弱気になることなく、完走できたらいいと思ってます。環境からはかけ離れた本作ですが、応援よろしくお願いします。
では、どうぞ。
「よかった。あなたも、さっきみたいなファイターじゃなさそう」
「えっ?」
Bブロック4回戦。MFSを起動させ、ファイトの準備をしていた私――月城ミズキは、対戦相手からいきなりそんなことを言われた。
「私のさっきの相手、かなり態度悪くてね……。けど、あなたとはいいファイトができそうだよ」
「あ……それは、その……ありがとうございます」
態度が悪いって言うと……思い当たるチームはある。秋予選の時、シオリがファイトしていたチーム、破滅の翼。
「やっぱり、ファイトするなら互いに楽しくないとね。最低限のマナーは守ってほしいって思うよ」
「私もそう思います。以前、その事で友達がかなり怒ってましたから。だから、あなたの言うような悪いファイトにはしませんよ」
「ありがとう。あ、私は涼野サクヤ。まだ自己紹介してなかったから」
「私は月城ミズキです。よろしくお願いします」
手札の引き直しを終えて、互いに準備を済ませる。と、
「……ん、どうやら観客がいるみたい。もしかして、あなたの知り合い?」
「えっ?柳田さんと……シオリ!?それに、小沢君も!?」
少し離れた場所から、明らかにこっちを見ている。私が見ていることに気づくと、向こうも手を振り返してきた。
そっか。シオリも参加していたんだね。でも、そんな気はしていた。秋の時は、悔しい結果だったからね。私たち以上に。
「知り合いみたいだね」
「そうです。まさか、ここにいるとは思ってなかったんですけど」
「賑やかなファイトになりそうだね。それじゃ、始めよっか」
「……はい!」
「「スタンドアップ!ヴァンガード!!」」
舞台は神殿。天井も高く、かなり広い造りだ。
「始まりの伝説 アンブロシウス!(4000)」
「ロイヤルパラディン……」
シオリも使っていたクランだ。軸はまだわからないけど、リアガードの展開にだけは気を付けないと。
「私は……戦巫女 アメノホアカリ!(5000)」
「ジェネシスを使うんだ。フフッ。私、そう言うクラン大好きなんだ。古風なイメージのユニットが多いよね」
「古風なユニット……ですか?」
「私、実は古風な文化とか好きでね。日本の歴史とか、そう言うのにはまってるんだ」
そう言う事なんだ。確かにジェネシスは、巫女のようなユニットも数多く存在する。日本の歴史が好きなら、憧れるのもわかるかも。
「へぇ~。じゃあ、ジェネシス以外にも、オラクルシンクタンクなんかも好きだったりします?」
「もちろん!雅な口調って、ちょっと憧れるんだよね。そなたとのファイト、ことなき時間にしてみせようぞ」
「おぉ……」
何と言うか、様になってる。スタイルの良さも相まって、優美で大人っぽく見えるな。
「……でも、この口調を使うの、ちょっと嫌なんだよね。別に疲れるとかじゃないんだけど……」
「えっ、どうしてですか?」
「う~ん、何でだろ。それは多分……」
そこで言葉が止まった。続く言葉を考えているのか、おもむろに黙り込む。その空白も、一瞬の事だったが。
「……思い出しちゃうからかな。こんな口調じゃないんだけど、いつも畏まって話す子がいたからさ」
そう話すサクヤさんの表情は曇ったものになり、声のトーンも少し低くなった。そこに感じられるのは、懐かしさだろうか。あるいは、悲しさ。
だがそれ以上に、どこに向けられているのかわからない、怒りのような感情も感じ取っていた。
「あっ……ごめんね。せっかく聞いてくれたのに、暗い空気にしちゃって」
「い、いえ。何も気にしてませんよ」
「ならよかった。先攻はあなたからね」
「はい。では、行きます!」
それにしても……シオリが見ているのか。ちょっと緊張しちゃうな。悪いファイトにはしないなんて、啖呵を切ったのはいいんだけど……。
(なおさら、負けられない!)
