グレモリー家の白龍皇   作:alnas

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どうもみなさん、alnasです。
本編?知らないな第2弾になります今回です。
今月中に本編が進むと相方から連絡があったので、今月中の更新を楽しみにしていてください!(相方へのプレッシャーは忘れない)
今回はタイトル通り、あの子の話です。
では、どうぞ!


その猫は

 私が最初にあの方と出会ったのは、姉がいなくなってから数日後のことだった。

 姉と楽しく生活していた中、突然悪魔に追われる日々に変わってしまった悪夢のような時間。

 誰も信じられず、大好きな姉さまもいない。ただ、恐怖と痛みだけが私を現実へと引き戻す。

 追われ、逃げ回り、隠れ。

 決して逃げきれないと頭ではわかっていても、そうせずにはいられなかった。だって、もう一度姉さまに会いたかったから……そんな願いすら、許してはもらえなかった。

 徐々に狭まっていく包囲網。

 私が弱いのをいいことに、遊ばれるように追われていたのは知っていた。

 初めてふるわれる大人からの暴力。

 抵抗する力のない私にできることは、諦めないことだけだった。その意志も、次第に薄れていく中、私は出会った。

 いまでは、あの日がとても大切な日。

 救われた日と言っても、過言ではないと思う。

「ヴァーリさま……」

 つい、主人である方の名が漏れる。

 ヴァーリさまからは、貰ったものが多すぎた。

 姉さまの罪があるというのに、私に対して優しく接してくれて、身柄も保証してくれて。力を得るための特訓に、眷属悪魔として迎えてくれた。

 なによりも、温かい、陽だまりのような場所。

 出会えて、本当によかった。

 

 

 

 彼の親が、現魔王の一人であるサーゼクスさまだと教えてもらったときは、さすがの私も驚いたが、想像とは違い、穏やかな雰囲気の人に見えた。でも、変態でした。

 ヴァーリさまのこととなると、映像を記録したり、おかしな戦隊もののお面をつけてきたりと、本当に魔王さまなのかと疑ってしまうほどです。

 木陰からひっそり様子を伺っているのかと思えば、ヴァーリきゅん成長期なる物を片手に盗撮している場面に出くわしたこともあります。

 グレモリー邸の中に大きなシアタールームを建設していることも。

 正直、あの部屋でなにが再生されているのかは想像したくありません。

 その行動は、屋敷にいる皆さんが承知していることらしく、突っ込む人は誰もいませんでした……いえ、訂正します。一人、いましたね。

 サーゼクスさまの女王を務めるお方、グレイフィアさまが。

 あの人は絶対に敵には回せません。魔王さまが頭の上がらない唯一のお方ですから。

 もっとも、私はヴァーリさまの一人しかいない眷属であるせいか、それとも女性であるためか。とても優しくされています。もちろん、厳しいときもありますが、基本的には優しいです。最近では、「ヴァーリの力になりなさい。それと、あの子をよく見ておいて。頼むわ」と言われたりもしました。

 眷属悪魔として、なんだか嬉しく思います。

 グレイフィアさまと言えば、休日はよくヴァーリさまと一緒にいたりします。ヴァーリさまは少しやりづらそうですが、仲の良さそうな雰囲気で、サーゼクスさまが間に入っていけずに二人の周りをうろうろしてるのが日常ですね。二人でいるときは、まるで親子のようで。ヴァーリさまを見るグレイフィアさまの目は、慈愛に満ちていました。

 次期当主として有望視されているヴァーリさまですが、問題がひとつ。

 自身が当主の座に就くことを拒否していることでしょうか。本人曰く、「グレモリー家の未来はミリキャスに託すと決めている。もちろん、ミリキャスに任さられるようになるまでは支えるつもりだが、俺には俺の目標があるからね。グレモリーに囚われず、もっと上にいきたいんだ」とのことでした。

 もっと上……グレモリー家当主の立場より上を目指すとなると、ヴァーリさまの目標はいったい……。

 あの方が行くと言うのであれば、私もついていきたいです!

