つながり ~君は1人じゃない~   作:ティア

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はい、間が空く!半年くらいお待たせしました……。

でも気がつけばもうすぐ100話行きそうなんですよね、その小説。長く書いてきたものだなと。

前回の話忘れてるかもですが、早速どうぞ。


ride98 月下、微笑むのは

「……さて」

 

目の前のMFSが起動するのを確認しながら、俺は自分の置かれた状況を再確認する。

 

ワタル君が負けた。そしてシオリさん、リサさんのどちらかは必ず負ける。そうなると、残るは俺だけ。

 

シオリさんたちのファイトは、確かAブロックの決勝。ブロック代表は確定。後は俺も、このCブロックの代表になれるかどうか。

 

負けは許されない。それは今まで以上に。ブロック代表になり、その先に待つ決勝トーナメントで優勝すれば、秋に得られなかったグランドマスターカップ決勝大会に参加できる。

 

けど、こんな状況だってのに……みんなには申し訳ない。別の目的もできてしまった。

 

このCブロックにいるはずのノスタルジア、過去の追憶ヴェルレーデとのファイト。ずっと手を伸ばし、それでも届かないと思ってた存在。もう少しで、その舞台に立てる。

 

「……おっ?」

 

準備してたら、対戦相手が来たみたいだ。けど、これは驚いた。まさか、次の相手は……。

 

「あんたも勝ち残ってたんスか。借り物デッキでシオリさんと互角にやり合った腕は確かみたいっスね……立花さん!」

 

「あっ、あなたは!デッキ貸してくれた人!後、魔王の人!」

 

「間違ってはないけど、覚え方雑っスね!?佐原トウジっスよ!」

 

立花フユカ。以前、たまたま修行のために訪れたショップで出会った子。どこか天然と言うか、ずれているっスけど……ファイトの腕は確か。

 

「立花さんとは、一度ファイトしてみたかったんスよ」

 

「えっ?ファイトなら喜んで受けますよ?」

 

「あんたこの前デッキ忘れてたじゃないっスか!」

 

けど、今日はファイトできる。どんなデッキなのか、ちょっと楽しみっスね……。

 

「ま、いいっスよ。それより、あんたもこの大会に参加してるってことは、グランドマスターカップが目的なんスか?」

 

「違いますよ?ちょっと個人的な目的があって」

 

「へぇ、そうなんスね。この大会に参加する理由なんて、決勝大会への参加権くらいだと思ってたのに」

 

「ファイトしたい相手が、この大会に参加してたんです。それで私も参加したんですけど……」

 

月城さんとシオリさんみたいな関係っスかね?あまり頻繁には会えないけど、仲がいい……みたいな?

 

「でも……ダメでした。別のブロックで、しかも負けたみたいで。待ち時間にも会えてませんし……残念です」

 

「そうっスか……」

 

「本当に楽しみだったんですよ。クリスマスケーキの予約も、取りに行けなさそうだから断念したのに……」

 

……何かそこまでショック感じてなさそうなのは、気のせいっスかね?

 

「ですから、誰が悪いわけではないですけど……こう見えて私、少しイライラしてるんですよ。このファイトも、本気で行きます」

 

声色が変わった。やりきれない想いを、このファイトにぶつけるってことっスか。これは本気の立花さんが見られるってことっスか……!

 

「上等!本気なら喜んで受け止めるっス!そんでこっちも、お返しの本気をぶつけるだけっスよ!」

 

立花さんの準備も終わったみたいだ。伏せられたファーストヴァンガードに手をかけ、表返す。

 

「「スタンドアップ!「ザ……」ヴァンガード!!」」

 

舞台は夜の森林。さ、立花さんのクランは何スかね……?

 

「星輝兵 ダストテイル・ユニコーン!(5000)」

 

「神鷹 一拍子!(5000)」

 

オラクルシンクタンク……!しかもツクヨミっスか……!

 

「なかなか頭使うデッキっスね?」

 

「よく言われます。私はそこまで難しいとは思わないんですけどね?」

 

いや、使いこなせるイメージが全然湧かないっスよ……。

 

何せツクヨミデッキは、デッキを1周させてトリガーを固定化。爆発力のある一撃を叩き出す強力なデッキとなる。

 

ただ、そのためにはデッキ内容を記憶し、上手くデッキ枚数を調整する技量も求められる。それらが伴わないと、ツクヨミデッキは機能しない。

 

それだけの記憶力とプレイングを有しているとは、とても感じないんスけど……?

