このファイトも、特に危なげなく勝利できた。
相手は星野さんのチームメイトの……名前何でしたっけ?リンクジョーカー使いでしたが、結末は同じ。
決められた未来に向かって進むだけ。ロックなんて厄介な妨害をしても、私の決めた未来が変わるわけじゃない。
そう……絶対だ。私には力がある。何者にも変えさせない力が。
ならその力を正しく使わないといけない。力ある者の前には、弱者の望みは幻想と化す。
その残酷さを知ったから、この力を使えるようになったんだから。
「おっ、終わったみたいだな!お疲れ、フユカ!」
「お疲れ~」
「……2人とも」
奥山さんに松田さんか。私のことを待っててくれたんですかね。
彼女たちとは、私がビリー・ブレイカーとして動き出してすぐに出会った。いつの間にか同志として行動し、今に至るわけですが。
「あの対戦相手、確かロメリアのチームメイトだったっけ?」
「はい……でも、勝てましたよ。負けるはずないですから」
「さすがフユカちゃんだね~。オラオラだね~?」
「……当たり前の結果にすぎませんから」
そう、当たり前。負けるなんてあり得ない。勝利は常に強者の前に表れる。そんな強者の持つ力には、いかなる抵抗も無に帰す。
無駄なんだ。絶対に。弱者の渇望なんて、受け入れられない。そんな寛容さは、どこにも存在しない。
それを思い知らされたのは、あの日。彼女によって……。
「……!」
目線の先、通路を横切る1人の少女がいた。
その顔には見覚えがある。いや、忘れるはずがない。周りの音が消え、彼女にだけ色がつく。赤く、黒い……憎悪の色が。
ずっと探していた。あの横顔。間違いない。彼女は……!
「あっ、おいフユカ!?」
見つけた。ようやく見つけた。あの悪魔を。気づけば私は走り出していた。
許さない。絶対、絶対。その端麗な顔立ち、見る影もないほど殴り付けてもまだ足りない。
あの人の受けた痛みが、その程度で足りるわけないでしょ……?
「……っ、フユカ……!?」
気づかれた。けどいい。手を伸ばせば届く距離だ。
彼女に……涼野サクヤに。
「やっと、会えた……!!」
怒りで震える右手に力をため、その忌々しい顔面目掛けて……!
「何するつもりだ!?」
直前、後ろから羽交い締めにされる。どれだけ力を込めても、体勢は変わらない。
「離せ……離せよ!!」
「悪いが、体術ならこっちに分がある。大人しくしろ、フユカ」
「ぐ……ぅっ!」
すぐそこにいるのに。どこかに八つ当たりもできず、膨れ上がる怒りの居場所を探し求める。
「すみません!お怪我ありませんか!?」
「私は大丈夫です。怪我もないですよ」
「フユカちゃん!ミノリちゃん!」
松田さんも来た……体術は松田さんも使える。2対1なら不利。仕方なく力を抜き、奥山さんも拘束を解く。
「ほら、フユカ。事情は分からないが、謝るんだ。いきなり殴るなんて……」
「……謝らないです、絶対。謝るのは、あなたの方ですよね!?」
壁を殴り付けながら、謝罪を拒む。そんなことをしても、怒りが風化することはない。
「……かも、しれないね」
「かも……?何でそんな適当な態度なんですか……!?」
「だからフユカ!いい加減にしろ!!」
素っ気ない態度に突き動かされた私の体を、またしても奥山さんが食い止める。邪魔しやがって……!