「私のターン、ドロー!蛙の魔女 メリッサ(7000)にライド!アメノホアカリはそのまま後ろへ。ターンエンド!」
「じゃあ私のターンだね。ドロー!小さな賢者 マロン(8000)にライド!アンブロシウスは左後ろに移動!そして2体目のマロン(8000)をアンブロシウスの前、ナイトスクワイヤ アレン(7000)を何もいない列にコール!」
一気にユニットを展開してきた。まだ序盤、グレード1しかコールできない状況で、かなり攻撃的な戦術を仕掛けてくるなんて……。
「アレンでアタック!(7000)」
「ノーガード。ダメージチェック……挺身の女神 クシナダ」
アレンの剣が、メリッサを捉える。傷口を抑えてうずくまるメリッサだが、すかさず次のアタックが来る。敵は待ってはくれない。
「ヴァンガードのマロンでアタック!(8000)」
「ここは……檸檬の魔女 リモンチーノでガード!」
マロンの放つ雷撃を、リモンチーノが軽く軌道をそらして対処する。役目を終えたリモンチーノは、光となって消えていった。
「ドライブチェック、アラバスター・オウル。クリティカルトリガー発動!効果は全てリアガードのマロンへ!(13000 ☆2)」
「……っ」
「アンブロシウスのブースト、マロンでアタック!(17000 ☆2)」
クリティカル2のアタックをまともに受けたくはない。けど、防ぐだけの手札を、この段階で使う事も惜しまれる。
「……ノーガード!」
2度目の雷撃は、見事にメリッサに命中した。ユニットとしても、ファイターとしても、かなり痛いダメージだ。
「ダメージチェック、1枚目……樹木の女神 ユピテール。2枚目……大鍋の魔女 ローリエ。やった、ヒールトリガー!ダメージを1枚回復して、パワーをメリッサに!」
危なかった……。ヒールで回復できたけど、このターンだけで3ダメージを受けるところだった。気を抜けば、あっという間にダメージが蓄積してしまう。
「ターンエンドだね」
ミズキ:ダメージ2 サクヤ:ダメージ0
「私のターン、ドロー!戦巫女 サホヒメ(9000)にライド!」
まずはグレードを上げていくことを考える。さて、ここからだけど……。
「烏の魔女 カモミール(9000)をコール!カモミールで、アレンにアタック!(9000)」
私にできる事は限られてくるから、リアガードを狙って戦力を削ることが妥当だと考える。が、
「虹を呼ぶ吟遊詩人でガード!」
そう簡単にはやらせてくれないみたいだね……。
「アメノホアカリのブースト、サホヒメでアタック!(14000) ドライブチェック、叡智の神器 アンジェリカ」
「ダメージチェック、白竜の騎士 ペンドラゴンだね」
「アタックヒットでサホヒメのスキル発動!CB1して、SC3します」
内2枚はクリティカルトリガー。ソウルを貯めるジェネシスでは、トリガーがソウルに入ってしまう事も多い。もったいないが、仕方ないと割り切るしかない。
けど、悪いことばかりじゃなかった。残り1枚は、オレンジの魔女 バレンシア。ソウルにある事で活かされるユニットだ。うん、いい感じだね。
「ターンエンドです」
ミズキ:ダメージ2(裏1) サクヤ:ダメージ1
「私のターン、スタンドアンドドロー!決意の騎士 ラモラック(10000)にライド!アレンを後ろに下げ、沈黙の騎士 ギャラティン(10000)をコール!」
重厚な鎧をまとった戦士と、バンダナで目を隠す細身の剣士。どちらもパワー10000で、スキルの類を持たないユニットだ。
いや、冷静に分析している場合じゃない。また3列でアタックが来てしまう。パワーラインはそこまで苦にならないけど、ガードしていけば少しずつ手札は削られてしまう。もちろん、ノーガードすればダメージも増えてしまう。
「アンブロシウスのブースト、マロンでアタック!(12000)」
「メリッサでガード!」
「ラモラックも続いて!(10000)」
「く……ノーガードします!」