 

「じゃ、俺から行くっス!ドロー!魔弾の星輝兵 ネオン(7000)にライド!ダストテイルは後ろへ、ターンエンド!」

 

「では、私のターン!ドロー!ここで、神鷹 一拍子のスキル発動!」

 

早速来たっスね。ツクヨミデッキにおける、デッキ1周のためのスキルが。

 

「デッキの上から5枚見て、三日月の女神 ツクヨミにライドできる。残りはデッキの下に好きな順番で置きます」

 

ここでデッキの下にカードを置くことが、デッキのカードを固定化することにつながる。ファイトを続けてデッキが減れば、自然と一番下のカードに到達する……そこを狙う。

 

立花さんはデッキの上からカードを指で数え、3枚目のところで引い……っ!?

 

「な……引いた!?」

 

何も見ずに、ピンポイントで1枚だけ!?まさかそれが、三日月の女神 ツクヨミなんて言わないっスよね……!?

 

もしそうだとしたら、あんたは……まさか……!?

 

「三日月の女神 ツクヨミ(7000)に……ライド!」

 

「……っ!」

 

紛れもなく、そこにはツクヨミがいた。MFSに映るのも、一拍子じゃない。ツクヨミだ。

 

「でも、カードはデッキの下に戻さないとだから……上から5枚目、2枚目、4枚目、1枚目の順番で戻しますね」

 

裏向きのまま、順番だけを変えてデッキの下にカードを置く。もちろん、何も見ないで。

 

間違いない。そんな芸当ができる人間は1人しかいない。

 

「あんたが……ヴェルレーデ……!?」

 

「言ったはずです。本気だと。星野さんと友達ですから、この力についても、私についてもご存知でしょう?」

 

立花さんが、ノスタルジアの3人目……!?

 

「その力は確かに知ってる……けどあんたがヴェルレーデ……!?」

 

「……あれ?その反応、もしかして私が過去の追憶だって、知らなかったですか?」

 

「いや、初耳っスよ!?シオリさんだって、あんたがヴェルレーデなんて知らないっスから!」

 

案外、世間も狭いもんだ。まさか伝説と呼ばれたファイターが、すぐ近くにいたとは……!

 

「知らない……?あの大会には出ていたのに……気になりますけど、今その答えは出ませんね」

 

ま、俺はその答えを持ち合わせてはいないっスけど……確かに違和感のある話ではある。

 

シオリさんはノスタルジアと呼ばれる1人。なら、他の2人を知らないのは不思議だ。最上ナツキや彼女は、シオリさんを知ってたのに。

 

ま、言う通り答えは出ない。そんなことより、今目の前には……ノスタルジアがいる。

 

ずっと追い続けた。ファイトしたいと願った。その相手が、目の前にいる。俺の相手をしている。

 

今この瞬間だけは、俺だけのもの。ノスタルジアを一人占めしている。その特権を得ている。

 

こんなの興奮しかない。今の俺がどこまで通用するか、試さずにいられない。

 

絶対勝つ……!

 

「じゃあ再開して……オラクルガーディアン ジェミニ(8000)をコール!ツクヨミでアタック!(7000)」

 

「ノーガードっス!」

 

「ドライブチェック……稲葉の白兎」

 

「ダメージチェック!魔弾の星輝兵 ネオン!」

 

「続けてジェミニでアタック!(8000)」

 

「カオスビート・ドラゴンでガード!」

 

ジェミニのレーザーは、カオスビートに防がれる。横目でネオンを見ながら、カオスビートは消えていく。

 

「ターンエンド。何だかさっきよりも気合い入ってませんか?」

 

 

トウジ:ダメージ1 フユカ:ダメージ0

 

 

「俺のターン、ドロー!……そういや、俺がこの大会に参加する目的を言ってなかったっスね」

 

「全国大会への参加権……ではなさそうですね」

 

「それもあるっスよ。けど……伝説と称され、無敵の強さを誇り、俺が憧れる至高の存在……ノスタルジア!あんたとファイトし、勝つことっスよ!!」

 

「勝つ……」

 

ま、蓋を開けたら全員知り合い……最上ナツキは微妙っスけど。

 

けど、その強さは紛れもなく本物。ここまで勝ち残ってるわけだし、それを可能にするのが、さっき見た能力……アクセルリンク、だったはず。

 

「でもすみません。この力を使う私には……絶対勝てませんよ」

 

「へぇ、そう言うこと普通に言っちゃうんスね。ちょっと意外」

 

「意外ですか?でも……それは事実です。あなたがどれだけ策を巡らせても、抗うのは無意味です。この勝負、結果は既に見えている」

 

本当に普段のキャラと違う。一歩間違えたら自分の首を絞めるほどの強気な発言。それだけ自信があるってことか……!