「あの、フユカちゃんと知り合いなんですか?他人とはとても……」
「えぇ……私はフユカを知ってます。それに、殴るだけの理由も知ってる」
「えっ……?」
ふざけるな。なら大人しく殴らせろ。何で私を止めるんだ。
「あの、フユカちゃん、この人と一体何が……?」
「……教えてどうなるの」
「そんなの、フユカのためだろ。友達がここまで怒ってるのに、そのためにどうこうしようするのは間違いかよ」
「友達……適当言わないで。あなたたちは友達じゃない。ただビリー・ブレイカーとして活動する一員なだけ」
息を飲む声が聞こえた。でもそれは事実。友達じゃない。
こんな私を友達を呼んでくれた人は、友達によって失われたのだから。
「……あ」
バックルが光った。次のファイトが始まる。
すぐそこに仇敵がいるのに。彼女と戦うためにこの大会に参加したのに、それでも無慈悲に引き剥がそうとするのか。
「……ほら、フユカ。ファイト始まるみたいだぞ」
「……分かってます」
奥山さんの手を振りほどき、私はステージへと向かう。サクヤさんの顔は、見たくもなかった。
邪魔が入らなかったら。この憎しみを惜しみなくぶつけられたのに。
彼女は。サクヤさんは。
「……人殺しのくせに」
***
スタジアムから戻ってきた佐原君は、酷く落ち込んでいた。
もう少しで決勝トーナメント。小沢君も森宮さんも負けた今、残るは佐原君だけだった。その悔しさは計り知れない。
つまりこれで、私だけが決勝トーナメントに進む。そこで私が勝たないと、全国には行けない。
負けは許されない。分かってはいたけど、そのプレッシャーが改めて私を襲う。
「……あ、シオリさん」
「佐原君……」
「いや……参ったっスよ。完敗っス」
私に気づいた。心配させまいと気丈に振る舞い、いつも通りの姿を見せる。
「……お疲れ様。後は任せてよ」
「なかなか言うじゃないっスか。ま、俺も勝つつもりではいたんスけどね。相手が悪かったかもしれないっス」
「相手がって……えっ、じゃあさっきから言ってた、ノスタルジアが……!?」
「ご名答。そう言う意味では目的果たせたっスけど……驚いたっスよ。立花さんがノスタルジア、過去の追憶ヴェルレーデだったんスから」
「え……!?」
立花さんが、ノスタルジア……!?何度かファイトしたことはあるけど、そんな様子は全く感じられなかった……。
「正直、ファイトしたいとは思ってたっスけど……やっぱ強い。さすがノスタルジア」
「佐原君……」
「どれだけ勝ちたいと願っても、足元にも及ばない。本当、雲の上の存在っスよ」
念願のファイトだったはずだ。ずっとファイトしたいと言い続け、叶い、超えようと全力を尽くしたはず。
それでも……ノスタルジアには届かなかった。きっと、アクセルリンクを使い、その力を遺憾無く発揮したはず。
「立花さんも言ってたんスよ。どれだけ願っても、変えられないものはあるって。実際、そう思う気持ちも、分からなくはない」
「それは……」
「その言葉通り、俺は立花さんの……ヴェルレーデの勝つ未来を変えられなかった。俺は……」
「……らしくないね」
「えっ?」
手も届かない存在。そんな空想じみた相手と、本気でファイトしたいと願う佐原君。
そんな彼の姿を、私は見てきた。だから……。
「らしくないよ……そんな佐原君は。1度負けただけで、後ろ向きになるなんて。またリベンジすればいいだけじゃん」
「シオリさん……?」
「そもそも見つけるのだって困難だったのに、3人全員見つけてるでしょ?それは佐原君が、諦めずに前向きに頑張って、変わり続けたからじゃないの?」
いつも真っ直ぐ、ファイトにも全力で。それが1回の敗北で折れるなんて、冗談じゃない。
そんな姿、私は見たくない……。
「……ハハッ」
「え、ちょっ……今笑うところじゃないよね!?」
「い、いやごめんっス……ハハハ」
「ま、また笑う!?」
理由も分からず、ただ困惑するしかない。落ち込んで、心が折れてたわけじゃない……?
