ま、とりあえず今回で前回のファイトは完結。どちらが仲間の想いを背負うのか。見届けてください。
では、どうぞ!
私は今、チームメイトとファイトをしている。
秋の悔しさを糧に、目指す場所のために勝ち進んできた。それだけ、抱く想いの強さは本物だ。
けど今、私が戦っているのは……仲間だ。同じ志を掲げた、仲間なんだ。
想いを託せないと、信用していないわけではない。むしろ私からシオリさんを頼っている部分がある。
シオリさんは強い。秋予選だって、シオリさんに助けられた。けど……それとこれとは別。
戦う理由はない。なのに、戦うしかない。どちらかは蹴落とされるだけ。
「ブレイクライドスキル!テトラドライブにパワープラス10000!(21000) さらにスキルを与える!」
小沢君も負けた。これ以上、敗北を重ねるわけにはいかない。トウジは……まぁ、心配してないけど。
「バシルの後ろにテトラドライブ・ドラゴン(11000)をコール!バブルエッジのスキルで、自身をソウルに入れて、タイダルにスキルを与える!」
この戦いの結果に、納得の行く理由がほしい。託す側には、回りたくはない。
だから、私は……!
***
ついに森宮さんの切り札が出てきた。
テトラドライブ……こうして大会の場で相手をするのは、意外にも初めてかもしれない。
……そうじゃない場所では、何度も戦っているのに。
「バシルでアルフレッドにアタック!1回目のアタックにより、パワープラス2000!(10000)」
「ノーガード!だけど、パワーはこっちが上!ヒットはしないよ!」
「分かってるわ。バシルのスキル!アタック終了時、後列のテトラドライブと位置を交換!」
動きも分かっている。全国に行くため、その切符を手に入れるため、今日この日に向けて何度も相手して見たんだ。
そんな森宮さんの想いを、私は背負って前に進むことになるかもしれない……。
「ヴァンガードのテトラドライブでアタック!ブレイクライドスキルで手札1枚を捨てないとガードできない!(21000)」
「もちろん、手札1枚を捨ててガードするよ!希望の解放者 エポナ、霊薬の解放者!これで必要なトリガーは2枚!」
さっきのターン、ドライブチェックで手札に入ったアルフレッドを捨て、2体でガード。けど、安心はできない。
「ち……!ツインドライブ!1枚目、蒼翔竜 トランスコア・ドラゴン。2枚目、戦場の歌姫 マリカ。ドロートリガーよ!1枚ドローし、パワーはタイダルへ!(14000)」
海上のテトラドライブが、砂浜のアルフレッドに肩のキャノン砲を打ち出す。が、エポナと霊薬の解放者がそれを受け止め、アルフレッドを守った。
「だったら、ここでテトラドライブのリミットブレイク!このターンで2回目のアタックにより、スキル獲得!リアガードのテトラドライブで、ファロンにアタック!(11000)」
「……ノーガード。ごめん、ファロン」
せっかく来てくれたのに、今は手放すしかない。
「タイダルでヴァンガードにアタック!バブルエッジの与えたスキルで、このターン4回目以降のアタックにより1ドロー!(14000)」
「ノーガード!ダメージチェック、霊薬の解放者。ゲット!ヒールトリガー!!ダメージは同じだから、1枚回復!パワーはアルフレッドへ!(16000)」
「ここでヒールトリガーを……!」
いいタイミングだ。ノーガードで正解だったな。
「でもまだよ!タイダルのスキル、パワーマイナス5000してスタンド!(9000) そして、テトラドライブがリミットブレイクで得た効果発動!CB2、手札2枚を捨てて、テトラドライブをスタンド!」
トランスコアと遊撃のブレイブ・シューターが捨てられる。テトラドライブの目に再度光が灯り、アルフレッドの立つ島へと猛スピードで迫る。
「行け、テトラドライブ!ブレイクライドスキル発動!(21000)」
「……グイディオンをドロップ!そして、光輪の解放者 マルクで完全ガード!コストはブルーノ!」
だが、島に近づく直前にマルクが盾で阻んでスピードを殺す。突破を試みようとするが、盾の頑丈さに手も足も出ない。
「まだよ、タイダルが残ってる!ツインドライブ、1枚目……ストームライダー ダモン。2枚目……ティアーナイト キブロス。トリガーなし……」
テトラドライブはアタックを断念し、後退する。その近くで、タイダルが剣を構えて突撃の体勢を取っていた。
「でもパワーは足りている!キブロスのブースト、タイダルでアルフレッドにアタック!4回目以降のアタックにより、1枚ドロー!(16000)」