 

「面白い……ならその未来、俺が変える!ライド!無双の星輝兵 ラドン!(9000)」

 

「……変える、なんて簡単に言う。無駄なのに」

 

「何か言った気がするっスけど……続けるっス!無双の星輝兵 ラドン(9000)と魔爪の星輝兵 ランタン(7000)をコール!ダストテイルのブースト、ラドンでアタック!(14000)」

 

「ノーガードです」

 

「ドライブチェック、星輝兵 ネビュラキャプター。ゲット!ドロートリガー!1枚ドローして、パワーをリアガードのラドンへ!(14000)」

 

ツクヨミには見えない位置から、ラドンが狙撃を行う。肩を撃ち抜かれたツクヨミは、反動で体勢を崩す。

 

「ダメージチェック、バトルシスター もなか」

 

「ランタンのブーストした、ラドンでアタック!スキルで、星輝兵のヴァンガードがいるなら、パワープラス3000!(24000)」

 

「これもノーガード。ダメージチェック……ロゼンジ・メイガス。ヒールトリガーですね」

 

このトリガーも、最初から見えていたってことっスよね。すごいっスよ、本当……ノスタルジアは!

 

「ダメージを1枚回復、パワーはツクヨミ(7000)」

 

「ターンエンドっス!」

 

 

トウジ:1 フユカ:ダメージ1

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。三日月の女神 ツクヨミのスキル。デッキの上から5枚見て、半月の女神 ツクヨミがあればライドする」

 

と言いながら、また何も見ないで2枚目のカードだけ引いたっスね……。ってことは、あのカードは……!

 

「半月の女神 ツクヨミに、スペリオルライド!(9000)」

 

ツクヨミが小さな剣を持ち、神鷹 一拍子に乗った状態で現れる。

 

「残りは……この順番で戻そうかな」

 

やはり見ないで順番を変え、そのままデッキの下にカードを置く。最初に下に置いたカードが、デッキの上へ少しずつ押し上げられていく。

 

「続けて半月のツクヨミのスキル。ライドした時、ソウルに一拍子と三日月のツクヨミがいるから、SC2」

 

「デッキのカードが、さらに少なく……」

 

「ジェミニを後ろに下げ、その前に半月の女神 ツクヨミをコール。さらに反対の列に、戦巫女 タギツヒメ(9000)と稲葉の白兎(6000)をコールし、白兎のスキルで……ダークキャットを手札からソウルに置きますね」

 

リンクジョーカー相手なのに、リアガードのコールを全く躊躇わない。何か見えてるからなのか、それとも……。

 

「白兎のブースト、タギツヒメでアタック!(15000)」

 

「メテオライガーでガード!」

 

「ヴァンガードのツクヨミでアタック!(9000)」

 

「そうっスね……ここはノーガード!」

 

「それでいいですか?ドライブチェック、オラクルガーディアン ニケ。ゲット!クリティカルトリガー!」

 

きっちりトリガー引いてくるっスか……いつも以上にトリガーは警戒しないといけないっスね。

 

「パワーはリアガードのツクヨミ(14000) クリティカルはヴァンガードのツクヨミへ!(9000 ☆2)」

 

「ダメージチェック、1枚目……障壁の星輝兵 プロメチウム。ちっ!2枚目……星輝兵 メビウスブレス・ドラゴン」

 

「ジェミニのブースト、ツクヨミでリアガードのラドンにアタック!(22000)」

 

「パワーも上がってるし、ダメージを与えてもいいはず……?とりあえずそこはノーガード!」

 

2体のツクヨミが剣を構え、別々のラドンを切り裂く。リアガードの方は光となって消えていく。

 

「ターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ3 フユカ:ダメージ1

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!……なるほど」

 

ドローしたのはヒールトリガー……星輝兵 ステラガレージ。これがダメージトリガーで出たら、問題なく発動できた。

 