「シオリさん勘違いっスよ。俺が諦めるなんて、そんなわけないじゃないっスか。改めて、ノスタルジアの強さに脱帽しただけっス」
「え、えぇ……」
「なのにシオリさん、必死だから……嬉しいような可笑しいような……クク」
「人が心配してるのに、それはないんじゃない!?」
何かバカにされてるみたいだけど……いいか。佐原君は、そう簡単に折れるわけなかったってことだね。
「……でも、そっか。それならよかったよ」
「ま、俺もシオリさんに心配してもらえて嬉しいっスよ。自分のことを想ってくれる人がいるって、本当力になるっスから」
「……そんな人が、心配してくれる相手をからかう真似なんてしないと思うけど?」
「わ、悪かったっスよ」
これでお返しだ。してやったりと微笑み、佐原君も罰が悪そうに苦笑する。
「でもありがとう。嬉しいのは本当だから」
「そっか……ならよかった」
「ノスタルジアは絶対倒す。それが俺の夢でもあるし……約束でもある。ある人とのね」
「ある人?」
「リアンって言う、銀髪の外国人とね。追憶と呼ばれたファイターを倒せるほどの強さを手に入れろって。その時、もう1度会おうってね」
佐原君にとっての大切な人との再会。その条件が、ノスタルジアを超える強さだったんだ。
事情は分からない。ノスタルジアが、そのリアンと言う人と何の関係があるのか。何がきっかけでそんな条件を突きつけたのか。
でも佐原君は、その人との別れを経験しなきゃいけない……辛い過去があったんだ。
『よう、シオリ!ちょっとデッキ見直したから、ファイトしようぜ!』
……私にもいるな。もう1度、会いたい相手が。
また会えたら、あの日のように笑いあいたい。どこにいるのか、何をしてるのか、全く分からないけど……。
いつか、レイジ君と。
「……会えるよ、きっと」
「……そうっスね」
と、私のバックルが光った。でも、Aブロックのファイトは終わったはず。私が優勝で、決勝トーナメントを待つだけ。
『先ほど、全ブロックの代表者が決定しました。これより決勝トーナメントを行いますので、代表者はステージへお越しください』
理由はすぐ分かった。スタジアム中に響き渡るアナウンスが、戦いの舞台へと誘う。
「出番みたいっスね」
「うん……行ってくるよ」
***
私がステージに着いた時には、Cブロック以外の代表者は全員集まっていた。
Aブロックは私。Bブロックは、予想通り最上君。
そしてDブロックは、シュンキ君。実力は確かだけど、ここまで残るなんて。
「あんたは、さすがに勝ち残ったな」
「最上君……当然だよ。目標があるからね」
「……フン。そう言う意味では、俺は既に目的を果たせたぞ。前に言ってたリベンジ、達成できた」
「それって……!」
涼野カズヤ……だったよね。その人へのリベンジが、最上君がこの大会に参加した理由だった。
そのリベンジ、果たせたんだ。ならよかった……のかな。
「つまりここから先のファイト、俺にとってはほぼ意味はない。俺は参加権があるし、優勝したら喜んで参加権は譲るぞ?」
「いや、本当に何で最上君ここにいるのさ……」
「決まっているだろう。こんな舞台でないと、お前とファイトできないからな。また勝たせてもらうが」
なるほどね。賞品ではなく、ファイトそのものに価値がある……ってことだね。
「そうはいかないよ。今度こそ勝つから」
「……フッ、楽しみだ」
強敵だけど、それでも勝つしかない。ここで彼を倒せないようじゃ、全国では戦い抜けない。
……まぁ、超能力じみたファイトする相手を全国の比較対象にするのもどうかと思うけど。
「やぁ、シオリさん。それと……最上ナツキ君、だったかな」
「あんたは……Dブロックの代表だったな。照山シュンキ、だったか」
「覚えてくれて嬉しいよ」
と、私たちの話にシュンキ君も入ってきた。ただ待っているのも退屈だったんだろう。挨拶がてら、ってところか。
「シオリから君のことは聞いてるよ。強いファイターだって。でも、僕も負けられない覚悟がある。ファイトすることになったら、勝たせてもらうよ」
「澄ました顔して、なかなか威勢がいいな。俺も全力で相手しよう」
挨拶どころか、火花バチバチだね……。けど、これから始まるのは決勝トーナメント。無理はないか。
「すみません、遅れました」
と、そこに現れた最後の1人……Cブロックの代表者、立花フユカ。
