブ!1枚目、獣神 ゴールデン・アングレット。2枚目、武闘戦艦 プロメテウス。クリティカルトリガー!パワーはブレイニー(14000) クリティカルはエシックス・バスターへ!(20000 ☆2)」
エシックス・バスターが地を蹴り、グラヴィティコラプトに拳骨をくらわせる。地面を削りながら勢いを止めるコラプトの頭上には……大量のミサイルが。
「ダメージチェック、小惑星帯のレディガンナーと、星輝兵 ネビュラキャプター。1枚はドロートリガーのため、発動させてもらう。1ドローし、パワーはグラヴィティコラプトだ(15000)」
「まだだぜ、マックスのブースト、ブレイニーで2度目のアタック!(21000)」
「さすがに通さん。星輝兵 ヴァイス・ソルダードでガード」
ミサイルの雨を受け止めたのは、コラプトではなくソルダード。アタックが通ることはない。
「くっ……。だが、こんだけダメージ与えたら十分か。ターンエンドだぜ!」
ヘイトレットのロックも解け、ひとまず次のターンに備えてターンを渡す。
ハヤト:ダメージ3(裏2) コウセイ:ダメージ4
「俺のターン、スタンドアンドドロー。……さて、そろそろ行くか」
「ってことは……来るか」
「虚空より生まれし絶望の竜!全てを封じ、孤独の中で苦しむ裁きを与えるがいい!!ライド!シュバルツシルト・ドラゴン!!(10000)」
ブレイクライドはせず、直接ライドしてきた。マイクロホールから始まる連携ライドの完成形だ。
「ソウルにグラヴィティコラプトがあることで、パワーは11000になる。そして……シュバルツシルトのリミットブレイク!」
「何!?ライドしたばっかだろうが!もう使えるのかよ!?」
「ドロー運がよかっただけだ。が、素直に感謝しておくとしよう。CB3、さらにペルソナブラスト。ヘイトレット、ブレイニー、ブランク・マーシュをロック!シュバルツシルトにパワープラス10000!クリティカルプラス1!(21000 ☆2)」
シュバルツシルトの手から3つの黒輪が放たれ、3体の闘志の動きを縛り付けていく。いわゆるV字ロックの状態となり、これでハヤトはヴァンガードでしか行動ができなくなってしまった。
「レディガンナーのブースト、シュバルツシルトでアタック!(27000 ☆2)」
まだダメージは3だが……下手にノーガードしてクリティカルが乗れば、まず即死は免れない。なら、ここは素直に……。
「獣神 ソーラー・ファルコンで完全ガード!コストはゴールデン・アングレット!」
安全な道を選ぶ。後続のリアガードは1体だけだし、そっちのアタックをノーガードすればいい。
「ツインドライブ。1枚目、グラヴィティボール・ドラゴン。2枚目、星輝兵 ステラガレージ。ヒールトリガー。ダメージを回復し、パワーをクリプトンへ(15000)」
ダメージが回復されたか……。
「黒門のブースト、クリプトンでアタック!(22000)」
「そっちはノーガードだ!ダメージチェック……ちっ、獣神 ソーラー・ファルコン」
ダメージが回復された以上、またペルソナブラストを使われるかもしれない。その時のために完全ガードは握っておきたかったが、ここでダメージに落ちるとは。すぐにでも来てくれると助かるんだけどな。
「ターンエンド」
ハヤト:ダメージ4(裏2) コウセイ:ダメージ3(裏2)
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
動けるのは、単体では無力に等しいヴァンガードだけか……。なら、
「陰陽宿す獣の拳よ!揺れ動く未来をつかみ取れ!!ブレイクライド!獣神 エシックス・バスター!!(11000)」
単体でも強力なヴァンガードにしてやればいいってだけだ!
「ブレイクライドスキル!エシックス・バスターにパワープラス10000!(21000) さらにスキルを与えるぜ!」
が、そのスキルはアタック時に前列のリアガードを2体スタンドするもの。2体ともロックされている今、意味を成すことはない。
「と、これ以上はできる事がねぇな……」
「ブレイクライドでパワーを上げたか。だが、結局はその程度だ。1人でやれることなど、たかが知れている」
そうかよ……。けど、そう言って何もやらないんじゃ、変わるものだって変わらない!ほんの少しの変化をもたらすことだってあるんだ!