ドライブチェックでは、閃光の盾 イゾルデ。ダメージチェックでは、林檎の魔女 シードルが出る。
「アレンのブースト、ギャラティンでアタック!(17000)」
「……ノーガード。ダメージチェック、オレンジの魔女 バレンシア」
ラモラックとギャラティン。2体のユニットがサホヒメをなぎ倒す。地面に倒されたサホヒメは、ジワリと涙を浮かべていた。
「ターンエンド!」
ミズキ:ダメージ4(裏1) サクヤ:ダメージ1
「私のターン、スタンドアンドドロー」
まだグレード3にもなっていないのに、もうダメージ4だよ……。何て攻撃的なデッキなんだ。ヒールがなかったら、ダメージ5で追い詰められているところだし。
それに、向こうはまだダメージ1。明らかに劣勢なのは間違いない。やっぱりここまで残っているだけあって、ファイトの腕は確かみたい。
「…………」
でも、そんな弱音吐いてる場合じゃない。まだ終わったわけじゃないんだ。それに……ここから巻き返していかないと、シオリだって見ているからね!
「刻んだ記憶の輝きが、まだ見ぬ明日を創り出す!ライド!叡智の神器 アンジェリカ!!(11000)」
既にブレイクライドは使える。次のターンを耐えたら、そこから巻き返せる。
「樹木の女神 ユピテール(9000)をコール!カモミールで、マロンにアタック!(9000)」
「ノーガードするね」
地味に活躍していたマロンを退却させる。リアガードを減らすことは、まず攻め手を遅らせるために必要だ。
「アメノホアカリのブースト、アンジェリカでアタック!アンジェリカのスキル。SC1して、パワープラス1000!さらにアメノホアカリのスキルで、グレード3のジェネシスをブーストした時、SC1!(17000)」
どっちもトリガーではなかった。ドライブチェックでトリガーを引きやすくなったかな……?
「これもノーガード」
「ツインドライブ!1枚目、林檎の魔女 シードル。2枚目、戦巫女 ククリヒメ。ゲット!クリティカルトリガー!パワーはユピテール(14000) クリティカルはアンジェリカへ!(17000 ☆2)」
アンジェリカが持つ特徴的な杖から、波動が放たれる。ラモラックは剣を地面につき、飛ばされないように必死で耐えている。
「ダメージチェック、1枚目、湖の巫女 リアン。2枚目、沈黙の騎士 ギャラティン」
「ユピテールで、ラモラックにアタック!スキルによって、神器のヴァンガードがいる事で、パワープラス3000!(17000)」
「ノーガード。ダメージチェック、まぁるがる。ドロートリガー発動!1枚ドローして、パワーをラモラックへ!」
「追いついた……。ターンエンド!」
ミズキ:ダメージ4(裏1) サクヤ:ダメージ4
「私のターン、スタンドアンドドロー!さぁ、今度はこっちから行くよ!」
「……っ、何か来る……!」
「邪を滅せよ!希望を阻むものに、制裁の光を与えよ!白銀の竜!!ライド!サンクチュアリガード・ドラゴン!!(11000)」
「そう言う……!」
そのカードが切り札なら、グレード1を軸に展開してきた意味もよくわかる。その理由は、サンクチュアリガード・ドラゴンのリミットブレイクにある。
「まずはサンクチュアリガードのスキル!ライドした時、手札1枚を捨てて……デッキから、虹を呼ぶ吟遊詩人(6000)をスペリオルコール!」
手札からラモラックが捨てられ、サンクチュアリの後ろにコールされた。
「アンブロシウスを前に。その後ろに、アラバスター・オウル(5000)をコール」
「グレード0のユニットまで攻撃に使うなんて……」
「これが私のデッキだからね。さらに、サンクチュアリガードのリミットブレイク!グレード1以下の私のリアガード1体につき、パワープラス3000!4体いる事で、パワープラス12000!(23000)」
ギャラティン以外のリアガードが白く光を放つ。その光はゆっくりと収束し、サンクチュアリガードの掲げる剣に吸い込まれていく。