さっきの佐原君の話を聞く限り、立花さんはノスタルジア。その実力なら、ここまで残ってもおかしくはない。
「やはり来たな、立花フユカ。負けるとは思ってなかったが」
「もちろんです。最上さんも、私と同じ名前で呼ばれた存在……負けるとは思ってませんよ」
「同じ名前って……。じゃあやっぱり……立花さんが、ノスタルジア……」
こうして本人からノスタルジアを示唆する言葉を聞くと、より現実味を帯びる。立花さんが、ノスタルジアだってことが。
「その反応、やっぱり知らなかったんですね。サワラさんも言ってましたけど」
「……佐原ね、立花さん」
割りと真面目な雰囲気なのに、急に天然にならないで、立花さん……。
「ですが、本当に覚えてないのですか?私たちはあの日、同じ表彰台に立ったはずです。力のことだって……」
「……ごめん、本当に記憶がないんだ。大会に出たのは覚えているけど、細かいところまでは……」
覚えてる部分も、思い出そうとすると頭が痛くなる。延々と続くファイト、朦朧とする意識の中で浴びる照明、そして……彼の涙。
極めつけは床に散らばるカードと、ベッドによk
「……うん。覚えてないよ」
これ以上は、この後のファイトに支障が出る。止めておこう。
「……気にはなりますが、今はいいです。少し腹立たしいことがあって、気分も最悪です。気にする余裕もないですから」
「何かあったの?」
「……別に何も」
冷たい。立花さんから発する言葉とはとても思えない。
「大体予想はつく。サクヤと何かあっただろう」
「……サクヤ?」
「この大会にも出てたはずだ。サンクチュアリガード使いの女子が」
「……ミズキとファイトしてた子か」
あの子が、立花さんと何か関係がある?どういうつながりがあるんだろう……?
「詮索はしないが、私情を暴走させるなよ」
「……分かってますし、助かります。でないと、正直八つ当たりになるのも承知で手を出しかねませんから」
よく見ると、手が震えている。どうにか自制してるけど、それだけ感情的になる何かがある。
まず間違いなく、いい関係ではない。あるのは、憎しみに近い何か。
『お待たせいたしました!準備が完了しましたので、これより決勝トーナメントを開始いたします!』
「……来たな」
私たちはスタッフに誘導され、一旦ステージの隅に移動。代わりに涼野マサミがステージの中央へ移動し、照明が当たる。
「皆さん。今ここに、各ブロックの代表者4人が出揃いました!まずは彼ら、彼女らを称え、拍手を送りましょう!」
会場が拍手と歓声に包まれる。沸き上がる気持ちはあるが、本番はこれから。浮かれるわけにはいかない。
「ですが、真の勝者はただ1人。その者にこそ、グランドマスターカップの優先参加権が与えられます!」
「……既に参加権を持つ俺には関係ないがな」
毒気抜かないでよ……。
「代表者の皆さん、悔いのないよう、全力でファイトしてください!以上です!」
涼野さんが退場し、代わりに司会者にマイクが手渡される。そして、照明も司会者を照らす。
「では続いて、トーナメントの組み合わせを決定していきたいと思います!代表者の皆さん、ステージ中央へ!」
言われるままに、私たちはステージへ。すると、赤い外装の箱がスタッフによって運ばれてくる。
「今運ばれた箱には、4つのボールが入っています!ボールには1~4の数字が書かれ、1と2、3と4の組み合わせでまずファイトを行います!」
なるほど。完全にランダムになるのか。つまりここでいきなり最上君とファイトもあり得る。もちろん、他の2人も手強いけど……。
「その勝者同士でファイトし、勝った方が優勝。参加権を獲得となります!」
なら少なくとも、この中でファイトすることになるのは……2人。どう転んでも、アクセルリンク使いとは当たってしまうか。
勝てるのか。いや、勝たないと。もう残ってるのは私だけ。後はないんだ。
「ではAブロックの代表者から、順番にボールを引いてください!」
「……私からか」
箱からボールを引き、他の3人も後に続く。後は、書かれた番号に全て委ねるだけ。
「私は……2番だね」
「俺は3番か。星野が相手ではないな」
初戦から当たらなくてよかった……。でもそうなると、私の相手はシュンキ君か立花さんのどちらか。
「僕は……へぇ、そう来たか」
シュンキ君が番号を確認する。そして私たちにも分かるように、ボールを見せる。
1なら私、4なら最上君。さぁ……どっちだ……?