「……ノーガード」
ダメージにヨセフスが入る。これでダメージ5……。
「ターンエンドよ」
シオリ:ダメージ5(裏2) リサ:ダメージ4(裏2)
「私のターン、スタンドアンドドロー」
互いに切り札は出した。ここからは、持てる力を出し尽くす……根比べだ。
「ライドなし。そしてアルフレッドのスキル!CB2、デッキトップのカード……ブラスター・ブレード 解放者をスペリオルコール!(9000)」
今のスキル発動で、表のダメージは残り1枚。ブラスター・ブレードのスキルは使えないか。
「さらにアルフレッドのリミットブレイク!解放者のリアガードは4体、パワープラス8000!(19000)」
さっきのターン、私は森宮さんの猛攻で手札を1枚にまで減らしている。このターンのドローで2枚だ。
一方、森宮さんはバブルエッジのスキルも相まって7枚。差は歴然。
「ブラスター・ブレードでタイダルにアタック!(9000)」
「ダモンでガード!」
長引けば不利なのは、まずこっちだ。アクセルリンクを使えば、土壇場でも何とかできそうだけど……このファイトで使うわけにはいかない。
「リューのブースト、アルフレッドでアタック!リューのスキルで、他の解放者のリアガードが3体以上いるからパワープラス4000!(29000)」
「それくらい!翠玉の盾 バスカリスで完全ガード!コストはマリカ!」
エメラルドの宝石を模した盾が、アルフレッドの剣をしっかりと受け止める。
「ツインドライブ!1枚目、武装の解放者 グイディオン。ゲット!ドロートリガー!!1枚ドローし、パワーはエスクラド!(14000) 2枚目、光輪の解放者 マルク」
手札は増えたけど、少々心持たないな……。
「ブルーノのブースト、エスクラドでアタック!ブルーノはデッキからユニットがコールされていたから、パワープラス3000!(24000)」
「ノーガード!」
ダメージには翠玉の盾 バスカリスが落ちる。これでアタックは全て終えた……けど。
「エスクラドのスキル!アタックヒットにより、CB1、デッキトップのカード……小さな解放者 マロン(7000) をブラスター・ブレードの後ろにコール!これでターンエンド!」
シオリ:ダメージ5(裏5) リサ:ダメージ5(裏2)
「私のターン、スタンドアンドドロー。……シオリさん」
「何?」
「……ファイト前に言ったわよね。このファイトは、仲間の意志を背負って戦えるだけの強さを、確かめるものだって」
「うん……言ったよ」
互いに譲れない想いがある。勝つ喜びも負ける悔しさも、どちらも知っている。それらを背負う覚悟が、このファイトの勝者に与えられる。
「……私、正直まだ辛い。負けを知ってるから」
「森宮さん……」
「でも……進むしかないのなら。このターンで、終わりにするわ!!」
森宮さんが1枚のカードを手札から引き抜く。まさか、ここから新たなユニットに……。
「……っ、まさか!?」
そうだ。森宮さんの切り札は、テトラドライブなんかじゃない。真の切り札と呼べる存在がいる……!
「嵐を纏いし蒼き竜王!誓いし想いを正義と宿し、今!決意の咆哮を放て!!ライド!蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム!!(11000)」
テトラドライブが紫に近い青のオーラに包まれ、背中から羽のような突起物を武装した竜、グローリー・メイルストロームへと変化する。
「シオリさんには悪いけど、これで終わりよ!スーパーソニック・セイラー(4000)をコール!セイラーのスキルで、自身をソウルに入れてダメージを1枚表に!」
私の手札は5枚……インターセプトは2回できる。守りきれるか……!?
「ティアーナイト キブロス(7000)をグローリーの後ろにコール!そのキブロスのスキル、CB1でパワープラス1000!3回使って、パワープラス3000!(10000)」
「く……!」
「行くわよ!テトラドライブでブラスター・ブレードにアタック!(11000)」
「ノーガード……!」
テトラドライブのキャノン砲に、ブラスター・ブレードが撃ち抜かれる。これでインターセプトが1回使えなくなった。
「これで決める……!キブロスのブースト、グローリーでアルフレッドにアタック!(21000)」
キブロスのスキルのおかげで、パワーは十分。でも、これで終わりじゃない。さっきセイラーのスキルで、ダメージを表にしたのは……!