だからリアガードを狙った。ダメージの差し引きが0なら、戦力を潰すのが得策。

 

思ったより厄介っスね……。しかもデッキが見えるなら、ツクヨミデッキに必要なデッキ把握の記憶力は不要。見えているんスから。

 

「……反則クラスっスよ、本当」

 

「別に見えるだけで、カードを操ったりはしてませんよ?」

 

「かもしれないっスけど……やっぱすごいっス、ノスタルジアは」

 

「……そうですか。ならよかった。私にはその凄さが必要ですから」

 

「……へぇ」

 

何か訳ありみたいっスね。この異質な力に縋るだけの理由が、彼女には確かにある。

 

理由……そして、ヴェルレーデ……結び付きそうなものが、1つある。

 

「そう言えばあんた、今世間を騒がせてるビリー・ブレイカーのヴェルレーデとは同一人物なんスか?」

 

「はい、そうですよ」

 

「随分あっさり認めるんスね……ってことは、そう言う世直しをするために、この力を役立ててる、その強さが必要……みたいな?」

 

いじめや非行を止めるために活動するビリー・ブレイカー。その行動理念から察するに、正義を示す力が必要だってことだと推測できる。

 

事実、ヴァンガードの勝敗で事件を解決している。それだけの絶対的な存在が、彼女の手には握られている。

 

……力、ねぇ。

 

「少し違いますね。私はただ、作りたいだけですよ」

 

「作るって……何をっスか?」

 

「何者にも壊させない希望ですよ。抵抗もさせない、絶対的な力によって」

 

希望とは……大きく出たっスね。ヒーローなんてレベルじゃない。

 

「力を持つ人は、それを善にも悪にもできる。その匙加減で、周囲の環境全てを決めてしまうほどに」

 

「……環境を」

 

「何かを変えようと願っても、それで何かを得られたとしても……力ある者の気まぐれで全て壊れる。変わることは、無駄なんです」

 

「……あぁ、それならよく分かるっスよ」

 

話が難しくなりそうで、実は身近な話だった。要は権力によって、左右される人種がいる……ってことだ。

 

 

それなら、俺が一番よく知っている。

 

 

「だから私が、力を持つ側に立てたから……そんな苦しみなんか与えず、希望を与える。それだけですよ」

 

「……そう言うことっスか」

 

「弱者は抗うこともできない。変わることも許されない。ただ黙って、結末を受け入れることしかできない。ならその結末をより良くできるのは、力ある強者しか……」

 

「確かに前半はその通り。けど、後半には賛同しかねるっスかね」

 

「え?」

 

力がないから何も変えられない。施しに甘えて、享受するしか道はない。選ぶ未来の数は、1つしかない。

 

 

……ふざけるな。

 

 

「弱者が強者になろうとして、何が悪い?力がないから指をくわえて、はいそうですかと従ってろって……?冗談じゃない」

 

そんなの俺が認めない。所詮は上に立つ者の戯言。力を振りかざす口実。

 

そんなものに何の意味もない。結局、他人の采配に左右されるしかない。あんたは……本当の弱者の気持ちを分かっていない。

 

だから俺は……あの人の居場所を探すんだ。

 

リアンの。

 

「ですが、無駄ですよ。このファイトの結末は既に決まっている」

 

「だから……言ったはずっスよ。その未来、俺が変えるって!誘え!滅び渦巻く世界へ!ライド!星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン!!(11000)」

 

森林よりも巨大な竜が、黒輪を背に夜闇に現れる。

 

俺が望んだ力。それを越えて……俺は。

 

「コールはなし!ダストテイルのブースト、インフィニットゼロでアタック!スキルでパワープラス2000!(18000)」

 

「ノーガードです」

 

「ツインドライブ!1枚目、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てインフィニットゼロへ!(23000 ☆2) 2枚目、星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン」

 

インフィニットゼロの咆哮がツクヨミに直撃。爆風を巻き起こす。

 

「ダメージチェック。1枚、三日月の女神 ツクヨミ。2枚、ロゼンジ・メイガス。ヒールトリガー……ですけど」

 

回復はできない。トリガー効果は不発。

 

「パワーはヴァンガードのツクヨミです」

 

「後続のリアガードがいればよかったっスけど……仕方ない。ここはターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ3 フユカ:ダメージ3

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。半月の女神 ツクヨミのスキル。デッキの上から5枚見て、満月の女神 ツクヨミにライド……と言っても」

 

立花さんは一番上のカードを引くだけ。それ以外のカードは見向きもしない。つまり……!