「ファイト……よろしく頼むよ、最上ナツキ君」
「……いいだろう。喜んで受けてやる」
4番。つまり最上君とシュンキ君がファイトすることになる。
と言うことは……!?
「……久しぶりのファイトになりますね、星野さん」
「立花さんか……!」
これは……強敵だ。と言うより、実力が未知数だ。
前に戦った時とは違う。デッキも、戦い方も。力の有無だって。
最上君やシュンキ君は、まだファイトの経験があるだけいい。でも立花さんは事前知識がない。
ある意味、一番手強い相手かもしれない……!
「では、ファイトの準備のため、これから10分後に決勝トーナメントを開始します!皆さん、しばらくお待ちください!」
***
「シオリさん、頑張ってね。私たちも応援する」
「そうするしかできないのが辛いが……頼んだぞ、星野」
「森宮さん、小沢君……ありがとう」
ステージを離れた私は、小沢君たち3人と合流。戦いに赴く私にエールを送る。
「本当は俺が立花さんをぶっ倒して、一緒に決勝トーナメント行けたらよかったっスけど……」
「仕方ないよ。みんなの分まで頑張ってくるね」
秋はチームでのファイトだったけど、今は個人戦。支えてくれる仲間が観客席にはいるとは言え、のしかかるプレッシャーは計り知れない。
「相手は立花さんみたいだけど……あの子、トウジを倒したってことよね」
「ただ強いならよかったかもしれないっスけどね。彼女、ノスタルジアだったんスよ。過去の追憶、ヴェルレーデ」
「何!?ヴェルレーデって……あいつが!?」
「そう。前にビリー・ブレイカーの話をしたことがあったっスけど、確認したら同一人物……立花さんが、ビリー・ブレイカーの一員だったんスよ」
そこはさっき話題に上がらなかったから、初めて知った。立花さんが、ビリー・ブレイカーだったなんて。
いじめを止めるため、ヴァンガードを行使している。与えられた特別な力を、人の役に立てようとしている。
「だったら強敵すぎるじゃない。最上ナツキと一緒ってことでしょ?」
「いや、それだけじゃないっス。立花さんのデッキはツクヨミ……デッキ内容を把握した上で、デッキを1周。サイレント・トムとダブルトリガーによる防御不可の一撃を決めてくる……」
「ツクヨミ!?あいつ、さっき廊下ですれ違った時、シャドウパラディンのデッキを持ってたんだぞ!?」
私も見た。初期のシャドウパラディンのカードばかりで組まれたデッキだったはず。
つまりあれは、立花さんの使うデッキとはまた別のデッキ……佐原君の戦ったツクヨミデッキが、彼女の本気のデッキ……!
「……お取り込み中みたいだけど、ちょっといいか?」
と、私たちに声をかけてきた人がいた。正確には、私に。肩を叩かれたからね。
「あなたたちは……さっきの……」
「悪いな、ファイト前に。少し話したいことがあってな」
破滅の翼のメンバーと一悶着あった……ミノリさんとカスミさんだ。
でもさっき会った時より、表情が暗い。決してただ世間話をしに来ただけじゃない。何か思い詰めたような、そんな様子だった。
「えっと……何だったかな?」
「あぁ……うちのリーダーのことでさ」
「リーダー……ってことは、立花さんのこと……?」
「……知ってるってことは、あいつから直接聞いたのか?」
「俺が対戦相手だったんスよ。まさか知り合いがヴェルレーデなんて呼ばれてるとは思わなかったっスけどね!」
「……そっか。なら時間もないし、話が早い」
そう言うと、ミノリさんとカスミさんは姿勢を正した。互いに一瞬目を合わせ、何か決意したように再度私たちを見る。
そして……。
「……頼む」
「えっ……」
「あいつを……フユカを、助けてくれ」