 私が思っている以上に、敵も味方も多いように思います。

 強く、ならないと。

 隣に立てるくらいには、強く。

「でも、前のような特訓は遠慮したいです……」

 忘れもしない。

 眷属悪魔に成り立ての頃。強さとはなにかを手っ取り早く教えてやると言われて連れてこられたドラゴンたちの住処。

 山のような数のドラゴンに追われる特訓だけは、二度とやりたくありません……二度とです。

 あの特訓だけは、ヴァーリさまを疑いました。おかげで基礎は出来上がりましたけど、納得いきません。基本的な動きができるようになってすぐの特訓でドラゴンと追いかけっこですよ? どう考えたらそこに行き着くのでしょう?

 次々に行われた修行は、そのほとんどが私より強い方との特訓でした。地獄です……。

 ……私も、一応女の子のはずなのですが。姉さまのように成長していれば、扱いも違ったのでしょうか。

 姉さまのように。

 同じ遺伝子が通っているんですから、希望はあります。未来は明るいです。

 とは言え、ヴァーリさまも鬼ではありません。悪魔なのは変わりようがないですけど。

 一日の鍛錬が終われば、私の好きなことをさせてくれます。

 食べ歩き、お昼寝、読書。

 思い返せば、いつも隣にはヴァーリさまがいました。

 静かに付き添ってくれるだけですが、時折、私のことを気にかけて話をしてくれます。少し不器用というか、優しくするのに不慣れな気がします。

 でも、その接し方は嫌いじゃありません。

 本当に優しい人だからこそ、接し方ひとつ取っても迷うんだと思います。

「姉さまも、きっとヴァーリさまとなら――」

 いえ、なんでもありません。

 そういえば、私の主人であるヴァーリさまは、極めて異例な悪魔だと言われています。

 人と悪魔のハーフであり、魔王の資質と、今代の白龍皇でもある。なんて、欲張りさんです。強さを求めるために生まれてきたような人。なのに、触れてみれば、感じるのは優しさばかり。

 怖いほどの強さを有しているはずなのに、強さを求めているはずなのに。

 どうして、あの人からは恐ろしさを微塵も感じないのでしょう? もう何年も一緒にいるのに、いまだに答えが出ません。

 求める強さによって、変わるものなのでしょうか。

 いずれにしろ、ヴァーリさまの底は見えません。

 意外だったのは、サーゼクスさまの実子ではなかったことでしょうか? あまりに仲のいいお二人だったので、そんなことは思ってもみませんでした。

 魔王であるサーゼクスさまに憧れにも似た目を向けるヴァーリさまのどこを見れば、実子でないとわかるのでしょう。

 でも、ヴァーリさまは、サーゼクスに拾われていなければ、俺は幼くして死んでいたか、もしくは家を飛び出したあと、悪い方向に行ってしまっていたかもしれないね、と言っていました。

 有りえない。

 そんな言葉が喉まで出ていましたが、とても言える雰囲気ではありませんでした。

 でも、だからこそ、拾われたのは幸運だったと聞かされ、他にもたくさん世話になって、いまじゃ簡単には返せない恩がある、とまで。

 人の血が通い、最悪なことに奴の血まで持っている自分が普通に立って歩けているのは、ひとえに、現魔王たちが一丸となって上層部を納得されたからだとか。

 そうでなければ、今頃はどうなっていたか、と笑っておられました。なんというか、緊張感のない感じです。

 たぶん、サーゼクスさまたちはまるで気にしていないと思いますけど。

 そういえば、ヴァーリさまはあまり悪魔としての契約は取ってきません。必要なぶんは取るが、それ以上はしないとのことでした。

 でも、予期せぬ召喚をされたときは、意外にもあっさりと契約を取ってきたことがありました。

 それは、最近よくご飯を作りにきてくれる一人の女の子との契約でした。

 話相手になる代わり、ご飯を作りに来てくれています。ご飯も美味しく、大歓迎。

 私も話すようになり、少し年下の友人ができました。

 人間界に来てすぐ、ヴァーリさまから学校に通うようにも言われました。

 中学校は、予想以上に人が多く、それでいて、私に優しい人たちばかり。通う理由をいくつか話していましたが、ちょっとだけ、わかってきた気がします。

 温かい人たちにいつだって囲まれていて、安心します。

 