 

「暗黒の夜に砕かれし心に、真実を照らす光を与える!希望の輝きを……今ここに!!スペリオルライド・ザ・ヴァンガード!満月の女神 ツクヨミ!!(11000)」

 

夜空に羽ばたくツクヨミの背後に、美しい満月が重なる。と、一拍子がツクヨミと一体化し、青い羽を背に天空に舞い降りる。

 

「残り4枚は好きにデッキの下へ。続けて、ダークキャット(7000)をコールし、スキルで全てのプレイヤーは1枚ドローできる」

 

「引けるのなら……遠慮なく引くっス!」

 

立花さんも当然ドローする。そのためにコールしたはずっスからね。

 

にしても、これでリアガードサークルが全部埋まった。本当にリンクジョーカー相手だろうと、何も気にしてないっスね……。

 

それだけ立花さんの言うファイトの結果が、絶対だと言うのか。

 

「ジェミニのブースト、半月のツクヨミでアタック!(16000)」

 

「ステラガレージでガード!」

 

「ダークキャットのブースト、満月の女神 ツクヨミでアタック!(18000) ツインドライブ、1枚、バトルシスター しょこら。2枚、サイキック・バード。ゲット!クリティカルトリガー!パワーはタギツヒメ(14000) クリティカルは満月のツクヨミへ!(18000 ☆2)」

 

ツクヨミの広げた羽から無数の光弾が放たれ、インフィニットゼロを襲う。

 

「ダメージチェック……1枚目!獄門の星輝兵 バラジウム。2枚目!星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン」

 

「白兎のブースト、タギツヒメでアタック!スキルで、ソウルが6枚以上あればパワープラス3000!(23000)」

 

「ちっ……追い討ちキツいっスよ……ガード!ヴァイス・ソルダード、ネビュラキャプター!!」

 

タギツヒメの振るう鉈はソルダードに止められ、ネビュラキャプターがその隙に電撃を放つ。が、白兎が代わりに電撃を受け、攻撃を中断したタギツヒメに抱えられ後退した。

 

「ターンエンドです」

 

 

トウジ:ダメージ5 フユカ:ダメージ3

 

 

「俺のターン、スタンドアンドドロー!」

 

既にかなりのカードがデッキの下に戻っている。後どれくらいかは分からないっスけど、1周するのは時間の問題。

 

「光を切り裂き、闇が渦巻く……。混沌なき世界を生み出す、破滅を刻む刃をかざせ!ブレイクライド!星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン!!(11000)」

 

インフィニットゼロが光に包まれ、その光を裂いて現れたのは……巨大な鎌を携えた狂気の竜。

 

「ブレイクライドスキル!カオスブレイカーにパワープラス10000!(21000) さらに半月のツクヨミと、ダークキャットを……ロック」

 

デッキが見えると言っても、順番まではどうにもできない。なら、1周される前に力でねじ伏せるしかない!

 

「ランタンのスキル!相手リアガードがロックされる度、パワープラス2000!2体ロックでパワープラス4000!(11000)」

 

「これでランタンだけでもヴァンガードを狙える……でも、無駄ですよ。そのパワーでは……」

 

「これで終わりなら、無駄かもしれないっスね!コール、星輝兵 コロニーメイカー!(9000) スキルで、相手にロックカードがあれば、CB1でデッキから獄門の星輝兵 バラジウム(7000)をスペリオルコール!」

 

リアガードも増やせた。攻撃の準備は万端。後は……。

 

「ダストテイルのスキル!CB1、自身をソウルに入れて、タギツヒメを……ロック。そして、リアガードがロックされたことでランタンのパワーもさらに上昇!(13000)」

 

念入りにロックして、次のターンでの行動を封じる。 まだ負けることはないはず。

 

「ランタンを前へ。そのランタンでアタック!(13000)」

 

「ノーガード。ダメージチェック、バトルシスター もなか」

 

「カオスブレイカーでアタック!(21000)」

 

夜空を翔け、ツクヨミに大鎌を振り下ろすカオスブレイカー。ツクヨミは後方にかわすが、二撃目はツクヨミを捉える。

 

「ツインドライブ!1枚目、障壁の星輝兵 プロメチウム。2枚目、星輝兵 カオスブレイカー・ドラゴン」

 