「そして……グローリーのアルティメットブレイク!!CB1、グローリーにパワープラス5000!さらにグレード1以上でガードできないわ!(26000)」
私の手札には、完全ガードのマルクがある。けど、グレードは1。ガードには使えない。
「わずかな手札、それにさっきのドライブチェックで見えたカードも、グレード0はグイディオンだけ!まともにガードするのは不可能よ!」
グローリーの背中の突起物が射出され、アルフレッドを囲むように漂う。逃げ場のないアルフレッド。その上空から、グローリーの咆哮が襲いかかり……!
「……甘いよ、森宮さん」
「っ!?」
「ガード!猛撃の解放者!エポナ!さらにグイディオン!必要なトリガーは2枚だ!!」
「な……そこまでグレード0を……!?」
代わりに咆哮を受け止めた3体のユニットたち。役目を終え、光となって消えていく。
「ま、まだよ!ツインドライブ!1枚目、タイダル・アサルト。2枚目、ジェットスキー・ライダー。ゲット!クリティカルトリガー!!効果は全てタイダルへ!(14000 ☆2)」
けど森宮さんはまだ諦めてない。1枚とは言え、トリガーを手にした。
「タイダル単体でアタック!(14000 ☆2)」
「エスクラドでインターセプト!」
「タイダルはスキルで、パワーマイナス5000してスタンド……!(9000 ☆2) キブロスのブースト、タイダルでアルフレッドにアタック!(16000 ☆2)」
「マルクで完全ガード!コストはマロン!!」
「……ターンエンドよ」
シオリ:ダメージ5(裏5) リサ:ダメージ5(裏5)
「私のターン、スタンドアンドドロー……!」
本当に危なかった。手札も尽きたし、前列も2体欠けている。まさにギリギリのファイトだ。
「ライドなし。ブルーノの前に絆の解放者 ガンスロッド・ゼニス(11000)をコール」
「…………」
「そして、アルフレッドのリミットブレイク!解放者のリアガードは3体、パワープラス6000!(23000)」
森宮さんの手札は4枚。2枚は分かってるけど、後の2枚は分からない。おまけにインターセプトもある。
「マロンを前列に移動し、そのままアタック!解放者のヴァンガードがいるから、パワープラス3000!対象はタイダル!(10000)」
「……ノーガード」
インターセプトはこれで使えない。後は……アタックが通ると信じるしかない。
「リューのブースト、アルフレッドでアタック!(23000)」
「……ガード。ジェットスキー・ライダー、タイダル・アサルト」
「トリガーは1枚……ツインドラ……」
「シオリさん」
ガード値を計算し、ドライブチェックに入ろうとして……森宮さんが私の名前を呼ぶ。
「……私の残り手札2枚、ガードに使えるのは1枚だけよ」
「えっ……?」
「ジェットスキー・ライダーと、グローリー・メイルストローム。トリガーが出なければ、次のガンスロッドのアタックはガードできる」
つまりこのドライブチェックで、勝負が決まる。たった1枚のトリガーによって。
「……なのに今、トリガーが出てほしいと願う私がいる」
「それは……諦めるってことですか……!?」
「そうじゃない。でも……全て敵わなかった。ファイトの腕も、気持ちも。先に進む覚悟も、何もかも足りなかった」
諦めではない。自覚したんだ。それでも取るべき最良の選択を取ったのは、気持ちが僅かながらも折れずに残ってるから。
「だから、全てをこのトリガーに委ねる。こんな私でもまだ、先に進んでもいいと言うのなら……」
「……分かった。なら、引くよ」
森宮さんの覚悟は伝わった。その強さを証明するのは……。
「……ツインドライブ!」
私の手で引く、未来へのトリガーだ。
「1枚目……横笛の解放者 エスクラド」
トリガーはない。勝負は、次の1枚。
「……2枚目」
これで、勝負が決まる。震える手でカードを引き抜き、それをファイトテーブルに置く。
互いに固唾を飲み、置かれたカードに意識を向ける。そしてテーブルは……黄色く輝く。
「……希望の解放者 エポナ」
「クリティカル、トリガー……」
勝敗はついた。私の手元に舞い降りた、1枚のトリガーによって。
