さてさて、五歳の誕生日に転生云々の記憶を取り戻し、結果ウチの家族が色々おかしい事・・・いや、この言い方はみんなに失礼だな。ええっと・・・原作との相違点が判明したわけなのだが、とりあえず、家族一人一人について、現在までの俺の見解を挙げていこうと思う。
一家の大黒柱である父さん。仕事は普通のサラリーマンらしいのだが、何故か出張が多い。普段温厚だが、怒ると怖い。最近、千冬姉さんとマドカから冷たい態度を取られ始めいじける事が多い。原因は、自分達を差し置いて俺と遊んだりしてるかららしい。・・・あれ、父さん悪く無いじゃん。
母さんは専業主婦。少々天然の入ったおっとりさん。料理がとても上手で、記憶を取り戻す前の俺はよく手伝いをしていた。そうすれば母さんと一緒にいられるから・・・なんて子ども心に考えていた様だ。・・・言っておくが、マザコンでは無い。断じて。
正直、父さんと母さんに関しては大した問題は無い。原作では何を思って失踪したかは明らかになっていないが、こうして俺を愛情込めて育ててくれている二人は間違いなく最高の両親なのだから。
・・・というか、これから挙げる二人のインパクトが凄過ぎるので二人が霞んでしまうのは仕方が無い。本当に、どうしてこうなってしまったのか。
まず、千冬姉さん。俺のイメージする織斑 千冬は、自分に厳しく、他人に厳しい。身内であっても容赦しない。とにかく実直、真面目、厳格。それが織斑 千冬! ・・・のはずなのだが。
『一夏、一緒に風呂に入ろう。私が背中を流してやるぞ』(胸押し付け)
『一夏、今日は私の部屋で一緒に寝よう。どうもお前と寝た方が疲れも良く取れるようなのでな』(だいしゅきホールド)
『一夏、父さんとだけじゃなく、私とも遊んでくれ。ほら、乳首当てゲームでもするか?』(当然拒否)
この千冬姉さんは、俺に対しもの凄く好意を向けてくれる。・・・ハッキリ言ってしまえば、重度のブラコンだった。原作でも、少しばかりのブラコンを見せていた場面もあったが、あんな控えめなもんじゃない。それこそ全身で「一夏大好き」を表現して来るのだ。
たまーに。本当にたまーにだが、俺を見つめる目が捕食者のそれの様に見えたりするが、まさか、本当に襲うつもりじゃないだろう。俺、まだ五歳だし。いやまあ、大きくなったら良いってわけじゃないけど。アレは、そう、きっと千冬姉さんなりの冗談というか、お茶目というか・・・駄目だ、相応しい言葉が見つからん・・・。
うん、これ以上考えるのは止めよう。次だ次。
俺の妹であるマドカ。原作において、彼女は織斑家には存在していない。“亡国機業”と呼ばれるテロリスト集団の一員“M”として一夏達の前に現れる“敵”である。
そんな彼女が、俺の・・・一夏の双子の妹として存在している。冷静に考えてこれはとんでもない改変ではないだろうか。もしかしたら、亡国機業すらこの世界には存在しないのかもしれない。・・・ん? 今後の事を考えると、俺としてはむしろ望む所じゃね?
だけど、これも俺の望んだ「幸せな世界」の結果なのかもしれない。ならば、俺が口にする“原作知識”もほとんどが当てにならなくなるのかもしれない。だが、その方がいいのかもしれない。これは結末が決まっている“物語”じゃない。無限の可能性が広がる、俺の“現実”なのだから。・・・そうだ。“亡国機業”も“M”も知った事か。俺はマドカを妹として愛するだけだ。
そんな俺の大切な妹であるマドカ。大人しい性格で、喜怒哀楽をあまり表現しない子だが、彼女もまた千冬姉さんに負けず劣らずな一面を持っている。
『お兄ちゃん・・・一緒にお風呂入ろう・・・。前、洗ってあげる・・・』(そこは普通背中だよね)
『お兄ちゃん・・・怖い夢見たから一緒に寝て・・・』(俺の匂いを嗅ぎながら数秒で夢の中へ)
『お兄ちゃん知ってる・・・? 耳たぶの延長線上は・・・乳首なんだよ・・・』(どっから拾って来た?)
そう・・・彼女もまたブラコンなのだ。・・・ブラコンだよね? まだブラコンレベルだよね? もう強烈過ぎてどこまでがブラコンなのか境界線がわかんなくなって来たよ・・・。あれ、そもそもブラコンってなんだっけ・・・。
これもまた「優しい世界」の結果なのだとしたら、どうやらあの神様と俺の間で「優しい」の意味は百八十度異なっているようだ。
来年、俺は小学生になる。おそらく“あの子”とその姉である“彼女”とも出会うのだろうが、果たしてこの調子で大丈夫なのだろうか。とくに“姉”の方・・・。
「一夏~。ちょっと下りて来てくれないかしら~」
おっと、母さんからの呼び出しだ。この時間から察するに・・・夕飯の準備の手伝いだな。
「いま行くよ!」
ま、未来の事を考えてみても仕方無い。きっとなるようになるさ。
そう結論づけ、俺は部屋を出て母さんの元へ向かうのだった。
次回から小学生編となります。