「ダメージチェック、半月の女神 ツクヨミ」

 

「押し切る!バラジウムのブースト、コロニーメイカーでアタック!(16000)」

 

「ニケでガードです!」

 

「……ターンエンドっスかね」

 

 

トウジ:ダメージ5(裏2) フユカ:ダメージ5

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。ライドもコールもなし、ツクヨミでアタック!(11000)」

 

「……後のために残したいっスけど、仕方ない!障壁の星輝兵 プロメチウムで完全ガード!コストはカオスブレイカー・ドラゴン!」

 

これで俺の手札は1枚。ロックがなかったら危なかった。

 

「ツインドライブ。1枚……バトルシスター じんじゃー。ゲット!クリティカルトリガー!効果はツクヨミ!(16000 ☆2) 2枚……三日月の女神 ツクヨミ。これでターンエンド」

 

アタックもヒットせず、リアガードのロックが解けてターンが回る……なんて、そう都合よくはいかないっスよ!」

 

「バラジウムのスキル!相手のエンドフェイズにリアガードがアンロックしたことで、CB1と自身をソウルに置いて、アンロックしたリアガード1体を再度ロック!対象は……タギツヒメ」

 

よし、1列分の攻撃力を奪った。後は……。

 

「今度はカオスブレイカーのリミットブレイク!SB1で、アンロックしたリアガードを1体退却!2体アンロックしたから、SB2っスよ!」

 

ダークキャットと半月のツクヨミが黒輪と共に消滅。そして俺は2枚のカードを引く。

 

「……なら、改めてターンエンド」

 

 

トウジ:ダメージ5(裏3) フユカ:ダメージ5

 

 

「何とか回ってきたっスね……俺のターン!スタンドアンドドロー!」

 

とりあえず1ターンはしのいだっスけど……向こうの手札は8枚。このターンで決めるのは難しいか。

 

「ランタンを後ろに下げ、その前に星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン(11000)をコール!さらにカオスブレイカーのスキルで、CB1、星輝兵1枚を手札から捨て、ジェミニを……ロック」

 

これで立花さんは今、ヴァンガードのいる列しかまともに使えない。残り2列は、片方が使用不可。もう片方はブーストが使用不可だ。

 

「ランタンのスキル!相手のリアガードのロックにより、パワープラス2000!(9000)」

 

「またパワーを……でもそれくらいのパワーでは、意味はないですよ」

 

「かもしれないっスけどね!何もないよりはマシ!ランタンのブースト、インフィニットゼロでアタック!(20000)」

 

「ニケでガード!」

 

メビウスブレスの光線は、ニケのレーザーと相殺される。生じた爆風で視界が悪くなる中……。

 

「行け、カオスブレイカー!ツクヨミにアタック!(11000)」

 

爆風を抜け、カオスブレイカーが再び大鎌をツクヨミに向ける。だが……。

 

「ガード!じんじゃー、ジェミニ!」

 

「ツインドライブ……1枚目、星輝兵 メテオライガー。ゲット!クリティカルトリガー!効果はコロニーメイカー!(14000 ☆2) 2枚目、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。もういっちょ、クリティカルトリガーっスよ!!」

 

これが見えていたから、安全な道を選んだ……そう言うことっスね……。

 

「これも効果はコロニーメイカー!(19000 ☆3) そのままアタック!」

 

ブースト役を用意できたらよかったんスけど……今のドライブチェックで2枚増えて4枚。次のターンの守りを考えても、攻撃に回す余裕はない。

 

「ガード、バトルシスター しょこら。コストに半月の女神 ツクヨミを使って、完全ガードです」

 

そいつは少し前に手札に加わっている……いつか使われるのは分かってた。

 

後少しが届かない。けど、届かないならまた手を伸ばせばいい。次は触れてやる。

 

「ターンエンド!」

 

 

トウジ:ダメージ(裏4) フユカ:ダメージ5

 

 

「私のターン、スタンドアンドドロー。……やっぱり、変わらなかった」

 

「え?」

 

「あなたはこのファイトの結末を変えると言った。でも、それは叶わない。未来はとっくの前に……過去に、既に決まりきっている」

 

「だったら、俺が何したところで無駄だったってことっスか」

 

「残念ですけど、そうなります。過去はどれだけ願っても、変えられませんから」

 

痛い言葉だ。そして沸き上がる、名前もつけられない感情。

 