「……効果は全て、アルフレッドへ(28000 ☆2)」
「……そう。それが私の答えなのね」
アルフレッドがグローリーに剣を振り下ろす。胸元に傷をつけ、呻きながら消えていった……。
***
私たちのファイトの結果で、Aブロックを制したのはシオリさんに決まった。
敗者は大人しく去るだけ。私はシオリさんに、この先のファイトを託した。
今はスタジアムの外で、1人ベンチに腰かけている。今戻っても、この気持ちを殺せるほどの余裕がないから。
全国への道を掴むために。その舞台に立つのは……私じゃダメだったみたいだ。
思えば、ファイト前から負けていた。仲間内でのファイトに踏ん切りがつけられずにいた私とは違った。
辛くても、それでも全力でぶつかり、託される想いをファイトを通じて受け止めようとした。それがシオリさんの強さだった。
その差が……トリガーを呼んだ。
「……惜しかったな、お疲れ」
「お、小沢君……!?」
「そんな驚かなくてもいいだろ。ファイト、最後の方だけ見てたぞ」
と、私の横に小沢君が腰かけてきた。ファイト前に比べると、今は少し落ち着いてるようだった。
でも、小沢君の目の赤みが、そう簡単に割りきれるものではないのだと痛感させる。悔しさは、それだけで伝わってくる。
「星野がAブロック代表。これで決勝トーナメントで勝ち抜けば……全国だな」
「……えぇ」
「けど、それはそれだ。森宮、よくやった」
「……っ」
ダメだ。こんな時に優しくされると……目が熱くなる。
「俺たちの中で、誰よりも全国の舞台に立ちたいと願っているのは森宮だ。それだけ想いが強いのも、俺たちは知ってる」
「…………」
「負けは負けなのかもしれないけど……それでも、森宮が頑張ってたの、俺は知ってる。だからさ、よくやったとしか言えないけど、俺は……って、うぉっ!?」
もう、抑えられない。悔しさとか、力のなさとか、何もかもが私の中で爆発する。
私は小沢君の胸に顔を埋め、涙を流していた。小沢君は困惑していたが。
「悔しかった……!ここまで来て、託すしかできないなんて……共に戦えないなんて……!!」
「……そうか」
「あれだけ悔しい想いをして、もう二度とそんな想いしたくないって……!でも、まだ足りなかった……!」
シオリさんは、私の先を進んでいた。同じ仲間でも、歩幅は違った。
「私、本当に弱いわね……秋の時も、1人じゃ何もできなかった。あの時から私、何か変われたのかしら……」
「……変われたさ」
「えっ……?」
「今ここに立ってることが、その証明だろ。負けて落ち込んで、そこで戦意を失わずにこの大会に参加した。結果はどうあれ、前に進もうとした。その勇気は、変化の証だろ」
そんな風に言わないでほしい。私は肯定してほしかったのに。弱い自分を。
「俺だって、変われたさ。結果は負け……でも、あの時なかった覚悟は示せた。足りなかっただけなんだよ……」
「でもその足りない部分を、シオリさんは……」
「他人と比べるな。森宮は森宮だ」
「小沢君……」
「それでも森宮が、自分を責めようとしても……何度でも言う。よくやった」
こんな自分を。そう思う私を、否定する。その言葉を受け入れるだけの強さを持ち合わせていないのに、心地よく聞こえてしまう。
その心地よさに甘えて、涙が零れそうだ……。
「……何か、ムカつく」
「なっ……!?いや、待て!?人が励まそうとしてるのに、ムカつくはないだろ!?」
「あなただって負けてるのに、カッコつけちゃって……」
「カッコつけてねぇよ!?」
「……フフッ」
よく分からないけど、笑えてきた。笑ったら、さっきまでの悔しさも少し薄れた。
「何で笑う!?それより早く離れてくれないか!?服が濡れる……」
「……ふん。少しくらい我慢しなさい。バーカ」
「えぇ……」
今だけは、こうしていたい。優しくしてくれたことが、一緒にいてくれたことが嬉しかったから。
「……誰かに見られたらどうすんだよ。恥ずかしいだろ」
「何か言った?」
「聞こえないなら別にいい……」
こんな弱い私を肯定してくれた男の子。彼の言葉が、温もりが……私を変える。
「ありがとね。……ワタル君」