優しい世界を望んだら   作:ガスキン

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イベントの時系列が前後しますが、仕様です。

七月十五日、日間のランキングに入ってました。ありがてえ・・・。


第四話 男子のツンデレって需要あるんですかね

あの衝撃? の入学式からはや二週間。既にクラス内ではそれぞれ仲良しグループが形成されつつあった。男子だけのグループに女子だけのグループ。そして、男子と女子が混ざったグループの三種類だ。

 

俺とマドカはそろって混合グループの一員となっている。というか、俺から離れようとしないマドカを何とか他の子達と関わらせようと俺が作ったのだ。結果、狙い通りマドカにも俺以外に言葉を交わす友達が出来た。これで、あの子の世界が少しでも広がっていってくれるのが兄としての望みだ。

 

それにしても、やはり精神年齢二十歳越えに、小学生生活は中々キツイ。某名探偵漫画の初期のバーローの苦労が良くわかる。話題を合わせるだけで一苦労だ。とりあえずニチアサタイムの番組は全てチェックする様にしている。

 

ただ、その所為で千冬姉さんが「なるほど、一夏はこういう格好が好きなんだな」などと言い出して戦う変身ヒロインのコスプレ衣装を買いに行こうとした事があった。もちろん、全力で止めたが。男子だけでは無く、女子との話題つくりの為と観ていただけだったのに・・・。

 

ところで話は変わるが、「オッシュ!」でクラスの心を鷲掴みにした篠ノ之ちゃんもまた別の女子グループの一員となっていた。入学式翌日からはもう武士キャラに戻っていたから、面食らった子達も多かったが、それでも好意的に受け入れられていた。

 

「箒ちゃんってプリズムブルーみたいだね!」

 

プリズムブルーというのは今放送中の女子向けアニメ「魔法戦士プリズム5」に登場する葛城 藍璃というキャラが変身した姿の名前である。プリズム5一番の実力者で、ポニーテールに武士口調と、篠ノ之ちゃんと似た部分が多い。当の本人は「何だそれは?」と首を傾げていたが、おそらくプリズム5を観ていないんだろうな。

 

とにかく、女子に大人気の篠ノ之ちゃん。しかしその反面、男子はあまり積極的に彼女に話しかけに行こうとしない。たぶん、照れとか恥ずかしさが邪魔して近付けないんだろうな・・・と微笑ましくなった。え、俺? そういうの皆無なので普通に話しかけてますけど。と言っても、まだそこまで親しくないから二、三回くらいしか会話してないんですけどね。

 

そんな日々の中、ついに篠ノ之ちゃんに対し行動を起こした男子達がいた。ただし、そのやり方は褒められたものでは無かったのだが。

 

「やーい、男女」

 

「男女―!」

 

この日、教室に入った俺とマドカが見たのは、篠ノ之ちゃんを取り囲み、口々に「男女」と囃し立てている四人の男子の姿だった。あれ、このイベント原作より早くない? 確か二年生の頃に起こるんじゃなかったっけ。

 

「おりゃ!」

 

一人の男子が篠ノ之ちゃんの髪を纏めていたリボンを引っ張る。解けたリボンが男子の手に渡り、篠ノ之ちゃんの長髪がバサっと広がった。

 

「か、返せ! それは姉さんがくれた大切なリボンなんだ!」

 

「へん、男女の癖にリボンなんか着けてんじゃねえよ」

 

手を伸ばす篠ノ之ちゃんを別の男子が突き飛ばす。・・・さて、そろそろ動かないとマズそうだ。

 

「お兄ちゃん・・・行くの?」

 

「ああ。これ以上は篠ノ之ちゃんにも・・・彼らにも良くないしね」

 

子どもらしく力に訴えてしまえば簡単にあの四人を止められるだろう。だが、見た目はともかく、中身は子どもでは無い俺には彼らを傷付ける選択肢ははなから存在しない。力では無く、別の手段で彼らを止めるべきなのだ。

 

「キミ達、そのくらいにしておいた方がいいぞ」

 

オロオロしているクラスメイト達の間を抜け、俺は四人と篠ノ之ちゃんの前に立った。

 

「なんだよ織斑、お前この男女の味方すんのかよ!」

 

「いいから、早く篠ノ之ちゃんにリボンを返して謝るんだ」

 

「やっぱり、お前そいつの事好きなんだろ!」

 

やっぱりって何だやっぱりって。俺、キミ達の前で篠ノ之ちゃんの事が好きだって言った事あったか? 子どもらしい滅茶苦茶理論だが、そういう事ならその理論を利用させてもらおう。

 

「ああ」

 

「「「「え?」」」」

 

「なん・・・だと・・・」

 

頷く俺にポカンとする四人。同時に後ろからマドカの声でオサレ死神漫画のセリフが聞こえて来た。どうしたマドカ。誰かの霊圧でも消えたのか?