「エシックス・バスターでアタック!ブレイクライドスキルは放っておいて、エシックス・バスターの元々持ってるスキル!パワープラス2000!(23000)」
「ノーガードだ」
「ツインドライブ!1枚目、武闘戦艦 プロメテウス。クリティカルトリガー!効果は全てエシックス・バスター!(28000 ☆2) 2枚目、獣神 バンパウロス。ドロートリガー!1枚ドローして、パワーはエシックス・バスターへ!(33000 ☆2)」
運よくダブルトリガー。しかも1枚はクリティカルトリガーだ。これで王手となったな。
「ダメージチェック。1枚目、グラヴィティコラプト・ドラゴン。2枚目、虚ろな双刃 バイナリスター」
「トリガーもないし、リアガードも動けたら絶好の機会だったんだけどな……。ターンエンド!」
3体のユニットのロックが解ける。だが、その様子を見守るシュバルツシルトには、焦りは少しも感じられなかった。
ハヤト:ダメージ4(裏2) コウセイ:ダメージ5(裏2)
「俺のターン、スタンドアンドドロー。ライドはなし。だが……シュバルツシルトのリミットブレイク」
「何っ!?」
まだ手札にあったのか……!?アンロックしたばっかなのに、またロックしてくるのかよ!?
「CB3、ペルソナブラスト。対象はさっきと同じだ……ロック!」
ロックの解けた3体だったが、ほどなくして黒輪に囚われてしまう。再びV字ロック。これでは前のターンと何も変わらない。
「さらにパワープラス10000、クリティカルプラス1だ(21000 ☆2) 続けて、パラダイスエルク(9000)と虚ろな双刃 バイナリスター(8000)をコール」
シュバルツシルトと共に並び立つのは、異形の獣であるパラダイスエルク。そして二振りの刃を腕に装着したバイナリスター。そこにクリプトンと、後方には黒門を開く者もいる。
対するエシックス・バスターには、漂う黒輪が邪魔して行動がとれないライオット・ホーンとマックス・ビートだけ。実質、1人だけ。
これが、あいつの言う孤独だってか。リアガードからの助けは期待できない。動けるのは、自身の霊体であるヴァンガードだけ――。
「行くぞ、レディガンナーのブースト、シュバルツシルトでアタック!(27000 ☆2)」
レディガンナーが援護射撃を放ち、エシックス・バスターの逃げ道を封じる。そこにシュバルツシルトが、黒きオーラを纏って接近する。
このアタックを通せば、俺の負け。だったら、何としてもガードするしかない。
「武闘戦艦 プロメテウス2体、獣神 バンパウロスでガード!」
「……孤独になりながら、まだ抗おうと言うのか?」
「孤独じゃねぇだろ。確かに、リアガードとして戦う仲間はいない。けど、今こうしてヴァンガードを守るこいつらは何だよ?」
「くっ……ツインドライブ!1枚目、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン。2枚目、黒門を開く者」
うし、トリガーはないか。これなら、何とかつなげられそうだな。
「バイナリスターのブースト、パラダイスエルクでアタック!(17000)」
「ノーガード!ダメージチェック、獣神 マックス・ビート」
「黒門のブースト、クリプトンでアタック!(17000)」
「ガード。獣神 デススティンガー!」
「……守り切るとはな。そこは褒めてやろう。ターンエンドだ」
ハヤト:ダメージ5(裏2) コウセイ:ダメージ5(裏5)
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
その掛け声とともに立ち上がったユニットは、エシックス・バスターだけ。俺に残された道は、せいぜいヴァンガードでのアタックと、ドライブチェックによる手札補強だけか。
なら、ここで問いただしておかないとな。
「……そういやさ、あんたさっきから孤独がどうとか言ってるけど、あんたの言う孤独って何だよ?その意味を、本当にわかってるのか?」
「……当たり前だ。俺は味わったんだ。助けを与えてもらう事なく、ただ周りと言う光を見る事しかない絶望を。それが、孤独だ」
「1人ぼっちで生きるしかない。自分の無力さを痛いほど思い知らされる……。それが、あんたの言う孤独って奴か」
「あぁ、そうだ」
そうかよ、それが孤独なのか……。手を差し出すこともできず、耐えることが正義だと決めつけるしかない環境。そこに生まれるのが、孤独だと言うのか。
「安心しろ、すぐにお前にも見せてやるさ。リアガードもロックされ、残るはヴァンガードのみ。その危機を脱したところで、待つのは敗北のみ。そうなれば、結局人はどこまで言っても孤独の恐怖には勝てないのだと思い知るだろう」
……それで知ったかぶりになっている、あいつの性根が知りたいな。
「はっ、笑えるな」
「何だと?何故笑う?」
「決まってんだろうが……あんたの言う孤独は、ただの卑屈野郎の言い訳でしかないからだ!そんなもん、変えようと思えばいくらでも変えられる話だろ!?」
「……よくもそう簡単に言えるな。何も知らないくせに」
「あぁ、知らないね!けど、お前の言う孤独が孤独だと信じているのなら教えてやる!いいか、本当の孤独ってのは……自分が助けられている事にも気づかず、全てを振り払って逃げる事しかできない……恐怖に支配された奴のことを言うんだよ!!」
