「Aブロック代表は、星野シオリか」
予想通り、と言ったところか。ブロック決勝は森宮リサ……確か、チームリーダーを務めていたな。
善戦したが、惜しい敗北だった。見応えはあったし、リーダーなだけある。
それよりも。
「……まさか、同じブロックだとはな」
この大会に出場する目的は、鈴野カズヤとの再戦。それが間もなく、叶おうとしている。
同じブロックである以上、勝ち進めばいつかファイトできる。あいつの腕なら、簡単に負けることはないだろう。
そしてAブロックの決勝が終わった。なら、他のブロックも決勝戦を迎える頃合い。
となれば……だ。
「……ん」
バックルが光った。ようやくファイトだ。待つのも飽きてきたところだし、駒を進めてくるとしよう。
観客席を離れ、MFSへ。まだ相手は来てないみたいだったが、俺は先にデッキをシャッフルする。
「……へぇ。これも運命の巡り合わせ、ってやつ?」
「……なるほど」
まさかな。いつかは当たると思っていたが、突然やってくるとは。
「この時を待っていた……涼野カズヤ!」
待ち焦がれた相手が、向かいのMFSに立っていた。あの時の愚かさ、タツヤをバカにされ……それでも何もできなかった無力さ。
兄の威厳を打ち砕かれ、でもそれが間違いだと知ったあの日。俺は今まで、この瞬間のためだけに生きてきた。
今度こそ、俺はカズヤに勝つ。だがそれは、リベンジではない。かつての無力な自分を超えるために。
「勝手に熱くならないでくれる?そう言うの鬱陶しいからさ?」
「ならそっちこそ、涼しい顔して受け流してでもいればいい。俺は俺のため……お前に敗れた無様な過去を超える。そのためのファイトだからな!」
「……あっそ。ま、そっちがその気なら、また返り討ちにするだけさ。こんな紙切れのお遊びに何を熱くなれるのか知らないけど」
そう言いつつも、カズヤは手札を5枚持つ。俺もデッキからカードを引き、ファイトの準備を終えた。
「……行くぞ」
「どうぞ、ご自由に?」
「「スタンドアップ!「ザ……!」ヴァンガード!!」」
MFSが映し出す舞台……今回は訓練所か。
「魁の撃退者 クローダス!(5000)」
「封竜 テリークロス(5000)」
「俺から行くぞ、ドロー!撃退者 ダークボンド・トランペッター(6000)にライド!クローダスほ左後ろへ。ターンエンドだ!」
「本当熱いねぇ……ま、いいけど。ドロー、ライド。封竜 カルゼ(7000) テリークロスは後ろへ」
かげろう……封竜の戦い方は、さっきのファイトで見ていた。攻撃の主軸となるグレード2を徹底的に封じてくる。敵に回すと厄介だが……。
「テリークロスのブースト、カルゼでアタック。(12000) ドライブチェック、封竜 ピエラ。クリティカルトリガー発動。効果はカルゼへ(17000 ☆2)」
体当たりでダークボンドを後方へと飛ばす。着地は綺麗にできていたが、痛みは確かに受けている。
「ダメージトリガー。ファーストチェック、虚空の撃退者 マスカレード。セカンドチェック、撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン」
「ご自慢のアクセルリンクは使わないの?それとも、分かっててガードできなかったとか?」
「さぁ……どうだろうな?」
と言いつつ、既にアクセルリンクは発動している。向こうも認識はしている……とは思うが。
「じゃ、ターンエンド」
ナツキ:ダメージ2 カズヤ:ダメージ0
「俺のターン、ドロー!血濡れし刃よ、うごめき光を切り捨てろ!ライド・ザ・ヴァンガード!ブラスター・ダーク 撃退者!!(9000)」
ダークボンドの姿が、赤きマントをなびかせた漆黒の剣士、ブラスター・ダークへと変わる。
「無常の撃退者 マスカレード(7000)をクローダスの前にコール!ブラスター・ダークでカルゼにアタック!(9000)」
「ビエラでガード」
ガードしたか。だが……。
「ドライブチェック、幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム」