「アラバスター・オウルのブースト、アンブロシウスでユピテールにアタック!(9000)」
「カモミールでインターセプト!」
「吟遊詩人のブースト、サンクチュアリガードでアタック!吟遊詩人のスキル!サンクチュアリガード・ドラゴンをブーストすれば、SB1でパワープラス5000!(34000)」
ブレイクライドに匹敵、いやそれ以上に強力なパワーだ。これだけのパワー、なかなか出せることはない。
「挺身の女神 クシナダで完全ガード!コストはシードル!」
「完全ガードか……。ツインドライブ!1枚目、サンクチュアリガード・ドラゴン。2枚目、世界樹の巫女 エレイン。ヒールトリガー発動!ダメージは同じだから、1枚回復!パワーはギャラティンへ!(15000)」
ダメージが回復されたことで、リミットブレイクのパワー上昇もなくなる。けど、元から完全ガードしている以上、大した変化ではない。
「アレンのブースト、ギャラティンでアタック!(22000)」
「ノーガード。ダメージチェック……大鍋の魔女 ローリエ。ゲット!ヒールトリガー!ダメージを1枚回復し、パワーをアンジェリカに!」
ヒールで回復できたおかげで、このターンのダメージは0で済んだ。
「ターンエンド!」
ミズキ:ダメージ4 サクヤ:ダメージ3
***
「かなり接戦になってきたな……」
「最初はピンチだったけど、ミズキが上手く立て直してきたからね。強くなっているって柳田さんが言ったこと、わかった気がします」
前に発売したトライアルデッキ「神器の伝承者」と、光輝迅雷で強化されたジェネシスのカードを使いこなしている。いや、それ以上にミズキのプレイングにも磨きがかかっている。
「これは……私も負けていられないね」
ミズキの後ろ姿を見ながら、私もまた闘志をみなぎらせていた。
***
「私のターン、スタンドアンドドロー!刻んだ記憶の輝きが、まだ見ぬ明日を創り出す!ブレイクライド!叡智の神器 アンジェリカ!!(11000)」
ダメージは3。さすがに決めきるのは難しいか。ここは少しでも、ダメージを与えることに専念しておこうかな。
「ブレイクライドスキル!SB3で、2枚ドロー!アンジェリカにパワープラス10000!(21000)」
2枚のサホヒメとククリヒメが、ソウルから吐き出される。3枚のソウルが必要となるが、その代償に得られるのは2枚の手札。攻めにも守りにも使える、使い勝手のいいブレイクライドスキルだ。
「オーダイン・オウル(6000)をユピテールの後ろにコール!アメノホアカリのブースト、アンジェリカでアタック!アンジェリカのスキルでSC1、パワープラス1000。アメノホアカリのスキルで、さらにSC1!(27000)」
3枚目のアンジェリカと、カモミールがソウルに入る。デッキの枚数が段々と少なくなってきているけど、心配ない。さっきのブレイクライドのドローで、切り札は来た。
勝負は……次のターンだ。
「ノーガード」
「ツインドライブ!1枚目、烏の魔女 カモミール。2枚目、サイバー・タイガー。ゲット!クリティカルトリガー!パワーはユピテールへ(14000) クリティカルはアンジェリカへ!(27000 ☆2)」
再び波動が放たれるが、今度はブレイクライドやトリガーの影響もあってか、神殿の壁に少し亀裂が走っていた。
「ダメージチェック、1枚目……閃光の盾 イゾルデ。2枚目……アラバスター・オウル。クリティカルトリガー発動!効果は全てサンクチュアリガードへ!(16000 ☆2)」
「ここでダメージトリガーを……。けど!オーダインのブーストで、ユピテールがギャラティンを狙います!神器のヴァンガードはいるので、パワープラス3000!(23000)」
「う~ん……ノーガードだね」
少し考えた後、ノーガードを選択する。悲鳴を上げながら、ギャラティンは退却していった。何を考えていたんだろう……?
