プロローグ
「はあ………………」
僕は一人自室で溜め息を吐いていた。
この先のことを考えると憂鬱でしょうがない。
原因は中学からの親友と彼が出会うだろう非日常に生きる存在たち。
まあ、かなり前に気が付いて色々と自分なりに考え抜いたのだから、もう諦めは付いているのだが。
とはいえ、今は溜め息も吐きたくなる。
何故か、それは………………
「高校入学……か。あいつは大丈夫なのかね。そろそろ死亡フラグが立ってもおかしくないのだけど」
そう。無二の親友が波乱の人生を送ることを約束された存在であり、ちょうどこの時期にそのターニングポイントが有るからだ。
断言しよう。彼、坂井悠二はこれからの一年で価値観を一変させ、この世に見切りを付けてラスボスと化す。そして痴話喧嘩の為に新世界を創造して旅立っていく。誰の記憶にも残らず、ただ声だけを残して。
そんな未来なんて変えてしまいたい程に嫌だが、そんなことは僕には無理だと分かっている。
なぜかって、それは僕が人間だからだ。彼ら彼女らが立っている世界に近づけもしない、無力な人間だからだ。
唐突だが、僕には前世の記憶がある。といっても死んだ覚えがないのだけれど。
その記憶の中で最も好きだった作品の名は“灼眼のシャナ”。主人公の名前は坂井悠二と“炎髪灼眼の討ち手”たる少女(彼女にはまだ名前がないだろうからこう記させてもらう)。
そう。今の親友が主人公の一人なのだ。
内容は簡単に言えば、人を喰らう化け物“
そして、僕の存在も物語に出て来る。勿論、何も知らない一般市民で主人公の親友という立ち位置であるが。脇役ではあるが所謂原作キャラ。一度ヒロインに殺されかける不幸な人間。しかしその後の活躍は……サブヒロインに告白する程度か。
そんなこんなで僕にはこの先親友が経験するであろう不思議な日々を知っている。その可能性があるというのが正解だろうが、未来を知っている。
だからといって無闇矢鱈と原作の流れを変えるつもりはない。精々、僕自身が剣道をしていてたまに剣道部の人たちと手合わせをする程度のことだけしか意図して変えてはいない。
僕が不用意なことをしてあの剣呑な世界に巻き込まれたら堪らないからだ。あの世界は本当に関わらない方がいいと思う。親友たちが関わっていたとしてもだ。
確かに僕は未来を変える勇気もない小心者だ。何とでも言って欲しい。
でももしも彼がラスボスとなり果てて僕の記憶からもいなくなるとしても、僕は彼という“存在”を思い出せることだろう。何故ならば彼のことを
だからこそあの親友の居場所を守らなければならないと思う。彼がいなくなるそのときまで。僕にはそれができる。
勿論無理のない範囲でやるつもりであるが。
それが僕、池速人の今の正直な思いであり覚悟だ。