トリガーはない。特に悔やまれることのない結果だ。
「クローダスのブースト、マスカレードでアタック!マスカレードのスキル、撃退者のヴァンガードがいることでパワープラス3000!(15000)」
「そこはノーガード」
マスカレードの鉤爪が、カルゼに傷を負わせる。ダメージには封竜 リノクロスが入る。
「ターンエンドだ」
ナツキ:ダメージ2 カズヤ:ダメージ1
「俺のターン、スタンドアンドドロー。俺も好きでここに来たわけじゃないんだ。少しは楽しませてくれよ?」
「あの時とは違うさ」
「へぇ……ライド。炎星の封竜騎士(9000) 2体目の封竜騎士もコール(9000)」
インターセプトを封じるユニットか。早速、グレード2の動きを縛ってきたな。
テリークロスのブースト、封竜騎士でアタック(14000)」
「ノーガード」
「ドライブチェック、封竜 シャンブレー」
星を象った炎が、ブラスター・ダークを焼き尽くす。映像ではあるが、見ていて痛ましい。
だが、ブラスター・ダークの口元に浮かんでいたのは……。
「ダメージチェック、氷結の撃退者。ゲット、ドロートリガー!1枚ドローし、パワーをブラスター・ダークへ!(14000)」
「……ふーん。今度はトリガーがあったのか」
「そう言うことだ。見えていたからな」
「あっそ。じゃあ何?結局はあの時の戦い方と何も変わらないってこと?まだそんな機械みたいに……」
「機械も進化するさ。ただ単調なファイトをするだけじゃない」
「へいへい。ま、どう言い繕ったところで同じだし……リアガードの封竜騎士でマスカレードにアタック(9000)」
「ノーガードだ」
マスカレードが炎の中で霧散する。トリガーのおかげで、ダークは無傷だ。
「ターンエンド。……本当、つまらない。何でこんなものに熱くなれるんだか」
ナツキ:ダメージ3 カズヤ:ダメージ1
「俺のターン、スタンドアンドドロー。お前こそ本当に変わらないな」
「ん?」
「その冷めた態度。情熱とはかけ離れた場所に立ち、冷酷に人を見る」
「……それで?」
「その淡々としたファイトもそうだ。無機質で、底知れぬ脅威を見せる。だからこそ不気味で、冷たいんだ」
自分の意思がないんだ。だから思考が読めない。前にファイトした時も、得体のしれないものを相手にしている感覚だった。
それは俺に冷静さがなかったからとか、そう言う類いではない。おぞましい。その一言に尽きる。
「酷いなぁ?人に対する言葉とは思えないけど」
「お前も俺を機械だと言ってるだろ。おあいこだ」
「言うねぇ?口先は確かに成長したようだな」
「変わったのは口先だけじゃないさ……黒き剣を振りかざし、己が理想を世界に描け!ライド・ザ・ヴァンガード!幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム!!(11000)」
涙を流しあい、自らの過ちを認め、前に進んだ。もう俺は……遅れを取るつもりはない!
「黒衣の撃退者 タルトゥ(9000)をコール!スキルでCB2、デッキからタルトゥと同じ縦列に督戦の撃退者 ドリン(7000)をスペリオルコール!」
タルトゥが術式を組み、そこからドリンが現れる。
「クローダスを前に移動し、その後ろに手札からドリン(7000)をコール。ドリンのブースト、クローダスでヴァンガードにアタック!(12000)」
「クローダスのスキルを使わない……?」
困惑してるな。クローダスはスキルでブラスター・ダークを呼び出せる。攻撃要員なら、そちらの方が適任。
さ、どう動く?
***
クローダスのスキルを使わない。何故ダークを呼ばないのか。
コストはある。わざわざクローダスを攻撃に使うより、ダークの方がパワーは高い。ダメージを与えやすいはず。
ま、どうせあいつはデッキを見て、そして動いてる。トリガーがあるとか、その辺りだろ。
けどなぁ……そうやって策を巡らせて、必死になって。そう言うのが鬱陶しい。ただ6枚のカードを相手のダメージに並べるだけだろ?