「ターンエンド」
ミズキ:ダメージ4 サクヤ:ダメージ5
「私のターン、スタンドアンドドロー」
今の私には、まだ1ダメージ受ける余裕がある。いくらサンクチュアリガードが高パワーになると言っても、他の列のパワーラインは特に脅威ではない。上手くガードすれば、次のターンまではーー。
「……邪を滅せよ」
え……ライド口上!?しかもこれって、さっきと同じ……!?
「希望を阻むものに、制裁の光を与えよ!白銀の竜!!ペルソナライド!サンクチュアリガード・ドラゴン!!(11000)」
「ペルソナ……。もう1度、ライド……!?」
「サンクチュアリガードのスキルを忘れたかな?ライド時スキル!手札1枚を捨てることで、デッキから小さな賢者 マロン(8000)をアレンの前にスペリオルコール!」
エポナが捨てられ、マロンがコールされる。ライドした時のスキルを使うために、再ライドする選択肢を取ったんだ……。
「……けど、そんなことしなくても普通にコールすればよかったんじゃないですか?それなら、今コストとして捨てた手札も、守りに取っておけたはずじゃ……」
「確かにね。アンブロシウスの上から、ナイトスクワイヤ アレン(7000)をコール!アンブロシウスは退却」
サンクチュアリガードのリミットブレイクの対象外とは言っても、ライドしたサンクチュアリガードをコールすれば、11000のアタッカーを用意できる。なら、何のために……?
「でも、そうじゃないよ。私は……勝負を決めるために、この一手を選んだんだから!サンクチュアリガードの、リミットブレイク!!」
「リミット……っ、そうか!それを狙って……!」
「グレード1以下のリアガードは5体。よって、パワーは15000プラスされる!(26000)」
何てパワーだ。しかも吟遊詩人のブーストが付くから、さらにパワーが跳ね上がってしまう。
「マロンの後ろのアレンのスキル!CB1で、パワープラス1000!(8000) アラバスター・オウルの前のアレンは、スキルを4回使ってパワープラス4000!(11000)」
今まで使わなかった表のダメージをフルに使って、パワーラインを調整してきた。これでヴァンガードはともかく、リアガードはそれぞれシールドが10000必要となってしまう。
「アレンのブースト、マロンでアタック!(16000)」
「……ノーガードです」
ダメージには挺身の女神 クシナダ……完全ガードが落ちる。それを見たサクヤさんは、口元に笑みを浮かべていた。
「まさか3枚目が落ちるなんて……そこは予想外だったな。けど、いい誤算だよ。既に2枚完全ガードを使っていたし、攻めるなら今しかないって思ってたんだけど……この分なら、完全ガードは手札にはないかな?」
「……それで、再ライドからの戦力確保。リミットブレイクで強化をかけてきたってことですか」
「当たり。完全ガードじゃないと、サンクチュアリガードの高いパワーをガードするのは厳しいはず。そして、今ので3枚完全ガードが見えた。残りの手札に、恐らく完全ガードはない」
当たってる。私の手札に、完全ガードのユニット……挺身の女神 クシナダはない。サクヤさんの言う通り、クシナダがない以上、普通にガードするのは難しい。
「さぁ、これで決めるよ!吟遊詩人のブースト、サンクチュアリガードでアタック!吟遊詩人のスキルで、サンクチュアリガード・ドラゴンをブーストすれば、SB1でパワープラス5000!(37000)」
確かに、このままでは手札の消費は多くなる。後のアレン、そしてトリガーの事を考えると、正直厳しいか。
「確かに……完全ガードはないですよ」
「やっぱり。読みは当たってたってことだね」