孤独な人には、光さえ届かない……。怯えて、苦しんで、立ち上がる気力すら根こそぎ奪う悪魔の所業だ。悲しい被害者なんだ。
「お、お前は……!?」
「わかったような事ばっか並べ立てて……一丁前に語るな!軽い脅し道具に使っていいものじゃないんだって、俺がわからせてやるよ!こいつでな!!」
ノヴァグラップラーがリンクジョーカーと相性が悪い話はさっきもした。リアガードを活かす戦術を根本から断つロックは、他のクラン以上によく刺さる。
そんな中、唯一ロックの影響から真向に立ち向かえる、対リンクジョーカー用の切り札がある。この、ノヴァグラップラーには。
「獣の拳が掴みし未来は、光も届かぬ絶無の闇!クロスブレイクライド!」
エシックス・バスターの体が、赤黒いオーラに包まれる。それは、対峙するリンクジョーカーと酷似した不穏さを感じさせるもので……。
「最凶獣神 エシックス・バスター“Я”!!(11000)」
橙色の装飾が体中に見られる、白と黒の獣。オーラが晴れた時にそこにいたのは、エシックス・バスターがリンクジョーカーの力を取り込んだ進化形態だった。
「ソウルにエシックス・バスターがいる事で、常にパワーは13000!ブレイクライドスキルで、エシックス・バスター“Я”にパワープラス10000!(23000) さらにスキルを与える!」
とは言え、さっきと同じくスキルは使えない。パワーを上げることが限界だろう。だが、
「コールはなし。けど、まだできる事はある!エシックス・バスター“Я”のリミットブレイク!!CB2、手札の獣神ユニット2枚を捨て、俺の獣神のリアガードを2体ロック!」
「自らリアガードサークルを……全く使えないようにしただと!?」
黒輪が浮かぶ中心で、エシックス・バスター“Я”は咆哮を上げる。いや、その姿はむしろ、黒輪を従えているようにも見える。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってね。こっちから悪い状況に突っ込んでいくことで、できることもあるんだよ!リミットブレイクを発動したことで、このターン、エシックス・バスター“Я”はアタック終了後に1度だけ無条件にスタンドする!」
これが、リンクジョーカー用の切り札。どうせ封じられているなら、こちらから封じ込んで力を得たらいい。その結果が、唯一動けるヴァンガードによる2回アタック。
しかもブレイクライドでパワーも上がっている。そこにドライブチェックを合わせると、リアガードが使えないことがむしろハンデになるような火力を見せることができる。
「行くぜ!エシックス・バスター“Я”でアタック!(23000)」
「……ガード、星輝兵 ヴァイス・ソルダード、星輝兵 ステラガレージ!」
「ツインドライブ!1枚目、獣神 エシックス・バスター。2枚目、獣神 レスキュー・バニー。ヒールトリガー!ダメージを1枚回復、パワーはエシックス・バスター“Я”だ!(28000)」
後1枚トリガーが出たら、アタックはヒットしていた。けど、俺はもう1度ヴァンガードでアタックができる。
「エシックス・バスター“Я”がリミットブレイクで得たスキル発動!ヴァンガードをスタンドする!」
「くっ……!」
「もう1度アタックだ!エシックス・バスター“Я”!!(28000)」
「まだだ、ガード!グラヴィティコラプト、黒門を開く者!さらにクリプトンとパラダイスエルクでインターセプト!!」
トリガーは1枚必要か……。けど、もう後はない。引いてやる!
「ツインドライブ!1枚目、最強獣神 エシックス・バスター・エクストリーム。2枚目、獣神 デススティンガー。クリティカルトリガー!効果は全てエシックス・バスター“Я”へ!(33000 ☆2)」
火花を散らしながら拳を輝かせ、シュバルツシルトへと一直線に向かって行く。ガードに向かうユニットもすべて跳ね除け、シュバルツシルトに拳を1発叩き込んだ。
「……ダメージチェック、飛将の星輝兵 クリプトン」
これで6ダメージ。MFSが停止し、ファイトの終わりを告げる。
「自ら孤独を選び、それさえも強さに変えて勝利を手にするか……。大した強さの持ち主だ」
「そんなんじゃないっての。それに、あれは孤独でも何でもない。あの道を選ぶにも、協力してくれたユニットたちがいるだろ」
デッキを片付けながら、先ほどとは態度をがらりと変えた相手が、素直に俺を称えてきた。どんな結果でも冷静に受け止めることができる。その強さを、あいつは持っているんだな。
「……だからこそ聞きたい。お前は、孤独を経験したことがあるのか?俺の言う孤独とは違う、孤独を」
「それは……」
純粋に、知りたいのだろう。ファイト中に言っていた、あの話の裏側に秘めた事情を。あれだけの大口を叩くだけの確かな経験の片鱗に、奴は触れようとしているんだ。
「……残念だが、俺はないよ。ただな……俺はそう言う奴を知っている。それだけだ」
「知っているとは――」
「悪いな。仲間が観客席で待ってる。行かせてくれ」
「……そうか。わかった」
俺はあいつに一言理を入れてから、その場を離れた。これ以上話が長引けば、嫌でも話すことになってしまうだろうから。
そんなの、俺にはできねぇよ。