平和になったアリアハンで新人の戦士君が冒険に出ようとすると……。

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ルイーダさんが遊び人しか紹介してくれない件。

「ルイーダの酒場に行けば冒険の仲間を紹介してもらえるらしい」

 

 ここアリアハンの城下町は、伝説の勇者発祥の地として有名だ。

 勇者様が魔王を討伐し既に数年、モンスター達も穏やかになり武器を構えて戦闘! 何てこともなくなったが、異世界へ宝の地図を片手に旅をする冒険者が増えており、ルイーダの酒場には再び様々な職業の冒険者達が集まるようになった。

 

 オレはごく普通の戦士だが、ゆくゆくは転職しスキルを身につけ各国のダンジョンを巡ることを夢見ていた……つい最近までは。

 

 ルイーダの酒場は今日も冒険者達でいっぱいだ。

 ぐんたいがにの餡かけライスやマドハンドのキーマカレー、スライム肉まん、爆弾岩コロッケ、しびれくらげサラダなど、お馴染みのモンスター達をモチーフにした個性派メニューを楽しむ人々の間をすり抜け、仲間を紹介してもらうためカウンターへ向かう。

 

 レベル1新人戦士のオレは、期待と不安でイカツイ容姿に似合わず胸がドキドキしてる。

 銅の剣をカチャリと持ち直し、深呼吸して登録へ……。

 

 登録申し込み用紙にサラサラと書き込まれていくオレのデータ……美人で有名なルイーダさんについ見惚れていたが、その美しいルイーダさんから告げられるセリフはとても残酷なものだった。

 

「今、ちょうど冒険者達で空いている人は遊び人しかいないの……ひとり旅は危険だし、遊び人で良ければ紹介できるわ……っていうかもう呼んでるのよ! 遊び人のみなさん! 新人の戦士さんがお呼びよー」

 

男遊び人「ハジメマシテ! ボク曲芸には自信有ります! よろしくデス」

 

女遊び人 「はあいー楽しくやろうね! うふふ」

 

性別不明遊び人 「あらー戦士君いい男ね……好みだわー仲良くしましょうね❤︎」

 

 ⁇

 

「遊び人? ピエロ風2人にバニーガールコスチュームのケバめのお姉さんが1人。全員遊び人なんだけど……しかも1人は性別不明だし……戦士1人、遊び人3人ってどんなパーティーだよ」

 

 既にこのメンバーで登録が終了してしまい、仲良くアリアハンから旅立つことになってしまった。

 

 

 

 宝の地図ダンジョンではオレ一人で洞窟内を駆け巡り、他3人はほとんど遊んでいるだけに見えていた……が、遊び人特有の曲芸で街に出ると稼いでくれるため冒険は順調に進んで行く。

 

 男遊び人 「アハハ! 次の街に行ったらもっと大きな広場で玉乗りしよう!」

 

 女遊び人 「うふふ! アッサラームってオシャレな洋服あるかしらー楽しみ」

 

 性別不明遊び人 「戦士君……今夜2人で飲みに行かない……? ポッ」

 

「若干不安はあったものの、案外順調な旅になったな……遊び人の曲芸が、こんなに旅の資金源として役に立つとは、流石ルイーダさんいいメンバーを紹介してくれた」

 

 そんなこんなで意外と順調に旅が進み、ついに転職の地ダーマへと辿り着いた。

 戦士から他の職に転職できる。

 武闘家に転職して上級職バトルマスターを目指すのも良し、魔法使いに転職して魔法戦士を目指すのも捨てがたい。

 

 資金繰りは遊び人達に任せればいいし、余裕の旅……そんな風に計画していたのだが、何を思ったのか遊び人3人衆が全員賢者に転職したがり始めた。

 オレは知らなかったのだが、実は遊び人は悟りの書を使わずとも賢者に転職可能な特別な職業なんだとか。

 この3人……最初から賢者に転職するつもりで遊び人に?

 

 男遊び人 「ようやく辿り着きましたね……今日から賢者として生まれ変わりますよ。 戦士さん! 大舟に乗ったつもりで金銭管理は僕に任せてください」

 

 女遊び人 「今までケバいメイクと過剰なオシャレにしか興味なかったけど、今後は悟りを開いて品の良いナチュラルビューティー賢者を目指すから、戦士君は安心して金銭管理をお姉さんに任せてね」

 

 性別不明遊び人 「……私もついにその時が来たようだ……戦士君、今まで済まなかったな。大賢者を目指すから、安心して金銭管理は任せてくれ給え」

 

 結局遊び人達は全員賢者に転職し、旅は順調に行くように思われたが……。

 

「あのさ、なんか今月の食費が足りない気がするんだけど……」

 オレが宝を売って稼いだ食費が消えている。原因は分かっていた。

 

男賢者 「ああ、露天商でレアな学術書が売られていてね。つい買っちゃったんだよ……ごめんね、賢者の探究心は尽きないのさ」

 

 賢者になった途端、無駄金ばかり使いやがって……しかも、探究心だのなんだのインテリ用語で誤魔化してくるし。

 

「仕方がない。 金を降ろしてくるか……」

 口座を確認すると、既に何万ゴールドか引き落とされた後だった。

 

 女賢者 「ゴメンね! 新しい賢者装備が売られていたから、ついお金降ろしちゃったの……でもみんなの役に立ってみせるから許してね!」

 

 高級清楚系女賢者は『ナチュラルなんだけど美しく見える自分の清楚で高級な容姿』を保つため、高級な化粧品や装備しか使わなくなった。チープコスメと派手チープ系ファッションでまかなっていた遊び人の頃の10倍は金が掛かっている。

 どんなに見栄を張ってもメラとホイミしかまだ使えないのに……。

 

「仕方がない。お宝をもう一つ売るか……」

 だが道具袋を調べても、超レアアイテムが見当たらない。 まさか……。

 

 性別不明賢者 「ははは……私たちの手に入れたアイテムは、大賢者様が欲しがっていた超レアアイテムだったようでね……お茶会の後、献上品としてプレゼントしておいたよ」

 

 性別不明賢者は謎の人間関係を構築し、超高級お茶会に出席したり、大賢者達と勉強会に通っていた。オネエキャラで飲み屋で飲んでいた頃の10倍は金が掛かっている。

 

「もうヤダ……この賢者達戦わないから全然レベルアップしないし、金ばかり掛かる……使える呪文がメラとホイミだけのくせに賢者というだけでここまでドヤ顔するなんて」

 

 賢者達 『明日から本気出すから』

 

 レベル1のくせに金ばかり掛かる賢者達を抱えるオレの性格データが『苦労人』である事は言うまでもない。

 

 


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