信念とか、そんなものを委ねるものでもなんでもない。ただの紙だ。紙使って、計算の連続で勝ち負けを決める。たったそれだけ。
なのに……絶対勝って、全国に行く?ここで負けるわけにはいかない?どうしてそこまで熱くなれるのか。
ファイト進めるのだって、ここであのカードが来れば……とか、アニメの見すぎかよ。信じる気持ちで何とかするもんじゃねぇだろ。
本当……つまらない。
「炎星の封竜騎士でインターセプト」
「ドリンのブースト、タルトゥでアタック!(16000)」
「ノーガード。ダメージチェック、封竜 シャーティング。ヒールトリガー発動。ダメージは回復できないが、パワーを封竜騎士へ(14000)」
無駄ヒール。でもそれがどうした。ただ出ただけ。気にすることはない。
……次のやつの行動の方が、よほど気にしなくてはいけなかったから。
「そうか……なら、これでターンエンドだ」
「……は?」
カズヤ:ダメージ2 ナツキ:ダメージ3(裏2)
「俺のターン、スタンドアンドドロー。何でヴァンガードでアタックしない?」
「必ずアタックしないといけないルールはあったか?」
ルールの話をしてはいない。ヴァンガードのアタックを放棄することは、ドライブチェックで得られる手札もなくなると言うこと。
手札の枚数は、そのままファイトに大きく影響を与える。例えパワーが相手より劣っていても、手札を増やすことを目的にアタックするもの。
「……ま、何かあるんだろ。ライド、封竜 ブロケード(10000)」
確かに前とは違う。なぞるだけのファイトだったくせに、有利な条件を利用して心理的に揺さぶってくるとは。
「ブロケードのスキルで、相手は永続的にインターセプトできない。コール、封竜 ジョーゼット(11000)」
けど、大方予想はついてる。ドライブチェックをしないのは、デッキの上に残したいカードがあるから。トリガーならドライブチェックをするはず。
なら……テリークロスのスキルか。こいつは相手のリアガードを退却し、代わりに相手はデッキの上4枚の中のグレード2をコールするスキルがある。
撃退者デッキのグレード2となると、虚空の撃退者 マスカレード……いや、アタック時のスキルを持つマスカレードを相手ターンで出すメリットはない。
黒衣の撃退者 タルトゥも、さっきのターンで使っていた登場時スキルを使うには、コストが足りない。
なら、ブラスター・ダーク 撃退者だ。相手ターンで戦力を削れるとなると、自分ターンで使うより痛手を負わせられる。
コストも今は足りないが、ドリンがいる。ご丁寧に2体いるから、片方を潰してももう片方でコストを確保できる。
なら……。
「テリークロスのブースト、ブロケードでアタック(15000)」
「……ほう」
スキルを使わなければいい。それだけだ。
「……ノーガード」
随分落ち込んでるみたいだな。表情が険しくなってるし、読みが当たったか。
ほらな……どれだけ策を巡らせても、結局は同じだ。何も変わらない。
「ツインドライブ。1枚目、ベリコウスティドラゴン。2枚目、炎獄封竜 ブロケード・インフェルノ」
ブロケードが火球を作り、モルドレッドへとぶつける。もがき苦しむモルドレッドを横目に、レゼンタは悔しそうにダメージチェック、を……?
「……全く」
いや、何だ?少し違う……これは、呆れているのか……?
「学習しろ。これではさっきの二の舞だ。チェック、氷結の撃退者。ゲット、ドロートリガー」
「……っ!?」
「1枚ドロー、パワーはモルドレッドだ(16000)」
な、ドロートリガー……!?何故だ!?
「何か言いたそうだな?だが、言ったはずだ。単調なファイトはしないと」
トリガーをデッキの上に残すメリットが、あの場面でどこにある!?結局、やつはアタックや手札増強のチャンスを放棄してまで、トリガーを温存しただけ。
「で、どうする?もうリアガードにしかアタックできないな?」
「……ジョーゼット、クローダスにアタック(11000)」
「タルトゥを狙わない辺り、考えたな。なら素直にノーガードだ」
パワーを考えたら、クローダスを狙う。いやそれよりも、やつの考えが理解できない……。
「ターンエンド」
カズヤ:ダメージ2 ナツキ:ダメージ4(裏2)
***
「俺のターン、スタンドアンドドロー」
まさか、ここまで上手く決まるとはな。ドライブチェックをしない利点から、テリークロスのスキルを意識していると結論づけてくれた。読み通りだ。
もしそう考えずにテリークロスのスキルを使われていたら、デッキの上4枚の中にグレード2はいなかった。リアガードが欠け、それで終わり。
現にリアガードは1体欠けてはいるが……それも想定内。何故なら……。
「黒き剣を振りかざし、己が理想を世界に描け!!ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム!!(11000)」
モルドレッドのブレイクライドスキルなら……!