 

 

 最近では、自分のライバルであるはずの赤龍帝とも出会っていて、知らないうちに仲良くなっていました。あまつさえ、殺しあうはずの運命にあるライバルを自分の眷属にならないかと勧誘したり。あのときは肝が冷えました。

 おかしいです。

 ヴァーリさまの頭の中を一度見てみたくなるほどにはおかしいです。

 出会ったらお互いのどちらかが倒れるまで戦うと聞いていたのに、実際に戦いはしたものの、小手調程度でしかないってなんなんですか! 無事だったのはいいですけど、根本的におかしいですよね! 眷属悪魔にして、もし寝首をかかれるようなことがあれば……ううっ、なんがか胃が痛くなってきました。

 姉さまのいないいま、ヴァーリさまの存在はとても大きなものだというのに……なにかあっては困ります。性格上、戦うことに一定以上の欲を持つヴァーリさまですから、今後も多くの敵と戦う場面はあるはずですが、今回の一件は問題がありすぎです。

 そろそろ、私以外の眷属も必要なのではないでしょうか。

 赤と白。

 戦うことを運命付けられているはずの、憎しみ合う関係。なのに、今日出会った赤龍帝は、憎しみの心を欠片も持ち合わせてはいないように見えました。ヴァーリさまと同じように、変わった赤龍帝なのかもしれません。もっとも、その程度で私は油断しませんが。

 もしも、変わることができるなら。

 お二人の関係が、憎しみ合うことでも、戦うことでもなく、協力しあえるようになるのなら。私はそれが、一番だと思います。

 できるなら、平和に過ごしていたいものです。

 多くの人と、優しさに包まれた、陽だまりのような場所。私が私でいれる、大切な場所。

 私は、姉さまにも、その場所にいてほしい。だから、待っています――姉さま。

 

 

 

 定期的に、私たちの周辺で起きた出来事を記し始めて二年。

 今日のぶんをノートに書き留め終えたのを確認し、布団へと潜る。

 書くついでに、いままで書いてきたぶんも読んでしまった。

 早く寝てしまおう。予想外の出会いがあり、もう疲れているに違いない。

 そう思うものの、まるで眠くならない。

 ヴァーリさまと出会ってからの日々を思い出しては、気分が高揚してしまう。

「これで寝れなくなったら、ヴァーリさまのせいです」

 起きたらまた、予想外の連続の日常に巻き込まれるはずだから。ヴァーリさまについていくのは簡単なことじゃない。

 ああ、明日はルフェイさんが来てくれる日でしたね。

 ご飯が楽しみになってきました。

 でも、最近はヴァーリさまと話しているときの表情がこれまでと違って見えます。楽しそうというだけでなく、なにか他の感情が混ざっているような……契約相手というだけで向ける感情ではないように感じます。

 私と話しているときでは絶対に見せない顔です。

 むう……納得いかない……でもいいです。毎日一緒にいるのは私ですから。

 一緒にいたい。

 私が初めて――いえ、この先は、言葉にはしないでおきましょう。

 では、次の朝がやってくるまで、しばらくのお休みです。




……正直、難産でした。
この話数でやるなよって感じはありました。書くならヴァーリと白音の休日の過ごし方でも書けって話ですよね。まあ、そっちの話は本編の更新が遅れることがあれば書く機会もあるかなと。普通に書いた方がいいですか?
さて、次回更新はjiguさんが鋭意制作中の本編にお返ししたいと思います。私が書く話よりボリュームあるのではないでしょうか。
では、また次回!
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