「はい。……完全ガード『は』ですが」
「……っ!?」
完全ガード。それは、あらゆるアタックを無効にする、まさに鉄壁の盾。高パワーのアタックに対する答えとして、ヴァンガードになくてはならない存在。
……けど、高い攻撃力に対する守りの手段が、完全ガードだけとは限らない。
「私には……このカードがある!ガード!盾の女神 アイギス!!」
「それは……!」
「アイギスのスキル!CB1、これで私はデッキの上から5枚のカードを、このアタックのガードに使用する!」
完全ガードと呼ばれるユニットは、その性能から守護者……センチネルと称され、デッキに4枚しか入れられない制約が課せられている。アタックを通さないカードを何枚も入れていては、ゲームバランスも大きく損なわれてしまうからね。
けど、守護者には完全ガードの他に、もう1種類存在する。それが、今私の使ったカード、アイギス。このスキルを持つユニットは、こう呼ばれている。
「クインテットウォール!!」
カウンターブラストは必要だが、コストして手札1枚が必要となる完全ガードとは違い、クインテットウォールは1枚で完結するカードだ。
ただし、完全ガードは確定して守れるのに対して、クインテットウォールはデッキの上から5枚をガードに使う。そのユニットのシールド値によっては、パワーが足りずに追加で手札からガードしなくてはいけない場合もある。
文字通り、不確定な要素のある1枚。だが、1枚で大量のシールド値を用意できる。これがもう1つの守護者、クインテットウォールだ。
「5枚をガードに……戦巫女 ククリヒメ。オーダイン・オウル。サイバー・タイガー。大鍋の魔女 ローリエ。叡智の神器 アンジェリカ。合計シールド値は35000。パワーは46000で……トリガー2枚貫通!!」
「これほどのシールドを……ツインドライブ!1枚目、湖の巫女 リアン。2枚目、幸運の運び手 エポナ。クリティカルトリガー発動!効果は全て、前列にいるアレンへ!(16000 ☆2)」
アイギスの掲げた盾から、5つの魔法陣が形成される。そこからユニットが現れると、サンクチュアリガードの剣を全員で受け止めた。
「アラバスター・オウルのブースト、アレンでアタック!(21000 ☆2)」
「それくらいなら……ガード!カモミールとサイバー・タイガー!」
アレンの剣を止めたのは、サイバー・タイガー。剣先を加えて受け止め、そこにカモミールがアレンの横腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
「結果的に、ライドしない方がよかったのかな。でも、仕方ないね。ターンエンド!」
ミズキ:ダメージ5(裏1) サクヤ:ダメージ5(裏5)
「私のターン、スタンドアンドドロー!」
何とか巡ってきた。少しヒヤヒヤしたけど、こうして私のターンを迎えることはできた。
(……けど)
問題はデッキ枚数。ただでさえデッキの減りが早いジェネシスに、クインテットウォールで追い打ちをかけてしまった。このターン、デッキは残り1桁になってしまうところまで迫っている。
だからこそ、このターンで決める。向こうが勝負を仕掛けてきたように、ここが私にとっての正念場。
そのための力は……すでに私の手の中にある。
「移りゆく時を知り、過ちなき未来を拓く!天空の輝き!!クロスブレイクライド!」
アンジェリカの風貌が変化する。手に持つ杖は、鋭さを帯びた槍に。アンジェリカにはなかった翼を広げ、天空に舞うのは……全てを見通す神器。
「全知の神器 ミネルヴァ!!(11000)」
シオリも見ているし……ここで決めないと、格好がつかない。だから、一気に行かせてもらいますよ!