「ブレイクライドスキル!CB1、モルドレッドにパワープラス10000!(21000) さらにデッキからブラスター・ダーク 撃退者(9000)をスペリオルコール!そして、この効果でコールしたダークにパワープラス5000だ!(14000)」
俺は前列のいないドリンの前にコール。これにより、ドリンのスキルが使える。
「ドリンのスキル、同じ縦列にブラスター・ダーク 撃退者がコールされた時、ダメージを1枚表に。そのダメージを使い、ブラスター・ダークのスキル!CB2、ジョーゼットを退却!」
「こいつ……!」
カズヤはさっきのプレイングで、調子を狂わされているはず。冷静に振る舞おうとはしているが、所々焦りが見られる。
「モルドレッドの後ろにダークボンド・トランペッター(6000)をコール。ドリンのブースト、タルトゥでブロケードにアタック!(16000)」
「ターでガード!」
やはり焦っているな……ならば。
「ダークボンドのブースト、モルドレッドでアタック!スキルでパワープラス2000!(29000) ツインドライブ、ファーストチェック……暗黒医術の撃退者。ゲット、ヒールトリガー。ダメージを1枚回復し、パワーをダークへ(19000) セカンドチェック……無常の撃退者 マスカレード」
ダークボンドの魔力を宿した剣を、モルドレッドが振るう。ブロケードの腹部が切り裂かれ、痛みからか咆哮をあげる。
「ダメージチェック……封竜 フランネル」
「ドリンのブースト、ダークでアタック!(26000)」
「……ノーガード!」
そこに追撃を加えるブラスター・ダーク。訓練所の壁に叩きつけられ、ブロケードは瓦礫に埋もれる。
「ダメージ……封竜 ジョーゼット!」
「ターンエンドだ」
ナツキ:ダメージ3(裏3) カズヤ:ダメージ4
「俺のターン、スタンドアンドドロー!策が1つ上手く行ったくらいで……封じられし竜の炎は、慈悲深く破滅を与える!クロスライド!炎獄封竜 ブロケード・インフェルノ!!(11000)」
ここでクロスライドか。守りが固くなったな。
「ベリコウスティドラゴン(9000) 封竜 フランネル(7000)をコールし、インフェルノのリミットブレイク!CB2、相手のグレード2のリアガードを全て退却!そしてパワープラス10000!(23000)」
インフェルノから無数の光線が迸る。モルドレッドは跳躍して回避するが、ダークとタルトゥは貫かれてしまう。
「さすがにもう何もないはずだ……フランネルのブースト、ベリコウスティでアタック(16000)」
少し冷静になってきたか……?いや、まだ何か企んでると思っているはず。
だからこそ、先にベリコウスティからアタックしたんだろう。何度もトリガーに阻まれ、思うようにアタックできていないからな。
「暗黒医術の撃退者でガード!」
「テリークロスのブースト、インフェルノでアタック(28000)」
「……ここは守る!暗黒の撃退者 マクリールで完全ガード!コストはエアレイド・ドラゴン!」
「ツインドライブ。1枚目、槍の化身 ター。クリティカルトリガー発動。効果は全てインフェルノへ(33000 ☆2) 2枚目、封竜 シャーティング。ここでダブルトリガー……!?」
手札に完全ガードがあって助かった。それに、今までの傾向からリアガードで先にアタックしてくれたのも幸いだ。
もしインフェルノからのアタックなら、全てのトリガー効果をリアガードに与えられる。それは叶わなかったが。
「シャーティングはヒールトリガー。よって、ダメージを1枚回復。パワーはインフェルノへ(38000 ☆2)」
だが、ダメージの回復は有効。そこは仕方ない。
「またもしてやられただと……!?」
「成長したと言っただろう。どうやら今度は……お前が手のひらで踊らされているみたいだな」
「……俺が、ね」
と、カズヤが低く笑った。さっきまでの焦りは一瞬で消え、どこか諦観した……いや、それも違う。
「……何を考えることがある。どうせ示してくれるなら、従えばいいだけじゃないか」
「何……?」
「それでいい……それが俺だ」
「何を、言ってる……?」
俺に向けてじゃない。独り言だ。だが、内容はハッキリと聞こえる。その意味は読み取れないが。
「……ターンは、終えるのか。もうアタックできるユニットはいないが」
「いいさ……そっちのターンだ」
ナツキ:ダメージ3(裏3) カズヤ:ダメージ3(裏1)
「俺のターン、スタンドアンドドロー」
こちらからターン終了を促したが、そうでもしないと俺はカズヤの言葉を聞き続けることになる。ファイトどころではなくなってしまう。
笑みを浮かべ、周りも気にせず。やつだけが別世界にいるような、異様な恐怖を感じた。
こいつは……何だ?この狂気は、どこから来る?