「過去から重なり、進む未来の形に変化なんてない。そして、このターンで……未来がつながる」

 

「つながるって……まさか!?」

 

「ライドなし。そしてツクヨミのスキル!CB2、2枚ドローして、手札1枚をソウルに入れる!」

 

ロゼンジ・メイガスがソウルに入る。10000シールドも平然とソウルに入れるとは。

 

間違いない。このターンで、デッキが1周する。

 

「もう一度ツクヨミのスキル!CB2、2枚ドロー!手札の満月のツクヨミをソウルへ!」

 

「く……!」

 

「サイキック・バード(4000)をコール!スキルで自身をソウルに入れて、1枚ドロー。続けて2枚目のサイキック・バードをコールし、さっきと同じスキル。1ドロー!」

 

ここに来ての大量ドロー。どんどんデッキの枚数が減っていく。

 

「3枚目のサイキック・バードをコールし、スキルでドロー。さらに4枚目もコールして、スキル!1ドロー!」

 

「どこまでドローするつもりっスか……!?」

 

「ツクヨミの後ろにダークキャット(7000)をコール!スキルで全てのファイターは1ドローできる!」

 

「当然……ドロー!」

 

手札は増えたが、カオスブレイカー・ドラゴン……ガードには使えない。

 

「……あまりいいカードが引けなかったんじゃないですか?」

 

「見えてるくせに、白々しいっスよ!」

 

「……でも、これで未来がつながった」

 

「なっ……!」

 

1周した。悪夢の瞬間だ。まず確実に、トリガーは来る。その上、2枚だ。

 

それだけでも脅威なのに、立花さんはあるユニットをコールする。それは、ツクヨミデッキにとってのフィニッシャーとも呼べるユニット。

 

「コール、サイレント・トム(8000)」

 

「……ヤバいっスね」

 

トムはグレード0でのガードを封じる。さっき、ドライブチェックで加わった2枚は、どっちもグレード0。トムのアタックを防げない。

 

本当にまずい。このターン、正念場だ。

 

「ダークキャットのブースト、ツクヨミでアタック!(18000)」

 

無数の光弾が、カオスブレイカーに降り注ぐ。だが、黙って見過ごすわけにはいかない。

 

「トムにグレード0が使えないなら……こっちで使う!ガード、メテオライガー!ヴァイス・ソルダード!」

 

「だと……思いましたよ」

 

これでトリガーが2枚引かれても突破できない。けど……。

 

「ツインドライブ。1枚……バトルシスター じんじゃー。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てトムへ(13000 ☆2)」

 

「やっぱり……」

 

「2枚……バトルシスター じんじゃー。ゲット!クリティカルトリガー!効果は同じトムへ(18000 ☆3)」

 

ステラガレージとソルダードがカオスブレイカーを守るが、その近くを音もなく忍び寄る影があった。サイレント・トムだ。

 

「これが……未来です」

 

「……未来」

 

「デッキの下にカードを戻した瞬間から、トリガーが2枚来るのは決まっていた。この未来、あなたにどうにかできましたか?」

 

「それは……」

 

「願うのは自由。でも……それでも、変えられない。変わらない。ただ従うしかないんですよ」

 

どれだけ抗っても、食らいついても、立花さんが過去に定めたトリガーは……確かに変えられない。だからこのターン、その未来が現実となった。

 

これが……力の差。俺にはないもの。弱者に成り下がるしかない、負の烙印。

 

「とどめです。サイレント・トムでアタック。スキルでこのアタックはグレード0でガードできない(18000 ☆3)」

 

俺の手札は、カオスブレイカー・ドラゴンとネビュラキャプターの2枚。カオスブレイカーはシールド値がなく、ネビュラキャプターはグレード0。ガードに使えない。

 

コロニーメイカーがインターセプトを使えるが、シールド値が足りない。

 

おまけにクリティカルは3。デッキに残るヒールトリガーを全て引けたとしても、耐えきるには足りない。仮に足りてたとしても、3連続でヒールトリガーなんて芸当、無理だ。

 

それこそ、ノスタルジアでもない限りは……。

 

「……俺はまだ、弱者ってことなんスね」

 

力がないから。俺はまだ、強者にはなれない。

 

ここまで……っスね。

 

「……ノーガード」

 

トムの弾丸が、カオスブレイカーを貫く。勝敗は、完全についた。

 

俺の、負けだ。

 

 

 

 

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