 

冗談はさておき、今ので場の流れをこちらに引き寄せる事が出来た。ここから一気に彼らを巻き込んでやる。

 

「俺だけじゃない。キミ達も含め、きっとこのクラスのほとんどの男子が篠ノ之ちゃんの事が気になってるんじゃないのか」

 

「は、はあ! 俺がこの男女の事を好きなわけないだろ!」

 

「そ、そうだ! 誰がこんな男女の事・・・!」

 

「誤魔化さなくていい。篠ノ之ちゃんくらい可愛い女の子に対して何も感じなかったら、それはそれで男として終わってる。キミ達の感情は至って正常だよ」

 

「か、可愛っ・・・!?」

 

篠ノ之ちゃんが何か言いかけて口を噤んだ。いきなりしゃしゃり出て来られて迷惑かもしれないがもう少し我慢してね。

 

「だから、篠ノ之ちゃんにちょっかいをかけたくなるキミ達の気持ちもわかる。・・・けど、これは少しやり過ぎじゃないかな。いきなり悪口を言われたり、お姉さんからもらった大切な物を取られたり、突き飛ばされたりして、篠ノ之ちゃんが傷つかないと思うかい?」

 

「それは・・・」

 

ばつが悪そうな表情で互いを見合う四人。ここまでくればもう一押しかな。

 

「キミ達が本当に篠ノ之ちゃんと仲良くなりたいのなら・・・これからどうするべきかわかるよね?」

 

諭す様にそう言うと、四人は頷き合い、篠ノ之ちゃんへ近づいた。

 

「・・・ごめん、篠ノ之」

 

「俺達、ちょっとふざけ過ぎた」

 

「織斑の言う通り、篠ノ之の気持ちを考えて無かった」

 

「リボンも返す。だから・・・」

 

「「「「許してください!」」」」

 

リボンを差し出しながら、深々と頭を下げる男子達。対する篠ノ之ちゃんは何故か縋る様な目線を俺に向けて来た。どうしたらいいのかわからないって顔だ。

 

「どうかな篠ノ之ちゃん。彼らも反省しているみたいだし。許してあげてくれないかな?」

 

しばしの沈黙の後、篠ノ之ちゃんはリボンを受け取りながら小さな声で答えた。

 

「・・・許す」

 

「え?」

 

「だから、許すと言ったんだ」

 

篠ノ之ちゃんの許す発言で四人の顔が安堵に染まる。

 

「ただし、二度目は無いぞ! それと、他の女子達に同じ事をしたら許さないからな!」

 

「「「「は、はい!」」」」

 

よしよし、これで、一件落着かな? 俺は手を叩いてクラスのみんなに声をかけた。

 

「それじゃ、この話はこれでお終いだ。そろそろ先生が来る頃だろうし、みんな授業の準備をしよう」

 

俺がそう言うと、みんな元気な声で「はーい!」と返事をしながら授業の準備を始めた。・・・なんか、俺が先生みたいなポジになってる気がするけど・・・まあいいか。

 

「お兄ちゃん・・・カッコ良かった・・・。けど・・・あの言葉に私はおこだよ・・・」

 

恨めし気な顔でピシピシと脇腹を突いて来るマドカ。だから、その地味に痛い攻撃は止めれ。

 

「お、織斑」

 

マドカの突きから逃げようとした俺に篠ノ之ちゃんが声をかけて来た。

 

「その・・・助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。と言っても、俺はただ偉そうにくっちゃべっただけなんだけどね」

 

「そんな事は無い。父さんが言っていた。「真に実力を持つ者の中には、戦わずして相手を屈服させる者がいる」と。私はそんなヤツいるはずが無いと思っていた。けど、さっきのお前を見て、私はお前がそうなんだと思った」

 

「いやいやいや。それは流石に大袈裟過ぎるって」

 

「お兄ちゃんなら当然」

 

「妹の信頼が重すぎる件について・・・」

 

「ふふ、お前達は面白いな」

 

そう笑いながら、篠ノ之ちゃんが髪を整える。慣れた手つきで髪を纏め、数秒もしない内にポニーテールが復活していた。

 

「やはり、この髪型でないと落ち着かないな」

 

「・・・」

 

「ん? どうした織斑?」

 

「やっぱり、篠ノ之ちゃんにはポニーテールが良く似合ってるな」

 

「なっ・・・!?」

 

「はーい! みんな席についてくださーい!」

 

「先生が来た。マドカ、篠ノ之ちゃん、席に戻ろう」

 

俺は急いで自分の席に戻った。号令が終わった所で、マドカが小声で話しかけて来た。

 

「お兄ちゃん、マドカも髪伸ばすから」

 

え、あ、うん。別に俺に許可なんか求めなくてもマドカの好きにすればいいよ。

 

こうして、俺と篠ノ之ちゃんは少しだけ仲良くなれたのだが、話はこれで終わらなかった。

 

「「「「兄貴、一緒に遊ぼうぜー!」」」」

 

何故か、あの四人の男子に懐かれてしまったのだ。しかも兄貴って何さ・・・。

 

「ぐぬぬ・・・お兄ちゃんはマドカのお兄ちゃんなのに・・・」




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