「ライドはなし。右のドリンの前に、ブラスター・ダーク 撃退者(9000)をコール!ドリンのスキルで、ダメージを1枚表に」
だが、ダークのスキルは使えない。それでもこの回復は活かせるはずだ。
「左のドリンの前に無常の撃退者 マスカレード(7000)をコール!ドリンのブースト、マスカレードでアタック!撃退者を含むヴァンガードがいることで、パワープラス3000!(17000)」
「アートピケでガード」
クロスライドされているからな。普通なら事足りるパワーでも、最小限のシールドで守られる。
「ダークボンドのブースト、モルドレッドでアタック!スキルでパワープラス2000!(19000)」
「ノーガード」
「ツインドライブ!ファーストチェック、虚空の撃退者 マスカレード。セカンドチェック、厳格なる撃退者。ゲット、クリティカルトリガー!パワーはブラスター・ダークへ(14000) クリティカルはモルドレッドへ!(19000 ☆2)」
モルドレッドの駆るペガサスが、インフェルノを上空へ蹴りあげる。そこからペガサスを踏み台に、モルドレッドが頭上からインフェルノを斬りつける。
「ダメージチェック。1枚目、封竜 リノクロス。2枚目、封竜 カルゼ」
「ドリンのブースト、ブラスター・ダークでアタック!(21000)」
「ターでガード」
ダークも後に続こうとするが、その前にターが割って入る。
「ターンエンドだ」
ナツキ:ダメージ3(裏2) カズヤ:ダメージ5(裏1)
「俺のターン、スタンドアンドドロー」
ダメージは5まで追い詰めたが、問題はここからだ。カズヤも冷静になっている。油断はできない。いや、しない。
「ライドなし。そして、テリークロスのスキル。CB1、ブラスター・ダークの後ろのドリンを退却。引き換えに、あんたにはデッキの上から4枚の中のグレード2をコールしてもらう」
テリークロスの左腕の砲門から、炎が打ち出される。ドリンが炎に焼かれる中、その足元には魔法陣のようなものが。
……だが、選択を誤ったな。
「インフェルノのリミットブレイクで退却するユニットを増やそうと考えたんだろうが……こうなることは予想できたはずだ」
「……何が言いたい?」
「こう言うことだ……スペリオルコール!ブラスター・ダーク 撃退者!!(9000)」
「……モルドレッドがアタックしなかったターンの話か」
コールするのは、マスカレードのいる場所。マスカレードは退却するが、その後ろにはドリンがいる。つまり……!
「ドリンのスキルで、ダメージを1枚表に。そして、ダークのスキル!CB2、消えろ!ベリコウスティドラゴン!!」
ダークが剣を地面に突き立てると、そこから衝撃波が。ベリコウスティがその餌食となり、姿が消え去る。
完全に決まった。が……。
「どうせ何か企んでるとは思ったさ。なら自分から首突っ込んでも、別にどうってことない。あれこれ考えて踏みとどまるより、従った方が上手く行く」
こいつ、わざわざ地雷を踏んだのか……!?考えが本当に読めなくなってきたぞ……!?
「フランネルの前に封竜 コーデュロイ(9000)をコール。こいつもテリークロスと同様。CB1、ドリンを退却して、デッキ上4枚の中のグレード2をコールしてもらう」
「……黒衣の撃退者 タルトゥ(9000)をスペリオルコールだ」
コストがないから、タルトゥのコール時スキルは使えない。それより……。
「ブロケード・インフェルノ(11000)と、その後ろに封竜 シャンブレー(4000)をコールし、ヴァンガードのインフェルノのリミットブレイク」
インフェルノの体に光が集まる。そして……。
「CB2、相手のグレード2のリアガードを全て退却し、パワープラス10000(23000)」
訓練所の壁を、地面を砕きながら、2体ダークとタルトゥを光線が貫く。残ったのは、モルドレッドとダークボンドのみ。
「フランネルのブースト、コーデュロイでアタック(16000)」
「……暗黒医術の撃退者でガード!」
「ヴァンガードのインフェルノでアタック(23000) ツインドライブ、1枚目、封竜 コーデュロイ。2枚目、封竜 ビエラ。クリティカルトリガー発動」
アクセルリンクは問題ない。だが、カズヤの行動が伴わないと、予測も難しくなる。
「パワーはリアガードのインフェルノ(16000) クリティカルはヴァンガードのインフェルノへ(23000 ☆2)」
「ダメージトリガー……ファーストチェック、暗黒の撃退者 マクリール。セカンドチェック……撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン」
「シャンブレーのブースト、インフェルノでアタック。シャンブレーのスキル、ブロケードを含むユニットをブーストした時、SB1でパワープラス6000(26000)」
「く……厳格なる撃退者2体でガード!」
「ターンエンド」
ナツキ:ダメージ5(裏3) カズヤ:ダメージ5(裏5)
「俺のターン、スタンドアンドドロー!」
向こうは手札3枚と少ない。が、クロスライドのせいで少し守りが固い。インターセプトも1回は使えるからな。
しかも俺の手札は2枚。リアガードはダークボンドだけ。この状況を打破しなければ……恐らく次のターン、俺は負ける。
「カズヤ。俺は……お前を倒す。あの時の自分を超えるために!!」
この想いは本物だ。決して機械などと語らせはしない。それを成就する一手は……。
「黒き剣は何度でも!費えぬ理想を世界に描く!アゲイン・オブ・ブレイクライド・ザ・ヴァンガード!幽玄の撃退者 モルドレッド・ファントム!!(11000)」
既に俺の手の中にある!
「ブレイクライドスキル!CB1、モルドレッドにパワープラス10000!(21000) さらにデッキから無常の撃退者 マスカレード(7000)をスペリオルコールし、パワープラス5000!(12000)」
「無常の方をコール……ま、何かあるんだろ」
「虚空の撃退者 マスカレード(9000)を無常のマスカレードの前にコール!」
手札は使いきった。これで決める!
「ダークボンドのブースト、モルドレッドでアタック!スキルでパワープラス2000!(29000)」
あえて無常のマスカレードをコールしたのは、パワーラインを作るためだ。さっきコールした虚空のマスカレードでは、クロスライドのパワーに届かないからな。
でもこれで、2回のアタックが確定。後はアタックをガードするだけの手札が、カズヤにあるかどうか……。
「ノーガード」
ハッと目を見開く。それは俺が、ずっと聞きたかった言葉なのだから。
「……ツインドライブ!ファーストチェック、撃退者 レイジングフォーム・ドラゴン。セカンドチェック、撃退者 エアレイド・ドラゴン。ゲット、クリティカルトリガー!効果は全てモルドレッドへ!!(34000 ☆2)」
モルドレッドの剣が、深くインフェルノに突き刺さる。悲鳴のような叫びをあげ、光の粒子となって消えていった。
***
「リベンジはさせてもらったぞ」
「……あっそ」
MFSが停止する。だが俺たちは、その場を離れずに向かい合っていた。
「勝ちは勝ち。負けは負け。別にあんたがどうしようと、俺にはどうでもいい。途中、ちょっと苛ついたけど」
「フッ……そうか」
これでようやく、俺はあの時の因縁に蹴りをつけられた。力に固執した俺ではなく、1人のファイターとして戦い……そして勝った。
「ま、あんたは何かスッキリしたんなら、別にいいんじゃない?じゃ、俺はこれで」
「あぁ……そうだな」
「もう会うことはない。また母さんに頼まれたら、その時は考えるけど」
デッキを片手に、カズヤは去っていく。悔しさは微塵もない。ただ負けた。そこに特別な感情もなく、結果だけがカズヤの足を動かす。
確かに、もう会うことはない。リベンジは果たした。再戦の機会も、訪れることはないだろう。
「……それならそれでいいさ」
ふと、背を向けるカズヤの姿に誰かの面影が重なる。どこか親しく、なのに遠い存在。
お前も、ずっとそこにいたんだな。
「……さらばだ」
その姿に別れを告げ、俺はその場を後にした。